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一生分の羞恥心を使い果たしました
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(寒っ…)
意識がふと上がってきて最初に感じたのは、肩から背中にかけて感じた冷たい空気だった。寒い程のそれから逃れるように、美緒はすぐ側に感じた温もりにもぞもぞと頬をすり寄せると、望んでいた温もりを得た事に満足してほうっと息を吐いた。肩に感じていた寒さが消えて、何だかいい匂いがする…
「ヤバい…可愛すぎ…」
頭上から聞こえた呟きに、何だろう…とぼうっとしていた頭がのろのろと動き始めて、美緒はゆるゆると目を開いた。視界いっぱいに映ったのは肌色で、何で肌色…?と思ったところで意識が弾けるように覚醒して、美緒は身を強張らせた。
(…っ!)
「あ~起きた、か?」
人間、想定外すぎると声すらも出なくなるらしい…目を覚ました美緒の変化に気が付いたのか、掠れ気味の声が下りてくるのと同時に、頭を優しい手つきで撫でられた。声で小林らしいと分かったが、声色も手つきも酷く甘い気がする。どうやら自分は小林と向かい合い抱き合うように寝ていた、らしい…自分が頬を寄せたのは小林の筋肉がついた胸だし、首の下と背中に体温を感じるから、多分腕なのだろう…しかも…目の前の光景と肌に触れる感触から、お互いに服を…着ていないように感じられた。更に昨夜の一連の出来事が一気に押し寄せて来ると、恥ずかしさが押し寄せてきて頭の中が真っ白になった。
「おはよう、美緒」
「お…はよ……」
掠れ気味の甘ったるい声で当たり前のように挨拶されてしまった美緒は、とっさに返してしまったが、言ってから失敗した…と多大に後悔した。これで起きたのがばれてしまったからだ。一体どんな顔で接しろと…と明るいのに目の前が暗くなる気がした。動きたいのにどうしていいのかわからず、美緒は途方に暮れて動けなかった。
「…美緒?」
「ひ、ひゃい?」
暫く固まったまま動かずにいた美緒に焦れたのか、小林に名を呼ばれたが、混乱の極みにいた美緒は思わず噛んでしまった。プッと小林が吹き出すのが聞こえて、益々羞恥が増した。こんな場面で噛むな自分!と思うが後の祭りだ。そして多分、今の自分は顔が赤くなっているだろう…そう思うと、益々顔を上げる事が出来ない。しかも服を着ていないとか、初心者には刺激があり過ぎるだろう…
「みーお?ほら、可愛い顔みせて」
ギャー何その言い方!やめろ―!と美緒の心の中はとっくに混乱の極みだった。とっくにキャパを超えていて、叫ぶ余裕すら失われていた。顎に手をかけられて強制的に顔を上げられ、ぎこちなく合わせた視線の先には…やっぱり美緒好みのイケメンがいた。朝から色気駄々洩れとか公序良俗違反だろう…刺激が強すぎて殺す気なのか…いや、心臓が弱かったらもう死んでるかもしれない…美緒の思考は混乱のせいで妙に現実的で、それでいて明後日の方向に飛んでいた。目を逸らすも、まじまじと見られているのが分かり、一層羞恥心に火をつけた。もう色々無理過ぎて居たたまれず、美緒は視線をさまよわせた。
「あ~お前、ほんと可愛い…反則…」
「な…っ…」
「顔、真っ赤だし。その初々しい反応、マジヤバイ…」
「…っ…!」
額にキスを落としてから、ぎゅっと抱きしめる腕に力を込めた小林に、美緒は益々羞恥心で溺死寸前だった。元よりしおらしく振舞う事も出来ない性分なだけに、可愛いと言われてもどういう態度をすればいいのかがわからないし、しかも顔が赤いとはっきり指摘されてしまえば恥ずかしいだけでなく何かに負けてしまったような気がする。抱きしめられた事で小林の身体とより密着する事になってしまったが、異性の素肌は刺激が強すぎて精神的に色々と抉られた気分になった。
「やっぱ…無理…」
「…な、何が…」
「一回じゃ…足りない」
「え?あ、あの…」
何を…と美緒が戸惑っている間に、小林が拘束している腕を離したと思ったら、ゆっくりと上から覆いかぶさってきた。見上げれば視界に入った上半身は裸で、美緒の予想が悪い意味で当たっている事を示していた。服の上からはわからなかったが、思った以上に筋肉が付いている様はしなやかな獣のようだ。表情が酷く嬉しそうだが目が血走っているように見えて、危険な予感しかしなかった。
「あ、あの…」
「何?」
「何って…」
「あ~その顔、すげぇそそる…」
「は?え?」
状況を理解しきれなかった美緒だが、さすがにここまでくると小林が何をしようとしているのかを察したが、既に逃げ道はなかった。
「ぃっ!」
いきなり蜜壺に何かが触れたのを感じて、美緒はヒリヒリする痛みに顔をしかめた。あ~やっぱ痛いかと頭上で小林の声がしたが、やっぱりとか言うならやるなとの想いを込めて睨みつけると、小林は酷く嬉しそうに悪い悪いと謝罪にもならない謝罪の言葉を口にした。わかっているなら触るな、そしてもう離せ、そして帰らせろと思う。
「あ~お前可愛すぎ。ところで今日の予定なんだけど…このまま抱きつぶされるのと出かけるの、どっちがいい?」
優し気な声と視線で、でも全く優しさの感じられない内容を投下した男を、美緒はまじまじと見つめた。
抱きつぶされるか、一緒に出掛けるかの二択を迫られた美緒は、第三の選択肢として家に帰ると主張したが、それはダメの一言で却下された。何その横暴…私の人権どこ行った?と美緒は理不尽に思ったが、小林は選べないなら俺が決めると言い出したため、美緒は慌てて出かける方を選んだ。
そもそも処女相手に抱きつぶすとか物騒過ぎるだろう…それ以前に自分は付き合う事にも納得していないのに、どうしてこうなっているのか…流されてしまった自分も迂闊だったが、相手の言動が想定外すぎて理解出来ず、その結果が今なのだと思う。誰もが憧れるイケメンに好かれている事が納得できない美緒は、何だか得体のしれないものを相手にしている様な不安を感じた。
(…怒れよ、自分…)
取りあえず一人になりたかった美緒は、バスルームに逃げ込んだ。シャワーを浴びると言うと小林は、それならお湯に浸かった方がいいと言ってお湯を張ってしまった。昨夜もお湯張ったばかりなのに…と、庶民の美緒は勿体なく思ったが、それでも足腰は立たないし全身筋肉痛の上、喉も痛くて声もガラガラだ。このまま放っておくとエアコンの影響もあって風邪をひきそうだったため、有難くお湯に浸かる事にした。
お湯に浸かりながら美緒は、自分自信に腹を立てていた。小林に話をすると言われてここに来たが、そんな訳ないじゃないか自分…と危機管理の甘さに我ながら幻滅していたのだ。いくら見た目が好みど真ん中のイケメンだからって、流され過ぎだろう…
それに、恥ずかしさに負けて小林に何も言えなかった自分も腹立たしかった。どうしてあんな事をしたのか、その理由を聞く事も出来ず、小林にからかわれて遊ばれていただけだった。相手は百戦錬磨の猛者とも言えるだけに敵う相手ではないが、それにしたってもう少し毅然とした態度がとれた筈だ。自分の不甲斐なさはなけなしのプライドを大きく傷つけてしまった事が美緒の怒りを倍増させていた。
更に腹立たしいのは、怒りの矛先が小林ではなく自分という事だった。こういう場合、同意もなく事に及んだ小林が確実に悪い筈なのだが、今美緒が腹を立てているのは自分自身に対してだった。自分の甘さに対してもあるが、自分への怒りの度合いが高いのは小林を無意識に庇っているのではないか、実は自分はこうなって喜んでいるのではないか…との思いがよぎったからだ。それはつまり、自分が小林を憎からず思っているという事で、その感情は自分自身を裏切っているように感じたのだ。この相反する感情が気持ち悪くて、より一層美緒を不快にさせていた。
(きっとあの顔が曲者なんだ…)
結局のところ、美緒は小林のあの顔に完全にやられていた。好みど真ん中の顔は凶器だ、と思う。もし同じ事を違う顔の男がやってきたら、確実に断っていただろう。元より男性不信を拗らせているのに、こうも易々と小林のいい様にされているのは、ひとえにあの顔のせいだと美緒は結論づけた。
意識がふと上がってきて最初に感じたのは、肩から背中にかけて感じた冷たい空気だった。寒い程のそれから逃れるように、美緒はすぐ側に感じた温もりにもぞもぞと頬をすり寄せると、望んでいた温もりを得た事に満足してほうっと息を吐いた。肩に感じていた寒さが消えて、何だかいい匂いがする…
「ヤバい…可愛すぎ…」
頭上から聞こえた呟きに、何だろう…とぼうっとしていた頭がのろのろと動き始めて、美緒はゆるゆると目を開いた。視界いっぱいに映ったのは肌色で、何で肌色…?と思ったところで意識が弾けるように覚醒して、美緒は身を強張らせた。
(…っ!)
「あ~起きた、か?」
人間、想定外すぎると声すらも出なくなるらしい…目を覚ました美緒の変化に気が付いたのか、掠れ気味の声が下りてくるのと同時に、頭を優しい手つきで撫でられた。声で小林らしいと分かったが、声色も手つきも酷く甘い気がする。どうやら自分は小林と向かい合い抱き合うように寝ていた、らしい…自分が頬を寄せたのは小林の筋肉がついた胸だし、首の下と背中に体温を感じるから、多分腕なのだろう…しかも…目の前の光景と肌に触れる感触から、お互いに服を…着ていないように感じられた。更に昨夜の一連の出来事が一気に押し寄せて来ると、恥ずかしさが押し寄せてきて頭の中が真っ白になった。
「おはよう、美緒」
「お…はよ……」
掠れ気味の甘ったるい声で当たり前のように挨拶されてしまった美緒は、とっさに返してしまったが、言ってから失敗した…と多大に後悔した。これで起きたのがばれてしまったからだ。一体どんな顔で接しろと…と明るいのに目の前が暗くなる気がした。動きたいのにどうしていいのかわからず、美緒は途方に暮れて動けなかった。
「…美緒?」
「ひ、ひゃい?」
暫く固まったまま動かずにいた美緒に焦れたのか、小林に名を呼ばれたが、混乱の極みにいた美緒は思わず噛んでしまった。プッと小林が吹き出すのが聞こえて、益々羞恥が増した。こんな場面で噛むな自分!と思うが後の祭りだ。そして多分、今の自分は顔が赤くなっているだろう…そう思うと、益々顔を上げる事が出来ない。しかも服を着ていないとか、初心者には刺激があり過ぎるだろう…
「みーお?ほら、可愛い顔みせて」
ギャー何その言い方!やめろ―!と美緒の心の中はとっくに混乱の極みだった。とっくにキャパを超えていて、叫ぶ余裕すら失われていた。顎に手をかけられて強制的に顔を上げられ、ぎこちなく合わせた視線の先には…やっぱり美緒好みのイケメンがいた。朝から色気駄々洩れとか公序良俗違反だろう…刺激が強すぎて殺す気なのか…いや、心臓が弱かったらもう死んでるかもしれない…美緒の思考は混乱のせいで妙に現実的で、それでいて明後日の方向に飛んでいた。目を逸らすも、まじまじと見られているのが分かり、一層羞恥心に火をつけた。もう色々無理過ぎて居たたまれず、美緒は視線をさまよわせた。
「あ~お前、ほんと可愛い…反則…」
「な…っ…」
「顔、真っ赤だし。その初々しい反応、マジヤバイ…」
「…っ…!」
額にキスを落としてから、ぎゅっと抱きしめる腕に力を込めた小林に、美緒は益々羞恥心で溺死寸前だった。元よりしおらしく振舞う事も出来ない性分なだけに、可愛いと言われてもどういう態度をすればいいのかがわからないし、しかも顔が赤いとはっきり指摘されてしまえば恥ずかしいだけでなく何かに負けてしまったような気がする。抱きしめられた事で小林の身体とより密着する事になってしまったが、異性の素肌は刺激が強すぎて精神的に色々と抉られた気分になった。
「やっぱ…無理…」
「…な、何が…」
「一回じゃ…足りない」
「え?あ、あの…」
何を…と美緒が戸惑っている間に、小林が拘束している腕を離したと思ったら、ゆっくりと上から覆いかぶさってきた。見上げれば視界に入った上半身は裸で、美緒の予想が悪い意味で当たっている事を示していた。服の上からはわからなかったが、思った以上に筋肉が付いている様はしなやかな獣のようだ。表情が酷く嬉しそうだが目が血走っているように見えて、危険な予感しかしなかった。
「あ、あの…」
「何?」
「何って…」
「あ~その顔、すげぇそそる…」
「は?え?」
状況を理解しきれなかった美緒だが、さすがにここまでくると小林が何をしようとしているのかを察したが、既に逃げ道はなかった。
「ぃっ!」
いきなり蜜壺に何かが触れたのを感じて、美緒はヒリヒリする痛みに顔をしかめた。あ~やっぱ痛いかと頭上で小林の声がしたが、やっぱりとか言うならやるなとの想いを込めて睨みつけると、小林は酷く嬉しそうに悪い悪いと謝罪にもならない謝罪の言葉を口にした。わかっているなら触るな、そしてもう離せ、そして帰らせろと思う。
「あ~お前可愛すぎ。ところで今日の予定なんだけど…このまま抱きつぶされるのと出かけるの、どっちがいい?」
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そもそも処女相手に抱きつぶすとか物騒過ぎるだろう…それ以前に自分は付き合う事にも納得していないのに、どうしてこうなっているのか…流されてしまった自分も迂闊だったが、相手の言動が想定外すぎて理解出来ず、その結果が今なのだと思う。誰もが憧れるイケメンに好かれている事が納得できない美緒は、何だか得体のしれないものを相手にしている様な不安を感じた。
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更に腹立たしいのは、怒りの矛先が小林ではなく自分という事だった。こういう場合、同意もなく事に及んだ小林が確実に悪い筈なのだが、今美緒が腹を立てているのは自分自身に対してだった。自分の甘さに対してもあるが、自分への怒りの度合いが高いのは小林を無意識に庇っているのではないか、実は自分はこうなって喜んでいるのではないか…との思いがよぎったからだ。それはつまり、自分が小林を憎からず思っているという事で、その感情は自分自身を裏切っているように感じたのだ。この相反する感情が気持ち悪くて、より一層美緒を不快にさせていた。
(きっとあの顔が曲者なんだ…)
結局のところ、美緒は小林のあの顔に完全にやられていた。好みど真ん中の顔は凶器だ、と思う。もし同じ事を違う顔の男がやってきたら、確実に断っていただろう。元より男性不信を拗らせているのに、こうも易々と小林のいい様にされているのは、ひとえにあの顔のせいだと美緒は結論づけた。
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