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しおりを挟むアルヤはそんなカールが眩しく見えてしまい、伏し目がちになりながら呟いた。
「私はカール様にそんなふうに言ってもらえるような人間じゃないんです」
「どうしてそう思うの?」
「ずっと……従妹に嫉妬していて、お祖父様を取られてしまったような気持ちになって、そんな自分が嫌いでしたから」
「それって、僕がアルヤさんを好きだと思う気持ちには何の影響もないよね?」
「ない……んでしょうか」
アルヤは自分を許せないでいる。
バルト男爵家は新興貴族だから、社交界では軽く見られがちだ。
その上、クリスティーヌは庶子だ。
貴族社会の厳しさを思えば、彼女の立場は相当危ういものだっただろう。祖父の庇護が彼女の助けになったのなら、同じ世界で生きる令嬢として喜ぶべきだったのだ。
アルヤは小説を書くようになってからそんなふうに考えるようになっていた。
「まったく、なんの影響もないね。むしろアルヤさんは寂しかったんだろうな、としか思わないなぁ」
「でも、私は見目の評判も悪くて」
「なおさらどうでもいいかなぁ。僕の周りが煌びやか過ぎて、もはや美醜の感覚がなくなるレベル」
「はぁ……それは確かにそうですね……」
タルコット公爵家は、当主夫妻はもちろん、侍女やメイドまで美人だった。
「そういうアルヤさんこそ、僕よりベルツ子爵令息のほうが金髪碧眼でかっこいいって思ってるんじゃないの?」
ゴットロープをカッコいいと思ったことはない。
むしろ表情や態度が醜くて嫌いだった。
アルヤは正直にそれを伝えるとカールはものすごくいい顔で笑った。
「もう答えなんか出てるじゃん。アルヤさんはヒーローにするぐらい僕に興味があって、僕はアルヤさんをお嫁さんにしたいぐらい可愛いと思ってる。やっぱり『にくまん』最高」
そう言いながら頬をふにふに触られた。
男性に頬を触られたことなどないので、すごく恥ずかしかった。
「そういえばカール様を追いかけていたアーレ伯爵令嬢、最近見ませんね?」
恥ずかしさを誤魔化すために、見かけなくなったドミニカ・アーレ伯爵令嬢の名を出すと、カールの表情がすっと冷たい雰囲気になった。
「お父上の借金が膨らみ過ぎて、娼館に売られたよ」
「そんなっ……」
「彼女は気に食わない令嬢を階段から突き落としたり……そういうことをしてた問題の多い令嬢だったけど……だからって売られていいかと言われれば、よくはないかなぁ……それこそ修道院に行って反省を促したほうがいいような気がするけど……でも、世の中にはそういう親もたくさんいるんだよね。うちはかなり貧乏な男爵家だけど、父上は『貧乏暇なし、お前らせっせと働けー』とか言う人でよかったよ」
眉を下げたカールの瞳には悲しみが見えた。
「私は恵まれてますね……」
「うん。すごくいい方たちだよね。僕はコレッティ子爵家が大好きだよ」
「ありがとうございます。説明が足りませんけど」
「そこは改善点だね」
「はい。帰ったらお父様たちと話します」
力強く言い切ったアルヤに、カールは微笑みながら頷いてくれた。
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