自力で始める異世界建国記

モリタシ

文字の大きさ
上 下
28 / 58
第一章 建国前夜編

27話 静寂の密林

しおりを挟む
木々の間からジリジリと太陽の光が差し込む。
日は真上に上がり、今日は一段と気温が高い。
額から頬へと汗が伝っていく。

軍勢は出発後草原地帯で野営をし、一夜明けてゴルティア手前の密林地帯にたどり着いた。

俺たちは息を殺し、一歩ずつ静かに密林地帯を進んでいく。

密林の中には舗装された街まで伸びる道もあるらしいが、この密林地帯からはドラグーンの奇襲の可能性があるらしく、相手に読まれやすい街道を進むわけにはいかない。

密林の中、道なき道を歩いたとしてもそのリスクは無くなるわけではなく、周囲への警戒を厳にして軍勢は静かに進んでいく。

今日は騎馬騎士連隊と遊撃隊は機動力を生かし先行して主戦場での陣構築に入ると言うことで、この一帯は歩兵大隊と傭兵後方支援隊の計1200名がいる。

歩兵大隊は物資運送の役目も担っているようで、密林の中には食料などの物資を担いで進んでいく。

ひたすら自然の音が響き続け、これだけ人がいるのに声を発するものはほぼいない。
確信のない奇襲の可能性を警戒しながらこの気温の中密林を進むのは正直かなり疲労感が込み上げてくる。

「止まれ…」

俺たちの前を行くゴライアスが身をかがめ傭兵部隊の侵攻を止めた。

「どうしたんだ?」

眉を潜めカインが問いかける。

「何かがおかしい…」

「何かってなんだ?」

声を潜めてゴライアスとカインがやりとりをするが、俺たち以外の歩兵大隊は気に留めることなく歩き続けていく。

「さっきまで鳥や獣の声がそこら中からしていたのに、少し前からしなくなった。まだ密林を抜けるには早い、この辺り一体から動物がいなくなる理由がわからない。」

「まさか…こんな後方に奇襲なんて来るか…?」

そう、ここは歩兵大隊のさらに後方で、軍の最も後ろだ。
先行した味方や前を歩く歩兵大隊に気づかれずにここまで奇襲に来れるとは思えないが…。

「ゔあーーーーー!!!」

突如として前方から悲鳴が上がった。
全員が当たりを警戒する。
だがどこにも敵の姿は見えない。

「上だっ!!!!」

誰かの声と同時に一斉に上を見ると木の上から敵が剣を振りかぶり一斉に飛び出した。
全員が剣を構える。

「ぐあっ…」

敵の着地と同時に何人も味方が倒れた。
敵は歩兵大隊の最後尾にいた運送部隊と、俺たち後方支援隊の中に突如として飛び降りてきた。

「ドラグーンだ!!怯むな!応戦しろ!!」

ゴライアスが声を上げ、動揺で止まっていた時間が一気に動き出す。
全員が武器を構え乱戦になった。
カインは俺の肩を掴み後ろに下がるように促す。
だが俺はまだ呆気に取られていて動けないでいた。

敵はおよそ30人くらいだろうか。
それに対してこっちは400人以上いるのに圧倒的に押されてるように見える。

精々ゴライアスとその周りが健闘しているが、それ以外はバタバタと敵にやられていく。

ツノの生えてるだけで、ほぼ見た目は人間なのに、俺たちの倍以上優れた動きをするその敵に恐怖心が体を硬直させる。

「雑魚に構うなっ![鮮血]を打ち取り物資を燃やせっ!」

ドラグーンの1人がそう叫び、一斉にゴライアスへ敵が向かい出す。

「タケル!」

後方からカインの声が聞こえ、振り返ると敵が剣を振り上げ俺に向かってくる。
敵はゴライアスへ向かう線上に俺がいたからそのまま斬り抜けていこうとする。

衝突の瞬間、カインが間に割って入り、敵の剣撃を受け止め体制を崩した。
次の瞬間敵は再度剣を振り上げ体制を崩しているカインに斬りかかる。
しおりを挟む

処理中です...