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「姫さま、なんか凄い騒ぎになっちゃいましたね」
トレーに乗ったたくさんの天ぷらを抱えて出てきたルルドが心配そうに眉を下げた。
テオドルと並ぶように立つと、あら不思議。案外似ていたのだ。最初は似ていないと思ったのだけれど、目元の辺りの優しい雰囲気がそっくりだった。
「もう片付いたわ。それより、今日の夕飯は天ぷらなのね!?」
「はい。姫さまの好物です。海老とホタテと白身魚とナスとかぼちゃとレンコン、しいたけ、あとなんでしたっけ? タラの芽? もたくさんあります」
「嬉しいわ! ほんとはタラの芽って名前じゃないみたいだから、あんまり言わないでね? 似てるだけだから」
この世界には天ぷらが存在しなかった。
パバル王国は魚介類が豊富でとても美味しいのだ。それを活かす天ぷらは絶対食べたかったし、天ぷらなら生じゃないから気持ち悪いと言われないだろうという思惑もあった。ルルドは魚介料理を学びたくてパバルの料理人になったらしく、私たちの利害は一致していた。
前世では水で溶く天ぷら粉しか使ったことがなかったから、玉子と水と小麦粉で作るときの分量がわからなかった。ルルドがあれこれ試してくれて、最終的にはお店で食べるような美味しい天ぷらを作れるようになってくれた。ルルドさまさまである。
「レイラもそのうち戻ってくると思うから、試食室へ行きましょう」
気を取り直すように声を上げると、テオドルは私の瞳を食い入るように見つめていた。
誰からもそそがれたことのない熱い視線に、私の肩はびくりと跳ねたのだった。
「えっと、テオドルさま?」
試食室に入ってもテオドルは熱心に私を見つめていた。
「ね、ルルド。テオドルさまどうなさったのかしら?」
思わずルルドに聞く。
「あー、うーん。兄上、僕から説明してもいいの?」
「いや。レイラ殿が到着したら、私からしよう」
場をもたせるために、ルルドとの出会いから、料理を二人で試行錯誤したころの話や、ルルドの料理の美味しさを熱弁した。ようやくレイラが戻って来たころには、ルルドの顔は真っ赤だった。テオドルは終始楽しそうに聞いてくれた。
「大変だったわね。レイラも一緒に食べましょう?」
「……ですが」
「もういいじゃない。テオドルさまからお話があるようなの。盗聴防止の道具を起動するから長くなるわ。あなたも疲れたでしょう?」
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えまして頂戴いたします」
レイラは侯爵令嬢だけあって、とても綺麗に食べる。滅多に一緒に座ってくれないので、私は嬉しくなってニコニコしながら食べているところを眺めた。
皆があらかた食べ終えるのを待って、テオドルがゆっくり語り始めた。
「私とルルドは正確に言うと、従兄弟なのです」
「まぁ。そうなの? 目元が似ているからすっかり兄弟かと」
「私の正式な名はアレクサンドル・テオドル・マトゥラです」
「マトゥラって、王国のお名前……」
「現マトゥラ王は兄です」
「まぁ! 知らなかったとはいえ、失礼をいたしました」
「とんでもない。正式に名のりもしなかった私に親切にしてくださって、とても嬉しかったですよ」
微笑んでくれてはいるが、私の背中は汗でびっしょりだった。
先ほどの令息たちは、本当に不敬罪だったのだ。
「ルルドは私の母の妹の子で伯爵家の次男です」
「そうだったの。私なにも知らなくて。ごめんなさいね」
「何をおっしゃってるんですか~! 姫さまに会ってなかったから僕なんてここで働けず、すごすご帰国しなきゃならなかったんです。一人前の料理人になるといって家を出たのに恥ずかしい思いをするところでした。姫さまが拾ってくださったんですよ。天ぷらで」
天ぷらの他にも、ルルドには色々な料理をお願いして作ってもらっていた。その頃ルルドは他国出身ということで先輩たちから嫌がらせを受けていて、辞めるか辞めないか深刻な状況だったらしい。精神的にはギリギリだけど私と作る料理は楽しく、しばらく続けてみよう、辞めるのはその後でいいだろうと引き延ばしていたらしい。そのうち料理長がルルドの様子に気付いて、完成した料理を食べてくれるようになり、次第に先輩たちにも腕前とやる気を認められて居場所が出来たのだという。
「やだわ。私が食欲を満たすために必死だったのがバレちゃう」
「そんなことないですって。姫さまは日頃から我慢しすぎなんですよ。出たくもない婚活パーティーに出て、変なのに毎回絡まれて、いっつも我慢して」
「私は行き遅れのみそっかす王女だから仕方ないのよ」
「そんなことばかりおっしゃるから、僕も我慢の限界がきて兄上をお呼びしたんです」
「どういうこと?」
テオドル――アレクサンドル殿下のほうを見た。
「十九歳の王女さまにとっては、三十歳を超えた私からの求婚なんて困るだけだろうと……そう思って名を伏せていたのですが」
「……きゅうこん」
キュウコンといえば、この国では野菜って意味もあるのよねぇ。作物の仕入れかしら?
「違いますね」
心が読めるのかしら。
「少しだけ」
やだ。会話できちゃう。
「顔をみればある程度予測もつきますが、ちゃんと口にしていただかないとさすがに会話は続きませんよ?」
アレクサンドル殿下は吹き出し、お腹を抱えて笑い出した。
「王女殿下は見た目通りのご年齢ではなさそうなので気が変わりました。私に読まれても気にされないようですし。最初に触れたときから相性がいいことはわかっていたのですが」
どういうこと?
ちょっとわからないわ。
確かに前世の記憶があるから私は見た目通りじゃないけれど。
「声を上げないからと言って怒っていないわけでも、泣かないから悲しくないわけでもないのに、人というのは都合のいいように解釈しますからね。否定しないからといって嫌がっていないわけでもない。声を上げるなんてよほどのことなのに、それすら理解できない。我が国にも一定数いるんですが。私はカンがいいのでそれを感じてしまう。うっすら視えてしまったりする。私の能力に気付いた途端、今度は探られたくないと真逆の態度を取り始める。それを見て私も幻滅する。そんなことを繰り返していたら、すっかり婚期を逃してしまい、この歳です」
「この歳って、まだお若いですわ」
「三十二歳になります。王女殿下の今のご年齢からするとおじさんですよね」
「……そうかしら?」
確かに、前世の二十五歳の記憶があるからあまり抵抗がないのかもしれないけれど。
そうじゃなくても素敵だと思う。
精悍な顔つきなのに優しい目元とか。聞き上手で大人なところとか。
「とても素敵だと思います」
「……ありがとうございます」
アレクサンドル殿下は私の足元に跪き、手の甲に口付けた。
あまりの速さにレイラも口を開けただけで反応できなかった。
「どうか、私と結婚していただけませんか?」
「けっ……こん……ですか?」
「はい」
「レイラではなく?」
「……レイラ殿、ですか?」
「最初に会った時に、お相手をと仰っていたので、レイラがお好きなのだとばかり思っておりました」
「あぁ、なるほど。それであの時……いえ、素晴らしい剣の使い手とお見受けしましたので、そのうち手合わせを、という意味でした」
「そう……なんですか」
「はい。私は王女殿下に会いに来たのです。ルルドから王女殿下と会ってみてくれないかと言われまして。会えばきっと好きになるからと。それで取り急ぎ兄を通して陛下に謁見の申し込みをしつつ、はせ参じたというわけです。こちらかなと思うほうへ歩いて行けば、まさにそこには天使マナティーの名を欲しいままにした王女殿下がいらっしゃったのです」
「まさかそんな」
「お疑いになりますか? それとも、中年の愛の囁きは『キモい』でしょうか」
「やだ、そんな言葉よく知って……え?」
いまこの人、日本語喋ったよ!?
「多少、カンはいいので」
「それカンで済ませちゃいます?」
「こんなものに名を付けたら面倒なことになりますから」
「……なるほど?」
「どうでしょう? 拒否の色は感じないのですが、他にも気になることはありますか?」
そう言われて、レイラとルルドを見てみると、レイラは無表情のまま頷き、ルルドは期待の眼差しで私を見ていた。レイラが『合格』みたいな顔をしているのが珍しかった。
「あのぅ、ひとつだけ」
「なんでしょう」
「さすがに天使マナティーの名を欲しいままにというのは言い過ぎかと」
「「それはない」です」
ん? ルルドまで?
「マトゥラ国の宗教画を見に来ていただければわかります。そのミルクティ色の美しい髪に翡翠色の瞳とふっくらした頬と桜色の唇。全てが宗教画のままです」
「ほんとに?」
ルルドに聞くと、ルルドが力強く頷く。
マナティーという名は、亡き先代の王が付けてくれたらしい。本当に似ているのだとすれば、マトゥラ国の宗教画をご存知だったのかもしれない。
「知らなかったわ」
「何度も何度も『天使マナティーさま』だと僕が伝えても全然取り合ってくれなくて悲しかったです。複製が禁止されている絵だから見せることもできないし」
「マトゥラ国に来ていただければ理解してもらえるかと思いますが」
「……困ったわ」
本当に困ってしまった。
私の発言にルルドは眉を下げ、アレクサンドル殿下はニッコリ笑った。
「嬉しくて、困ってしまうわ」
「では」
「はい。お受けいたします。きっと、相性がいいというのは本当のことなんでしょうから……ですよね?」
私が聞くと、アレクサンドル殿下はわかりやすく焦り出した。
なぜ焦っているのだろうと首を傾げていたら「本当の意味はそのうちわかります」と耳元で囁かれた。思わぬ接近に私が顔を赤くしていると、レイラがゆらりと立ち上がったので剣を収めるよう宥めるのが大変だった。合格だが、婚約前に近付くのは禁止ということらしい。
トレーに乗ったたくさんの天ぷらを抱えて出てきたルルドが心配そうに眉を下げた。
テオドルと並ぶように立つと、あら不思議。案外似ていたのだ。最初は似ていないと思ったのだけれど、目元の辺りの優しい雰囲気がそっくりだった。
「もう片付いたわ。それより、今日の夕飯は天ぷらなのね!?」
「はい。姫さまの好物です。海老とホタテと白身魚とナスとかぼちゃとレンコン、しいたけ、あとなんでしたっけ? タラの芽? もたくさんあります」
「嬉しいわ! ほんとはタラの芽って名前じゃないみたいだから、あんまり言わないでね? 似てるだけだから」
この世界には天ぷらが存在しなかった。
パバル王国は魚介類が豊富でとても美味しいのだ。それを活かす天ぷらは絶対食べたかったし、天ぷらなら生じゃないから気持ち悪いと言われないだろうという思惑もあった。ルルドは魚介料理を学びたくてパバルの料理人になったらしく、私たちの利害は一致していた。
前世では水で溶く天ぷら粉しか使ったことがなかったから、玉子と水と小麦粉で作るときの分量がわからなかった。ルルドがあれこれ試してくれて、最終的にはお店で食べるような美味しい天ぷらを作れるようになってくれた。ルルドさまさまである。
「レイラもそのうち戻ってくると思うから、試食室へ行きましょう」
気を取り直すように声を上げると、テオドルは私の瞳を食い入るように見つめていた。
誰からもそそがれたことのない熱い視線に、私の肩はびくりと跳ねたのだった。
「えっと、テオドルさま?」
試食室に入ってもテオドルは熱心に私を見つめていた。
「ね、ルルド。テオドルさまどうなさったのかしら?」
思わずルルドに聞く。
「あー、うーん。兄上、僕から説明してもいいの?」
「いや。レイラ殿が到着したら、私からしよう」
場をもたせるために、ルルドとの出会いから、料理を二人で試行錯誤したころの話や、ルルドの料理の美味しさを熱弁した。ようやくレイラが戻って来たころには、ルルドの顔は真っ赤だった。テオドルは終始楽しそうに聞いてくれた。
「大変だったわね。レイラも一緒に食べましょう?」
「……ですが」
「もういいじゃない。テオドルさまからお話があるようなの。盗聴防止の道具を起動するから長くなるわ。あなたも疲れたでしょう?」
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えまして頂戴いたします」
レイラは侯爵令嬢だけあって、とても綺麗に食べる。滅多に一緒に座ってくれないので、私は嬉しくなってニコニコしながら食べているところを眺めた。
皆があらかた食べ終えるのを待って、テオドルがゆっくり語り始めた。
「私とルルドは正確に言うと、従兄弟なのです」
「まぁ。そうなの? 目元が似ているからすっかり兄弟かと」
「私の正式な名はアレクサンドル・テオドル・マトゥラです」
「マトゥラって、王国のお名前……」
「現マトゥラ王は兄です」
「まぁ! 知らなかったとはいえ、失礼をいたしました」
「とんでもない。正式に名のりもしなかった私に親切にしてくださって、とても嬉しかったですよ」
微笑んでくれてはいるが、私の背中は汗でびっしょりだった。
先ほどの令息たちは、本当に不敬罪だったのだ。
「ルルドは私の母の妹の子で伯爵家の次男です」
「そうだったの。私なにも知らなくて。ごめんなさいね」
「何をおっしゃってるんですか~! 姫さまに会ってなかったから僕なんてここで働けず、すごすご帰国しなきゃならなかったんです。一人前の料理人になるといって家を出たのに恥ずかしい思いをするところでした。姫さまが拾ってくださったんですよ。天ぷらで」
天ぷらの他にも、ルルドには色々な料理をお願いして作ってもらっていた。その頃ルルドは他国出身ということで先輩たちから嫌がらせを受けていて、辞めるか辞めないか深刻な状況だったらしい。精神的にはギリギリだけど私と作る料理は楽しく、しばらく続けてみよう、辞めるのはその後でいいだろうと引き延ばしていたらしい。そのうち料理長がルルドの様子に気付いて、完成した料理を食べてくれるようになり、次第に先輩たちにも腕前とやる気を認められて居場所が出来たのだという。
「やだわ。私が食欲を満たすために必死だったのがバレちゃう」
「そんなことないですって。姫さまは日頃から我慢しすぎなんですよ。出たくもない婚活パーティーに出て、変なのに毎回絡まれて、いっつも我慢して」
「私は行き遅れのみそっかす王女だから仕方ないのよ」
「そんなことばかりおっしゃるから、僕も我慢の限界がきて兄上をお呼びしたんです」
「どういうこと?」
テオドル――アレクサンドル殿下のほうを見た。
「十九歳の王女さまにとっては、三十歳を超えた私からの求婚なんて困るだけだろうと……そう思って名を伏せていたのですが」
「……きゅうこん」
キュウコンといえば、この国では野菜って意味もあるのよねぇ。作物の仕入れかしら?
「違いますね」
心が読めるのかしら。
「少しだけ」
やだ。会話できちゃう。
「顔をみればある程度予測もつきますが、ちゃんと口にしていただかないとさすがに会話は続きませんよ?」
アレクサンドル殿下は吹き出し、お腹を抱えて笑い出した。
「王女殿下は見た目通りのご年齢ではなさそうなので気が変わりました。私に読まれても気にされないようですし。最初に触れたときから相性がいいことはわかっていたのですが」
どういうこと?
ちょっとわからないわ。
確かに前世の記憶があるから私は見た目通りじゃないけれど。
「声を上げないからと言って怒っていないわけでも、泣かないから悲しくないわけでもないのに、人というのは都合のいいように解釈しますからね。否定しないからといって嫌がっていないわけでもない。声を上げるなんてよほどのことなのに、それすら理解できない。我が国にも一定数いるんですが。私はカンがいいのでそれを感じてしまう。うっすら視えてしまったりする。私の能力に気付いた途端、今度は探られたくないと真逆の態度を取り始める。それを見て私も幻滅する。そんなことを繰り返していたら、すっかり婚期を逃してしまい、この歳です」
「この歳って、まだお若いですわ」
「三十二歳になります。王女殿下の今のご年齢からするとおじさんですよね」
「……そうかしら?」
確かに、前世の二十五歳の記憶があるからあまり抵抗がないのかもしれないけれど。
そうじゃなくても素敵だと思う。
精悍な顔つきなのに優しい目元とか。聞き上手で大人なところとか。
「とても素敵だと思います」
「……ありがとうございます」
アレクサンドル殿下は私の足元に跪き、手の甲に口付けた。
あまりの速さにレイラも口を開けただけで反応できなかった。
「どうか、私と結婚していただけませんか?」
「けっ……こん……ですか?」
「はい」
「レイラではなく?」
「……レイラ殿、ですか?」
「最初に会った時に、お相手をと仰っていたので、レイラがお好きなのだとばかり思っておりました」
「あぁ、なるほど。それであの時……いえ、素晴らしい剣の使い手とお見受けしましたので、そのうち手合わせを、という意味でした」
「そう……なんですか」
「はい。私は王女殿下に会いに来たのです。ルルドから王女殿下と会ってみてくれないかと言われまして。会えばきっと好きになるからと。それで取り急ぎ兄を通して陛下に謁見の申し込みをしつつ、はせ参じたというわけです。こちらかなと思うほうへ歩いて行けば、まさにそこには天使マナティーの名を欲しいままにした王女殿下がいらっしゃったのです」
「まさかそんな」
「お疑いになりますか? それとも、中年の愛の囁きは『キモい』でしょうか」
「やだ、そんな言葉よく知って……え?」
いまこの人、日本語喋ったよ!?
「多少、カンはいいので」
「それカンで済ませちゃいます?」
「こんなものに名を付けたら面倒なことになりますから」
「……なるほど?」
「どうでしょう? 拒否の色は感じないのですが、他にも気になることはありますか?」
そう言われて、レイラとルルドを見てみると、レイラは無表情のまま頷き、ルルドは期待の眼差しで私を見ていた。レイラが『合格』みたいな顔をしているのが珍しかった。
「あのぅ、ひとつだけ」
「なんでしょう」
「さすがに天使マナティーの名を欲しいままにというのは言い過ぎかと」
「「それはない」です」
ん? ルルドまで?
「マトゥラ国の宗教画を見に来ていただければわかります。そのミルクティ色の美しい髪に翡翠色の瞳とふっくらした頬と桜色の唇。全てが宗教画のままです」
「ほんとに?」
ルルドに聞くと、ルルドが力強く頷く。
マナティーという名は、亡き先代の王が付けてくれたらしい。本当に似ているのだとすれば、マトゥラ国の宗教画をご存知だったのかもしれない。
「知らなかったわ」
「何度も何度も『天使マナティーさま』だと僕が伝えても全然取り合ってくれなくて悲しかったです。複製が禁止されている絵だから見せることもできないし」
「マトゥラ国に来ていただければ理解してもらえるかと思いますが」
「……困ったわ」
本当に困ってしまった。
私の発言にルルドは眉を下げ、アレクサンドル殿下はニッコリ笑った。
「嬉しくて、困ってしまうわ」
「では」
「はい。お受けいたします。きっと、相性がいいというのは本当のことなんでしょうから……ですよね?」
私が聞くと、アレクサンドル殿下はわかりやすく焦り出した。
なぜ焦っているのだろうと首を傾げていたら「本当の意味はそのうちわかります」と耳元で囁かれた。思わぬ接近に私が顔を赤くしていると、レイラがゆらりと立ち上がったので剣を収めるよう宥めるのが大変だった。合格だが、婚約前に近付くのは禁止ということらしい。
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