アネモネの花が咲く頃には

メルバ

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4話

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「……颯斗くん、放課後ちょっと時間もらっていいかな」


 神妙な面持ちで、恵が颯斗の声をかける。颯斗は、素直に頷いて恵についていく。呼び出されたのは、以前出会った屋上だった。


 「単刀直入に言うね。私、颯斗くんがいるのを知っててこの学校に転入してきたんだ。あの日6年前。……焼けるような茜色の夕日が見えた日覚えてないですか?」

 「…………!」


 
 ――6年前――

 あれは、小学4年生に上がったばかりの時。体調が全く安定せず、学校に通えなくなった。ここぞ
 という時に倒れる事が多く、退院もできず院内学級ばかりで不貞腐れていた。何もないベッドの上でぼーっと外を眺めていると、看護師が部屋に入ってきた。


 「……颯斗くん。この子、今日から同室になるから仲良くしてあげてね」

 「……はーい」


 ふと、隣を見ると管には繋がれているものの、酸素マスク越しから覗かせる顔は大分整った顔立ちというのが想像できた。その子もこちらを見て、ゆっくりと微笑む。


 「……私は……神宮寺 恵じんぐうじ けいよろしくね」

 「うん、よろしく」


 太陽のように明るく笑いながら言葉を紡ぐ彼女は、重い病状を感じさせないくらいに芯の強い女の子だと幼いながらに感じとれた。
 
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 「ねぇ、颯斗くん。学校って行った事ある?」

 「少しだけなら。でも、ほとんど入院が長くてまともに行けてないけど」

 「へぇ……!私、ずっと病院から出れなくて学校行った事なくて。颯斗くんの知ってる学校の事、たくさん教えて欲しいな」


 ――自分だけが何でこんなに苦しまなきゃいけないんだろう。ずっと、そう考えていた僕にとって考えを改めるきっかけを作ってくれたのは彼女だった。それからは、恵に自分が知る限りの外の世界を沢山教えていった。


「今日、天気予報でめちゃくちゃ綺麗な夕日が見えるんだって!恵、一緒に屋上で見よう」

「うん!」


 点滴台を引きながら2人は、屋上へと向かう。道中、恵に体調大丈夫かを問いつつ、無事辿り着いた屋上。眩い光が目に差し込み、そこには絶景が広がっていた。

 
「うわぁ……!こんな綺麗な景色を見たの初めて……!」

「……本当に綺麗だな」


 2人の目に映る茜色の夕焼け空。まるで、それは2人にエールを送ってくれているかのように。


「私、頑張るよ。絶対に病気に打ち勝ってみせる」

「僕も……諦めずに頑張る」


 ――その2週間後に、恵は治療の為に海外へと赴く為に別れ、それっきりだった。一方恵と別れた後の俺は、その半年後に余命宣告を言い渡された。

 

 
 

 

 


 


 
 


 
 
 
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