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第一章
7 〜カイ皇子、何故ここに?
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前書き
ミエルの回想
──────────
愛子と智美達が青国へ来る日の早朝に、青泉使総代のミエルは、青龍様の啓示を聞いた後、清き乙女が参られるので部屋を用意願うと、城へ言伝をした。
伝承だと、青神泉から別盤者はやってくる。急いで泉へ行くと、何故かカイ皇子が来ていて驚いた。青神泉のある場所には、青泉使と皇族しか入れないので、皇族であるカイ皇子がここに入れるのはわかるが、それでも何故今いるのか。
『カイ皇子、何故ここに?』
『青龍様に、迎えに行けと言われたから。』
そう答えながらも、泉の水面をカイは見続ける。
カイの言葉にミエルは、目をしばたかせる。
(今、皇は視察でおられないから、皇子に啓示するのはわかるが、何故青龍様は、第一皇子ではなく、第二皇子のカイ皇子に啓示を…)
『…来た』
カイ皇子のその言葉に、ミエルはハッとして水面を見ると、揺らめいて見える水の中に泡が見え、水面に上がって弾けて消える、ミエルがそれを見た瞬間カイ皇子が水に飛び込んでいた。
『…お、皇子…』
突然の皇子の行動にミエルは戸惑うが、中々上がってこない所をみると、かなり下層でこちらに来たのだろう、それに気付いたカイ皇子が、飛び込んだのかと納得して泉の中を覗き込むと、ザバアッとカイ皇子と別盤者の顔が上がった。
『ミエル』
『!!! 何故二人いるのですか!!』
水面より見える頭は皇子の他に二人分見えたのだ、慌てるミエルを見て手伝わせるのをカイ皇子は諦め、魔法で二人を抱えたまま水より浮び出て岸に降り立ち、二人を横たえ片方が片方をがっちりと掴んでいる手を、カイ皇子は少し力を入れて外して、二人並べて仰向けにした。
『息は?』
『呼気かけてある』
そう答えながら、水に濡れた髪を鬱陶しそうに掻き揚げ、手についた水滴を見ると何やら呟いた。
すると、スルスルと皇子や別盤者達から青い液体が流れ落ちて泉に流れていく、しばらくすると、皇子は全く濡れてなかったかの様に、さらりとした髪をかきあげていた。
『いったい何を…』
『成人のピアスの応用。龍泉だからここまで出来るんだがな』
ミエルの問いに答えつつも、別盤者からカイは目を離さない、その別盤者はカイ皇子とは別で濡れたままだった。
『二人とも…女性…ですね。しかし、いったいどちらの方が【清き乙女】なのでしょうか?』
ミエルのその言葉に今日初めて、カイはミエルに目を向けて怪訝な顔をする。
『青龍様に【清き乙女】を迎えにと言われたんでは…』
そう言うミエルにカイ皇子は、
『違う』
そう言って、カイ皇子は年かさな女性の方を濡れるのも構わず抱き上げた。
『このままでは、風邪を引いてしまう。ミエルはそいつを頼む。』
そう言って、カイ皇子はすたすたと一人で出口に向かう。
仕方なく、ミエルはもう片方の少年のような短髪の子を抱き上げて後を追う。
少年のようなと思いながらも、女性と判断したのはぬれて張り付く服が、胸のふくらみを分からせていたからだ。
青神泉からすぐ行ける神殿は、男性区域で、女性区域は遠かった。
女性区域に行くくらいなら、渡し通りを使って王城に行った方が早いので、迷いなく皇子は城への道を進んでいく。
どうにかこうにか、追いつきながら彼らが王城へ入ると、ミエルが頼んでいた事をしをえて、【清き乙女】を待っていた侍女たちが待ち構えていた。
『カイ皇子?…総代様乙女は?』
ミエル以外にカイ皇子がおり、二人とも女性を抱えていて侍女たちは戸惑った。
『気を失ったまま濡れていて、このままでは風邪をひいてしまう。着替えさせてやってくれ』
侍女を見たカイが即座にそう言うと、侍女たちはひとまず疑問はさておき、用意した部屋へ案内した。
女性を着替えさせるのだからと、部屋につくなり男性二人は部屋から出された。
『…こうしていても仕方がありませんので、私はアル皇子に報告してまいります』
ミエルは頭を混乱させながらも、部屋の前にいても仕方がないので、そう言うと第一皇子のアル皇子の元へ報告しに行ったのだが、戻ってくると、別盤者が一人しかおらず慌てて侍女に聞けば、カイ皇子が二人で一部屋は大変だろうと、着替えさせてすぐ、最初に抱えていた別盤者を抱えて連れて行ってしまったという。
おまけに、侍女頭の報告では、カイ皇子の自室の隣部屋へ入れた様で、何時もと違うカイ皇子の行動に驚くしかない。
まだましなのは、カイ皇子は独身なので、続部屋ではないということぐらい。
『気を失っているだけで、何ともないようだ。青神泉から来た割には龍泉の影響もないようだし、飲んでたらこんなもんじゃ済まないだろうしね、そのうち目を覚ますと思うよ。
しかし、髪は短いし小さいし…乙女というより、子供じゃないの?もう一人の方が乙女じゃないのかな?』
容体を見ようとミエルに付いてきた魔法医局長のジーサは、ベットに横たわり静かに呼吸する別盤者を見ながら言った。
『カイ皇子が成人の儀式の応用だと言って、龍泉を取り除いてましたから…。もう一人の方は…成人した方の年齢は判断しにくいのですが、見た目は30ぐらいでしょうか』
『こりゃまた、極端だね。確認も兼ねて、そちらも様子を見に行っとこうかな』
そう言ったジーサだったが、そのあとすぐ目を覚ました別盤者の少女が混乱し、取り乱す様子に離れることができず、もう一人の別盤者の様子を見に行く事が出来なかった。
別盤者とは言葉が通じないと言われていたので、意思を通じさせるために、借り受けていた王家の秘宝の水入り水晶を取り乱す少女に着けさすと、やっと話が通じた。
水入り水晶ははるか昔に別盤者が持ち込んだ石で、中の水に青龍様が魔力を注ぎ別盤者と意思が通じるように魔法をかけた物だ。
二人のうち、片方はピアス跡のある女性をカイ皇子が連れさってしまったため、【清き乙女】を連れてくると言ったミエルが面倒を見ている(というか、見ざるをえなくなった)短髪の少女が、秘宝も貸し出されていたし、【清き乙女】なのだろうと、侍女たちの間ではそう思われることになる。
──────────
後書き
細かい設定ですみません。
ミエルの回想
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愛子と智美達が青国へ来る日の早朝に、青泉使総代のミエルは、青龍様の啓示を聞いた後、清き乙女が参られるので部屋を用意願うと、城へ言伝をした。
伝承だと、青神泉から別盤者はやってくる。急いで泉へ行くと、何故かカイ皇子が来ていて驚いた。青神泉のある場所には、青泉使と皇族しか入れないので、皇族であるカイ皇子がここに入れるのはわかるが、それでも何故今いるのか。
『カイ皇子、何故ここに?』
『青龍様に、迎えに行けと言われたから。』
そう答えながらも、泉の水面をカイは見続ける。
カイの言葉にミエルは、目をしばたかせる。
(今、皇は視察でおられないから、皇子に啓示するのはわかるが、何故青龍様は、第一皇子ではなく、第二皇子のカイ皇子に啓示を…)
『…来た』
カイ皇子のその言葉に、ミエルはハッとして水面を見ると、揺らめいて見える水の中に泡が見え、水面に上がって弾けて消える、ミエルがそれを見た瞬間カイ皇子が水に飛び込んでいた。
『…お、皇子…』
突然の皇子の行動にミエルは戸惑うが、中々上がってこない所をみると、かなり下層でこちらに来たのだろう、それに気付いたカイ皇子が、飛び込んだのかと納得して泉の中を覗き込むと、ザバアッとカイ皇子と別盤者の顔が上がった。
『ミエル』
『!!! 何故二人いるのですか!!』
水面より見える頭は皇子の他に二人分見えたのだ、慌てるミエルを見て手伝わせるのをカイ皇子は諦め、魔法で二人を抱えたまま水より浮び出て岸に降り立ち、二人を横たえ片方が片方をがっちりと掴んでいる手を、カイ皇子は少し力を入れて外して、二人並べて仰向けにした。
『息は?』
『呼気かけてある』
そう答えながら、水に濡れた髪を鬱陶しそうに掻き揚げ、手についた水滴を見ると何やら呟いた。
すると、スルスルと皇子や別盤者達から青い液体が流れ落ちて泉に流れていく、しばらくすると、皇子は全く濡れてなかったかの様に、さらりとした髪をかきあげていた。
『いったい何を…』
『成人のピアスの応用。龍泉だからここまで出来るんだがな』
ミエルの問いに答えつつも、別盤者からカイは目を離さない、その別盤者はカイ皇子とは別で濡れたままだった。
『二人とも…女性…ですね。しかし、いったいどちらの方が【清き乙女】なのでしょうか?』
ミエルのその言葉に今日初めて、カイはミエルに目を向けて怪訝な顔をする。
『青龍様に【清き乙女】を迎えにと言われたんでは…』
そう言うミエルにカイ皇子は、
『違う』
そう言って、カイ皇子は年かさな女性の方を濡れるのも構わず抱き上げた。
『このままでは、風邪を引いてしまう。ミエルはそいつを頼む。』
そう言って、カイ皇子はすたすたと一人で出口に向かう。
仕方なく、ミエルはもう片方の少年のような短髪の子を抱き上げて後を追う。
少年のようなと思いながらも、女性と判断したのはぬれて張り付く服が、胸のふくらみを分からせていたからだ。
青神泉からすぐ行ける神殿は、男性区域で、女性区域は遠かった。
女性区域に行くくらいなら、渡し通りを使って王城に行った方が早いので、迷いなく皇子は城への道を進んでいく。
どうにかこうにか、追いつきながら彼らが王城へ入ると、ミエルが頼んでいた事をしをえて、【清き乙女】を待っていた侍女たちが待ち構えていた。
『カイ皇子?…総代様乙女は?』
ミエル以外にカイ皇子がおり、二人とも女性を抱えていて侍女たちは戸惑った。
『気を失ったまま濡れていて、このままでは風邪をひいてしまう。着替えさせてやってくれ』
侍女を見たカイが即座にそう言うと、侍女たちはひとまず疑問はさておき、用意した部屋へ案内した。
女性を着替えさせるのだからと、部屋につくなり男性二人は部屋から出された。
『…こうしていても仕方がありませんので、私はアル皇子に報告してまいります』
ミエルは頭を混乱させながらも、部屋の前にいても仕方がないので、そう言うと第一皇子のアル皇子の元へ報告しに行ったのだが、戻ってくると、別盤者が一人しかおらず慌てて侍女に聞けば、カイ皇子が二人で一部屋は大変だろうと、着替えさせてすぐ、最初に抱えていた別盤者を抱えて連れて行ってしまったという。
おまけに、侍女頭の報告では、カイ皇子の自室の隣部屋へ入れた様で、何時もと違うカイ皇子の行動に驚くしかない。
まだましなのは、カイ皇子は独身なので、続部屋ではないということぐらい。
『気を失っているだけで、何ともないようだ。青神泉から来た割には龍泉の影響もないようだし、飲んでたらこんなもんじゃ済まないだろうしね、そのうち目を覚ますと思うよ。
しかし、髪は短いし小さいし…乙女というより、子供じゃないの?もう一人の方が乙女じゃないのかな?』
容体を見ようとミエルに付いてきた魔法医局長のジーサは、ベットに横たわり静かに呼吸する別盤者を見ながら言った。
『カイ皇子が成人の儀式の応用だと言って、龍泉を取り除いてましたから…。もう一人の方は…成人した方の年齢は判断しにくいのですが、見た目は30ぐらいでしょうか』
『こりゃまた、極端だね。確認も兼ねて、そちらも様子を見に行っとこうかな』
そう言ったジーサだったが、そのあとすぐ目を覚ました別盤者の少女が混乱し、取り乱す様子に離れることができず、もう一人の別盤者の様子を見に行く事が出来なかった。
別盤者とは言葉が通じないと言われていたので、意思を通じさせるために、借り受けていた王家の秘宝の水入り水晶を取り乱す少女に着けさすと、やっと話が通じた。
水入り水晶ははるか昔に別盤者が持ち込んだ石で、中の水に青龍様が魔力を注ぎ別盤者と意思が通じるように魔法をかけた物だ。
二人のうち、片方はピアス跡のある女性をカイ皇子が連れさってしまったため、【清き乙女】を連れてくると言ったミエルが面倒を見ている(というか、見ざるをえなくなった)短髪の少女が、秘宝も貸し出されていたし、【清き乙女】なのだろうと、侍女たちの間ではそう思われることになる。
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後書き
細かい設定ですみません。
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