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⑨-3 少女と彼の想い

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 光の棺……。
蛍石色の優しい光が私の傷を癒し眼窩の痛み、掴まれた時に付いた手首のアザが薄れていく。
傷が治るって来るといやらしいメスの私が顔を覗かせオスが欲しいと疼いて……。

 こんな時に!! 
自分自身に怒りを覚える。
彼の安否よりも性欲優先だなんてバカ野郎!!
殴ってやりたいが痛みも快楽になるので心の中で自分を貶す。
でも……。

「オジサン! キスしたいよっ!! いっぱいエッチな事したい!」

 棺の中で叫ぶ。
性欲に抗いながら、未来を切望する。
彼の体温を再び感じたいと。

 私の声が耳に届いたのか右手で顔を覆うアグラ。
ドン引きされたかなぁ……こんな緊迫した状況でこんな……。

「イチャイチャとっ! 何、無視してくれてんのさ!!」
「すみません……私は『変態のロリコン』だそうなので、年増は目に入らないのですよ。愛しい彼女が呼んでおりますのでさっさと死んで頂けますか、先輩」

「フン! 欲しいものが有るのに帰れるわけないじゃなーい。見て分かると思うけど占いが得意な白の魔女の体いただいちゃったわけぇ~。彼女のこの白魚の指が水晶のタマタマを撫でると我らが師匠の瞳があんたのところに在るって出るじゃない。鏡の中に大切にしまい込んでぇ~。いい歳してまだマザコンなのかしらぁ~? ママのおっぱい隠れて飲んでるんでちゅかぁ~? ちゅっちゅっちゅー」

 巨乳を待ち上げ自身の胸を舐める魔女。
乳首を舐めるマスターベーションで興奮しはじめる下半身。

「あぁ~出そうよぉ、下のミルクがぁ~あぁあん、あんたの目の前で小娘のナカに出して、出してだしまくって頭おかしくしてあの子殺してあげる。えろい子みたいだしぃ~優しいでしょ~私」

 下品な物言いと行為に怒りを表すアグラ。
雨雲から雷を呼び魔女のまわりに落とし炎と電流の檻を作って彼女(彼)を閉じ込める。

「……美しく聡明な方でしたのに、下衆に食われる等など死んでも死にきれない想いで居られるでしょうね」
「あんたもそうなるのよっ! 娘の目玉を取り込めばどこに誰が居るか占わずして探す事ができる! あんたの心臓先に見つけて私が食べてあげる!! レイヴン!」

 炎大狼やキティーと対峙していた巨大烏は上空高く飛翔し目標を見下ろす。

「烏は初めてですね」

 アグラは胸のあわせから魔法書を取り出し、声を上げ詠唱しはじめるとそれに反応するように庭全体が光る文字が浮かびはじめ魔方陣が幾重にも浮かぶ。
 それら文字列が土に消えてゆくと植えられてあった小さなスイートピーが人の姿ほどに巨大化し蔓が烏を拘束しようと何本も伸ばしてゆく。
 数本の間はかわしていたが、空中が埋めつくされるほど何十にもなるとさすがの烏も逃げるのは難しく蔓にがんじがらめに捕らえられてしまう。

 骨の砕ける音をあげながら小さくなる蔓の檻。
烏の断末魔。
数十秒後には蔓はほどけたが烏の姿はなく黒い宝石が一つポロリと地面に落ちた。
それを拾い上げて自身の飾りベルトにはめ込むアグラ。

「伝書烏にでもしましょうかね」
「よくも、私の可愛いレイヴンをっ!!」

 烏が終わると次は魔女にめがけ蔓を伸ばすスイートピー。
彼女は短い杖をオーケストラの指揮者のように振るとスイートピーは所々爆発し炭になるが、燃やしても燃やしても産まれ続ける蔓。
恐るべし……、マメ科の生命力……。

「ええいっ! めんどくさいわっ! グランドフィナーレよっ!!」

 大きく杖を振ると庭全体が炎に包まれる。
端正込めた庭が……。

「今ですよ」

 アグラは自身とキティーに蛍石色のバリアを張ると何処かに合図を送る。
視線の先は強酸雨を受け止める杯バリアを監視中の傀儡達。
彼らはロープを放すと杯にたまった強酸雨が白の魔女の頭上で滝のように降り注ぐ。

「ファシネーション!」

 間一髪のところで魔女が呪文を唱える。
魅惑の魔法で心を奪われた炎大狼が、白の魔女の上に覆いかぶさり強酸雨を浴び庇う。
美しい炎の皮や肉を溶かし骨だけになる狼。

 防げなかった酸の雨は彼女の衣服や髪をとかしフタナリの裸体をさらけ出したかと思えば小さな木でできた人形に姿を変える。
カタカタ揺れる木の人形。

「今日は挨拶に来たまでよ、近々出向いてあげるからせいぜい歯茎ガタガタ揺らして待ってなさい!その女は絶対諦めないからっ!」

 そう言い終えると人形は役目を終えたのか制止した。

「……仕留めたと思いましたのに、私もまだまだですね」

 人形を踏みつけるアグラ。
仕留めきれなかったのが悔しいのか歯を喰いしばる。

 人形から踵を返しこちらにより棺から横たわる私を胸に抱く。
その温もりで緊張の糸が切れると涙がとめどなく溢れる私。
ブラウスの裾を掴んで涙をぬぐうが生地が硬くてぬぐい続けるとヒリヒリする。
私の手を掴み涙を舐め額同士を当てる。

「愛してる、メイ……。愛してる」

 きっと彼も私同様緊張の糸が切れ、生の歓びに思わず口走ってしまったのだろうか。
彼らしく無い。
感情を見せるなんて……。

 嬉しさを抱き着いてキスしまくって伝えたいけど、疲労が限界に達してしまい私は彼の心音を子守唄代わりに目をつむり眠ってしまった。

 私も愛してるって伝えたい……。
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