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第一楽章 始まりの音(side花岡蒼良)
4.気付かぬ視線
赤くなる顔を俯いて隠そうとした、その時。
ガラッ
響いたドアの音に全員の視線がそちらを向く。
音楽室の後ろドアに立っていたのは、長身の男子だった。
「鳥海くんだ…!」
そこかしこで聞こえる囁きと口を手で覆ったアイコンタクトは、全て女子のもの。
この反応から分かるに、彼…クラスメイトの鳥海玲音はイケメンだ。
それも、入学した次の日には二年や三年の先輩がこぞって見に来る程とびきりの。
高身長なのは拓真と同じだが、とにかく脚が長い。
決して拓真をディスるつもりは無く、鳥海が規格外なのだ。
細いが華奢ではなく、適度に筋肉を感じる体つき。
小さな顔には二重の瞳と、高く通った鼻筋が完璧なバランスで配置されている。
センターパートにした黒髪の先が絶妙な具合に目にかかっていて…
(カッコいい人だなぁ)
蒼良は素直にそう思った。
そもそも、入学数か月で制服のブレザーを着こなしているとは何事か。
自分を含めた男子生徒は「着られている」状態だと言うのに。
そんな風に母親に揶揄われた経験なんて、彼には無いに違いない。
「誰も教室いないと思ったら音楽だったんか~。」
ヘラリとした声と共に、鳥海の後ろにもう一人男子が現れた。
こちらもイケメンで、既に学年の中心になりつつある田中悠だった。
「レオ~、こっち座って!ユウも!」
声を上げた数人の女子はクラスでも目立つタイプだ。
「でた、三組名物陽キャグループ」
「ってか全員レベル高すぎ」
コソコソ囁く声から察するに、彼らは既に学校生活におけるカースト上位なんだろう。
確かに全員顔もスタイルも良くて、キラキラしている。
果たしてクラス替えまでに名前を覚えてもらえるだろうか。
(う~ん、きっと無理だろうなぁ…)
「静かに!二人とも遅刻ですよ!」
先生の声に、騒々しかった教室は静かになった。
予期せぬ出来事だったが、彼らのおかげで蒼良は窮地を脱したようだ。
(ありがとう、グッドルッキングガイ達…)
そうやってコッソリ念を送っていたら、席に座った田中が女子に話しかける声が聞こえた。
「高校生なってもリコーダーやると思わんかったわ…ってか、さっき誰か一人で吹いてなかった?」
ギクリとして視線を向けると、一団の中の鳥海とバチッと目があった。
揺れる髪の間からピアスが覗いて、一瞬それに目を奪われる。
顔は直ぐにフイと背けられて、蒼良も慌てて教科書の間に顔を隠した。
(聞かれてたっぽい…あぁぁ、最悪だほんとに…!!)
自分の愚かさを呪いながらひたすら授業が終わまで耐える蒼良は、知らなかった。
「すっげー上手かったよな。リコーダーのプロいんのかと思ったわ。」
田中がそう続けていた事を。
そして、鳥海の瞳がもう一度自分を捉えていた事をーー。
ガラッ
響いたドアの音に全員の視線がそちらを向く。
音楽室の後ろドアに立っていたのは、長身の男子だった。
「鳥海くんだ…!」
そこかしこで聞こえる囁きと口を手で覆ったアイコンタクトは、全て女子のもの。
この反応から分かるに、彼…クラスメイトの鳥海玲音はイケメンだ。
それも、入学した次の日には二年や三年の先輩がこぞって見に来る程とびきりの。
高身長なのは拓真と同じだが、とにかく脚が長い。
決して拓真をディスるつもりは無く、鳥海が規格外なのだ。
細いが華奢ではなく、適度に筋肉を感じる体つき。
小さな顔には二重の瞳と、高く通った鼻筋が完璧なバランスで配置されている。
センターパートにした黒髪の先が絶妙な具合に目にかかっていて…
(カッコいい人だなぁ)
蒼良は素直にそう思った。
そもそも、入学数か月で制服のブレザーを着こなしているとは何事か。
自分を含めた男子生徒は「着られている」状態だと言うのに。
そんな風に母親に揶揄われた経験なんて、彼には無いに違いない。
「誰も教室いないと思ったら音楽だったんか~。」
ヘラリとした声と共に、鳥海の後ろにもう一人男子が現れた。
こちらもイケメンで、既に学年の中心になりつつある田中悠だった。
「レオ~、こっち座って!ユウも!」
声を上げた数人の女子はクラスでも目立つタイプだ。
「でた、三組名物陽キャグループ」
「ってか全員レベル高すぎ」
コソコソ囁く声から察するに、彼らは既に学校生活におけるカースト上位なんだろう。
確かに全員顔もスタイルも良くて、キラキラしている。
果たしてクラス替えまでに名前を覚えてもらえるだろうか。
(う~ん、きっと無理だろうなぁ…)
「静かに!二人とも遅刻ですよ!」
先生の声に、騒々しかった教室は静かになった。
予期せぬ出来事だったが、彼らのおかげで蒼良は窮地を脱したようだ。
(ありがとう、グッドルッキングガイ達…)
そうやってコッソリ念を送っていたら、席に座った田中が女子に話しかける声が聞こえた。
「高校生なってもリコーダーやると思わんかったわ…ってか、さっき誰か一人で吹いてなかった?」
ギクリとして視線を向けると、一団の中の鳥海とバチッと目があった。
揺れる髪の間からピアスが覗いて、一瞬それに目を奪われる。
顔は直ぐにフイと背けられて、蒼良も慌てて教科書の間に顔を隠した。
(聞かれてたっぽい…あぁぁ、最悪だほんとに…!!)
自分の愚かさを呪いながらひたすら授業が終わまで耐える蒼良は、知らなかった。
「すっげー上手かったよな。リコーダーのプロいんのかと思ったわ。」
田中がそう続けていた事を。
そして、鳥海の瞳がもう一度自分を捉えていた事をーー。
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