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肆ノ幕 海
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或る朝、骸骨メイドがポリーナの衣装室を掃除しに入ると
アロハシャツ・ホットパンツ・ビーチサンダル・サングラス
ビキニが消えていた。
また何時もの展開かと思い、骸骨メイドは丁度通りかかった
魔王エリザヴェータに事態を報告した。
「魔王様、ポリーナ様の御召し物が幾つか消えて・・・」
「今日は海へ行ったわ。遊び相手が沢山居るって随分
上機嫌だったわよ」
魔王はポリーナの遠出に慣れてきて、最近は然程
驚かなくなっていた。
一方、事情を一切知らない邪教神官アンドレイは
何を血迷ったか裏ダンジョンを探し回っていた。
「ポリーナ、幾ら御前でも此処は流石に危な過ぎる。
さぁ帰るんだ。然し何処へ行ったんだ・・・?」
妻が迎えに来るまでの間、邪教神官は同じ所を
何度もぐるぐる回っていた。
空飛ぶ玉座が砂浜にゆっくり着地するとポリーナは
立ち上がった。そして金色の星型フレームと虹色レンズが特徴的な
サングラスを外し、アロハシャツを脱ぎ始めた。
ネオンピンクのビキニが現れると、準備運動を始めた。
「1、2、3、4、5、6、7、8・・・」
関節可動域が狭まってない事を確認すると
ポリーナは不意に笑みを零した。
「ママ・・・否、魔王様、私は貴女の教え
忘れたことは今迄一度も無いから」
普段は口にする機会が多くないが、本当はポリーナは
母を愛慕していた。何だかんだで母を凌駕する力を
持つことになったが、魔王の仕事と両立させつつ自分に
色々な事を教えて呉れた存在には違い無かった。
怖い夢に魘され泣いていた時、熱病に罹った時
何時も支えて呉れていた。
準備運動を終え、遠くに目線を向けた時
何か聞こえた気がした。
「・・・・・?」
耳をすませてみると、声は海の中から聞こえた。
「誰か溺れているのかな」
敵意を見せない相手には原則として優しいポリーナは
海に入ると謎の気配の正体を探った。
ジェンツーペンギンの如き速度で泳ぎながら
ポリーナは彼方此方に目線を向けた。5分も経たず
正体は分かった。
「あたいに触れると大怪我するよぉ」
水中で電気を放つ巨大海月型モンスター、メドゥセ。
ゼリーの様な外観から脆いと思われがちだが
魔族である彼女は芭蕉梶木の上顎を折ることが出来る程
頑丈だった。然も、毒針を仕込んだ触手と
電気を放てる笠は天敵を容易に近付けない仕様だった。
「メドゥセ、何ハッスルしているの」
「誰だ? 何であたいの名前を知って・・・ポリーナ様!!」
魔王が唯一にして最も恐れる裏の支配者が
何故か目の前に居る。メドゥセは困惑を隠せなかった。
「何か事件ですかい? 護衛も付けずこんな所に
御出座しだなんて今頃魔王様が心配しているのでは」
「大丈夫。視察に行くとは伝えといたから。只
今日の視察は一応御忍びだから其のつもりでね。
尤も、今頃誰かさんは見当違いの所
探し回っているだろうけどね」
ポリーナの予想は正しかった。
「うぁー・・・うーごーけーなーいー」
見当違いな所を延々探し回り疲れ果てた邪教神官は
自分が回復魔法を使える事を忘れ、仰向けになっていた。
「動けないなら棺桶に入る?」
聞き覚えの有る声が耳に入り、恐る恐る目線を動かすと
其処には不自然な笑顔の妻が居た。
「御苦労だったわね。はい、手間賃」
「有難う御座いまーす」
地に膝をついて目線を合わせた後、魔王は
道案内を頼んだゴブリンに報酬の渦巻きロリポップを与えた。
ゴブリンが居なくなったのを確認した後、魔王は
般若の如き形相へと変化した。
「人の話聞かず何勝手な事しているのかしら¿」
言葉を挟む余地は無かった。邪教神官は自分の運命を
分かっていた。
「ライトニング・ブラスター!」
次の瞬間、青白い雷が邪教神官に直撃し、一瞬で
白骨化したと思うと、ビターチョコ色の棺桶に入れられた。
「娘に教えた技だけど、今じゃ良くて相討ちなのよね・・・」
独り言を呟きながら魔王は夫の入った棺桶を居城へ転送し
自身も裏ダンジョンを去った。
「其れで、何で手当り次第放電してたの?」
口調と表情は穏やかに見えたがメドゥセは直感的に
悟った。正直に言う方が譴責も最小限で済む。
「空腹と、狩るべき外敵が居ないのが面白くなくて・・・」
返答している間、メドゥセは目線を逸らすことが出来なかった。
一瞬でも逸らせば不誠実を疑われると考えていた。
「良いよ。これ食べて」
ポリーナが亜空間から取り出した蟹蒲鉾はメドゥセにとって
垂涎ものだった。
「有難く頂きます。話が分かるから大助かりです」
鋸刺鮭の如く貪るのを見てポリーナは苦笑しながらも
もう1つの問題の解決策を提示した。
「暴れたいならこの先に海賊の隠れ家が有るよ。如何かな?」
願っても無い好機を投げ掛けられ、メドゥセは目の色を変えた。
「良い事を教えて下さいました! この御恩は忘れません!」
あっと思った時にはメドゥセの姿は消えていた。
「何とせっかちな・・・まぁ良いや。あれ・・・?」
何気無く目線を動かすと、さっきまで居なかった
海豚の妖精が2匹近くを泳いでいた。然も何か
思い悩んでいる気配がした。
「初めまして。私はポリーナ。
君達、何やっているの? 落とし物?」
魔王の娘と知らない2匹は何の疑いも無く答えた。
「私はデルフィーン。この辺りでジャンプした時
拾ったばかりの綺麗な石を落としてね」
「初めまして。私はドーフィーヌです。ママの
御土産にと思い拾ったのですが、本当に困っていて・・・」
坂東海豚の姿をしたデルフィーンと、ピンク海豚の
姿をしたドーフィーヌはかなり焦っていた。日が高い
内は良いが、日没後は捜索は絶望的だ。
「其の石の特徴を教えて呉れたら直ぐ探し当てるよ」
「光を反射する赤い石だよ」
「見つけられるでしょうか・・・?」
「何も心配無いよ」
特徴さえ分かれば後は簡単だった。失せ物探しなど
魔族のポリーナには5秒も有れば十分だった。
「これかな¿ 後、序に違う色の石も拾ってきたよ」
海豚の妖精達は唖然とした。頼んだ以上の事をして
呉れるとは全く予想していなかった。
最初に拾った赤い宝石だけでなく
青・橙・緑・紫・黃・ピンクの宝石まで受け取り、流石に
何と言えば良いか分からなかった。
「2人はママが大好きなんだね。私達
良い友達になれるよ。誰かを大切に思える
君達が腐れ外道である訳ないもん」
超展開に困惑していた2匹だったが、自分達は
仲間と思うと嫌な気はしなかった。
「石を本当に5秒で集めてきた時は吃驚したけど
ポリーナは私達の友達だからあれ程一生懸命
探して呉れたんだよね」
「是非我が家へ招待したいですわ。勿論御都合の良い時に」
親友からの招待を拒む理由など何処にも無かった。
この日、ポリーナは日が暮れるまで
新たな親友達と遊び呆けた。魔城では
一度も感じたことがない何かを確かに得られた。
帰宅後、ボロボロになった父を見てポリーナは
自分の予想が正しかったと確信した。
アロハシャツ・ホットパンツ・ビーチサンダル・サングラス
ビキニが消えていた。
また何時もの展開かと思い、骸骨メイドは丁度通りかかった
魔王エリザヴェータに事態を報告した。
「魔王様、ポリーナ様の御召し物が幾つか消えて・・・」
「今日は海へ行ったわ。遊び相手が沢山居るって随分
上機嫌だったわよ」
魔王はポリーナの遠出に慣れてきて、最近は然程
驚かなくなっていた。
一方、事情を一切知らない邪教神官アンドレイは
何を血迷ったか裏ダンジョンを探し回っていた。
「ポリーナ、幾ら御前でも此処は流石に危な過ぎる。
さぁ帰るんだ。然し何処へ行ったんだ・・・?」
妻が迎えに来るまでの間、邪教神官は同じ所を
何度もぐるぐる回っていた。
空飛ぶ玉座が砂浜にゆっくり着地するとポリーナは
立ち上がった。そして金色の星型フレームと虹色レンズが特徴的な
サングラスを外し、アロハシャツを脱ぎ始めた。
ネオンピンクのビキニが現れると、準備運動を始めた。
「1、2、3、4、5、6、7、8・・・」
関節可動域が狭まってない事を確認すると
ポリーナは不意に笑みを零した。
「ママ・・・否、魔王様、私は貴女の教え
忘れたことは今迄一度も無いから」
普段は口にする機会が多くないが、本当はポリーナは
母を愛慕していた。何だかんだで母を凌駕する力を
持つことになったが、魔王の仕事と両立させつつ自分に
色々な事を教えて呉れた存在には違い無かった。
怖い夢に魘され泣いていた時、熱病に罹った時
何時も支えて呉れていた。
準備運動を終え、遠くに目線を向けた時
何か聞こえた気がした。
「・・・・・?」
耳をすませてみると、声は海の中から聞こえた。
「誰か溺れているのかな」
敵意を見せない相手には原則として優しいポリーナは
海に入ると謎の気配の正体を探った。
ジェンツーペンギンの如き速度で泳ぎながら
ポリーナは彼方此方に目線を向けた。5分も経たず
正体は分かった。
「あたいに触れると大怪我するよぉ」
水中で電気を放つ巨大海月型モンスター、メドゥセ。
ゼリーの様な外観から脆いと思われがちだが
魔族である彼女は芭蕉梶木の上顎を折ることが出来る程
頑丈だった。然も、毒針を仕込んだ触手と
電気を放てる笠は天敵を容易に近付けない仕様だった。
「メドゥセ、何ハッスルしているの」
「誰だ? 何であたいの名前を知って・・・ポリーナ様!!」
魔王が唯一にして最も恐れる裏の支配者が
何故か目の前に居る。メドゥセは困惑を隠せなかった。
「何か事件ですかい? 護衛も付けずこんな所に
御出座しだなんて今頃魔王様が心配しているのでは」
「大丈夫。視察に行くとは伝えといたから。只
今日の視察は一応御忍びだから其のつもりでね。
尤も、今頃誰かさんは見当違いの所
探し回っているだろうけどね」
ポリーナの予想は正しかった。
「うぁー・・・うーごーけーなーいー」
見当違いな所を延々探し回り疲れ果てた邪教神官は
自分が回復魔法を使える事を忘れ、仰向けになっていた。
「動けないなら棺桶に入る?」
聞き覚えの有る声が耳に入り、恐る恐る目線を動かすと
其処には不自然な笑顔の妻が居た。
「御苦労だったわね。はい、手間賃」
「有難う御座いまーす」
地に膝をついて目線を合わせた後、魔王は
道案内を頼んだゴブリンに報酬の渦巻きロリポップを与えた。
ゴブリンが居なくなったのを確認した後、魔王は
般若の如き形相へと変化した。
「人の話聞かず何勝手な事しているのかしら¿」
言葉を挟む余地は無かった。邪教神官は自分の運命を
分かっていた。
「ライトニング・ブラスター!」
次の瞬間、青白い雷が邪教神官に直撃し、一瞬で
白骨化したと思うと、ビターチョコ色の棺桶に入れられた。
「娘に教えた技だけど、今じゃ良くて相討ちなのよね・・・」
独り言を呟きながら魔王は夫の入った棺桶を居城へ転送し
自身も裏ダンジョンを去った。
「其れで、何で手当り次第放電してたの?」
口調と表情は穏やかに見えたがメドゥセは直感的に
悟った。正直に言う方が譴責も最小限で済む。
「空腹と、狩るべき外敵が居ないのが面白くなくて・・・」
返答している間、メドゥセは目線を逸らすことが出来なかった。
一瞬でも逸らせば不誠実を疑われると考えていた。
「良いよ。これ食べて」
ポリーナが亜空間から取り出した蟹蒲鉾はメドゥセにとって
垂涎ものだった。
「有難く頂きます。話が分かるから大助かりです」
鋸刺鮭の如く貪るのを見てポリーナは苦笑しながらも
もう1つの問題の解決策を提示した。
「暴れたいならこの先に海賊の隠れ家が有るよ。如何かな?」
願っても無い好機を投げ掛けられ、メドゥセは目の色を変えた。
「良い事を教えて下さいました! この御恩は忘れません!」
あっと思った時にはメドゥセの姿は消えていた。
「何とせっかちな・・・まぁ良いや。あれ・・・?」
何気無く目線を動かすと、さっきまで居なかった
海豚の妖精が2匹近くを泳いでいた。然も何か
思い悩んでいる気配がした。
「初めまして。私はポリーナ。
君達、何やっているの? 落とし物?」
魔王の娘と知らない2匹は何の疑いも無く答えた。
「私はデルフィーン。この辺りでジャンプした時
拾ったばかりの綺麗な石を落としてね」
「初めまして。私はドーフィーヌです。ママの
御土産にと思い拾ったのですが、本当に困っていて・・・」
坂東海豚の姿をしたデルフィーンと、ピンク海豚の
姿をしたドーフィーヌはかなり焦っていた。日が高い
内は良いが、日没後は捜索は絶望的だ。
「其の石の特徴を教えて呉れたら直ぐ探し当てるよ」
「光を反射する赤い石だよ」
「見つけられるでしょうか・・・?」
「何も心配無いよ」
特徴さえ分かれば後は簡単だった。失せ物探しなど
魔族のポリーナには5秒も有れば十分だった。
「これかな¿ 後、序に違う色の石も拾ってきたよ」
海豚の妖精達は唖然とした。頼んだ以上の事をして
呉れるとは全く予想していなかった。
最初に拾った赤い宝石だけでなく
青・橙・緑・紫・黃・ピンクの宝石まで受け取り、流石に
何と言えば良いか分からなかった。
「2人はママが大好きなんだね。私達
良い友達になれるよ。誰かを大切に思える
君達が腐れ外道である訳ないもん」
超展開に困惑していた2匹だったが、自分達は
仲間と思うと嫌な気はしなかった。
「石を本当に5秒で集めてきた時は吃驚したけど
ポリーナは私達の友達だからあれ程一生懸命
探して呉れたんだよね」
「是非我が家へ招待したいですわ。勿論御都合の良い時に」
親友からの招待を拒む理由など何処にも無かった。
この日、ポリーナは日が暮れるまで
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