アネモネの花が咲く頃には

メルバ

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1話

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――あれから、5年が経過し、颯斗はやとは15歳になった。

 体調が安定しない為、颯斗は小学校には通えず院内学級で過ごしてきた。しかし、成長と共に体力がついていき徐々に自由を許され、入退院を繰り返しながらも何とか自宅近くの中学校に通う事が出来た。と言っても、実際には体調的に両親に反対された経緯いきさつもある。
 そうまでして、普通の中学校に入学したのは、今まで経験してこなかった人生を最期に謳歌したいとおもったからだ。我儘を通した以上、彼はがむしゃらに頑張った。運動は許されていないので出来ないけれど、学内の成績は常に学年トップ。容姿端麗な見た目もあり、告白は日常茶飯事であった。
 

「颯斗先輩!ずっと前から好きでした。付き合って下さい」

「ありがとう、とても嬉しいよ。でも、ごめんね。付き合う事は出来ないんだ」

 
 極力、相手が傷つかないように振る。それが、彼の日常茶飯事だった。彼の中には、昔に立てた誓いがある。それは……
 ――絶対に、恋愛はしない。
 だった。余命幾ばくいくもない状況で、恋愛をするメリットは自分にも相手にもない。そう言い聞かせて、人と一定の距離を置いて学校生活をした。今日も、お気に入りの場所……学校の屋上に足早に向かった。


 「……っつ……痛ってえ……」


 屋上へと向かう階段で、颯斗は胸を抑えてしゃがみ込む。労作時発作だ。颯斗は、常に持ち歩いている常備薬を片手に口へと放り込む。しばらくすると、胸の痛みが徐々に消えてきてゆっくりと立ち上がり、屋上の扉を開けた。日の眩しさに思わず、目を顰めるしかめる。次第に目が慣れてきて、風景が視界へと映し出され一人の女の子が目に映る。その子は、こちらを見て何故か涙を零した。


 「(えっ……?俺、なんか泣かせるような事したかな)」


 思い返してみるも、皆目検討がつかない。そもそも、初対面のはず。頭の中を整理していると、その女の子が目の前までやってくる。


 「ごめんなさい。困惑させて……なんでもないから気にしないで。私、北條 恵ほうじょう めぐみ。あなたは?」

 「俺は、逢坂 颯斗おおさか はやとです」

 
 二人の始まりは学校の屋上だった。この時、恵にはぐらかされた意味を颯斗は後々知る事になる。だが、それを知るのはまだまだ先の話だ。
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