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第一楽章 始まりの音(side花岡蒼良)
5.自己中とは?
窓の外の木々から雫が零れ落ちる光景が、今日で3日連続を記録した。
「う~、ジメジメするぅ…」
「すげ、こんなクルクルになんのな。」
気怠そうに机に突っ伏した蒼良の後ろ髪を引っ張る拓真は楽しそうだ。
力強い毛根をお持ちの友人は、一切湿気の影響を受けないらしい。
「まさか毛根までゴリラだなんて…」
ボソッと零した蒼良は、すかさず拓真のリーチから距離を取る。
と、その目が教室の片隅で項垂れる一人の女子を捉えた。
何か言いた気に時折顔を上げて、それをまた下げて…
あ、とそこで気付いて、蒼良は休み時間を満喫する教室に向かって声を上げた。
「みんな~、今日ワーク提出だよ~」
途端に焦った声や了承の声が聞こえて来る。
黒板の隅に『ワークはこちらへ』と書いて、矢印をその下にある無人の机に引っ張った。
すると「ありがと~」と言いながら、クラスメイト達がそこに群がりだす。
(うんうん、うちのクラスは提出物の集まりがいいよね。)
頷きつつ眺めていると、ワーク片手にやって来た山田が話しかけてくる。
「そういうのさ。」
「ん?」
山田の視線の先を追うと、さっきの女子が明らかにホッとした顔をしていた。
「花岡は偉いよな。本当なら日直の仕事だろ?」
「そうだけど、別に誰がやっても変わらないからさ。」
そう言うと、山田に頭を撫でまわされた。
「クルクルだな」
「やめろぃ!」
山田は褒めてくれが、蒼良にとっては何でもない事だった。
生憎、正義感とかそんなものは特に持ち合わせていない。
ただ、気付いた人がやればいいしできる人がやればいいと思っているだけ。
それは80人と言う大所帯で行動していた経験が作用しているのだが、本人は完全に無意識である。
と、そこへ派手な一団が教室に入ってきた。
鳥海と田中を筆頭にした陽キャグループは、相変わらずキラキラのオーラを放っている。
その中の女子が、先ほど蒼良が書いた黒板の文字に気付いて顔を顰めた。
「はぁ?ワークとかやってないし。ってか先生忘れてたんじゃないの。なんで態々思い出させるような事する訳?」
実は2時間目の英語の後に集める筈だったそれを、教師はスルーして出て行ったのだ。
「誰だか知らないけど、余計な事すんなし。自分は提出できるからってそういう事すんの自己中じゃない?」
シンと静まった教室に何とも言えない空気が漂う。
どう考えても「自己中はお前だろ」であるからして。
ただ、相手が相手なので皆コッソリ顔を見合わせて様子を窺っている。
「もしかして、アンタの仕業?」
雰囲気で察したのか、長い睫毛の下の目が鋭く蒼良を射抜く。
両隣りで、一歩前に出た拓真と山田が大きく息を吸う気配がした。
「う~、ジメジメするぅ…」
「すげ、こんなクルクルになんのな。」
気怠そうに机に突っ伏した蒼良の後ろ髪を引っ張る拓真は楽しそうだ。
力強い毛根をお持ちの友人は、一切湿気の影響を受けないらしい。
「まさか毛根までゴリラだなんて…」
ボソッと零した蒼良は、すかさず拓真のリーチから距離を取る。
と、その目が教室の片隅で項垂れる一人の女子を捉えた。
何か言いた気に時折顔を上げて、それをまた下げて…
あ、とそこで気付いて、蒼良は休み時間を満喫する教室に向かって声を上げた。
「みんな~、今日ワーク提出だよ~」
途端に焦った声や了承の声が聞こえて来る。
黒板の隅に『ワークはこちらへ』と書いて、矢印をその下にある無人の机に引っ張った。
すると「ありがと~」と言いながら、クラスメイト達がそこに群がりだす。
(うんうん、うちのクラスは提出物の集まりがいいよね。)
頷きつつ眺めていると、ワーク片手にやって来た山田が話しかけてくる。
「そういうのさ。」
「ん?」
山田の視線の先を追うと、さっきの女子が明らかにホッとした顔をしていた。
「花岡は偉いよな。本当なら日直の仕事だろ?」
「そうだけど、別に誰がやっても変わらないからさ。」
そう言うと、山田に頭を撫でまわされた。
「クルクルだな」
「やめろぃ!」
山田は褒めてくれが、蒼良にとっては何でもない事だった。
生憎、正義感とかそんなものは特に持ち合わせていない。
ただ、気付いた人がやればいいしできる人がやればいいと思っているだけ。
それは80人と言う大所帯で行動していた経験が作用しているのだが、本人は完全に無意識である。
と、そこへ派手な一団が教室に入ってきた。
鳥海と田中を筆頭にした陽キャグループは、相変わらずキラキラのオーラを放っている。
その中の女子が、先ほど蒼良が書いた黒板の文字に気付いて顔を顰めた。
「はぁ?ワークとかやってないし。ってか先生忘れてたんじゃないの。なんで態々思い出させるような事する訳?」
実は2時間目の英語の後に集める筈だったそれを、教師はスルーして出て行ったのだ。
「誰だか知らないけど、余計な事すんなし。自分は提出できるからってそういう事すんの自己中じゃない?」
シンと静まった教室に何とも言えない空気が漂う。
どう考えても「自己中はお前だろ」であるからして。
ただ、相手が相手なので皆コッソリ顔を見合わせて様子を窺っている。
「もしかして、アンタの仕業?」
雰囲気で察したのか、長い睫毛の下の目が鋭く蒼良を射抜く。
両隣りで、一歩前に出た拓真と山田が大きく息を吸う気配がした。
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