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 北部の冬は厳しい。
 充分な蓄えが無いものから、死んでいく。そうして、そういった遺体は冬の間、処理をされることもなく、雪深くに埋められ、春が来るまで放置される。
 当然だ。暖炉に火をくべる薪すら惜しいのに、どうして死んだもののために限られた資源を使わなければならないのか。

 春が来て、雪が解けると同時に、冬の間に亡くなった人々の葬儀が執り行われる。
 誰も助けてくれない。近隣に手を差し伸べていたら、一緒に奈落へ落ちて、死んでしまう。

 私が生まれた場所は、そういう所だった。



「ねえ、一緒に王都行かない?」

 甘えた声が耳朶をくすぐる。私はスープをすくった匙を手に持ったまま、目の前の相手をじっと見つめた。
 美しい灰色の髪、そしてそっと彩りを添える緑色の瞳。眦は柔らかく、一見すると優しく、穏やかな印象を抱く相手だ。通った鼻筋に、すらりとした頬の輪郭。まるで美少女のようにも見える童顔は、生まれ持ってのもので、昔はよく性別を間違えられていたことを思い出す。獣人の証である白銀の立て耳が、ぴこぴこと揺れるのが見えた。

「そろそろここ、冬来るし。フェルシアの冬支度、あんまり上手くいってないって聞いたよ」
「どこから……」
「隣の家のお姉さん。俺が聞いたら直ぐに答えてくれた。行商が上手くいかなかったんだって? 大変だね」

 ……どこまで筒抜けなんだろう、とか、今度から隣の家のお姉さんに相談をするのはやめよう、とか、ぼんやりと考えながら私は首を振る。

「どうせたぶらかしたんでしょ」
「あっ。酷い言い方だな。違うよ。教えて貰っただけ。こうやって――ね」

 言いながら、目の前の相手――リュカは、私の手首にそっと触れた。指先をくすぐるように動かして、そのまま手の甲に手の平を重ねてくる。指の隙間を縫うようにリュカの細い指先が動くのが見えた。

「それをたぶらかすって言うの。離して」
「ほんっと、フェルシアって、俺のこういうの、効かないよね」
「幼なじみにされても嫌なだけっていうか、普通に嫌」

 あは、とリュカが小さく笑う。何がおかしかったのかわからないが、どうにも楽しそうに息を弾ませて、彼は嬉しそうに目を細める。美しい緑の瞳が細まる、それだけの行為なのに、リュカがするとなんとも言えない艶が滲む。世の女性は、彼のこういうふとした時の仕草から香る色気に騙されているんだろうなあ、なんて思いながら私はリュカの手を払い、スープを口に含んだ。材料を大変少なめにして作っているのもあって、中々に薄い。

「王都に行ったら美味しい料理も沢山あるよ」
「それはそうでしょうけど」
「それにほら、フェルシアは寒いの苦手でしょ。王都は周辺に暖気膜が張られているから、暖かいよ」
「らしいね」
「人ごと過ぎるでしょ」

 リュカが小さく笑う。彼は私と話すとき、簡単なことでよく笑った。今も、私にはよくわからないツボがあったみたいで、くすくすと喉を鳴らしている。

「どうして一緒に来てくれないの?」
「どうしてって……。むしろどうして、一緒に行かないといけないの?」
「俺がフェルシアに一緒に来て欲しいから」

 リュカはあっけらかんと言葉を口にする。――この問答を繰り返すのも、一体何度目だろうか。リュカが治癒術士としての才能を開花させ、王都に行くようになってから、毎年のように繰り返している気がする。

「それにほら、フェルシアのこと抱きしめないと上手く眠れないんだよね、俺」
「私以外に抱きしめさせてくれる人が居るでしょ、リュカには」

 呆れたように言葉を返すと、リュカは小さく微笑んだ。そうして、どうだろうね、なんて、小さく囁くように口にする。

「まあなんにせよ、また決めて教えてよ。戻ってきたばっかりだし、俺もまだこっちに居るから」
「何度言われても多分行かないよ」
「そう? それはわからないよ」

 ふ、と息を零すように口にして、リュカは立ち上がった。そうして、勝手に入ってきた時同様、さっと場から逃げるように私の家を去って行く。静かに閉まる扉を見つめてから、私は小さく息を吐いた。

 リュカは、私の幼なじみだ。エレモス王国の北部の、極寒しかない田舎町で生まれてからずっと、友人としての付き合いが続いていた。
 年が近いこともあって、ほとんど家族や、きょうだいと言っても差し支えのない関係性だったと思う。仲が良かったのだ。
 だがそれも、リュカに治癒術士としての才能が開花するまで、の話ではある。

 エレモス王国では、一定の年齢を迎えると、王都で魔法検定を受ける必要性が出てくる。どういった魔法に適性があるのか、どういう特技――スキルと呼ばれる――を持っているかを、王様のお膝元で審査するのだ。
 むろん、もれなく私とリュカも同時期に魔法検定を受けることになった。そうして、リュカの治癒術士としての才能が、そこであらわになったわけである。

 エレモス王国は比較的貧しい国で、それもあって治癒術士は重宝される。薬などを買う余裕が無い場合においても、治癒術士の手によって病気や怪我を治すことが出来るからだ。
 リュカは早速、とばかりにエレモス王国直属の治癒術士として勉強を受けることになり、そこで私とは離ればなれになることになった。

 美少女もかくやというような、そんな美しい子どもが、はらはらと涙を零しながら「フェルと離れたくない」と泣いていたのは記憶に新しい。私も同じように泣いて、リュカの手を取りながら、一緒に抱きしめ合ったものである。
 それから数年。リュカは成長して、帰ってきた。

 ――クズ男と言って差し支えのないくらいの、性格を携えて。

 リュカは獣人である。だから発情期というものがついて回るのだが、彼はそれをそこらへんで引っかけた女の子相手に消費している、らしい。というか実際、そういうことをした相手がここまでリュカを探しにやってくるのだから、らしい、というのは正しくないだろう。最低最悪の存在である。
 昔はそんなことなかったのに、王都で何があったのか、リュカは女の人を甘い言葉で騙し、一夜を過ごすことも多くなった。たぶらかした女性なんて、数え切れないくらいだろう。

 最初こそ、帰還を喜んでいたが、リュカが帰ってくる度に持ち込まれる色々ないざこざに巻き込まれ続けて、もう帰還を簡単には喜べないようになった。
 あんなに可愛かったのに、今では自身の美貌をあますことなく使用し、自身の欲を吐き出す先を常に探している、クズの中のクズである。

 私は小さく息を吐く。そうして、リュカの家がある方向へ、ちら、とだけ視線を寄せた。
 きっと明日も来るのだろう。リュカはこの街へ帰ってくると、私の家に入り浸るのだ。それこそ、朝から晩まで。昔のようにフェル、フェル、と柔らかな声で呼びながら行く先々に着いてくる。
 クズの中のクズ、ともの凄く強く思うのに、それでも邪険に出来ないのは、そのせいだろう。私は小さく息を吐いて、明日からの日々を思いながらベッドで眠ることにした。

 布団を被って、そっと目を瞑る。両親におやすみを告げてから、私は眠りに落ちた。


 次の日、朝になって、ノックの音で意識が浮上する。小さく欠伸を零して、私はじっと扉を見つめた。どう考えても、確実に、扉の向こうに居るのはリュカだろう。リュカ、と僅かに間延びした声で名前を呼ぶと、「そうだよ」と直ぐに応えがある。

「入っても良い? 冬支度の手伝いでも、なんでもするよ」
「……起きたばかりだから……待って……」
「今更でしょ。見飽きてるくらい、見てる」

 リュカの笑い声が、微かに耳朶を揺らす。そうして、当然のように扉が開いて、そのままリュカが入って来た。こっちの事情なんて、一切考えていない。
 沢山の防寒着を身につけたリュカは、私を見ると軽く尻尾を揺らした。白銀の耳と同様に、ふわふわの白銀の尻尾。狼の血を受け継いでいるのだと、ずっと昔、秘密話をするように、教えてくれたのを覚えている。獣人にとって、自分がどういったルーツであるかを伝えるのは、大事な人にのみするらしいのだと、その時教えてくれた。

 昔の話だ。多分、今、リュカのルーツが狼だなんてことを知っている人間は、星の数ほどいるのではないだろうか。

「はあ、やっぱりフェルシアの傍ってあったかいよね」
「これだけ近づいてたらそれはそうだよ」
「そう? そうかな、フェルシアは特別あったかいよ。ぽかぽかの体。ぽかぽかスキルだね」

 リュカは小さく息を吐くと、早速とばかりに防寒着を脱ぎ捨てて、寝間着姿の私にへばりついてくる。尻尾をぺたりと私に寄り添わせたまま、リュカは私の腹部に腕を回してきた。体が少し冷たい。リュカの家から、この家まではさほど遠くない。そっと頬に触れると、リュカはくすぐったそうに目を細めて見せる。

「何? どうしたの、フェルシア」
「冷たいなあって。少し外に居たの?」
「うん。ほら、俺、治癒術士だから。引く手あまたなんだよね」

 来る途中で誰かを治してきた、ということだろうか。ぱっちりとした瞳を瞬かせて、リュカは楽しげに「褒めてくれる?」とだけ言う。こういう時のリュカは、私が褒めない限り、私から離れようとしない。そっと指先で頭を撫でると、喉を鳴らすように笑う音が聞こえた。

「はあ、最高。フェルシアの手も体も温かいし、俺専用の抱き枕になってくれない?」
「ならないよ。ほら、着替えるから離して」
「はいはい。じゃあ、その間に何か作っておこうか。朝はパン派だったでしょ。俺最近、簡単にパンを作れる魔法を見つけてさぁ」

 なんだそれ。小さく笑うと、同じようにリュカが笑う。彼は名残惜しむように私の体を一度だけぎゅうっと抱きしめると、そのままゆっくりと手の平を離した。
 台所に向かう姿を眺めながら、私は洗面台のある部屋に引っ込んで、いつもの衣服に着替える。薄い色合いのワンピースに、布地の厚いズボン。外へ出ると寒さで凍えてしまう格好だが、室内に居る分には、防寒着はあまり必要無い。
 幼い頃はまだしも、今は暖気膜という魔法が発明されていて、それで室内を覆うことが出来るからだ。王都では王都全体を覆うように暖気膜があるらしいが、私が住んでいるような辺境だと、一人一人の家を覆う暖気膜を作るのがやっとである。

 この魔法が、もっと昔に発見されていたら、と思う時がある。そうしたら、北部で亡くなる人の数は、きっと減っていただろう。
 そうしていたら。――そうだったら。

 思考の泥に沈みかけて、慌てて首を振る。このままじゃいけない。少しだけ寝癖のある髪を整えて、軽く確認をしてから、私は直ぐに外に出た。途端、台所からふわり、と良い匂いが漂ってくる。
 焼きたてのパンの匂いだ。――ここではあまり、嗅ぐことのない香り。

「えっ、本当にパンを焼いてる?」
「そんなに驚くこと? さっき言ったのに」

 言っていたけれど、本当にそうするとは思っても居なかったのだ。慌てて台所の方へ向かうと、ふわふわのパンがいくつか皿の上に載っているのが見える。リュカの手元には透明な――ガラスで出来たような、流線を描く楕円形の物体があって、中には何か――材料のようなものが揺れているのが見えた。
 そこからぽこぽことパンが生まれてくる。

「嘘……凄い……! 美味しそう……!」
「こっちだといっつも固いパンだもんね。歯が折れるかと思うような」

 リュカが指を一振りすると、楕円形のガラスは端から崩れるようにかき消えていく。見たことのない魔法だった。恐らく王都で新しく研究され、開発された魔法なのだろう。

「その魔法、誰でも使えたらこっちでも美味しいパンが食べられるんじゃ……」
「誰でも、は難しいかも。ある程度魔法を扱える人間で、原理がわかってないと難しい」
「……辺境で使えるようになるまでどれくらいかかるかな」
「数年くらい。スクロールが出来たら直ぐだとは思うけど」

 それくらいかあ、とぼんやりと思う。スクロール――とは、言わば魔法書みたいなもので、それを見れば誰でも、そのスクロールに記載された魔法が扱えるようになるという優れものである。ただ、それを作るのに莫大な技術と研鑽が必要なことを除けば、ではあるけれど。
 王都では日々沢山の魔法が研究され、そのうちのいくつか――民衆にも知らせるべきと王が判断したものだけ、スクロール化され、王都内外に配布されることになる。このパン魔法が、スクロール化されるかどうかと言ったら、多分難しいだろう。いずれはされるだろうけれど、今ではない。

「ここでも柔らかくて温かいパンが食べられるようになればなあ」
「王都に来ればいつでも温かくて柔らかいパンが食べられるよ」

 リュカは笑みを浮かべてそれだけ言う。私は小さく笑って、その言葉を受け流した。
 確かに王都へ行けば便利で、快適で、素晴らしい生活を送れるかもしれないが、その選択肢は、今の所、私の中には無い。
 いずれね、と言うと、リュカは小さく拗ねたような表情を浮かべる。けれどすぐにそれを消し去ると、私に焼きたてのパンをのせた皿を渡してきた。

「まあ、考えておいてくれるだけでも嬉しいよ。――ほら、昨日は出来なかった、俺とフェルシアの再会に、乾杯!」
「パンで?」
「パンで」

 こういうときはお酒とかじゃないのか、なんて、そんなことを思って少しだけ笑う。リュカらしいと言えば、らしい再会の祝い方だった。小さく息を零すように笑うと、リュカも同じように笑う。
 乾杯、とパンを千切って持ち上げて、それを口に運ぶ。久々の柔らかなパンは、口の中で解けるように消えていった。

 お互いの近況を話している内に、時間が少しずつ過ぎていく。治癒術士という職業上、リュカはここ最近の時にも色々な地域を回ったようで、沢山のことを私に話してくれた。どこそこの村では魚が美味しかっただとか、あれそれの街道では困っている精霊に出会って大変だったとか。

 リュカの語り口は軽妙で、聞いて居るだけでも楽しくなってくる。精霊とのごたごたの末、橋を通らせてもらった話に笑いながら、私はリュカをじっと見つめた。
 すぐにリュカは私の視線に気付いて、唇の端に笑みを乗せる。机の上にのせた指先に彼の手が伸びてきて、爪を撫でるように指の腹が動くのが見えた。私の指を軽く遊ぶように、彼は私の指を二本の指の間で挟むと、撫でるように手の平を動かす。一本一本、まるで壊れそうなものに触れるかのごとく、優しく、静かに、彼は私の指を楽しんでいた。
 ほどなくして、指の間、隙間を埋めるようにゆっくりと手の平が伸びてきて、最終的にきゅうっと、まるで恋人同士がするように繋がれる。

 思わず軽く振るが、リュカは手を離そうとしない。先ほどまでの軽妙な語り口もなりをひそめ、彼はただ、楽しげに私を見つめていた。薄い色の瞳、その虹彩が、まるで熱を持ったように揺れるのが見える。

「……リュカ、こういうのは止めてよ」
「どうして?」
「どうしてって……」

 手の甲をリュカの指先が撫でる。少しだけくすぐったい。さっきまで明るい話題で楽しんでいたのに、この温度差。
 雪が溶けてしまうのではないだろうか。

「こういうのは私以外にやってほしいの」
「どうして」
「……リュカと私は友達でしょ」

 けれど、こういう――男女の仲を探るような、二人の間にある線を乗り越えてくるような、そんな触り方は少しだけ違う、と思う。
 リュカは小さく笑った。彼は私から手を離すや否や、席を移動して、すぐ隣に腰を下ろす。尻尾がくるりと動いて、私の腰に触れた。

「友達は手を繋がないの?」
「……繋ぐけど。こういうのじゃないよ」
「こういうのって? どういうの?」

 だから、と口を開く。瞬間を狙い澄ましたように、リュカの手が私の頬に触れた。輪郭を辿るように、ゆるゆると指先が動く。それは喉元の辺りを軽くひっかいて、そのまま離れていった。

「……こういうの!」
「よくわからないな。俺に教えてよ」
「変な触り方! してるでしょ!」
「ええ? 全然してないよ。普通の触り方してるからさぁ」

 私はリュカをじっと見つめる。嘘をついたり、からかったりしている時の、そんな僅かな興奮の滲んだ瞳を見て、小さく息を吐いた。

「じゃあ私も普通の触り方するけど」
「どうぞ」

 嬉しそうな顔と声。こいつ、私までたぶらかそうと言うのだろうか。
 ――今までも、こういう風に、まるで私の真意を探るようにリュカが触れてくることはあった。わざと敏感な場所に触れたり、軽くひっかくように跡を残したり。いつもいつも、王都から戻ってきて直ぐの頃は必ずと言って良いほど、してくる。
 王都で何があったか、どうして興奮しているかは知らないけれど、それをここにまで持って来てほしくない。私は小さく息を吐いて、そのまま指先を動かした。

 リュカの頭に触れる。そうして、そっと頬の輪郭を辿るように指先を動かした。
 くすぐるような。触れるか触れないかの距離で指を動かすと、くすぐったいのかリュカの喉がひくりと震える。尻尾がぱたぱたと震えて、私の腰を軽くこするように動いた。もふもふの尻尾、もふもふの耳。獣人族は、大切な人以外に、そういった部分を触らせないのだという。だから、私も、触らない。

 するすると喉仏まで指先を動かして、首元の線を辿る。骨張った鎖骨に触れると、リュカが小さく息を呑んだ。鎖骨のでこぼこした部分に指を滑らせて、軽く掻くようにつま先を立てる。

「……フェル……?」

 甘い声が耳朶を打った。幼い頃と同じ呼び方で、私の名前をリュカは呼ぶ。私はじっとリュカを見つめた。
 瞳に熱が滲んでいる。緑色の瞳は、興奮すると、僅かに青色がかった色彩を滲ませる。

 私は小さく息を吐く。リュカ、と囁くように言葉を口にして、それから――鎖骨に触れていた手で、一気に彼の頭をがしがしと乱暴に撫でた。
 まさかそんな風にされるとは思ってもいなかったのだろう。リュカは一瞬小さく呻くと「なっ、何?」と慌てたような声を上げた。
 目を白黒させている様子を見ると、なんだか溜飲が下がって、ちょっとだけ面白い。ふ、と小さく息を零すと、リュカは拗ねたような表情を浮かべた。

「……フェルシアは意地悪過ぎると思うんだけど」
「そんなことないよ。普通の触り方しただけだからね。――友達として」
「友達、友達ってさぁ。言っとくけど、俺だから良かったんであって、他の獣人にああいうことしたら、一瞬で喰われるからね」
「私の知り合いの獣人はリュカしかいないから大丈夫だよ。リュカにしかしない」
「――たぶらかしてるのはどっちの方だよ」

 リュカは怒ったように眉根を寄せると、私から視線を逸らした。ただ、尻尾と耳はとても正直で、耳は私に向いたままだし、尻尾はぶんぶんと喜びを示して強く振れている。それに思わず私は小さく笑った。
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