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第一章 運命の出会いと王国動乱篇
第十四話 E④ 夜明けの邂逅
ファーバー城の大広間、その貴賓席に座っていたブラームス家の奥方ヘレナ・ブラームスがファーバー公の兵士に突如首を切り落とされて大広間は一瞬静まり返る。
隣に立っていたエルマーの顔には母親のヘレナの返り血が掛かっており、恐怖と絶望で竦み上がって動けないでいる。
一拍置いてブラームス家のメイド長がやっと異常な事態に気づき悲鳴を上げると、隣で朝食を共にしていたファーバー公の衛兵に脇腹をナイフで素早く何度も刺される。
痛ましい叫び声を上げながらメイド長は倒れて血を流しながら床をのたうち回る。
「何をっ、、、⁈」
ハンナは両脇からファーバー公の衛兵に羽交い締めにされ、手斧で赤子を宿した腹を滅多打ちにされる。
「あ、、っ、!がっ、やめ、やめてぇえ、、ええ!!」
訳もわからぬままハンナはなんとか腹を庇おうとしながら容赦なく滅多打ちにされて息絶えていく。
「貴様らぁああああっ!」
夫の衛兵隊長が怒りと悲しみに我を忘れて騎士剣を振り回してファーバー公の衛兵に斬りかかるが数で勝る敵に背後からゼロ距離で炎魔法をぶつけられ、悲鳴を上げながら火ダルマになりのたうち回る。
大広間にいたブラームス家の使用人と衛兵達は不意打ちにより先程まで食事を共にしていたファーバー公の手の者により囲まれ、刺殺され、嬲り殺され、絞殺されていく。
平和な時が流れていた大広間には悲鳴と絶叫がこだまする地獄絵図へと変わっていく。
初めて見るこの世の地獄を具現化したような光景に、大切な人達が惨たらしく殺されていく様に、エルマーは全身を震わせて涙を流しながら一歩も動けなくなる。
「母上、、ハンナ、、なんで、、?、」
ーーなんで⁈なんで⁈なんで⁈なにこれ⁈嘘だよね⁈誰か冗談だと言ってよ!⁈
あまりに現実味の無い嘘のような凄惨な光景にエルマーの心は受け入れることが出来ずに壊れていく。
「エルマーだな?お前は生かしておけとの命令だ。」
屈強な熊のような髭を生やしたファーバー公の兵の1人がエルマーを捕らえようとゆっくりと近づいて来る。
「バルトルト様も酷な事をする。」
兵がいっそ憐んだような目でエルマーを見ながら豪華なローブの胸倉を掴もうと手を伸ばしてくる。
エルマーは恐怖で体を竦めながら、涙を流しながらただ近づいてくる男を眺めることしかできない。
「ぅおお⁈なんだ⁈」
突如、エルマーとファーバー兵の間に実体化したレッサーデーモンが現れてその豪腕で屈強なファーバー兵を締め上げる。
「ぐぁ、、っ、、てめぇ、、っ、!!」
180cmは優に超える大柄なファーバー兵を宙に持ち上げてレッサーデーモンは更に力を込めて絞め殺す。
ゴキッと鈍い首が折れる音がした後、ファーバー兵は大広間の床に打ち捨てられる。
「お前、、、何で、、?、」
呆然とただ佇む主を一瞥すると、レッサーデーモンは命令を受けてもいないのに勝手にエルマーを抱え上げて絶叫と悲鳴が響く大広間からの脱出を図る。
エルマーはなされるがままにレッサーデーモンの肩に担がれてその身を揺らす。
「ブラームスの小僧を逃すな!」
「外に逃げるぞ⁈」
レッサーデーモンとエルマーに気づいたファーバー兵達が殺戮の手を止めて、立ち上がりエルマーとレッサーデーモンに攻撃魔法を放ってくる。
レッサーデーモンは背中から炎と土の杭、雷撃を浴びながら大広間の3つあるうちの1つ、貴賓席から最も近い扉に突進して強引に突破してエルマーを廊下に逃す。
「主よ、、どうかお逃げに、、っ、、!」
倒れながら凶悪な山羊の顔をエルマーに向けてレッサーデーモンはエルマーに懇願する。
「嫌だ、、っ、、!お前も一緒に、、!」
エルマーが一年間を共に過ごした生真面目な忠義者のレッサーデーモンに手を伸ばすと、雷撃と氷の氷柱が降り注ぎレッサーデーモンはその存在を消滅させられる。
「追え!生け捕りだ!傷はつけるなよ!」
冷酷な狩人のような形相でファーバー兵達が血に濡れた床の上を走りエルマーめがけて駆けてくる。
「ひっ、、、!」
未だ足がエルマーの意思に反して動かず尻餅をついたまま立ち上がれない。
その時、エルマーの床に伸びる影からシャドウ・デーモン2体がニュッと飛び出して人の形を象り、両脇から無理矢理エルマーを抱き抱えて立たせるとファーバー兵に背を向けて走り出す。
「お前たち、、、⁈」
後ろから迫るファーバー兵達には突如現れた低位の悪魔達が群がり、けたたましい不気味な声を上げながらファーバー兵達に喰らいつく。
「我が主よ。時を稼ぎます故どうかお逃げを。」
肩を支えていたシャドウデーモンの一体がするりと離れて床を這いながら他の悪魔と一緒にファーバー兵に襲いかかる。
ファーバー兵の悲鳴と魔法を放つ轟音が背後の廊下に響き、遠くなっていく。
ーー父上、母上!兄様、ハンナ!みんな、、、っ、、!
使役する悪魔達に窮地から助けられながら、走馬灯のように失われた幸せな記憶が頭を駆け抜けていく。
ーー厳つい顔とは裏腹にエルマーにだけ甘く優しい父ヴィルマー。誕生日にエルマーの目当ての魔導書を買うのに日暮れまでずっと付き合ってくれた。
ーー穏やかで美しい母上。いつも優しい笑顔で皆には内緒で悪戯っぽい笑顔でよくエルマーの好物のケーキを作ってくれた。
ーー凛々しくも強いアメリア姉様。幼い時はよく寝るまで本を読んでくれて優しく頭を撫でてくれた。
ーーエルマーの憧れのアルフォンスとケヴィン。かっこよく宮廷魔法騎士団の制服を着こなし、いつもエルマーの遊びと稽古に付き合ってくれた。
ーーずっと一緒に過ごしてきた優しいハンナ。怖くて眠れない夜はいつも一緒にいてくれた。生まれてくる赤ちゃんをずっと楽しみにしていた。
次々と今は亡き大切な人達の顔が頭を過っていく。頭に浮かぶ皆の顔は笑顔ばかりだった。
エルマーは今更ながら自分が幸せだったのだと痛感する。
ーー無駄にはできないっ、、!命を繋いでくれた皆のためにも、、っ、、!
心が決壊して、気丈に振る舞っていた糸も切れて絶望に涙を流しながらも足を無理矢理動かして目的地も無く走り続ける。
横を走るシャドウ・デーモンが何かを察知したのか急転回してエルマーの背後に壁のように立つと、強烈な風攻撃魔法が飛んできて細切れにされて消滅する。
「エルマー様!何処へ行くのです?あまり私の手を煩わせないでもらいたい。」
廊下の奥からエルマーの使役する低位の悪魔達を熟練の風魔法で軽々と屠りながら、ゆっくりとバルトルト・ファーバーが歩いて来る。
ーーファーバーっ!!お前だけは許さないっ
怒りと悲しみに瞳を暗くしながらバルトルトを睨みつけて、逃げ込める場所を探す。
「チッ。小僧がっ!」
バルトルトが再び強力な風攻撃魔法を放って廊下の床を吹き飛ばして、破片がエルマーを傷つけて血が流れる。
「うっ、、!ぐ!」
衝撃で数メートル先まで吹き飛び身体中を強打して擦り傷だらけになる。
ー一とにかく、外に、、っ、、!
全身を傷ませながら言う事を聞かない足を無理矢理動かして外に繋がる扉を開き、飛び出す。
外は穏やかな潮風が吹いており、先程の惨たらしい惨劇とは場違いな程穏やかな良い天気だ。
ーーあそこだ、、っ、、
厩を挟んで向かうにある小さな蔵の扉が空いてるのを見つけて駆け出す。
後ろを振り返るとバルトルトが余裕の態度でゆっくりと狩りを楽しむように歩いている。
「温室育ちの貴方に本物の魔法士の血みどろの戦いというものを教えて差し上げますよ。」
蔵に駆け込むとそこは長年使われていないのか、埃まみれで高い位置にある窓からの陽の日差しだけが頼りで全体は暗く、物で溢れている。
その中で蔵の床の中心に古い召喚の魔法陣が描かれてあるのが目につく。使われてない本や酒樽、刀剣の山も魔法陣を避けて散らばっていたためそれは一際目立つ。
ーーこのままじゃ終われないっ!奴に、、っ、、一矢報いるまでは、、っ、、!
後先の事や、リスクを考える余裕はもうエルマーには無かった。
あるのは恐怖と絶望、怒りと憎しみ、悲しみのごちゃまぜの負の感情の坩堝。
自らの血を魔法陣に垂らして、上位の悪魔を呼び出す詠唱を唱え始める。
10歳の少年が上位悪魔を呼び出すなど本来なら不可能だが、エルマーには幸か不幸か生まれついての膨大な魔力と、召喚魔法の弛まぬ研鑽の積み重ねがあった。
それらが不可能を可能にし、血を飲み込んだ魔法陣は赤く不気味に光り始める。
ーー魂でも残りの寿命全てでも、身体の全てでもなんでも払ってやる!
「闇より暗く、光を貪る獣。
我が血肉を餞として
悪しき欲望を満たさん。
地獄の業火より生まれし者!我が求めに応じてその姿を現せ!」
エルマーが詠唱を唱え終えると赤い不気味な光が辺りを包み込み、燃え盛る地獄の業火の音と鎖をノコギリで削るようなうるさい不快音、地の底から魂を揺さぶるようなおぞましい声が響き渡り蔵の中を不気味に揺らす。
赤い光が輝きを失い、朝露のような静かな霧が辺りを包むと、その中に不気味な人影がいるのを確認する。
ーー成功した⁈
霧が晴れるとそこに立っていたのは、手に苦悶の表情を浮かべた悪魔の頭部を持つ返り血で真っ赤に純白のドレスを染めた黒髪の美貌の花嫁だった。
隣に立っていたエルマーの顔には母親のヘレナの返り血が掛かっており、恐怖と絶望で竦み上がって動けないでいる。
一拍置いてブラームス家のメイド長がやっと異常な事態に気づき悲鳴を上げると、隣で朝食を共にしていたファーバー公の衛兵に脇腹をナイフで素早く何度も刺される。
痛ましい叫び声を上げながらメイド長は倒れて血を流しながら床をのたうち回る。
「何をっ、、、⁈」
ハンナは両脇からファーバー公の衛兵に羽交い締めにされ、手斧で赤子を宿した腹を滅多打ちにされる。
「あ、、っ、!がっ、やめ、やめてぇえ、、ええ!!」
訳もわからぬままハンナはなんとか腹を庇おうとしながら容赦なく滅多打ちにされて息絶えていく。
「貴様らぁああああっ!」
夫の衛兵隊長が怒りと悲しみに我を忘れて騎士剣を振り回してファーバー公の衛兵に斬りかかるが数で勝る敵に背後からゼロ距離で炎魔法をぶつけられ、悲鳴を上げながら火ダルマになりのたうち回る。
大広間にいたブラームス家の使用人と衛兵達は不意打ちにより先程まで食事を共にしていたファーバー公の手の者により囲まれ、刺殺され、嬲り殺され、絞殺されていく。
平和な時が流れていた大広間には悲鳴と絶叫がこだまする地獄絵図へと変わっていく。
初めて見るこの世の地獄を具現化したような光景に、大切な人達が惨たらしく殺されていく様に、エルマーは全身を震わせて涙を流しながら一歩も動けなくなる。
「母上、、ハンナ、、なんで、、?、」
ーーなんで⁈なんで⁈なんで⁈なにこれ⁈嘘だよね⁈誰か冗談だと言ってよ!⁈
あまりに現実味の無い嘘のような凄惨な光景にエルマーの心は受け入れることが出来ずに壊れていく。
「エルマーだな?お前は生かしておけとの命令だ。」
屈強な熊のような髭を生やしたファーバー公の兵の1人がエルマーを捕らえようとゆっくりと近づいて来る。
「バルトルト様も酷な事をする。」
兵がいっそ憐んだような目でエルマーを見ながら豪華なローブの胸倉を掴もうと手を伸ばしてくる。
エルマーは恐怖で体を竦めながら、涙を流しながらただ近づいてくる男を眺めることしかできない。
「ぅおお⁈なんだ⁈」
突如、エルマーとファーバー兵の間に実体化したレッサーデーモンが現れてその豪腕で屈強なファーバー兵を締め上げる。
「ぐぁ、、っ、、てめぇ、、っ、!!」
180cmは優に超える大柄なファーバー兵を宙に持ち上げてレッサーデーモンは更に力を込めて絞め殺す。
ゴキッと鈍い首が折れる音がした後、ファーバー兵は大広間の床に打ち捨てられる。
「お前、、、何で、、?、」
呆然とただ佇む主を一瞥すると、レッサーデーモンは命令を受けてもいないのに勝手にエルマーを抱え上げて絶叫と悲鳴が響く大広間からの脱出を図る。
エルマーはなされるがままにレッサーデーモンの肩に担がれてその身を揺らす。
「ブラームスの小僧を逃すな!」
「外に逃げるぞ⁈」
レッサーデーモンとエルマーに気づいたファーバー兵達が殺戮の手を止めて、立ち上がりエルマーとレッサーデーモンに攻撃魔法を放ってくる。
レッサーデーモンは背中から炎と土の杭、雷撃を浴びながら大広間の3つあるうちの1つ、貴賓席から最も近い扉に突進して強引に突破してエルマーを廊下に逃す。
「主よ、、どうかお逃げに、、っ、、!」
倒れながら凶悪な山羊の顔をエルマーに向けてレッサーデーモンはエルマーに懇願する。
「嫌だ、、っ、、!お前も一緒に、、!」
エルマーが一年間を共に過ごした生真面目な忠義者のレッサーデーモンに手を伸ばすと、雷撃と氷の氷柱が降り注ぎレッサーデーモンはその存在を消滅させられる。
「追え!生け捕りだ!傷はつけるなよ!」
冷酷な狩人のような形相でファーバー兵達が血に濡れた床の上を走りエルマーめがけて駆けてくる。
「ひっ、、、!」
未だ足がエルマーの意思に反して動かず尻餅をついたまま立ち上がれない。
その時、エルマーの床に伸びる影からシャドウ・デーモン2体がニュッと飛び出して人の形を象り、両脇から無理矢理エルマーを抱き抱えて立たせるとファーバー兵に背を向けて走り出す。
「お前たち、、、⁈」
後ろから迫るファーバー兵達には突如現れた低位の悪魔達が群がり、けたたましい不気味な声を上げながらファーバー兵達に喰らいつく。
「我が主よ。時を稼ぎます故どうかお逃げを。」
肩を支えていたシャドウデーモンの一体がするりと離れて床を這いながら他の悪魔と一緒にファーバー兵に襲いかかる。
ファーバー兵の悲鳴と魔法を放つ轟音が背後の廊下に響き、遠くなっていく。
ーー父上、母上!兄様、ハンナ!みんな、、、っ、、!
使役する悪魔達に窮地から助けられながら、走馬灯のように失われた幸せな記憶が頭を駆け抜けていく。
ーー厳つい顔とは裏腹にエルマーにだけ甘く優しい父ヴィルマー。誕生日にエルマーの目当ての魔導書を買うのに日暮れまでずっと付き合ってくれた。
ーー穏やかで美しい母上。いつも優しい笑顔で皆には内緒で悪戯っぽい笑顔でよくエルマーの好物のケーキを作ってくれた。
ーー凛々しくも強いアメリア姉様。幼い時はよく寝るまで本を読んでくれて優しく頭を撫でてくれた。
ーーエルマーの憧れのアルフォンスとケヴィン。かっこよく宮廷魔法騎士団の制服を着こなし、いつもエルマーの遊びと稽古に付き合ってくれた。
ーーずっと一緒に過ごしてきた優しいハンナ。怖くて眠れない夜はいつも一緒にいてくれた。生まれてくる赤ちゃんをずっと楽しみにしていた。
次々と今は亡き大切な人達の顔が頭を過っていく。頭に浮かぶ皆の顔は笑顔ばかりだった。
エルマーは今更ながら自分が幸せだったのだと痛感する。
ーー無駄にはできないっ、、!命を繋いでくれた皆のためにも、、っ、、!
心が決壊して、気丈に振る舞っていた糸も切れて絶望に涙を流しながらも足を無理矢理動かして目的地も無く走り続ける。
横を走るシャドウ・デーモンが何かを察知したのか急転回してエルマーの背後に壁のように立つと、強烈な風攻撃魔法が飛んできて細切れにされて消滅する。
「エルマー様!何処へ行くのです?あまり私の手を煩わせないでもらいたい。」
廊下の奥からエルマーの使役する低位の悪魔達を熟練の風魔法で軽々と屠りながら、ゆっくりとバルトルト・ファーバーが歩いて来る。
ーーファーバーっ!!お前だけは許さないっ
怒りと悲しみに瞳を暗くしながらバルトルトを睨みつけて、逃げ込める場所を探す。
「チッ。小僧がっ!」
バルトルトが再び強力な風攻撃魔法を放って廊下の床を吹き飛ばして、破片がエルマーを傷つけて血が流れる。
「うっ、、!ぐ!」
衝撃で数メートル先まで吹き飛び身体中を強打して擦り傷だらけになる。
ー一とにかく、外に、、っ、、!
全身を傷ませながら言う事を聞かない足を無理矢理動かして外に繋がる扉を開き、飛び出す。
外は穏やかな潮風が吹いており、先程の惨たらしい惨劇とは場違いな程穏やかな良い天気だ。
ーーあそこだ、、っ、、
厩を挟んで向かうにある小さな蔵の扉が空いてるのを見つけて駆け出す。
後ろを振り返るとバルトルトが余裕の態度でゆっくりと狩りを楽しむように歩いている。
「温室育ちの貴方に本物の魔法士の血みどろの戦いというものを教えて差し上げますよ。」
蔵に駆け込むとそこは長年使われていないのか、埃まみれで高い位置にある窓からの陽の日差しだけが頼りで全体は暗く、物で溢れている。
その中で蔵の床の中心に古い召喚の魔法陣が描かれてあるのが目につく。使われてない本や酒樽、刀剣の山も魔法陣を避けて散らばっていたためそれは一際目立つ。
ーーこのままじゃ終われないっ!奴に、、っ、、一矢報いるまでは、、っ、、!
後先の事や、リスクを考える余裕はもうエルマーには無かった。
あるのは恐怖と絶望、怒りと憎しみ、悲しみのごちゃまぜの負の感情の坩堝。
自らの血を魔法陣に垂らして、上位の悪魔を呼び出す詠唱を唱え始める。
10歳の少年が上位悪魔を呼び出すなど本来なら不可能だが、エルマーには幸か不幸か生まれついての膨大な魔力と、召喚魔法の弛まぬ研鑽の積み重ねがあった。
それらが不可能を可能にし、血を飲み込んだ魔法陣は赤く不気味に光り始める。
ーー魂でも残りの寿命全てでも、身体の全てでもなんでも払ってやる!
「闇より暗く、光を貪る獣。
我が血肉を餞として
悪しき欲望を満たさん。
地獄の業火より生まれし者!我が求めに応じてその姿を現せ!」
エルマーが詠唱を唱え終えると赤い不気味な光が辺りを包み込み、燃え盛る地獄の業火の音と鎖をノコギリで削るようなうるさい不快音、地の底から魂を揺さぶるようなおぞましい声が響き渡り蔵の中を不気味に揺らす。
赤い光が輝きを失い、朝露のような静かな霧が辺りを包むと、その中に不気味な人影がいるのを確認する。
ーー成功した⁈
霧が晴れるとそこに立っていたのは、手に苦悶の表情を浮かべた悪魔の頭部を持つ返り血で真っ赤に純白のドレスを染めた黒髪の美貌の花嫁だった。
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