青の向こうへ君と2人で

あさひてまり

文字の大きさ
7 / 39
第一楽章 始まりの音(side花岡蒼良)

6.初めての会話

「自己中なのお前だろ。」

全員の気持ちを代弁した声は、鮮烈な音を持って教室に響いた。

それは拓真でも山田でもなく、教室の後方。

自分の席に腰かけた鳥海は、集中する視線を意に介す事もなく続ける。

「どう考えてもやってねぇのが悪いだろ。」

そして、もう興味を失ったかのようにスマホに目を向けた。

「そ~そ~、レオの言う通り!ま、俺もやってないけど」

明るい声で言った田中が鳥海の肩に手を回す。

「芝ちゃ~ん、レオご機嫌斜めだからもうやめよーぜ。」
「は?意味わかんないんだけど。」

芝と呼ばれた女子が不機嫌全開の声を出して挑むように田中を見据えた。

正に、一触即発――

「あの~」

そんな空気を打ち破ったのは、今まで黙っていた蒼良だった。

自分のせいだと怯えているかと思いきや、その表情も声音もいつもと変わらない。

「確かにワークを集めたのは俺だけど、自分だけ出せばいいなんて思ってないよ。その為に提出の時間遅らせたんだし。」
「は?」

怪訝な顔の芝に、蒼良は説明する。

それは今日の朝の話し。

廊下で担任と行き会った蒼良は、頼まれ事の為に職員室に入った。

そうしたら、英語教師の机に付箋で貼られた『1年3組本日ワーク提出』を見つけたのだ。

蒼良自身は終わっているから問題ないが、見直しはしたい。

それに、昨日もクラスでは特に話題になっていなかった。

忘れているのが大多数だと思った蒼良は、その英語教師にこう言ったのだ。

「今日の集めて持って行きますねって。先生ちょっと変な顔してたけど自分の記憶違いだと思ったみたい。」

それによって、提出は2時間目から放課後に延びたのである。

「出す出さないは自由だけど、まだ間に合うから出したい人は頑張って。」

最後は、呆気にとられたようなクラスメイト全体に向かって言う。

暫しの沈黙の後――

「「あははははは!」」

教室が爆笑に包まれた。

「花岡、策士じゃん!」
「本当意外性!」
「俺今から頑張るわ!」

どうしてここまで受けてるのか分からないが、和やかな空気は嬉しい。

ヘラリと笑う蒼良に、拓真と山田は苦笑する。

芝もブスっとしていたものの、それ以上言い返しては来なかった。

やがて、各々が別の動きをする休み時間らしさが戻って来た頃。

背後に立つ人影に蒼良は振り返った。

そこにはワークを手にした鳥海の姿。

(こういうの、ちゃんとやるタイプなんだ。)

意外だなとちょっと失礼な事を思いつつ、鳥海に声をかける。

「鳥海君、さっきはありがとう。」
「別に」

まぁ、彼としては自分の意見を主張したまでで蒼良を庇うつもりなんてなかったんだろうが。

(それにしても、塩対応だなぁ。)

2秒で終了した会話に苦笑する。





だから、そんな鳥海にあんな声のかけ方をされるなんて。

この時の蒼良は思ってもみなかったのだったーー。
感想 2

あなたにおすすめの小説

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。 私が制作した著作物、また、私が依頼し描いていただいたイラスト含め、全ての文章・画像はAI学習、無断転載、無断使用を禁止します。

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

5時間の向こう側

Lillyx48
BL
一度離れた2人が再会するお話。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります