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1 砂出しの働き方改革
1-25.砂出しの事情
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「あら、誰もいないわ」
「おう。今さっき、全員魔法が使えたと言って、出て行ったぞ。入れ違いだな」
詰所に戻ると、そこにはゴードンだけがいた。彼は片手を挙げて挨拶し、そう付け加える。
「全員使えたんですね!」
「だいぶ苦戦していたが……あいつら、なかなかのチームワークだったぞ。うまく行かないと、互いに意見を出し合って」
「良かった」
三人寄れば何とやら。リック、キータ、ミトスの三人で、分担せずに任せたのは、その方がうまくいくと思ったからである。彼らはそれぞれタイプが違う。ひとりだと視野が狭くなりがちで、うまく教えられない可能性もあるが、三人いれば誰かとは相性が合うと考えたのだ。
私のアドバイスがない中でどれだけやれるかと思ったが、ともかく、最初のハードルは皆超えたようである。何よりだ。
「お前達は、街を見て回れたのか?」
「はい。見たいところは、見られました。ゴードンさん、王城付近の砂出しって、どういう風に行われているんですか?」
「あの辺りか? ああー……」
低く唸るゴードン。眉間に深く皺が刻まれる。芳しくないのは、その表情でわかる。
「本来は俺たちがやらねばならないんだが、手が足りなくてな。何しろ、十人しかいないんだ。今は、あの辺りは、教会の手を借りている」
「教会の……」
「そうだ。しかし彼らは、砂出しが本務ではない。一応彼らには砂を脇へ移してもらって、定期的に取りに行くようにしているんだが、なかなか……」
ゴードンは語尾を濁しながら、そう説明する。厳しい状況のようだ。
「そうだったんですね。教会は、自分たちが砂を扱うことから手を引くとなったとき、気にしないでしょうか?」
「気にするどころか、喜ぶだろうよ。砂を取りに行くたび、『早く人を増やせ』と言われるんだから。人を増やせって言われても、辞めるんだよなぁ……」
肺から息を絞り出すような、深い溜息。
「ちなみに、王都の奥の方は……」
「偉いさんの住んでるとこか? あそこは俺たちの管轄外だ、立ち入りは禁止されているし、どうなってるかも知らねえ」
教会が望んでしている仕事でもなく、王都の奥には触れなくて良いのなら、特に問題はない。十人全員が魔法を使えるようになった今、砂出しの問題は、やる気さえあればあっという間に解決する。
「だって、ニコ。地図、もう一度見せてもらえる?」
「いいよ。はい」
ニコが机に例の王都の地図を広げると、ゴードンは目を細めてそれを眺めた。
「ほう……これはまた、ずいぶんな年季物じゃねえか」
「ご存知なんですか?」
「もちろん。むかーしの魔導士様が作ったとかいう、古い地図だろう? 祖母が大切に持ってたさ」
昔のことを懐かしく思い出したのだろう。険しかったゴードンの顔つきが、少し緩む。
「俺の家でも、祖母が保管していました。王都に行くなら持って行けって、くれたんですよ。こっちでは、新しい地図は出てるんですか?」
「いやぁ? そういう話は聞かねえな。俺たちは街のことはよくわかっているし、別に地図なんて必要ない」
そう言うゴードンは、どこか誇らしげだ。現に、砂出しは街中の現場を回って行う仕事であるにも関わらず、地図がなくても上手く分担できている。彼の言うことは、そういうことなのだろう。
「そうですよね。でも、私たちの提案を分かりやすくするために、今回は地図を使ってもいいですか?」
「もちろん」
よいしょ、と声を出して、ゴードンが姿勢を変えた。机上に広げられた地図の上に身を乗り出し、内容を確認する。
「まず、王城のある区画以外の部分が、五箇所ありますよね」
「そうだな」
「十人いるので、二人ずつ、分担します」
「二人……? 二人で、全部をやるって言うのか?」
ぴく、とゴードンの太い眉が持ち上がる。
「今だって、十人で、この門近くの三区画ですら手が回ってないんだ。魔法がどれだけのものか知らないが、二人でひと区画なんて割り振ったら、いくらなんでも、俺たちの仕事は崩壊するぞ」
「崩壊しないように、今魔法を教えているんですよ。ね、ニコ。今なら、このくらいの広さの場所なら、一気に砂を出せるでしょ?」
ニコは地図を覗き込み、指で測ってその大体の広さを確認する。
「そうだね。空を飛んでいいなら、できるかもしれない」
「空を飛ぶ……? 何トチ狂ったこと言ってるんだ」
「飛べるようになったんですよ、俺。空を飛ぶと、わかりにくい道順も余計な遮蔽物もないから、早く回れると思います」
「はあ……? わからねえな」
呆れた顔をするゴードンを、不思議そうに見るニコ。ほくそ笑む私。ニコにとっては、魔法の常識は、私の常識。私の常識は世間一般とはかけ離れているらしいので、ニコもこちらの仲間入りだ。
「ゴードンさんは、あの十人の性格を、よくわかっていると思うんですけれど」
「まあ、そうだな。奴らは砂出しの厳しい仕事にも適応して、俺とも付き合いがそれなりにある。よく……って程じゃねえが、どんな奴かはわかってるよ」
「ですよね。二人組にさせるなら、どの組み合わせが良さそうですか? あるいは、ここはちょっとうまくいかない……とか」
二人での作業には、ある程度の会話と連携は必要である。そこまでの相性の良さを求めているわけでもないが、トラブルを抱えた二人がいるのなら、わざわざ一緒にする必要はない。
ゴードンはあれこれと助言をしてくれ、二人組に分けるための、一応の案ができた。あとはこれをリック達に見せ、確認を取れば良い。
「お前達は、奴らが戻ってくるまで、どうするんだ?」
「こちらで待たせていただこうかと思いますが……ご迷惑でしょうか?」
「いや。それなら、茶でも飲んで待つことにしよう」
ゴードンは、がた、と重い音を立てて立ち上がる。底の厚い靴で踏みしめるたび、ぎし、と床が僅かに軋む。ガサツな音と共に、ゴードンは、取ってきたカップを私たちの前に置いた。そしてゴードンは、また棚へ向かう。
「綺麗なカップだね。繊細な模様」
「本当だわ」
ゴードンの動向ばかり目で追っていた私は、ニコの言葉で、テーブルの上のカップに目をやった。繊細な模様の描かれた、白い陶器のカップ。
「それか。本当は、城からの客人用なんだよ。勿体ないから使ってるが、割るんじゃねえぞ」
「城からの客人?」
「ああ……たまにな。王都の砂漠化は、偉いさん達も関心が高いから」
ゴードンは、ポットから湯気の立つ湯を注ぐ。ふわっと立つ湯気と、爽やかな香り。
「ミントみたいだわ」
「良い匂いだねえ」
「ミントティーだろ。飲んだことないのか?」
ゴードンが、自分用らしい質素なカップにお茶を注ぐ。ミントティー。色は普通のお茶と大差ないものの、香りが良い。昔、砂漠化していた西の領で飲んだことがあるのを思い出した。砂漠化して、あの辺りの作物が、取れるようになったのかもしれない。
「……美味しい」
湯は熱いが、口に含んだ瞬間、爽やかな冷たさが走る。喉を抜け、まろやかな爽快感が胃まで落ちる。不思議で、くせになる感覚だ。
「王都って、いつから砂漠化してるんですか?」
「いつから……そうさなぁ、俺が働き出したばかりの頃だから、二十年前くらいか?」
「二十年前……最近ですね」
「あー、もう少し経ってるかもしれないが」
私の知る王都は、緑豊かで、過ごしやすい街だった。二十年だろうが、それより少し長かろうが、大差ない。そんな短時間でこれほどまでに砂漠が広がるなんて、自然現象としてはかなりの異常だ。
「ゴードンさんは、その頃から砂出しをしてるんですか?」
今度はニコが質問する。ゴードンは「まさか」と笑った。
「砂漠化って言ったって、一晩で砂になったわけじゃねえ。砂出しが必要になったのは、ちょうど十年前くらいからだな。大変だったんだぜ。どんどん植物は枯れて、砂ばっかりになって」
「へぇ……」
「ニコは知らないの? その辺りの事情」
「知らないよ。田舎には、王都の話なんてそうそう入ってこないから」
私はゴードンに、再度視線を移した。
「砂漠化の理由はわかってるんですか?」
「さあ。わかっているなら、とっくに戻ってるんじゃねえか? 王都の住民は、昔の王都に戻ることを願ってるよ。だから俺たち砂出しは、渋い目で見られるんだ」
自棄のような勢いで、ゴードンがカップを傾ける。「熱い」と顔を歪めた。
「どうして? 街に貢献してるのに」
「砂漠化に迎合した、って思われるからじゃないかしら」
「そうなんだ……こんなに大変な仕事なのにね」
ニコの言葉に、ゴードンが深く頷く。
「だから、皆辞めて行くんだよ。労力の割に、報われないってさ」
なるほど。なんとなく、事情が掴めてきた。
「少なくとも労力の部分は、減らしていけるわね。楽しみだわ」
「そうだね。俺も実感したけど、魔法って、使えるとすごく楽だから」
「俺は、奴らが報われると良いと思っているんだ。だから、お前達には期待している。砂出しの連中が皆魔法使って作業を始めたら、王都の住民は、驚くだろうな」
「そうよ。すっごく、驚くと思うわ」
何しろ、砂出しは魔法を使えない人がなる、不遇な職業のはずなのだ。
彼らが、自分に向けられる評価の変容を感じ、顔つきを変えて働き始める姿が、ありありと想像できる。
「早く帰って来ないかしら」
楽しみだ。少しぬるくなったミントティーをごくん、と飲み干しながら、私は彼らを待った。
「おう。今さっき、全員魔法が使えたと言って、出て行ったぞ。入れ違いだな」
詰所に戻ると、そこにはゴードンだけがいた。彼は片手を挙げて挨拶し、そう付け加える。
「全員使えたんですね!」
「だいぶ苦戦していたが……あいつら、なかなかのチームワークだったぞ。うまく行かないと、互いに意見を出し合って」
「良かった」
三人寄れば何とやら。リック、キータ、ミトスの三人で、分担せずに任せたのは、その方がうまくいくと思ったからである。彼らはそれぞれタイプが違う。ひとりだと視野が狭くなりがちで、うまく教えられない可能性もあるが、三人いれば誰かとは相性が合うと考えたのだ。
私のアドバイスがない中でどれだけやれるかと思ったが、ともかく、最初のハードルは皆超えたようである。何よりだ。
「お前達は、街を見て回れたのか?」
「はい。見たいところは、見られました。ゴードンさん、王城付近の砂出しって、どういう風に行われているんですか?」
「あの辺りか? ああー……」
低く唸るゴードン。眉間に深く皺が刻まれる。芳しくないのは、その表情でわかる。
「本来は俺たちがやらねばならないんだが、手が足りなくてな。何しろ、十人しかいないんだ。今は、あの辺りは、教会の手を借りている」
「教会の……」
「そうだ。しかし彼らは、砂出しが本務ではない。一応彼らには砂を脇へ移してもらって、定期的に取りに行くようにしているんだが、なかなか……」
ゴードンは語尾を濁しながら、そう説明する。厳しい状況のようだ。
「そうだったんですね。教会は、自分たちが砂を扱うことから手を引くとなったとき、気にしないでしょうか?」
「気にするどころか、喜ぶだろうよ。砂を取りに行くたび、『早く人を増やせ』と言われるんだから。人を増やせって言われても、辞めるんだよなぁ……」
肺から息を絞り出すような、深い溜息。
「ちなみに、王都の奥の方は……」
「偉いさんの住んでるとこか? あそこは俺たちの管轄外だ、立ち入りは禁止されているし、どうなってるかも知らねえ」
教会が望んでしている仕事でもなく、王都の奥には触れなくて良いのなら、特に問題はない。十人全員が魔法を使えるようになった今、砂出しの問題は、やる気さえあればあっという間に解決する。
「だって、ニコ。地図、もう一度見せてもらえる?」
「いいよ。はい」
ニコが机に例の王都の地図を広げると、ゴードンは目を細めてそれを眺めた。
「ほう……これはまた、ずいぶんな年季物じゃねえか」
「ご存知なんですか?」
「もちろん。むかーしの魔導士様が作ったとかいう、古い地図だろう? 祖母が大切に持ってたさ」
昔のことを懐かしく思い出したのだろう。険しかったゴードンの顔つきが、少し緩む。
「俺の家でも、祖母が保管していました。王都に行くなら持って行けって、くれたんですよ。こっちでは、新しい地図は出てるんですか?」
「いやぁ? そういう話は聞かねえな。俺たちは街のことはよくわかっているし、別に地図なんて必要ない」
そう言うゴードンは、どこか誇らしげだ。現に、砂出しは街中の現場を回って行う仕事であるにも関わらず、地図がなくても上手く分担できている。彼の言うことは、そういうことなのだろう。
「そうですよね。でも、私たちの提案を分かりやすくするために、今回は地図を使ってもいいですか?」
「もちろん」
よいしょ、と声を出して、ゴードンが姿勢を変えた。机上に広げられた地図の上に身を乗り出し、内容を確認する。
「まず、王城のある区画以外の部分が、五箇所ありますよね」
「そうだな」
「十人いるので、二人ずつ、分担します」
「二人……? 二人で、全部をやるって言うのか?」
ぴく、とゴードンの太い眉が持ち上がる。
「今だって、十人で、この門近くの三区画ですら手が回ってないんだ。魔法がどれだけのものか知らないが、二人でひと区画なんて割り振ったら、いくらなんでも、俺たちの仕事は崩壊するぞ」
「崩壊しないように、今魔法を教えているんですよ。ね、ニコ。今なら、このくらいの広さの場所なら、一気に砂を出せるでしょ?」
ニコは地図を覗き込み、指で測ってその大体の広さを確認する。
「そうだね。空を飛んでいいなら、できるかもしれない」
「空を飛ぶ……? 何トチ狂ったこと言ってるんだ」
「飛べるようになったんですよ、俺。空を飛ぶと、わかりにくい道順も余計な遮蔽物もないから、早く回れると思います」
「はあ……? わからねえな」
呆れた顔をするゴードンを、不思議そうに見るニコ。ほくそ笑む私。ニコにとっては、魔法の常識は、私の常識。私の常識は世間一般とはかけ離れているらしいので、ニコもこちらの仲間入りだ。
「ゴードンさんは、あの十人の性格を、よくわかっていると思うんですけれど」
「まあ、そうだな。奴らは砂出しの厳しい仕事にも適応して、俺とも付き合いがそれなりにある。よく……って程じゃねえが、どんな奴かはわかってるよ」
「ですよね。二人組にさせるなら、どの組み合わせが良さそうですか? あるいは、ここはちょっとうまくいかない……とか」
二人での作業には、ある程度の会話と連携は必要である。そこまでの相性の良さを求めているわけでもないが、トラブルを抱えた二人がいるのなら、わざわざ一緒にする必要はない。
ゴードンはあれこれと助言をしてくれ、二人組に分けるための、一応の案ができた。あとはこれをリック達に見せ、確認を取れば良い。
「お前達は、奴らが戻ってくるまで、どうするんだ?」
「こちらで待たせていただこうかと思いますが……ご迷惑でしょうか?」
「いや。それなら、茶でも飲んで待つことにしよう」
ゴードンは、がた、と重い音を立てて立ち上がる。底の厚い靴で踏みしめるたび、ぎし、と床が僅かに軋む。ガサツな音と共に、ゴードンは、取ってきたカップを私たちの前に置いた。そしてゴードンは、また棚へ向かう。
「綺麗なカップだね。繊細な模様」
「本当だわ」
ゴードンの動向ばかり目で追っていた私は、ニコの言葉で、テーブルの上のカップに目をやった。繊細な模様の描かれた、白い陶器のカップ。
「それか。本当は、城からの客人用なんだよ。勿体ないから使ってるが、割るんじゃねえぞ」
「城からの客人?」
「ああ……たまにな。王都の砂漠化は、偉いさん達も関心が高いから」
ゴードンは、ポットから湯気の立つ湯を注ぐ。ふわっと立つ湯気と、爽やかな香り。
「ミントみたいだわ」
「良い匂いだねえ」
「ミントティーだろ。飲んだことないのか?」
ゴードンが、自分用らしい質素なカップにお茶を注ぐ。ミントティー。色は普通のお茶と大差ないものの、香りが良い。昔、砂漠化していた西の領で飲んだことがあるのを思い出した。砂漠化して、あの辺りの作物が、取れるようになったのかもしれない。
「……美味しい」
湯は熱いが、口に含んだ瞬間、爽やかな冷たさが走る。喉を抜け、まろやかな爽快感が胃まで落ちる。不思議で、くせになる感覚だ。
「王都って、いつから砂漠化してるんですか?」
「いつから……そうさなぁ、俺が働き出したばかりの頃だから、二十年前くらいか?」
「二十年前……最近ですね」
「あー、もう少し経ってるかもしれないが」
私の知る王都は、緑豊かで、過ごしやすい街だった。二十年だろうが、それより少し長かろうが、大差ない。そんな短時間でこれほどまでに砂漠が広がるなんて、自然現象としてはかなりの異常だ。
「ゴードンさんは、その頃から砂出しをしてるんですか?」
今度はニコが質問する。ゴードンは「まさか」と笑った。
「砂漠化って言ったって、一晩で砂になったわけじゃねえ。砂出しが必要になったのは、ちょうど十年前くらいからだな。大変だったんだぜ。どんどん植物は枯れて、砂ばっかりになって」
「へぇ……」
「ニコは知らないの? その辺りの事情」
「知らないよ。田舎には、王都の話なんてそうそう入ってこないから」
私はゴードンに、再度視線を移した。
「砂漠化の理由はわかってるんですか?」
「さあ。わかっているなら、とっくに戻ってるんじゃねえか? 王都の住民は、昔の王都に戻ることを願ってるよ。だから俺たち砂出しは、渋い目で見られるんだ」
自棄のような勢いで、ゴードンがカップを傾ける。「熱い」と顔を歪めた。
「どうして? 街に貢献してるのに」
「砂漠化に迎合した、って思われるからじゃないかしら」
「そうなんだ……こんなに大変な仕事なのにね」
ニコの言葉に、ゴードンが深く頷く。
「だから、皆辞めて行くんだよ。労力の割に、報われないってさ」
なるほど。なんとなく、事情が掴めてきた。
「少なくとも労力の部分は、減らしていけるわね。楽しみだわ」
「そうだね。俺も実感したけど、魔法って、使えるとすごく楽だから」
「俺は、奴らが報われると良いと思っているんだ。だから、お前達には期待している。砂出しの連中が皆魔法使って作業を始めたら、王都の住民は、驚くだろうな」
「そうよ。すっごく、驚くと思うわ」
何しろ、砂出しは魔法を使えない人がなる、不遇な職業のはずなのだ。
彼らが、自分に向けられる評価の変容を感じ、顔つきを変えて働き始める姿が、ありありと想像できる。
「早く帰って来ないかしら」
楽しみだ。少しぬるくなったミントティーをごくん、と飲み干しながら、私は彼らを待った。
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