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13.魔王様とごめん寝
しおりを挟む朝起きると、手足が自由だった。
ーーえ?
監禁被害者みたいなことを思ったが、身体のどこもフォルティスに拘束されていない。
フォルティスの身に何かあったのかと慌てて飛び起きると、隣にいたのは、ごめん寝をするフォルティスだった。
格好としては、土下座して頭を下げたスタイルだが、何とも哀れで哀愁漂っている。
「陛下? どうしたんですか?」
「……昨夜はすまなかった」
何について謝られてるんだろう。
昨夜は別にエッチなこともされてないし、キスしてくれないと寝ないと駄々こねられてもない。
本当になんだろう。心当たりが全くない。
昨日はフォルティスが土産にもらった海老でたくさんの料理を食べて……
「あ。もしかして、海老しんじょうを食べずに寝たことですか? 大丈夫ですよ。今朝のすまし汁に使いますから。美味しいですよ、魚介の出汁が出て」
「すごく美味しそうだが、違う!」
じゃあ、なんだ。レモネードの素を使い切らなかったことか?
「リモネードの素なら今日、厨房に持って行ってみんなでリモンスカッシュにして飲むんで気にしないで下さい」
「どうしてそうなる。私が謝りたいのは昨夜の態度のことだ。あんな、子どもが母親に甘えるみたいな態度をとって……幻滅しただろう」
くぐもった声でそう言って、フォルティスはますますベッドに埋まってしまった。
なるほど。
ポンポンと頭を撫でて、顔を見せてと囁きかけるが、首を振られた。
相当落ち込んでしまったらしい。
「いいんじゃないですか、たまには。誰にだってありますよ、疲れて甘えたくなることなんて」
「だが……」
「俺だって一人で寝るのは寂しかったですよ。いつもあなたに抱き締められながら眠ってますからね」
たまには一人寝も自由でいいなと思ったことは黙っておく。
「伊織も寂しかったのか……」
「そうです。だから、そんなに気にしないで下さい。寧ろ、可愛かったのでまたどうぞ」
これは本音。いつものやらしい甘え方とは違う、素直で子どもっぽい甘え方はただ可愛かった。
撫で回して、腕の中で気の済むまで泣かしてあげたいと思った。
「……本当に、いいのか?」
「もちろん。いっぱい甘やかしてあげますよ。ーーここは私室でしょう。陛下じゃなくていいんですよ、フォルティス様」
「……!」
名前で呼ぶとやっと顔をあげてくれた。綺麗なダイヤモンドが潤んでいる。
額にちゅっとキスして顔を胸に引き寄せた。
「出勤までまだ時間はたっぷりありますけど、どうして欲しいですか?」
「……しばらくこうしてて欲しい」
「いいですよ」
つむじに口唇を落として、震える背を撫で続けた。
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