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第一楽章 始まりの音(side花岡蒼良)
6.初めての会話
「自己中なのお前だろ。」
全員の気持ちを代弁した声は、鮮烈な音を持って教室に響いた。
それは拓真でも山田でもなく、教室の後方。
自分の席に腰かけた鳥海は、集中する視線を意に介す事もなく続ける。
「どう考えてもやってねぇのが悪いだろ。」
そして、もう興味を失ったかのようにスマホに目を向けた。
「そ~そ~、レオの言う通り!ま、俺もやってないけど」
明るい声で言った田中が鳥海の肩に手を回す。
「芝ちゃ~ん、レオご機嫌斜めだからもうやめよーぜ。」
「は?意味わかんないんだけど。」
芝と呼ばれた女子が不機嫌全開の声を出して挑むように田中を見据えた。
正に、一触即発――
「あの~」
そんな空気を打ち破ったのは、今まで黙っていた蒼良だった。
自分のせいだと怯えているかと思いきや、その表情も声音もいつもと変わらない。
「確かにワークを集めたのは俺だけど、自分だけ出せばいいなんて思ってないよ。その為に提出の時間遅らせたんだし。」
「は?」
怪訝な顔の芝に、蒼良は説明する。
それは今日の朝の話し。
廊下で担任と行き会った蒼良は、頼まれ事の為に職員室に入った。
そうしたら、英語教師の机に付箋で貼られた『1年3組本日ワーク提出』を見つけたのだ。
蒼良自身は終わっているから問題ないが、見直しはしたい。
それに、昨日もクラスでは特に話題になっていなかった。
忘れているのが大多数だと思った蒼良は、その英語教師にこう言ったのだ。
「今日の放課後集めて持って行きますねって。先生ちょっと変な顔してたけど自分の記憶違いだと思ったみたい。」
それによって、提出は2時間目から放課後に延びたのである。
「出す出さないは自由だけど、まだ間に合うから出したい人は頑張って。」
最後は、呆気にとられたようなクラスメイト全体に向かって言う。
暫しの沈黙の後――
「「あははははは!」」
教室が爆笑に包まれた。
「花岡、策士じゃん!」
「本当意外性!」
「俺今から頑張るわ!」
どうしてここまで受けてるのか分からないが、和やかな空気は嬉しい。
ヘラリと笑う蒼良に、拓真と山田は苦笑する。
芝もブスっとしていたものの、それ以上言い返しては来なかった。
やがて、各々が別の動きをする休み時間らしさが戻って来た頃。
背後に立つ人影に蒼良は振り返った。
そこにはワークを手にした鳥海の姿。
(こういうの、ちゃんとやるタイプなんだ。)
意外だなとちょっと失礼な事を思いつつ、鳥海に声をかける。
「鳥海君、さっきはありがとう。」
「別に」
まぁ、彼としては自分の意見を主張したまでで蒼良を庇うつもりなんてなかったんだろうが。
(それにしても、塩対応だなぁ。)
2秒で終了した会話に苦笑する。
だから、そんな鳥海にあんな声のかけ方をされるなんて。
この時の蒼良は思ってもみなかったのだったーー。
全員の気持ちを代弁した声は、鮮烈な音を持って教室に響いた。
それは拓真でも山田でもなく、教室の後方。
自分の席に腰かけた鳥海は、集中する視線を意に介す事もなく続ける。
「どう考えてもやってねぇのが悪いだろ。」
そして、もう興味を失ったかのようにスマホに目を向けた。
「そ~そ~、レオの言う通り!ま、俺もやってないけど」
明るい声で言った田中が鳥海の肩に手を回す。
「芝ちゃ~ん、レオご機嫌斜めだからもうやめよーぜ。」
「は?意味わかんないんだけど。」
芝と呼ばれた女子が不機嫌全開の声を出して挑むように田中を見据えた。
正に、一触即発――
「あの~」
そんな空気を打ち破ったのは、今まで黙っていた蒼良だった。
自分のせいだと怯えているかと思いきや、その表情も声音もいつもと変わらない。
「確かにワークを集めたのは俺だけど、自分だけ出せばいいなんて思ってないよ。その為に提出の時間遅らせたんだし。」
「は?」
怪訝な顔の芝に、蒼良は説明する。
それは今日の朝の話し。
廊下で担任と行き会った蒼良は、頼まれ事の為に職員室に入った。
そうしたら、英語教師の机に付箋で貼られた『1年3組本日ワーク提出』を見つけたのだ。
蒼良自身は終わっているから問題ないが、見直しはしたい。
それに、昨日もクラスでは特に話題になっていなかった。
忘れているのが大多数だと思った蒼良は、その英語教師にこう言ったのだ。
「今日の放課後集めて持って行きますねって。先生ちょっと変な顔してたけど自分の記憶違いだと思ったみたい。」
それによって、提出は2時間目から放課後に延びたのである。
「出す出さないは自由だけど、まだ間に合うから出したい人は頑張って。」
最後は、呆気にとられたようなクラスメイト全体に向かって言う。
暫しの沈黙の後――
「「あははははは!」」
教室が爆笑に包まれた。
「花岡、策士じゃん!」
「本当意外性!」
「俺今から頑張るわ!」
どうしてここまで受けてるのか分からないが、和やかな空気は嬉しい。
ヘラリと笑う蒼良に、拓真と山田は苦笑する。
芝もブスっとしていたものの、それ以上言い返しては来なかった。
やがて、各々が別の動きをする休み時間らしさが戻って来た頃。
背後に立つ人影に蒼良は振り返った。
そこにはワークを手にした鳥海の姿。
(こういうの、ちゃんとやるタイプなんだ。)
意外だなとちょっと失礼な事を思いつつ、鳥海に声をかける。
「鳥海君、さっきはありがとう。」
「別に」
まぁ、彼としては自分の意見を主張したまでで蒼良を庇うつもりなんてなかったんだろうが。
(それにしても、塩対応だなぁ。)
2秒で終了した会話に苦笑する。
だから、そんな鳥海にあんな声のかけ方をされるなんて。
この時の蒼良は思ってもみなかったのだったーー。
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