17 / 65
第一章
16 ~全員下がれ!!
しおりを挟む「あの、あちらの方々は何をなされているんですか」
ミエルの視線に慌てて智美が聞くと、ミエルは作業をしている者たちに目を向けさらりと答えた。
『ああ、あれは魔獣を呼び出す文様を構築しているのです。
あの者たちは青泉使で、【言の葉】と【文様】を使用して魔力を使用できるのは青泉使に伝わる技術なので、今回の演習に呼ばれたのです』
そう、話している間も青泉使達はタイルの文様の溝に、何やら青い液体を注ぎ入れ、文様の部分を液体で満たしていくそれはまるで青い模様のようだ。
それが終わると、青泉使たちは三方に分かれて離れていった。
『これより、魔獣討伐訓練を行う。
訓練とはいえ、本当の魔獣を呼び出し討伐するのだ、
これは本番の討伐と一緒だ、くれぐれも気を抜かず討伐に当たれ、なおこれは新人に対しての魔獣訓練だ、
よって補助はするが基本新人のみの対処になる、心して当たるように』
演習場にザッジ団長の声がこだまする。
その声とともに文様を囲うように陣形が整えられていく、陣形が整い皆の動きが止まると、カイ皇子が手を上げて青泉使達に合図をした。
『『『 』』』
青泉使達は思い思いのポーズをとりながら、なにやら言葉を紡いでいるのだろうが、智美の耳には意味のある言葉としては、聞き取れなかった。
そのうち青泉使達の口から淡く光る文様が流れ出てくる流れてくる文様はどうやらこちらの世界の文字のようなのだが、漂い出た言葉達は、タイルの文様の上に漂い始め、霧のように霧散して微かな光の煌めきを文様の上に降り注いでいた。
(なんだか、カイ皇子の時より心許ないく、儚い感じの魔法だなあ)
ある種幻想的な光景ではあるが、智美には、これから魔獣を呼び出すにしては、儚すぎる光景を見てぼんやりとそう思うと、霧散していた光が強くなったように感じた。
その時、カイ皇子はばっと振り向き、自分の後方にいた青泉使に向かって叫んだ。
『やめろ!込めすぎだ!!』
その怒声に、驚いた青泉使達が言葉を紡ぐのをやめたが、時すでに遅く、光は一層増して霧散し文様に降り注いだ。
カイ皇子は文様を再び見ると、チッと舌打ちをして声を張り上げる。
『全員下がれ!!』
その声と同時に文様が目を開けていられないくらい閃光を放ち、
ドン
と空気が弾けた様な重くなる様な破裂音と共に、そこに何かが出現した。
ギャゴオオオオオオオオオオ
現れた魔獣が咆哮を上げる。
その魔獣は予定されていた魔獣よりも、さらに何倍も上位ので凶暴な奴だった。
その大きさは10メートルくらいだろうか、突然呼び出され気が立っている。
カイ皇子は相手を確認すると、すぐさま指示を出した。
『各隊長、気を引き付けろ!ザッジお前もだ!』
威圧されていた騎士達がはっとする、指名されたもの達が、後方から駆け寄り、相手を引きつける。
その間カイ皇子は何か言葉を紡ぎ始めた。
「…あれは、キマイラ?でも違うもの?」
智美は目の前にある光景を呆然と見つめる、魔獣から感じる威圧に恐ろしいほど身がすくむ、けれどあまりの突然さに現実味が湧かない。
自分が知っているキマイラとはまた別の様で、恐竜の様な体躯に三つの頭、いや尻尾にも蛇の頭がついているので四つか、獅子と山羊、そこに闘鶏の頭が加わった魔獣。
気を引きつけているもの達は、剣や魔弾を使って、どうにか魔獣をその場にとどめていると、カイ皇子が紡いだ言葉を剣に纏わせ地に刺した。
『 縛!!!』
カイ皇子の最後の音だが智美の耳にかろうじて届いた時、魔獣の足元から青く輝く何本もの荊の蔓が勢いよく突き出してきて、魔獣の動きを拘束する。
引き締められる荊の蔓に魔獣が憤怒の咆哮を上げるが、暴れる体はギチギチと音を立てるが、全く動かない。
『今のうちに、首を討ち取れ!』
わぁと、周りを囲っていた騎士達が駆け寄り、魔獣に剣や槍を向けるが、鱗の様な硬い皮膚に全く歯が立たない。
カイ皇子は、自身の剣に何か魔力を乗せ、淡く光る剣を一際暴れ、牙を剥く獅子の右目に渾身を込めて打ち込んだ。
グギャゴオオオオオオォォォ
一際牙を剥いたまま断末魔の悲鳴を上げて、獅子の頭が事切れたそのとき、唯一動きが取れた尾の蛇が大きくしなり、周りの騎士を勢いよく打ち払った。
勢いよく飛ばされる騎士達を目にしたカイ皇子は、他の大きく暴れ束縛をどうにかしようとする、2つの頭を見て叫んだ。
『皆、離れよ!!一撃を放つ!』
いまだ獅子の目に刺していた剣を引き抜き、その勢いのまま己も離れながら、引き抜いた血塗れの剣を天に掲げ声を発した。
『白き尊き神よ、我が青き貴き魔力を捧げん、忌まわしき魔獣を、屠る雷撃を!!』
何故か、このカイ皇子の台詞は智美には聞こえてきた。
そしてその声が響きわたった時、辺りの一面の影が全くなくなる様な閃光が走り、音が聞こえなくなるほどの破裂音と共に、
ズドン
と地が一瞬沈んだ様な地響きが起きて、雷撃が魔獣に落ちていた。
──────────
後書き
この回、浮いてる浮きまくってる。
ただ、ヒーローに活躍の場を与えたかっただけなのに…なので、魔獣はもう出ないかも?
しかし、戦闘シーンって難しい。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
113
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる