偽りの双翼

第一章

未来の断片（プロローグ）

――場所は、厳粛な裁判の場。


光は差し込んでいるが、空気は重く冷たい。兄と弟は、その空間の中央に立っていた。
彼らの視線の先には、かつて彼らの家族を襲った悲劇の首謀者たちが、裁きを待つ姿があった。


「やっとあなたたちに引導を渡せます。これは私たち兄弟が追い求めた復讐です。
この裁判であなたたちの罪を暴けました」


兄が深く息を吸い、最高権力者（国王）に向かって言葉を添える。
その声は、権威と長年の決意に満ちていた。彼の姿は、領主であり、法の裁きを体現する、
揺るぎない弁護士の姿だった。



「陛下、最後に相手へ一言よろしいでしょうか」



最高権力者は静かに頷き、場に沈黙が広がる。
その沈黙は、全てが終わりを迎える前の、静かな爆発を予感させた。
この瞬間、兄は法廷という公の場で最後の言葉を求め、弟はその隣で、兄の決意の熱を共有していた。

その許しを受けて、二人の声が、重なり響いた。
その重なりは、単なる共鳴や息の合わせ方ではなく、
長年の苦闘の中で極限まで研ぎ澄まされ、一つとなった魂の響きだった。


「……貴方方の血統は、ここで途絶える」


その響きは、法による社会的抹殺と、血族の復讐という、二重の呪いを内包していた。

その声の残響は、長年の苦闘と、血で汚された道のりの全てを内包していた。

その声の残響は、遠い未来の記憶のように、一瞬にして消え、次の瞬間、
冬の朝の屋敷の温かい日常へと重なっていく。。。