拝啓、可愛い妹へ。お兄ちゃんはそれなりに元気です。

鳴き砂

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第四章 最強のお兄ちゃんは帝国へ帰る

平和な兄弟喧嘩!

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タツノキミさんたちの群れによって北方の航海も無事に終わりを迎えようとしていた。

「コハクくん、あれだ。」

ハウラさんが示した先には、寂れた北方の港があった。漁師らしき人たちは見えなかったけれど、代わりによく知っている人がそこには立っていた。

「あ!カルサさんだ!」

「北方に着いたのね!」

僕はカルサさんに大きく手を振った。そんな僕の様子を見て、チャロちゃんが安堵している。もう少しでお父さんとお母さんにも会えるね、チャロちゃん!

「おーい!無事か?!」

タツノキミさんと一緒に浅瀬へと乗り上げると、カルサさんがぎょっとしていた。大量のお土産に大勢のタツノキミさんだ。致し方ない。

「こちらはタツノキミのおかげで問題ない。」

ハウラさんがタツノキミさんの上から降りて、労うようにタツノキミさんの背中を撫でながら言った。そんなお兄さんの姿を見て、さらにカルサさんが驚いている。

「すげえな、この数・・・・コハクが手懐けたのか?」

「ううん!タツノキミさんたちが親切にしてくれたの!」

手懐けるだなんて!滅相もない!
僕がぶんぶんと首を横に振ると、カルサさんに「相変わらずだな」と笑われた。

「仲良しになったんだなあ。・・・・この子がチャロちゃんだな?」

「うん!」

僕はチャロちゃんの手を取って、カルサさんの方へと歩き出した。

「よーし!もう大丈夫だからな!北方で数日休んだら東方へ向かうぞ。」

「はーい!よかったね、チャロちゃん!」

カルサさんはチャロちゃんの頭をぽんぽんと撫でてから、穏やかな声音で告げた。少しばかり緊張気味のチャロちゃんだったけれど、肩の力が抜けたみたいだ。

「コハクさんたちが迎えに来てくれてから、バナジナイト王国での生活も楽しかったけれど、無事に帰ることができて、やっぱり今は安心してる。本当にありがとう!」

チャロちゃんは目に涙を浮かべて、それでも笑いながら僕たちにお礼を言ってくれた。まだ上手く実感は湧かないのだけれども、彼女を無傷で帝国まで連れて帰ることができて本当に良かった。これもひとえにタツノキミさんたちの協力があったおかげで成し得たことだ。

「タツノキミさんたちのおかげだよ!ずっと僕たちの側にいてくれたものね!」

そう言えば、チャロちゃんはタツノキミさんたちの方を向いてしゃがみ込んだ。

「そうね。・・・・皆んな、ありがとう。皆んながいてくれたから、一人きりの隣国も頑張れたの。」

『チャロは強かった。』

『そうだ。我らが愛する者は、よく頑張った。』

『我らを信じて我らの王が来る日を辛抱強く待ったこと、我らも嬉しく思う。』

チャロちゃんの言葉に、タツノキミさんたちが次々と反応してはチャロちゃんに擦り寄っていった。タツノキミさんたちは、心の底からチャロちゃんが大好きなのだろうな。

「本当にありがとう!私も皆んなのことが大好きよ!」

「タツノキミさん、チャロちゃん、良かったね・・・・」

じんわりしながらタツノキミさんたちとチャロちゃんのやり取りを見ていたら、カルサさんが僕の肩に手を乗せた。

「コハク、お前もタツノキミの言葉が分かるのか?」

隠すつもりもなかったからだけれども、やはり、この兄弟に隠し事はできないな。

「えへへ。まあ、そんなところ。」

「陛下が知ったら驚くだろうなあ。まったく、短期間でまたまた成長したもんだ。」

あっさり白状すれば、カルサさんは特に気にした風もなく肩をすくめるだけだった。慣れ、だろうか?

「それがコハクくんだ。」

「兄貴も随分と絆されたな。」

しかしながらハウラさんには相変わらずだった。そんなハウラさんはカルサさんの揶揄いを綺麗に無視して、砂浜をトンッと爪先で軽く蹴った。

「・・・・ウスイ、後ほど情報を。」

「え?!」

ウスイさん、いたの?!こんな開けた場所の何処に潜んでいたの?!

「ウスイは兄貴の腹心の部下だ。姿はほとんど見せないがな。」

僕がきょろきょろと辺りを見渡していると、カルサさんがこっそり教えてくれた。

「お前と違って迂闊じゃないから重宝しているだけさ。」

もちろん、ハウラさんにもばっちり聞こえていたみたいで、いつものように辛辣なひと言が飛んできた。

「はいはい。そうでしたね。・・・・褒美に猫をと考えていたが別のにするわ。」

「なに?!お前はやはり意地が悪いぞ!」

カルサさんも負けじと応戦している。猫を人質にするとは、なかなか手厳しい。

「コハクさん!二人は仲が悪いの?」

チャロちゃんがはらはらしながら僕の袖を引っ張っている。チャロちゃんはいつもの二人を知らないものね!初めて見ると心配になっちゃうよね!

「大丈夫だよ。仲が良いから喧嘩してるだけなんだ。」

「仲が良いのに喧嘩・・・・?」

チャロちゃんが首を傾げた。確かに可笑しな話しである。

『見ていて飽きないな。』

『愉快だ。』

タツノキミさんたちは余興が増えたと喜んでいる。僕も僕で、やっと日常が戻ってきたように思えて安心していた。セレスタイン様にも早く会いたいなあ・・・・。

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