書き殴る

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働きたくないから書き殴る

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あぁ働きたくない。
最初にそう思ったのは小学4年生の時だった。
9月の上旬。台風の多い時期だった。
学校のことは嫌いではないが、台風の中、学校に行くのが億劫だった。
だから学校に行きたくない。学校が台風で休みになれと心から願った。
「今日学校休みになったから。」
母にそう言われ、心の底から喜んだのを覚えている。
そんな私の様子を椅子に座り、珈琲を啜りながら眺めていた父は
「いいなぁ、小学生は…」とぼやいた。
「お父さんは休みじゃないの?」
そんなに父に問いかけると、
「仕事はそう簡単に休みにはならないんだよ。」
と父は憂鬱な表情を浮かべ答えた。
「えー、そうなんだ…大変だね…」
そんな父を私は気の毒に思い、労うと、父は「まぁ…大変だけど、お金貰ってるからな…楽しいこともあるし…」
と誤魔化すように言葉をつけ足した。
私に仕事に対してマイナスイメージを持って欲しくなかったのだと思う。私が早いうちから仕事にマイナスイメージを持てば、私が将来働きたくないと言い出すのではないかと父が危惧していたように思う。そこまでは思ってなかったとしても、仕事をする時に今の勉強はきっと役立つと口酸っぱく言っていた父の仕事に憂鬱な姿を見た私が、勉強を忌避するようになるのではないかと心配位はしていたと思う。
父は「いってきまーす!」と態とらしく大きな声でリビングを出た。
「いってらっしゃーい…」
父のその後ろ姿を見た私は、父の願いとは裏腹に、働くことに対し大きくマイナスイメージを持った。
嫌だなぁ、嫌だなぁ。
それから私は勉強する度に、家事を手伝う度に働きたくない気持ちを膨らませた。
嫌だ嫌だ…
部活で嫌なことがあったり、女特有の嫌な人間関係に直面する度に社会に出ることに嫌悪感を抱いた。空気を入れ過ぎた風船のように、仕事への嫌悪感が膨らんだ。
社会人になり、8年が経った。今でもその想いは膨らみ続けていて、今にもはち切れそうだ。
私は今小説を書いている。継続してずっと小説を書いているわけではない。たまに、気が向いた時に書くだけ。仕事は普通に会社員をやっていて、仕事が嫌だなぁと思うと、書き殴るように小説を書いた。才能は別にない。ただただ書き殴っているだけ。
頭の中でぐるぐるぐるぐると小説の書き出しだけ思い浮かべ、気が向いた時にそれをたまに書き殴ってるだけ。メチャクチャな文章。構成も面白みもないだろう。
働きたくない。本当に働きたくない。
賞に出したこともない小説が売れればいいのにと心から願っている自分がいる。
働きたくない。働きたくない。
書きかけの小説はスマホの容量を少しずつ侵食している。
いつになったら私は、働かなくて済むようになるのだろうか?
どうしようもない現実を、どうすることもできない私。
ただただ小説を書き殴る。

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