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第21話
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【第三班】
「(気まずい……)」
その日、生徒たちはルキウスの命でアイネスヴェルグの街にパトロールに出かけていた。
成り行きとはいえ、ルキウスの指揮下に入った以上はジャガーノートとしての仕事をきちんとこなさなくてはならない。
「ねえ、なんでこの人たちと一緒なの……?」
リリアがクラウスにたずねた。
「んなこと俺が知るかよ……」
ティゼル率いるドレッドノートの隊員たちも、生徒たちと一緒に行動していた。
ティゼルがアルゼリウスに王都内での謹慎を言い渡されたため、隊は王都待機となり、生徒の見回りに同行しているのだ。
ドレッドノートの隊員数はティゼルとヴァネッサを含めて二十人。
ジャガーノートはルキウスを除いて十人。
そしてルキウスは現在別行動を取っている。
総数三十人。
ドレッドノートが四人でジャガーノートが二人――――四対二の割合でチームに分かれ、一チーム六人で見回りを行っていた。
ドレッドノートの隊員が先輩チームとして生徒たちを引っ張る形だが、両チームの間で会話はほとんど行われていない。
「つーか、街の人たちも先輩たちにビビってんじゃん……」
「私たちもこの人たちのことよく知らないけど、あんな仮面つけて街中をウロウロされたら普通に怖いもんね……」
対魔法使い戦に特化した最強の戦闘部隊――ドレッドノート。
隊員の中で経歴が明らかになっているのは、ティゼルとヴァネッサだけだ。
「「「……」」」
すると、クラウスたちの前を歩いていたドレッドノートの四人が同時に足を止めた。
「「っ――⁉」」
クラウスとリリアの体がビクッと跳ね上がる。
「あの~、ラース先輩……。俺たち、何かお気に障るようなことでも……」
リリアとの会話はドレッドノートのメンバーには聞こえていないはずだが、クラウスはすっかりビクビクしている。
「……嫌な空気だ」
「へっ……?」
「何かが始まる前兆かもしれない。――――お前たち、周囲の警戒を怠るなよ」
ラースがクラウスたちにそう言った。
クラウスとリリアは姿勢を正して「「はいっ」」と返事をする。
ドレッドノートのメンバーが再び歩き出し、二人は「はぁ~」と肩の力を抜いた。
――――――――――――――――――
【第四班】
「ミレーヌ。何か見えるか?」
ドレッドノートの男性隊員が、遠くを見据える女性隊員にたずねた。
「……今のところは何も」
「イレーヌの方は?」
「ダメ。こっちも聞こえない」
耳を澄ませる格好の女性隊員が、男性隊員に返事を返す。
「……なあ、オゼット」
ステイルがオゼットに話しかけ、隊員たちの後方でヒソヒソ話を始める。
「あの二人、二歳離れた姉妹とか言ってたよな……?」
「ああ。目の良い方が妹のミレーヌで、耳の良い方が姉のイレーヌ……。俺が思うに、仮面の下はどっちもかなりの美人さんだ……」
「……お前はどっちに行きたい?」
「俺は姉さんの方だ……。性格は少し強気でフラれる率は高いが、惚れた男には尽くしてくれそうな感じがたまらなくいい……」
「よし、被ってねえな……。それじゃあ俺は妹ちゃん狙いで行くぜ……」
そう言って二人は拳を突き合わせた。
「ちょっと、アンタたち!」
「「っ――⁉」」
姉のイレーヌが二人の側までやって来る。
「アンタたちの会話、全部私の耳に入ってるんですけど」
「「……」」
オゼットとステイルは顔を赤くしながら、全身に冷や汗がにじんだ。
「言っとくけど。私、自分より弱い男に興味ないから。――――あと、ミレーヌに手出したら許さないからね」
そう言ってイレーヌは、二人の側から離れていった。
五秒後、二人は再び会話を始める。
「……今のどう思う?」
「良い……。やっぱり良いよ、あの娘……。――――しかもチャンスまでもらえた」
「俺たちが姉さんの方より強けりゃ問題ねえって話だからな。俺も俄然《がぜん》燃えてきたぜ」
二人はあくまで前向きな姿勢を崩さない。
しかし、当然今の会話も――――
「だから聞こえてるっつーの……。つーか、アイツらこの前私たちに殺されかけたこと、忘れてない?」
イレーヌが他の隊員たちに話しかける。
「つっても、俺たちは私情でヤツらを殺そうとしたわけじゃねえからな。アイツらはそういう考え方ができる連中なんだろ」
「……」
「魔法使いが全員アイツらみたいな連中だったら、俺たちもこの前みたいな汚れ仕事に手を染めずに済んだものを……。――――いずれにせよ、俺はああいうバカが嫌いじゃない」
オゼットとステイルは、この男性隊員にずいぶんと気に入られたようだ。
「ジェイク、アンタ……」
イレーヌは仮面の奥で、意外そうな表情を浮かべていた。
「〝魔法使いなんて全員クズだ〟って、あれだけ嫌ってたのに……」
「俺は偉そうにしてるヤツらが嫌いなだけさ。魔法使いの中にも、アイツらみたいな気の良い連中が混じってることくらい最初からわかってる」
「……」
「ジャガーノートは、あの状況下においても魔法で人を殺すのを躊躇《ためら》った連中ばかりだ。俺たちは魔法で反撃してくるヤツらを積極的に狙ってたからな。――――あの二人が生き残ってるのも、つまりはそういうことだろ?」
ジェイクの言葉に、もう一人の男性隊員が頷いた。
「あの者たちは我々が失った、かつての輝きをまだ残している。穢れなき魂には敬意を払うべきだ」
「ザノス、アンタまで……」
ジェイク、ザノス、イレーヌ、ミレーヌ。
【第四班】の隊員たちがオゼットたちの方に振り返る。
「……任務に戻ろう。敵がどこかに潜んでいるはずだ。イレーヌとミレーヌは引き続き索敵を頼む」
ジェイクが言った。
「隊長たちへの報告は?」
ミレーヌが彼にたずねる。
「それは敵の姿を確認してからでも遅くはないだろう。現場勘は、俺たちより隊長たちの方が鋭い。隊長たちが気づかないはずがない」
――――――――――――――――――――
【第一班】
「……不吉」
ティゼルの隣に立つ男性隊員が彼に言った。
「お前も感じるか、ジン? アイネスヴェルグ周辺に敵が迫っている」
「……魔法使い」
「おそらくな。十中八九、オルディアの差し金だろう」
すると別の男性隊員がティゼルに言った。
「しかし、正式な宣戦布告はまだのはずでは?」
「……それについては一つ心当たりがある。私は愚かにも〝その可能性〟を失念していた」
「失念……? その可能性とは一体……?」
「その話はまた後だ。今は敵の潜伏場所とその正体を突き止める方が先決だ」
「……住民、避難」
ジンがつぶやく。
「それは副隊長に一任してある。幸い、今このアイネスヴェルグには兄上もおられる。そちらの対応は父上たちに任せよう」
同じ【第一班】として行動していたキースが、ティゼルにたずねた。
「ティゼル殿下。このアイネスヴェルグに敵が迫っていると、そうおっしゃいましたね?」
「ああ」
「もしその敵がオルディアから攻めて来た魔法使いならば、僕はその部隊に一つ心当たりがございます」
キースの言葉に、隊員たちの注目が彼に集まる。
「申せ」
「はい。おそらく敵の正体はオルディア第一魔法小隊。通称〝飛行急襲部隊〟。上空からの奇襲攻撃に特化した魔法小隊です。そして、その部隊を率いるリーダーの名はザナトス・ハイデン・オルディア。オルディア王国の第一王子――――つまりはフラット・バミルスの実の父君です」
「「「……」」」
情報を得たティゼルたちの表情が曇る。
「……情報提供に感謝するぞ、キース。貴君の予想に間違いはない。――――敵は空から攻めてくる」
そう言って、ティゼルたちは上空を見上げた。
「敵は飛行部隊ですか……。厄介な相手ですね……」
「だがキースのおかげで、こちらの被害は大きく減らせる。副隊長率いる【第二班】と【第四班】は住民の避難を最優先に。我々は【第三班】、【第五班】と合流する」
「すぐに手配いたします」
「連絡は【第四班】だけで十分だ。【第五班】にはフラットとレミがいる」
「……それが何か?」
そのときである。
ティゼルの読みは見事に的中した。
「殿下!」
【第五班】が【第一班】と合流を果たす。
フラットが、キースと同じくオルディアの魔法飛行部隊の襲来をドレッドノート隊員に進言したのだ。
そして間もなく――――
「フラット! 【第三班】の人たちにも報せて来たよ!」
箒に乗ったレミが空から現れる。
フラットがジャガーノート隊の〝副隊長〟としての権限を用い、【第三班】にも情報を共有するようレミに指示を出したのだ。
「ティゼル殿下、お話があります!」
フラットが言った。
「現在、アイネスヴェルグ付近に潜伏している敵部隊の正体は――――」
「それなら既に把握している。キースが私に情報を提示した」
ティゼルがそう言うと、フラットがキースを見た。
するとキースがフラットから目を逸らす。
「……その様子じゃ、ザナトスのことしか話していないようだな?」
「……」
キースはフラットの問いに何も答えない。
「……知られてはマズいことでもあるのか?」
ティゼルはキースにではなく、フラットにたずねた。
「……いずれわかることです。今のうちにお伝えしておく方がよろしいでしょう」
「……」
「ザナトス率いる第一魔法小隊には、彼を支える副官が二人存在します。そして、そのうちの一人が――――」
フラットが副官の名を明かそうとした、その瞬間――――
「っ――⁉」
ティゼルが何かに気づいた様子で両目を見開き、懐から魔刃の剣を引き抜いた。
「散開しろっ‼ 総員、戦闘準備だ――‼」
ティゼルがその場の全員に指示を出す。
隊員たちの動きは速かった。
それぞれが武器を抜き、戦闘用のマジック・アイテムを起動させる。
生徒たちも少し遅れて自分の杖を抜いた。
「来るぞ! 総員、上空からの攻撃に備えよ!」
ティゼルがそう言ってから間もなく――――
アイネスヴェルグの上空から大量の攻撃魔法が降りそそいだ。
ドレッドノート隊はマジック・アイテムで攻撃を弾き返し、ジャガーノート隊はマジック・シールドで防御した。
「メリー! 僕の側から離れるなっ!」
「はい、キース様!」
着弾した魔法が大きな爆発を起こし、広場の地面を吹き飛ばしていく。
家屋も同様だ。
魔法の一斉攻撃でいくつもの建物が崩れていった。
「……今のは挨拶代わりといったところか」
ティゼルが言った。
攻撃魔法の第一波は、飛行部隊の魔法使いたちが1発ずつ放ったに過ぎない。
次はこの程度では済まないだろう。
「第一魔法小隊のヤツら、市街地でいきなり魔法をぶっ放してくるとか頭おかしいんじゃねえか⁉」
「っていうか、宣戦布告は⁉ これって開戦条約違反じゃないの⁉」
クラウスとリリアが叫んだ。
すると、オルディアの飛行急襲部隊――――五十人の魔法使いたちが、上空からティゼルたちの見える高さまで下りてきた。
「(気まずい……)」
その日、生徒たちはルキウスの命でアイネスヴェルグの街にパトロールに出かけていた。
成り行きとはいえ、ルキウスの指揮下に入った以上はジャガーノートとしての仕事をきちんとこなさなくてはならない。
「ねえ、なんでこの人たちと一緒なの……?」
リリアがクラウスにたずねた。
「んなこと俺が知るかよ……」
ティゼル率いるドレッドノートの隊員たちも、生徒たちと一緒に行動していた。
ティゼルがアルゼリウスに王都内での謹慎を言い渡されたため、隊は王都待機となり、生徒の見回りに同行しているのだ。
ドレッドノートの隊員数はティゼルとヴァネッサを含めて二十人。
ジャガーノートはルキウスを除いて十人。
そしてルキウスは現在別行動を取っている。
総数三十人。
ドレッドノートが四人でジャガーノートが二人――――四対二の割合でチームに分かれ、一チーム六人で見回りを行っていた。
ドレッドノートの隊員が先輩チームとして生徒たちを引っ張る形だが、両チームの間で会話はほとんど行われていない。
「つーか、街の人たちも先輩たちにビビってんじゃん……」
「私たちもこの人たちのことよく知らないけど、あんな仮面つけて街中をウロウロされたら普通に怖いもんね……」
対魔法使い戦に特化した最強の戦闘部隊――ドレッドノート。
隊員の中で経歴が明らかになっているのは、ティゼルとヴァネッサだけだ。
「「「……」」」
すると、クラウスたちの前を歩いていたドレッドノートの四人が同時に足を止めた。
「「っ――⁉」」
クラウスとリリアの体がビクッと跳ね上がる。
「あの~、ラース先輩……。俺たち、何かお気に障るようなことでも……」
リリアとの会話はドレッドノートのメンバーには聞こえていないはずだが、クラウスはすっかりビクビクしている。
「……嫌な空気だ」
「へっ……?」
「何かが始まる前兆かもしれない。――――お前たち、周囲の警戒を怠るなよ」
ラースがクラウスたちにそう言った。
クラウスとリリアは姿勢を正して「「はいっ」」と返事をする。
ドレッドノートのメンバーが再び歩き出し、二人は「はぁ~」と肩の力を抜いた。
――――――――――――――――――
【第四班】
「ミレーヌ。何か見えるか?」
ドレッドノートの男性隊員が、遠くを見据える女性隊員にたずねた。
「……今のところは何も」
「イレーヌの方は?」
「ダメ。こっちも聞こえない」
耳を澄ませる格好の女性隊員が、男性隊員に返事を返す。
「……なあ、オゼット」
ステイルがオゼットに話しかけ、隊員たちの後方でヒソヒソ話を始める。
「あの二人、二歳離れた姉妹とか言ってたよな……?」
「ああ。目の良い方が妹のミレーヌで、耳の良い方が姉のイレーヌ……。俺が思うに、仮面の下はどっちもかなりの美人さんだ……」
「……お前はどっちに行きたい?」
「俺は姉さんの方だ……。性格は少し強気でフラれる率は高いが、惚れた男には尽くしてくれそうな感じがたまらなくいい……」
「よし、被ってねえな……。それじゃあ俺は妹ちゃん狙いで行くぜ……」
そう言って二人は拳を突き合わせた。
「ちょっと、アンタたち!」
「「っ――⁉」」
姉のイレーヌが二人の側までやって来る。
「アンタたちの会話、全部私の耳に入ってるんですけど」
「「……」」
オゼットとステイルは顔を赤くしながら、全身に冷や汗がにじんだ。
「言っとくけど。私、自分より弱い男に興味ないから。――――あと、ミレーヌに手出したら許さないからね」
そう言ってイレーヌは、二人の側から離れていった。
五秒後、二人は再び会話を始める。
「……今のどう思う?」
「良い……。やっぱり良いよ、あの娘……。――――しかもチャンスまでもらえた」
「俺たちが姉さんの方より強けりゃ問題ねえって話だからな。俺も俄然《がぜん》燃えてきたぜ」
二人はあくまで前向きな姿勢を崩さない。
しかし、当然今の会話も――――
「だから聞こえてるっつーの……。つーか、アイツらこの前私たちに殺されかけたこと、忘れてない?」
イレーヌが他の隊員たちに話しかける。
「つっても、俺たちは私情でヤツらを殺そうとしたわけじゃねえからな。アイツらはそういう考え方ができる連中なんだろ」
「……」
「魔法使いが全員アイツらみたいな連中だったら、俺たちもこの前みたいな汚れ仕事に手を染めずに済んだものを……。――――いずれにせよ、俺はああいうバカが嫌いじゃない」
オゼットとステイルは、この男性隊員にずいぶんと気に入られたようだ。
「ジェイク、アンタ……」
イレーヌは仮面の奥で、意外そうな表情を浮かべていた。
「〝魔法使いなんて全員クズだ〟って、あれだけ嫌ってたのに……」
「俺は偉そうにしてるヤツらが嫌いなだけさ。魔法使いの中にも、アイツらみたいな気の良い連中が混じってることくらい最初からわかってる」
「……」
「ジャガーノートは、あの状況下においても魔法で人を殺すのを躊躇《ためら》った連中ばかりだ。俺たちは魔法で反撃してくるヤツらを積極的に狙ってたからな。――――あの二人が生き残ってるのも、つまりはそういうことだろ?」
ジェイクの言葉に、もう一人の男性隊員が頷いた。
「あの者たちは我々が失った、かつての輝きをまだ残している。穢れなき魂には敬意を払うべきだ」
「ザノス、アンタまで……」
ジェイク、ザノス、イレーヌ、ミレーヌ。
【第四班】の隊員たちがオゼットたちの方に振り返る。
「……任務に戻ろう。敵がどこかに潜んでいるはずだ。イレーヌとミレーヌは引き続き索敵を頼む」
ジェイクが言った。
「隊長たちへの報告は?」
ミレーヌが彼にたずねる。
「それは敵の姿を確認してからでも遅くはないだろう。現場勘は、俺たちより隊長たちの方が鋭い。隊長たちが気づかないはずがない」
――――――――――――――――――――
【第一班】
「……不吉」
ティゼルの隣に立つ男性隊員が彼に言った。
「お前も感じるか、ジン? アイネスヴェルグ周辺に敵が迫っている」
「……魔法使い」
「おそらくな。十中八九、オルディアの差し金だろう」
すると別の男性隊員がティゼルに言った。
「しかし、正式な宣戦布告はまだのはずでは?」
「……それについては一つ心当たりがある。私は愚かにも〝その可能性〟を失念していた」
「失念……? その可能性とは一体……?」
「その話はまた後だ。今は敵の潜伏場所とその正体を突き止める方が先決だ」
「……住民、避難」
ジンがつぶやく。
「それは副隊長に一任してある。幸い、今このアイネスヴェルグには兄上もおられる。そちらの対応は父上たちに任せよう」
同じ【第一班】として行動していたキースが、ティゼルにたずねた。
「ティゼル殿下。このアイネスヴェルグに敵が迫っていると、そうおっしゃいましたね?」
「ああ」
「もしその敵がオルディアから攻めて来た魔法使いならば、僕はその部隊に一つ心当たりがございます」
キースの言葉に、隊員たちの注目が彼に集まる。
「申せ」
「はい。おそらく敵の正体はオルディア第一魔法小隊。通称〝飛行急襲部隊〟。上空からの奇襲攻撃に特化した魔法小隊です。そして、その部隊を率いるリーダーの名はザナトス・ハイデン・オルディア。オルディア王国の第一王子――――つまりはフラット・バミルスの実の父君です」
「「「……」」」
情報を得たティゼルたちの表情が曇る。
「……情報提供に感謝するぞ、キース。貴君の予想に間違いはない。――――敵は空から攻めてくる」
そう言って、ティゼルたちは上空を見上げた。
「敵は飛行部隊ですか……。厄介な相手ですね……」
「だがキースのおかげで、こちらの被害は大きく減らせる。副隊長率いる【第二班】と【第四班】は住民の避難を最優先に。我々は【第三班】、【第五班】と合流する」
「すぐに手配いたします」
「連絡は【第四班】だけで十分だ。【第五班】にはフラットとレミがいる」
「……それが何か?」
そのときである。
ティゼルの読みは見事に的中した。
「殿下!」
【第五班】が【第一班】と合流を果たす。
フラットが、キースと同じくオルディアの魔法飛行部隊の襲来をドレッドノート隊員に進言したのだ。
そして間もなく――――
「フラット! 【第三班】の人たちにも報せて来たよ!」
箒に乗ったレミが空から現れる。
フラットがジャガーノート隊の〝副隊長〟としての権限を用い、【第三班】にも情報を共有するようレミに指示を出したのだ。
「ティゼル殿下、お話があります!」
フラットが言った。
「現在、アイネスヴェルグ付近に潜伏している敵部隊の正体は――――」
「それなら既に把握している。キースが私に情報を提示した」
ティゼルがそう言うと、フラットがキースを見た。
するとキースがフラットから目を逸らす。
「……その様子じゃ、ザナトスのことしか話していないようだな?」
「……」
キースはフラットの問いに何も答えない。
「……知られてはマズいことでもあるのか?」
ティゼルはキースにではなく、フラットにたずねた。
「……いずれわかることです。今のうちにお伝えしておく方がよろしいでしょう」
「……」
「ザナトス率いる第一魔法小隊には、彼を支える副官が二人存在します。そして、そのうちの一人が――――」
フラットが副官の名を明かそうとした、その瞬間――――
「っ――⁉」
ティゼルが何かに気づいた様子で両目を見開き、懐から魔刃の剣を引き抜いた。
「散開しろっ‼ 総員、戦闘準備だ――‼」
ティゼルがその場の全員に指示を出す。
隊員たちの動きは速かった。
それぞれが武器を抜き、戦闘用のマジック・アイテムを起動させる。
生徒たちも少し遅れて自分の杖を抜いた。
「来るぞ! 総員、上空からの攻撃に備えよ!」
ティゼルがそう言ってから間もなく――――
アイネスヴェルグの上空から大量の攻撃魔法が降りそそいだ。
ドレッドノート隊はマジック・アイテムで攻撃を弾き返し、ジャガーノート隊はマジック・シールドで防御した。
「メリー! 僕の側から離れるなっ!」
「はい、キース様!」
着弾した魔法が大きな爆発を起こし、広場の地面を吹き飛ばしていく。
家屋も同様だ。
魔法の一斉攻撃でいくつもの建物が崩れていった。
「……今のは挨拶代わりといったところか」
ティゼルが言った。
攻撃魔法の第一波は、飛行部隊の魔法使いたちが1発ずつ放ったに過ぎない。
次はこの程度では済まないだろう。
「第一魔法小隊のヤツら、市街地でいきなり魔法をぶっ放してくるとか頭おかしいんじゃねえか⁉」
「っていうか、宣戦布告は⁉ これって開戦条約違反じゃないの⁉」
クラウスとリリアが叫んだ。
すると、オルディアの飛行急襲部隊――――五十人の魔法使いたちが、上空からティゼルたちの見える高さまで下りてきた。
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