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4 斧はやっぱり叩きつけるもの
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「出したものを消せないのはわかった。だったら僕に戦い方を教えてくれ!」
ヤルスが造り出した化け物と向き合い斧を両手で握りしめて僕は叫んだ。
「なぜそうなる?」
「消せないのならば僕がここで死なないための選択肢は2つ。1つはお前に戦い方を教わりこの化け物を倒すこと。もう1つはお前を囮にしてここから逃げることなんだが、どっちがいい?」
僕は自分でも引くほどの邪悪な笑顔を浮かべながら後ろに居るヤルスの方を向く。
「はぁ…仕方がない。だが、なぜ俺が戦い方を知っていると思ったのだ?」
「お前はこの世界の創造主様なんだろ?あんまり信じていないけど、もし、それが本当なんだったら、この世界の規則を作ったのはお前だろ」
「そういうことになるな」
「だとしたらお前がこの世界の武器や戦い方のすべてを設定したことになるよな」
「お前ほんとにただの農家の息子か?それにしては…」
ヤルスは僕の方を疑いの目で見てくる。
僕は別に怪しいものではありませんよ?だから言ってるじゃないですか…僕はただの農家の息子ですって。
「ヤルス!さっきは避けられちゃったけど斧ってやっぱり叩きつけるのが気持ちいいと思わない?」
僕の言葉で僕の考えていることがわかったらしいヤルスはふっと笑みを浮かべた。
「いいだろう。お前に最高の一撃を決めさせてやることを約束しよう!」
「おう!」
「まずは、斧を上から振り落とすのは最後だけにしろ。それまでは横に薙ぐように振るんだ。その様子を見ながら作戦を立てる。正面から思いっきり突っ込んでみろ」
作戦という作戦じゃなさそうだけど、ひとまず創造主様のことを信じてみることにするか。
両手で握った斧を構え正面から走る。
右下から左上に向け指示通り薙ぐように思いっきり斧を振るがこれもまた化け物には少し後ろに引いて僕の攻撃を避ける。
「これでも全然当たらないんだけど!?」
「それでいい。今度は左側から回り込んでさっきとは逆方向に切り込め!」
「了解!」
ダダダッと走り込んで言われたとおりに左側に回り込んで斬りつけるとは今度は右側に一歩動かれ避けられてしまう。
「よし。わかった。決めに行くぞ。もう一度正面から突っ込んで右下から左上に振り上げ、相手の動きが止まったところで思いっきり上から叩き込め!」
「あ、ああ。わかった」
さっきから僕は走り込んでは斧を振り回しているだけなのだが、こいつは何がわかったのだろうか?
だが、ここで僕が生き残るためにはこいつの指示に従って動くのがいいだろう。
振り慣れていない斧を握る腕もそろそろ限界に近い。ここで決めなければ斧を振った勢いで僕の手から離れて飛んでいってしまうかもしれない。それは危ない。とても危険が危ないからここで決めきろう。
初めての戦闘で少しこう…僕は高ぶっていたのかもしれない。思考がずれ始めている気がする。
これで最後だと思うとなぜだか体が軽く感じた。僕自信が驚くほど早く動くことができた。
「うぉぉぉぉおおお!」
ぶんっとこれもまたきれいに避けられてしまったが、ガクンっと態勢を崩す。
「今だ!行け!」
「おう!」
振り上げた斧を振り下ろそうとすると反動で手から抜けそうになるが、歯を食いしばり握り直して振り下ろす。
斧が思いっきり化け物に当たりゴッと鈍い音が響く。
生きていくために殺ったこととは言えちょっとこれは…
「おろろろろろろ…」
目の前に広がった惨状に耐えきれず胃の中にあった内容物をすべてぶちまけてしまう。
「よくやったではないか。…それはそれとして、こういうのは初めてだったのか?」
ヤルスは僕の方にぽんっと手を置いて声をかけてくる。
「あ、あぁ…自分でこういうことをするのは初めてで…うぅ…」
何度も吐きそうになる僕の背中を無言でヤルスはさすってくれる。
少し時間が経ち、僕も落ち着きを取り戻すことができた。
「ふぅ…やっと落ち着いたよ。ありがとうヤルス」
「礼を言われるようなことはしていない」
そう言うとやるすはふいっと違う方を向いてしまった。おや?僕はこいつを怒らせるようなことを言ったつもりは無かったのだが、何やら失言をしてしまったらしい。
「まぁ、いいか。ヤルスにいくつか聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「なんだ?」
あ、こっち向いてくれた。
「1つ目は、どうしてあいつの動きが急に止まったんだ?」
「こうやったんだよ」
ヤルスはペンを取り出し、本にサラサラと何かを書き始める。
パタンと本を閉じたところで、僕の右足が急に支えを失い体制を崩しころんでしまう。
「わっ!何だ!?」
「これと同じことをやったのだ」
地面を見ると僕の足元の土がえぐれて穴が空いていた。
「やつの行動には一定の法則があった。それをお前が何度か行動してくれたおかげで把握することができた。やつが動くだろう場所を予測してその場所に穴を作った。それだけだ」
予測をするだけならば簡単だろうが、それを本に書き記し実際にやってみせるのは次元の違う話だろう。
それを本当にやってのけるのだから、そろそろヤルスが創造主であることを認めてやってもいいかもな。
ただし…
「2つ目の質問は、ヤルス…斧での戦い方知らないだろ?自称創造主のくせに」
「自称ではないと…まぁよい。斧での戦い方について知らないのかということだが、知るわけがない。斧は武器では無い」
あれ?こいつが武器ならその手に持っているって言ってなかったかな?気のせいか…
「3つ目…いや、もういいや。それよりも目的地は決まっているの?」
「なんだ?やっとその気になったのか?」
「今回のことでちょっと信じてみてもいいかなと思ったんだよ。ヤルスが創造主だってことを」
「別にもともと嘘はついていないのだがな」
「そんじゃ、乗ってよ。僕が引いていくからさ」
ヤルスが台車に乗り込み僕は取手を掴み歩きはじめる。
「まっすぐ行ったところに歪みがあるように感じる。このまま真っ直ぐ道なりに進んでくれヒュード」
「りょーかい。創造主様」
僕が歩みを進めるとガラガラと音を立てて台車は進み始めるのだった。
そうしてこの世界を作ったヤルスと僕の旅は本当の意味で始まったのでした。
ヤルスが造り出した化け物と向き合い斧を両手で握りしめて僕は叫んだ。
「なぜそうなる?」
「消せないのならば僕がここで死なないための選択肢は2つ。1つはお前に戦い方を教わりこの化け物を倒すこと。もう1つはお前を囮にしてここから逃げることなんだが、どっちがいい?」
僕は自分でも引くほどの邪悪な笑顔を浮かべながら後ろに居るヤルスの方を向く。
「はぁ…仕方がない。だが、なぜ俺が戦い方を知っていると思ったのだ?」
「お前はこの世界の創造主様なんだろ?あんまり信じていないけど、もし、それが本当なんだったら、この世界の規則を作ったのはお前だろ」
「そういうことになるな」
「だとしたらお前がこの世界の武器や戦い方のすべてを設定したことになるよな」
「お前ほんとにただの農家の息子か?それにしては…」
ヤルスは僕の方を疑いの目で見てくる。
僕は別に怪しいものではありませんよ?だから言ってるじゃないですか…僕はただの農家の息子ですって。
「ヤルス!さっきは避けられちゃったけど斧ってやっぱり叩きつけるのが気持ちいいと思わない?」
僕の言葉で僕の考えていることがわかったらしいヤルスはふっと笑みを浮かべた。
「いいだろう。お前に最高の一撃を決めさせてやることを約束しよう!」
「おう!」
「まずは、斧を上から振り落とすのは最後だけにしろ。それまでは横に薙ぐように振るんだ。その様子を見ながら作戦を立てる。正面から思いっきり突っ込んでみろ」
作戦という作戦じゃなさそうだけど、ひとまず創造主様のことを信じてみることにするか。
両手で握った斧を構え正面から走る。
右下から左上に向け指示通り薙ぐように思いっきり斧を振るがこれもまた化け物には少し後ろに引いて僕の攻撃を避ける。
「これでも全然当たらないんだけど!?」
「それでいい。今度は左側から回り込んでさっきとは逆方向に切り込め!」
「了解!」
ダダダッと走り込んで言われたとおりに左側に回り込んで斬りつけるとは今度は右側に一歩動かれ避けられてしまう。
「よし。わかった。決めに行くぞ。もう一度正面から突っ込んで右下から左上に振り上げ、相手の動きが止まったところで思いっきり上から叩き込め!」
「あ、ああ。わかった」
さっきから僕は走り込んでは斧を振り回しているだけなのだが、こいつは何がわかったのだろうか?
だが、ここで僕が生き残るためにはこいつの指示に従って動くのがいいだろう。
振り慣れていない斧を握る腕もそろそろ限界に近い。ここで決めなければ斧を振った勢いで僕の手から離れて飛んでいってしまうかもしれない。それは危ない。とても危険が危ないからここで決めきろう。
初めての戦闘で少しこう…僕は高ぶっていたのかもしれない。思考がずれ始めている気がする。
これで最後だと思うとなぜだか体が軽く感じた。僕自信が驚くほど早く動くことができた。
「うぉぉぉぉおおお!」
ぶんっとこれもまたきれいに避けられてしまったが、ガクンっと態勢を崩す。
「今だ!行け!」
「おう!」
振り上げた斧を振り下ろそうとすると反動で手から抜けそうになるが、歯を食いしばり握り直して振り下ろす。
斧が思いっきり化け物に当たりゴッと鈍い音が響く。
生きていくために殺ったこととは言えちょっとこれは…
「おろろろろろろ…」
目の前に広がった惨状に耐えきれず胃の中にあった内容物をすべてぶちまけてしまう。
「よくやったではないか。…それはそれとして、こういうのは初めてだったのか?」
ヤルスは僕の方にぽんっと手を置いて声をかけてくる。
「あ、あぁ…自分でこういうことをするのは初めてで…うぅ…」
何度も吐きそうになる僕の背中を無言でヤルスはさすってくれる。
少し時間が経ち、僕も落ち着きを取り戻すことができた。
「ふぅ…やっと落ち着いたよ。ありがとうヤルス」
「礼を言われるようなことはしていない」
そう言うとやるすはふいっと違う方を向いてしまった。おや?僕はこいつを怒らせるようなことを言ったつもりは無かったのだが、何やら失言をしてしまったらしい。
「まぁ、いいか。ヤルスにいくつか聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「なんだ?」
あ、こっち向いてくれた。
「1つ目は、どうしてあいつの動きが急に止まったんだ?」
「こうやったんだよ」
ヤルスはペンを取り出し、本にサラサラと何かを書き始める。
パタンと本を閉じたところで、僕の右足が急に支えを失い体制を崩しころんでしまう。
「わっ!何だ!?」
「これと同じことをやったのだ」
地面を見ると僕の足元の土がえぐれて穴が空いていた。
「やつの行動には一定の法則があった。それをお前が何度か行動してくれたおかげで把握することができた。やつが動くだろう場所を予測してその場所に穴を作った。それだけだ」
予測をするだけならば簡単だろうが、それを本に書き記し実際にやってみせるのは次元の違う話だろう。
それを本当にやってのけるのだから、そろそろヤルスが創造主であることを認めてやってもいいかもな。
ただし…
「2つ目の質問は、ヤルス…斧での戦い方知らないだろ?自称創造主のくせに」
「自称ではないと…まぁよい。斧での戦い方について知らないのかということだが、知るわけがない。斧は武器では無い」
あれ?こいつが武器ならその手に持っているって言ってなかったかな?気のせいか…
「3つ目…いや、もういいや。それよりも目的地は決まっているの?」
「なんだ?やっとその気になったのか?」
「今回のことでちょっと信じてみてもいいかなと思ったんだよ。ヤルスが創造主だってことを」
「別にもともと嘘はついていないのだがな」
「そんじゃ、乗ってよ。僕が引いていくからさ」
ヤルスが台車に乗り込み僕は取手を掴み歩きはじめる。
「まっすぐ行ったところに歪みがあるように感じる。このまま真っ直ぐ道なりに進んでくれヒュード」
「りょーかい。創造主様」
僕が歩みを進めるとガラガラと音を立てて台車は進み始めるのだった。
そうしてこの世界を作ったヤルスと僕の旅は本当の意味で始まったのでした。
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