14 / 17
第一章 運命の出会いと王国動乱篇
第十三話 E③ 御使いと凶報
選定の儀から1ヶ月経った頃エルマー達はブラームス家の旗下にあるバルトルト・ファーバー公の城に身を寄せていた。
ファーバー公の城は東部の中心にあるブラームス家の城よりもさらに東の海を背にした絶壁の上にあり、難攻不落の東部の重要拠点として知られる天然の要塞だ。
ーー今頃はダールベルクの軍が無人のブラームス城に辿り着き地団駄を踏んでるだろうか?
エルマーはファーバー公に与えられた城の一室のベッドに横たわりながらそんなことを考える。
「きっと、旦那様も兄君達も無事ですわ。あの方達は強いですから。」
一緒にファーバー公の城まで連れてきたメイドのハンナがベッドの横の椅子に腰掛けながら、エルマーの考えを先読みして心配を打ち消そうと語りかける。
「わかってるよ、、、。」
疲れて眠くなる目蓋を擦りながらエルマーはハンナに心配かけまいと気丈に答える。
長い付き合いでエルマーが辛くても絶対に弱音を吐かないことを知るハンナは少し寂しそうに頷く。
そんなハンナの様子に少し罪悪感を感じたのかエルマーは無理やり話題を変える。
「そう言えば、お腹の赤ちゃんもうすぐ生まれるかな?」
椅子に腰掛けるハンナの大きくなったお腹を見てエルマーが純真な瞳で尋ねる。
「もうすぐだと思いますわ。この子最近ずっと中から蹴ってますの。生まれてきたら可愛がってあげて下さいね。」
自分を気にかける主にハンナは綺麗な顔を嬉しさでくしゃっとする。
エルマーが生まれた時から城で仕えているハンナは叱ってばかりのメイド長とは違って、いつもニコニコと笑顔を絶やさない美して優しいエルマーにとってもう1人の姉のような存在だ。
ーー昔はハンナと結婚するってよく言ってたっけ、、、、。
そのハンナに子供ができると知って幸せそうなハンナの様子に嬉しい反面、生まれてくる子どもにちょっとした嫉妬もある。
「そうするよ。でも、僕の事も忘れないでね。」
むくっと頬を膨らませてエルマーが背をハンナに向けて横向きにベッドに丸くなる。
その可愛らしい嫉妬にハンナはクスッと笑いながら長い睫毛を伏せて茶髪の髪を耳にかけながら微笑む。
ふと、エルマーがベッドの脇に置いてある蝋燭に照らされる小さな棚の壁に穴が空いてるのが目につく。
眠くなり薄れていく意識の中でボーっとその穴を見ていると、夢か現か穴からおぞましい芋虫のような異形の生き物が無数に這い出てくる。
その穴の奥は赤く燃え上がるような荒野と枯れた木々、暗黒の空が広がっておりまるで地獄のような景色だ。
「ひっ、、!」
芋虫の頭部は人間の老人のようで赤く黒々とした幼虫のような体を苦しそうに捩りながら、ボトボトと枕元の横にまで落ちてくる。
「おぉ、、、愛しき、、御方、、よ、、。」
しわがれたような声でたどたどしく無数の奇怪な芋虫が声を発しながらエルマーの眼前まで気持ち悪く這い寄って来る。
「我が、、主、、の、、愛しき、、御方、、よ、、、。」
エルマーはその奇怪な者達から目を離せずに驚愕に目を見開きながらじっと見つめることしかできない。
「邂逅、、の、時は、、近く、、いず、れ、お迎え、、に、上がりましょうぞ、、、。」
ウネウネとした動きで異形の芋虫達は更に近づき、エルマーの額に口づけをする。
「御印、を、ここに、、、。」
異形の芋虫を前にフッとエルマーの意識が途切れて眠りに落ちていく。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
強い日差しに重い目蓋を開けると夜が明けて朝を迎えた事に気づく。
右手に暖かさを感じて、ふと横を見るとハンナが身重の体で椅子に腰掛け眠ったままエルマーの手を握ってるのに気づく。
「ハンナ、、赤ちゃんがいるのに、、。」
エルマーは起き上がり、毛布を彼女に被せようとするとハンナは目を開けて欠伸をしながら大きく背伸びをする。
「エルマー様、、。おはようございます。」
ハンナがエルマーに起き抜けの挨拶をすると、エルマーが毛布を持ったまま固まってるのに気づき満面の笑みでからかう。
「あら、お優しいのですね。将来はきっと王都でも評判の女たらしになりますね。」
ハンナが笑いながら、エルマーの頬を手でさすりながら弟をからかう姉のように可愛がる。
「うるさい!ハンナこそ、、ずっと手を握ってたのか?」
ハンナが、んーっと再び背を伸ばしながらエルマーを横目に話し始める。
「エルマー様は昨日うなされてましたわ。何か悪い夢でも?」
エルマーはハンナの言葉に少し戸惑った様子で考え込む。
ーーあれはやっぱり夢か、、。妙に現実味があったけど、有り得ないか。
「いや、何でも無いよ、、、。」
少し様子のおかしいエルマーを心配そうに見ながらハンナは、今の危機的な状況がエルマーを不安にさせてるのだろうと勝手に勘違いして優しく彼の手を取る。
「ここにはエルマー様の味方が大勢います。さぁ、母君とファーバー公が待つ広間へ行きましょう。寝坊するとまたメイド長に叱られてしまいますわ。」
「それは嫌だ!」
やかましく怒るメイド長の姿を想像して、エルマーは急いで着替え始める。それをみてハンナはクスッと微笑みながらエルマーの着替えを手伝う。
姿見を見ながらサスペンダーをハンナにつけてもらい、装飾のなされた蝶ネクタイと豪華なローブを身につけて長くなった金色の髪を梳かしてもらうと、
「女の子みたいに可愛いですわ。もう少しで三つ編みもできそうですよ。」
ハンナが楽しそうに目を爛々と輝かせながらエルマーに要らぬ提案をする。
「ちょっと髪が長くなり過ぎたね。また今夜切ってくれる?」
エルマーはからかいには答えずに肩まで伸びた綺麗な艶のある髪を弄りながら後ろのハンナを見上げていつも通りに散髪を頼む。
「もっと伸ばして可愛くしましょうよ!絶対似合いますわ。目指せ王都一の美少女ですわ。」
ハンナは頬を膨らませながら抗議してエルマーをあらぬ方向に導こうとする。
ーー確かに女みたいだ。ブラームス家の男たるものこれではダメだ。
女の子のミディアムくらいに伸びた髪とエルマーが元々母親似で端正な女顔なのも手伝って姿見に映るのは美少女そのものだった。
「ほら、ファーバー公が待ってるんだろ?もう行くよハンナ。」
いつも通りハンナの話が長くなりそうな予感がしてエルマーはハンナの手を強引に引き部屋を出る。
ーー選定の儀からもう1ヶ月経った。今日こそはファーバー公から父上達の安否を聞ければいいが、、。
エルマーは暗い面持ちで木造りの階段を降りて大広間への廊下を身重のハンナと歩いて行く。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
大広間には長い机が幾つも置いてあり、ファーバー公の家臣と連れて来たきたブラームス家の使用人、衛兵等で溢れており皆それぞれに話しながら朝食をとっていた。
エルマーは大広間の壇上のファーバー公や母親など主要な者達の座る主賓席の大机でバルトルト・ファーバー公が座る上座の横に腰掛ける。
「おはようございます、エルマー様。昨夜はよく眠れましたか?」
ファーバー公が不健康そうな顔でウィンナーを口に運びながら、エルマーを横目に話しかける。
「あぁ、よく眠れたよ。ここに匿ってくれること改めて感謝するファーバー公。」
父も兄姉も居ない今エルマーは自分が当主の代わりだという自覚を持ってあえて強気な態度で接する。
ファーバー公が顔だけ動かして頷くと、エルマーは早くも本題に入ることにする。
「未だに父上や兄様達の安否は分からぬのか?貴殿は父上と共に選定の儀の場にいたのであろう?」
ファーバー公は無表情のまま鶏肉をフォークで刺して口元に運びながらエルマーの質問に淡々と答える。
「ええ、居ましたとも。しかし、神聖な選定の儀の最中に帝国兵が何処からか侵入してきて皆散り散りになりました。そのまま私は命辛々逃げてせめて貴方様を守らねばと、迎えに上がった次第です。
使い魔を放ち情報を集めていますがまだ皆様の安否は分かりませぬ。」
「帝国兵が⁈何故奴らが?ダールベルク家が奴らを招き寄せたのか?」
エルマーが立ち上がり必死に食いつくのをファーバー公は冷たい目で見ながら、食事で汚れた口をナプキンで丁寧に拭き続きを話す。
「さぁ?帝国とダールベルク家に繋がりがあるかは判りかねますが、、。最後にお父上ヴィルマー様とアメリア様を見たときは諸侯に守れながらあの場を離脱していましたのでご存命かと。兄君達も今頃王都で帝国兵達を掃討し終わってる頃でしょう。」
エルマーはゴクリと唾を飲みながらファーバー公の話に耳を傾ける。
「そろそろ父君や兄君達がお迎えに来るかもしれませんね。それまでの間はどうぞ、我が城でゆっくり休まれては?」
普段笑わないファーバー公が不自然な笑みを浮かべながらそっとエルマーの肩に手を置き椅子に座らせる。
「あぁ、そうだな、、。父上達ならきっと、、大丈夫だ、、。」
本心では納得いかないままエルマーは自分に無理やり言い聞かせて落ち着こうとする。
「さぁ、まずはお食事をお召し上がり下さい。痩せてしまってはお父上達に会った時に心配を掛けますぞ。」
ファーバー公が不自然に話題を切り上げてエルマーに豪華な朝食を進めると、ファーバー公の臣下らしき兵が近づいて来て彼に小さく耳打ちする。
すると、ファーバー公は再び無表情に戻り立ち上がり、エルマーに頭を下げてこの場を離れることを謝罪する。
「申し訳無い。臣下と城の防衛について重要な話があるのでここで失礼します。無礼をお許しくださいエルマー様。」
「あぁ、構わない。朝食は有難く頂くよ。」
ニコッとまた貼り付けたような笑みを浮かべてファーバー公は臣下と共に大広間を後にする。
するとエルマーのフォークを持つ手の影から不気味な口が開き、思念波のようなものでエルマーの頭の中に直接語りかけてくる。
ーー何だ?影悪魔シャドウ・デーモン?
それは、エルマーが使役する低位の悪魔達の一つで、この城に来てからも変わらずに情報収集と影の護衛に使っている。
ーーあの男、嘘をついています。
ーー何だと⁈
シャドウ・デーモンの囁きに耳を貸すと不穏な答えが返ってきた。
ーー説明しろ。どういうことだ?
ーーはい。私の分体が王都と東部の境界で大きな戦があったことを確認しました。奴はそれを知ってるはずです。
エルマーの額から冷や汗が流れて、心臓の鼓動が早まる。
ーーファーバー公はそれを隠していると?
ーーはい。それに先程の会話からは嘘を吐く者の特有の匂いがしました。我ら悪魔の鼻を誤魔化すことは叶いませぬ。
エルマーにはありとあらゆる最悪の可能性が頭に浮かび漠然とした不安が襲ってくる。
しかし、それを信じたく無いエルマーの決断は鈍る。
ーーもう少し探ってくれ。お前はファーバー公について彼の会話を逐一僕に届けろ。
ーー御意。
手の影から悪魔の口は消えて、影は人知れずに大広間の人々の影から影へ飛んでいき、ファーバー公の元まで床を這いずり回って行く。
「エルマー?大丈夫なの?顔色が悪いわよ。」
ふと気づくと隣に座っていた母が心配そうにエルマーを覗き込むのに気がつく。思念波での会話に集中していたので母からはエルマーがずっと黙って止まっていたように見えたことだろう。
「いえ、何でもありません。母上、もう少しの辛抱です。父上達が戻ってくれば母上の身体も必ず良くなります。」
咳き込む母親の背をさすりながらエルマーが必死に不安を隠して励ます。
そんなエルマーを見て、母は申し訳無さそうな顔をしながらエルマーの手を握ると、
「ええ、きっとそうなるわ。それに私達は幸せものよ。ファーバー公をはじめ、こんなにも良くしてくれるたくさんの人達がいるのだから。」
エルマーの手を握りながら、母は大広間で団欒するファーバー公の家臣達とブラームス家の使用人達を眺めて目に涙を浮かべる。
そこにはハンナのお腹の中の赤ちゃんに語りかけるメイド長と夫のブラームス家の衛兵隊長の姿もあった。
「この騒動が落ち着いたら皆でハンナをお祝いしないとね。あの子ったらいつも私達のことばかりでちっとも我儘も言わないのだもの。」
母が指で目の端の涙を拭いながら、明るい未来に気持ちを馳せる。
「ええ、産まれてくるのが女の子だったら私の妹になりますね。」
「きっと男の子よ。可愛がってあげないとね。」
そんなやり取りをして母と目が合い、笑い合うとエルマーの耳にシャドウ・デーモンから不穏な報告が上がる。
ーーファーバー公が兵とただらぬ事を会話をしています。直接繋ぎます。
ーー何⁈
シャドウ・デーモンはエルマーの返答を待たずにラジオのチャンネルを変えるように瞬時にファーバー公と兵の会話に切り替えてエルマーの頭の中に直接繋ぐ。
「して、エルヴィン公から連絡は?」
「ありません。どうやら指揮を執ってるのは息子のフリッツとのことです。そのフリッツの軍がすでにファーバー城のすぐ近くまで迫ってきています。」
「なら話は早い。小僧をフリッツに引き渡してそれで私の仕事は終わりだ。」
頭に流れて来る信じられない会話にエルマーは滝のように汗を流して動揺する。
ーー嘘だ、嘘だと言ってくれ、、っ、、!
「この日のためにリスクを冒してヴィルマーを殺って小僧を誰よりも早く捕らえたのだ。ダールベルクには約束を守ってもらわねば。」
ーー父上を⁈ファーバー公が⁈
「奴の兄達と軍はどうします?かなりの手練れと聞き及んでいますが?」
「ダールベルク軍がそこまで来てるならアルフォンス達もとっくに討たれたのだろう。気にする必要は無い。」
ーー嘘だ!嘘だ!あり得ない!何かの悪い夢だ!
エルマーの頭は現実を直視できずに逃避していく。隣では母が穏やかな顔で美味しそうに朝食を食べている。
その母の様子を見て涙が頰を伝い流れてくる。
手は震え出して、悪寒が身体中を走り嫌な汗が背中から流れて来る。
「エルマー?どうしたの?」
母が優しい翡翠の瞳をエルマーに向けて、震える手を優しく包み込んでくる。
「では、エルマー以外の者達はどうします?」
シャドウ・デーモンが拾うファーバー公と兵の不穏な会話は現実を直視できないエルマーを待たずに進んでいく。
「エルマー以外は必要無い。全員殺せ。」
「分かりました。広間に居る者達に合図します。」
ドクンと強くエルマーの心臓が跳ねて、頭が現実に追い付かずに麻痺する。
突如大広間の扉がファーバー公の兵に大きな音を立てて閉められて、大広間に複数点在する蝋燭に魔法で火が灯る。
「あら?何かしらね?」
ハンナとブラームス家の衛兵隊長と談笑していたメイド長が呑気に火が灯った蝋燭に目を奪われている。
エルマーの手を優しく握る母は、異変に気づかずにエルマーに微笑んでいつものように無償の愛を伝える。
「エルマー愛してるわよ。貴方の側にはいつも母が居ることを忘れないでね。」
「母上!!」
背後に控えていたファーバー公の兵が合図を受けて騎士剣を抜き、エルマーの母の首を一太刀で切り落とす。
慈母のような美しい顔のまま母親の頭部はエルマーの前で胴体から落ちてゆき、大量の血が吹き出してエルマーに返り血を浴びせる。
母の首から流れた血が主賓席の机の上を赤く染めていく。
エルマーの時は止まり、瞳にはただ絶望と恐怖が広がっていく。
ファーバー公の城は東部の中心にあるブラームス家の城よりもさらに東の海を背にした絶壁の上にあり、難攻不落の東部の重要拠点として知られる天然の要塞だ。
ーー今頃はダールベルクの軍が無人のブラームス城に辿り着き地団駄を踏んでるだろうか?
エルマーはファーバー公に与えられた城の一室のベッドに横たわりながらそんなことを考える。
「きっと、旦那様も兄君達も無事ですわ。あの方達は強いですから。」
一緒にファーバー公の城まで連れてきたメイドのハンナがベッドの横の椅子に腰掛けながら、エルマーの考えを先読みして心配を打ち消そうと語りかける。
「わかってるよ、、、。」
疲れて眠くなる目蓋を擦りながらエルマーはハンナに心配かけまいと気丈に答える。
長い付き合いでエルマーが辛くても絶対に弱音を吐かないことを知るハンナは少し寂しそうに頷く。
そんなハンナの様子に少し罪悪感を感じたのかエルマーは無理やり話題を変える。
「そう言えば、お腹の赤ちゃんもうすぐ生まれるかな?」
椅子に腰掛けるハンナの大きくなったお腹を見てエルマーが純真な瞳で尋ねる。
「もうすぐだと思いますわ。この子最近ずっと中から蹴ってますの。生まれてきたら可愛がってあげて下さいね。」
自分を気にかける主にハンナは綺麗な顔を嬉しさでくしゃっとする。
エルマーが生まれた時から城で仕えているハンナは叱ってばかりのメイド長とは違って、いつもニコニコと笑顔を絶やさない美して優しいエルマーにとってもう1人の姉のような存在だ。
ーー昔はハンナと結婚するってよく言ってたっけ、、、、。
そのハンナに子供ができると知って幸せそうなハンナの様子に嬉しい反面、生まれてくる子どもにちょっとした嫉妬もある。
「そうするよ。でも、僕の事も忘れないでね。」
むくっと頬を膨らませてエルマーが背をハンナに向けて横向きにベッドに丸くなる。
その可愛らしい嫉妬にハンナはクスッと笑いながら長い睫毛を伏せて茶髪の髪を耳にかけながら微笑む。
ふと、エルマーがベッドの脇に置いてある蝋燭に照らされる小さな棚の壁に穴が空いてるのが目につく。
眠くなり薄れていく意識の中でボーっとその穴を見ていると、夢か現か穴からおぞましい芋虫のような異形の生き物が無数に這い出てくる。
その穴の奥は赤く燃え上がるような荒野と枯れた木々、暗黒の空が広がっておりまるで地獄のような景色だ。
「ひっ、、!」
芋虫の頭部は人間の老人のようで赤く黒々とした幼虫のような体を苦しそうに捩りながら、ボトボトと枕元の横にまで落ちてくる。
「おぉ、、、愛しき、、御方、、よ、、。」
しわがれたような声でたどたどしく無数の奇怪な芋虫が声を発しながらエルマーの眼前まで気持ち悪く這い寄って来る。
「我が、、主、、の、、愛しき、、御方、、よ、、、。」
エルマーはその奇怪な者達から目を離せずに驚愕に目を見開きながらじっと見つめることしかできない。
「邂逅、、の、時は、、近く、、いず、れ、お迎え、、に、上がりましょうぞ、、、。」
ウネウネとした動きで異形の芋虫達は更に近づき、エルマーの額に口づけをする。
「御印、を、ここに、、、。」
異形の芋虫を前にフッとエルマーの意識が途切れて眠りに落ちていく。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
強い日差しに重い目蓋を開けると夜が明けて朝を迎えた事に気づく。
右手に暖かさを感じて、ふと横を見るとハンナが身重の体で椅子に腰掛け眠ったままエルマーの手を握ってるのに気づく。
「ハンナ、、赤ちゃんがいるのに、、。」
エルマーは起き上がり、毛布を彼女に被せようとするとハンナは目を開けて欠伸をしながら大きく背伸びをする。
「エルマー様、、。おはようございます。」
ハンナがエルマーに起き抜けの挨拶をすると、エルマーが毛布を持ったまま固まってるのに気づき満面の笑みでからかう。
「あら、お優しいのですね。将来はきっと王都でも評判の女たらしになりますね。」
ハンナが笑いながら、エルマーの頬を手でさすりながら弟をからかう姉のように可愛がる。
「うるさい!ハンナこそ、、ずっと手を握ってたのか?」
ハンナが、んーっと再び背を伸ばしながらエルマーを横目に話し始める。
「エルマー様は昨日うなされてましたわ。何か悪い夢でも?」
エルマーはハンナの言葉に少し戸惑った様子で考え込む。
ーーあれはやっぱり夢か、、。妙に現実味があったけど、有り得ないか。
「いや、何でも無いよ、、、。」
少し様子のおかしいエルマーを心配そうに見ながらハンナは、今の危機的な状況がエルマーを不安にさせてるのだろうと勝手に勘違いして優しく彼の手を取る。
「ここにはエルマー様の味方が大勢います。さぁ、母君とファーバー公が待つ広間へ行きましょう。寝坊するとまたメイド長に叱られてしまいますわ。」
「それは嫌だ!」
やかましく怒るメイド長の姿を想像して、エルマーは急いで着替え始める。それをみてハンナはクスッと微笑みながらエルマーの着替えを手伝う。
姿見を見ながらサスペンダーをハンナにつけてもらい、装飾のなされた蝶ネクタイと豪華なローブを身につけて長くなった金色の髪を梳かしてもらうと、
「女の子みたいに可愛いですわ。もう少しで三つ編みもできそうですよ。」
ハンナが楽しそうに目を爛々と輝かせながらエルマーに要らぬ提案をする。
「ちょっと髪が長くなり過ぎたね。また今夜切ってくれる?」
エルマーはからかいには答えずに肩まで伸びた綺麗な艶のある髪を弄りながら後ろのハンナを見上げていつも通りに散髪を頼む。
「もっと伸ばして可愛くしましょうよ!絶対似合いますわ。目指せ王都一の美少女ですわ。」
ハンナは頬を膨らませながら抗議してエルマーをあらぬ方向に導こうとする。
ーー確かに女みたいだ。ブラームス家の男たるものこれではダメだ。
女の子のミディアムくらいに伸びた髪とエルマーが元々母親似で端正な女顔なのも手伝って姿見に映るのは美少女そのものだった。
「ほら、ファーバー公が待ってるんだろ?もう行くよハンナ。」
いつも通りハンナの話が長くなりそうな予感がしてエルマーはハンナの手を強引に引き部屋を出る。
ーー選定の儀からもう1ヶ月経った。今日こそはファーバー公から父上達の安否を聞ければいいが、、。
エルマーは暗い面持ちで木造りの階段を降りて大広間への廊下を身重のハンナと歩いて行く。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
大広間には長い机が幾つも置いてあり、ファーバー公の家臣と連れて来たきたブラームス家の使用人、衛兵等で溢れており皆それぞれに話しながら朝食をとっていた。
エルマーは大広間の壇上のファーバー公や母親など主要な者達の座る主賓席の大机でバルトルト・ファーバー公が座る上座の横に腰掛ける。
「おはようございます、エルマー様。昨夜はよく眠れましたか?」
ファーバー公が不健康そうな顔でウィンナーを口に運びながら、エルマーを横目に話しかける。
「あぁ、よく眠れたよ。ここに匿ってくれること改めて感謝するファーバー公。」
父も兄姉も居ない今エルマーは自分が当主の代わりだという自覚を持ってあえて強気な態度で接する。
ファーバー公が顔だけ動かして頷くと、エルマーは早くも本題に入ることにする。
「未だに父上や兄様達の安否は分からぬのか?貴殿は父上と共に選定の儀の場にいたのであろう?」
ファーバー公は無表情のまま鶏肉をフォークで刺して口元に運びながらエルマーの質問に淡々と答える。
「ええ、居ましたとも。しかし、神聖な選定の儀の最中に帝国兵が何処からか侵入してきて皆散り散りになりました。そのまま私は命辛々逃げてせめて貴方様を守らねばと、迎えに上がった次第です。
使い魔を放ち情報を集めていますがまだ皆様の安否は分かりませぬ。」
「帝国兵が⁈何故奴らが?ダールベルク家が奴らを招き寄せたのか?」
エルマーが立ち上がり必死に食いつくのをファーバー公は冷たい目で見ながら、食事で汚れた口をナプキンで丁寧に拭き続きを話す。
「さぁ?帝国とダールベルク家に繋がりがあるかは判りかねますが、、。最後にお父上ヴィルマー様とアメリア様を見たときは諸侯に守れながらあの場を離脱していましたのでご存命かと。兄君達も今頃王都で帝国兵達を掃討し終わってる頃でしょう。」
エルマーはゴクリと唾を飲みながらファーバー公の話に耳を傾ける。
「そろそろ父君や兄君達がお迎えに来るかもしれませんね。それまでの間はどうぞ、我が城でゆっくり休まれては?」
普段笑わないファーバー公が不自然な笑みを浮かべながらそっとエルマーの肩に手を置き椅子に座らせる。
「あぁ、そうだな、、。父上達ならきっと、、大丈夫だ、、。」
本心では納得いかないままエルマーは自分に無理やり言い聞かせて落ち着こうとする。
「さぁ、まずはお食事をお召し上がり下さい。痩せてしまってはお父上達に会った時に心配を掛けますぞ。」
ファーバー公が不自然に話題を切り上げてエルマーに豪華な朝食を進めると、ファーバー公の臣下らしき兵が近づいて来て彼に小さく耳打ちする。
すると、ファーバー公は再び無表情に戻り立ち上がり、エルマーに頭を下げてこの場を離れることを謝罪する。
「申し訳無い。臣下と城の防衛について重要な話があるのでここで失礼します。無礼をお許しくださいエルマー様。」
「あぁ、構わない。朝食は有難く頂くよ。」
ニコッとまた貼り付けたような笑みを浮かべてファーバー公は臣下と共に大広間を後にする。
するとエルマーのフォークを持つ手の影から不気味な口が開き、思念波のようなものでエルマーの頭の中に直接語りかけてくる。
ーー何だ?影悪魔シャドウ・デーモン?
それは、エルマーが使役する低位の悪魔達の一つで、この城に来てからも変わらずに情報収集と影の護衛に使っている。
ーーあの男、嘘をついています。
ーー何だと⁈
シャドウ・デーモンの囁きに耳を貸すと不穏な答えが返ってきた。
ーー説明しろ。どういうことだ?
ーーはい。私の分体が王都と東部の境界で大きな戦があったことを確認しました。奴はそれを知ってるはずです。
エルマーの額から冷や汗が流れて、心臓の鼓動が早まる。
ーーファーバー公はそれを隠していると?
ーーはい。それに先程の会話からは嘘を吐く者の特有の匂いがしました。我ら悪魔の鼻を誤魔化すことは叶いませぬ。
エルマーにはありとあらゆる最悪の可能性が頭に浮かび漠然とした不安が襲ってくる。
しかし、それを信じたく無いエルマーの決断は鈍る。
ーーもう少し探ってくれ。お前はファーバー公について彼の会話を逐一僕に届けろ。
ーー御意。
手の影から悪魔の口は消えて、影は人知れずに大広間の人々の影から影へ飛んでいき、ファーバー公の元まで床を這いずり回って行く。
「エルマー?大丈夫なの?顔色が悪いわよ。」
ふと気づくと隣に座っていた母が心配そうにエルマーを覗き込むのに気がつく。思念波での会話に集中していたので母からはエルマーがずっと黙って止まっていたように見えたことだろう。
「いえ、何でもありません。母上、もう少しの辛抱です。父上達が戻ってくれば母上の身体も必ず良くなります。」
咳き込む母親の背をさすりながらエルマーが必死に不安を隠して励ます。
そんなエルマーを見て、母は申し訳無さそうな顔をしながらエルマーの手を握ると、
「ええ、きっとそうなるわ。それに私達は幸せものよ。ファーバー公をはじめ、こんなにも良くしてくれるたくさんの人達がいるのだから。」
エルマーの手を握りながら、母は大広間で団欒するファーバー公の家臣達とブラームス家の使用人達を眺めて目に涙を浮かべる。
そこにはハンナのお腹の中の赤ちゃんに語りかけるメイド長と夫のブラームス家の衛兵隊長の姿もあった。
「この騒動が落ち着いたら皆でハンナをお祝いしないとね。あの子ったらいつも私達のことばかりでちっとも我儘も言わないのだもの。」
母が指で目の端の涙を拭いながら、明るい未来に気持ちを馳せる。
「ええ、産まれてくるのが女の子だったら私の妹になりますね。」
「きっと男の子よ。可愛がってあげないとね。」
そんなやり取りをして母と目が合い、笑い合うとエルマーの耳にシャドウ・デーモンから不穏な報告が上がる。
ーーファーバー公が兵とただらぬ事を会話をしています。直接繋ぎます。
ーー何⁈
シャドウ・デーモンはエルマーの返答を待たずにラジオのチャンネルを変えるように瞬時にファーバー公と兵の会話に切り替えてエルマーの頭の中に直接繋ぐ。
「して、エルヴィン公から連絡は?」
「ありません。どうやら指揮を執ってるのは息子のフリッツとのことです。そのフリッツの軍がすでにファーバー城のすぐ近くまで迫ってきています。」
「なら話は早い。小僧をフリッツに引き渡してそれで私の仕事は終わりだ。」
頭に流れて来る信じられない会話にエルマーは滝のように汗を流して動揺する。
ーー嘘だ、嘘だと言ってくれ、、っ、、!
「この日のためにリスクを冒してヴィルマーを殺って小僧を誰よりも早く捕らえたのだ。ダールベルクには約束を守ってもらわねば。」
ーー父上を⁈ファーバー公が⁈
「奴の兄達と軍はどうします?かなりの手練れと聞き及んでいますが?」
「ダールベルク軍がそこまで来てるならアルフォンス達もとっくに討たれたのだろう。気にする必要は無い。」
ーー嘘だ!嘘だ!あり得ない!何かの悪い夢だ!
エルマーの頭は現実を直視できずに逃避していく。隣では母が穏やかな顔で美味しそうに朝食を食べている。
その母の様子を見て涙が頰を伝い流れてくる。
手は震え出して、悪寒が身体中を走り嫌な汗が背中から流れて来る。
「エルマー?どうしたの?」
母が優しい翡翠の瞳をエルマーに向けて、震える手を優しく包み込んでくる。
「では、エルマー以外の者達はどうします?」
シャドウ・デーモンが拾うファーバー公と兵の不穏な会話は現実を直視できないエルマーを待たずに進んでいく。
「エルマー以外は必要無い。全員殺せ。」
「分かりました。広間に居る者達に合図します。」
ドクンと強くエルマーの心臓が跳ねて、頭が現実に追い付かずに麻痺する。
突如大広間の扉がファーバー公の兵に大きな音を立てて閉められて、大広間に複数点在する蝋燭に魔法で火が灯る。
「あら?何かしらね?」
ハンナとブラームス家の衛兵隊長と談笑していたメイド長が呑気に火が灯った蝋燭に目を奪われている。
エルマーの手を優しく握る母は、異変に気づかずにエルマーに微笑んでいつものように無償の愛を伝える。
「エルマー愛してるわよ。貴方の側にはいつも母が居ることを忘れないでね。」
「母上!!」
背後に控えていたファーバー公の兵が合図を受けて騎士剣を抜き、エルマーの母の首を一太刀で切り落とす。
慈母のような美しい顔のまま母親の頭部はエルマーの前で胴体から落ちてゆき、大量の血が吹き出してエルマーに返り血を浴びせる。
母の首から流れた血が主賓席の机の上を赤く染めていく。
エルマーの時は止まり、瞳にはただ絶望と恐怖が広がっていく。
あなたにおすすめの小説
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。