人間の性、性欲について深く考えてみた。

松本ダリア

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第一章 性をテーマにした作品について

映画「娼年」

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2018年に公開されたこの映画は物語の約9割が性行為の場面であり、それを演じる主役が一流の売れっ子俳優「松坂桃李まつざかとうり」だという事でとても話題になった。あまりの人気に女性限定ではあるもののまさかの応援上映会まで開催されるという大盛況ぶりだった。

松坂桃李をデビュー作の侍戦隊シンケンジャー時代から見守って来た事もあり私も当時かなり注目していた作品だった。が、内容が内容だけに見るには相当な覚悟が必要で実際に映画館に足を運ぶ勇気はなかった。が、R指定作品でまさかの応援上映会が開催され、桃李演じる娼夫が行為に励むのを持参した鳴物を鳴らして「頑張れ!」「いけー!」などと皆で応援し大いに盛り上がったというレポを読んだ時はさすがに爆笑したし、そこまで多くの女性が魅了されるなんて一体どんな作品なのだろうと一段と興味が湧いた。以下があらすじだ。

大学生活に退屈し、バーでのバイトに明け暮れる無気力な青年リョウ。ある日、中学校の同級生でホストクラブで働く進也が連れてきた静香という女性と知り合う。彼女は秘密の会員制ボーイズクラブのオーナーで、その試験に合格したリョウは娼夫として女性たちと接しているうちに、彼女らの欲望の不思議さや奥深さに気付き、やりがいを見つけていく。(MOVIE WALKER PRESSより)

口コミを読むとちらほらと「松坂桃李のAV」などという表現が見受けられるが、冗談ではなくその通りである。三流俳優ならまだしも誰もが知る超売れっ子俳優にここまでやらせるのか……!と、とにかく最初から最後まで衝撃場面の連続で度肝を抜かれた。

濡れ場の殆どがアブノーマルな事やR指定ではない作品の濡れ場ではまず描かれないような具体的なプレイもあり、思わず自作小説「アンドロイドの歪な恋」の中で書いた様々なプレイを思い出してしまった。

また、松坂桃李を始め、局部以外を惜しげもなく晒して大胆かつ激しい濡れ場を演じ切った俳優陣に役者魂を見た気がして、盛大に拍手を贈りたい気分になった。

濡れ場のことばかり言及して来たが、これはただの官能映画ではない。なぜ女達が男を買うのか。その背景には様々な事情がある。男に比べてベールに包まれがちな女の性欲、性の悩み、また主人公リョウが抱えている悩みも具体的に描かれ、彼女達との触れ合いを通してリョウが成長していく、哀しくも切ない物語になっているのである。(中には思い切り笑える濡れ場もあるのだが)

具体的に作中の客達がどのような悩みを抱えているのかというと……夫に性行為を拒まれた妻、マニアックなプレイが好きだが理解してもらえない独身女性、妻がリョウに犯されているのを撮影したい夫、初めて夫と結ばれたラブホで思い出に浸りながら抱かれたいおばあさん、などである。(因みにおばあさんとの描写は着衣で軽いボディタッチ程度)

女の性欲について、ここまではっきりとしかも大胆に描いた作品は珍しいのではないだろうか。その証拠に評価は真っ二つに分かれている。私はどちらというと高評価派なのだが、ひとつだけ言わせてもらうならば、監督が男性ではなく女性であったら、もう少し女性に寄り添った内容になっていたかもしれないという事だ。この作品はあくまでも「男性から見た女性」を描いている。その為、違和感を覚える人がいるのも頷ける。

私が特に印象に残っているのは、リョウが女友達の恵に「汚い仕事」と軽蔑けいべつされる場面である。リョウは反論するが、聞き入れられる事はなく、恵は一方的に怒りを爆発させて去ってしまう。その後、恵は一ヶ月分のバイト代をはたいてリョウを買い「どんな仕事なのか私に教えてよ」と喧嘩腰けんかごしに服を脱ぎ捨てリョウに向き合う。二人は激しく行為に及ぶが、恵は泣きながら「ずっとリョウ君が欲しかった」「私の知らないどこか遠い国の人になってしまったんだね」と失望混じりの告白をする。

これ以外に恵の具体的な気持ちは描かれていないが、結局リョウは彼女の偏見を解き、自身の仕事について理解を得る事は出来なかったのだろう。彼女が憤ったのはそういう仕事に元々偏見があっただけではない。リョウに対して恋心を抱いていた事も理由のひとつだ。もしも、好きな人が女用の風俗で働いていたと知ったら確かに私もショックを受けると思う。だから、恵の気持ちはとてもよく分かる。

しかし、その仕事の背景をよく知りもしないで一方的にけなしたり批判するのは良くない。私が恵だったら、まずその仕事の背景を知る努力をすると思う。まぁ仕事が仕事なだけにすぐに理解するのは難しいかもしれないが。

それにしても、好きな人に抱かれる為に大金を払った恵はある意味、勇気のある女性だと私は思う。が、そうまでしても肉体関係を持ちたい、相手の事を知りたいというのは何とも切ない話である。彼女が行為中に泣いたのも失望したのもきっとそういう複雑な感情があったからなのだろう。
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