命知らずの騎士様は、鼻の利く魔女を放さない。

三歩ミチ

文字の大きさ
21 / 52
騎士団は魔女を放さない

ニーナの契約

しおりを挟む
 私はエルートの求めに応じ、騎士団を再訪した。数日ぶりの騎士団本部は、当然のことながら、何も変わりがなかった。相変わらずの張り詰めた空気に、足を踏み入れるなり、すっと背筋が伸びる。
 鞄に入っている薬草の存在が、妙に落ち着かない。薬草なんて、騎士団での生活には必要ない。お出掛けに浮かれて、余計なものまで持ってきてしまった子供みたいだ。恥ずかしいし、肩身の狭い気持ちがする。
 エルートと共に向かうのは、騎士団長の部屋だ。団長のガムリは物腰穏やかで上品な振る舞いをしているのに、底知れぬ恐ろしさがある。威圧感のある重厚な扉を、エルートがノックする。返ってくる威厳深い声に、胃が締め付けられるほど緊張する。

「やあ。待っていたよ」

 大きな机の向こうに、今日も髪を一糸の乱れもなく整えたガムリが待ち構えていた。口調は穏やかだが、その深い藍の目に見据えられると、伸びた背筋が戻らない。

「エルート」
「はい」

 名を呼んだことが、命令だったらしい。きびきびした返事を返し、エルートが取り出したのは、先程自宅で内容を確認した契約書だ。音もなく、素早く近づいて用紙を差し出すと、ガムリはそれを重々しく受け取った。

「エルートから聞いたと思うが、再度契約内容を確認してくれ。構わなければ、ここで署名を」

 今度は私がテーブルの近くに寄り、滑るように差し出された契約書を見下ろす。渡されたペンを受け取り、早速署名しようとすると、「おい」と声を掛けられた。
 びく、と肩が跳ねる。ガムリの咎める声は、心臓に悪い。

「確認してからにしなさい。君は、警戒というものを知らないのか」
「いえ……もう、内容はお聞きしていますから」 

 それに、胸元のネックレスが、彼らに悪意はないことを証明している。私のネックレスは、悪意に反応して震える青い石が付いている。この石が震えない限り、疑う必要はないのだ。
 ガムリが、机の上を指で軽く叩く。その指で、今度はくい、と引き寄せるような仕草。呼ばれた気がして顔を近づけると、ガムリは両腕を机に乗せ、上体を乗り出した。

「いくら恋仲と言えど、信頼しすぎは良くない」

 低く、囁くような声で伝えられたのは、忠告であった。

「まあ良い。構わないなら、署名をしなさい」

 元の姿勢に戻ったガムリに指示され、署名を書き入れる間も、頭には疑問符が浮かんでいた。恋仲と言えど信頼しすぎ? 誰と? 文脈からしてエルートしかあり得ないが、彼と私は恋仲ではない。何故そんな誤解が生まれるのだろうか。
 はて、とぐるぐる考えているうちにガムリとの対面は終わり、晴れて騎士団との契約を結んだ私は、エルートと共に団長室を後にした。

「飯時だ。食堂へ行こう、ニーナ」
「あ……はい」

 前を歩くエルートの後ろ姿を眺めながら、食堂に向かう。
 一歩ごとに揺れる、綺麗な金色の髪。見上げるほどに背は高く、すらりとした、それでいて屈強な体付き。纏った黒衣がよく映える、白い肌。こんな素敵な騎士様と私が、恋仲? 物語でもありえない。大層な勘違いだ。
 エルートと私の何が、ガムリの誤解を招いたのだろう。理由はわからないが、とにかく訂正しておかないと、エルートに失礼だ。彼に、私への好意はないのだろうから。彼にとって私は、魔獣を探し出すことのできる、便利な道具であろう。
 食堂に続く扉を開けると、ざわめきに出迎えられる。入り混じった食事の香り。そう言えば、食堂に人がいるのを見るのは初めてだ。この間はアテリアと一緒にずっと厨房にいたから、食堂の様子はよくわからなかった。
 エルートと共に、中に入った。食器を下げる棚の脇を通り過ぎると、その奥に食事用の広間がある。

 広間に一歩、入った瞬間。
 明らかに一瞬、ざわめきが鎮まり、複数の視線がこちらに集まった。
 それは一瞬のことで、すぐに慌ただしく賑やかな食事風景が再開される。しかし何だか、私は落ち着かない気分だった。

 私が珍しい存在なのは、わかる。注目を集めるのも、まあわかる。魔獣を見つける力というのは、騎士団内では重宝されるらしい。それに、女で、騎士でもないのにここにいるのは、私以外にはアテリアしか出会ったことがない。珍しいと消えよう。
 だとしても、今の注目の集まり方は、さすがに妙だった。食堂に入るだけで、あそこまでの注目を浴びてしまうとは。
 先行きが不安になる私の隣で、エルートは唇を歪め、後頭部に手を添えた。

「予想以上の広まりだな」
「エルートさん、何か知ってるんですか?」
「ああ。食いながら説明する」

 エルートの言葉に合わせるように、ばんっ、と勢い良く厨房の扉が開いた。

「あらっ、ニーナ! また会えて嬉しいわ! どこに座るの、あそこで良い? 置いとくからね!」

 アテリアはその力強い腕に、大盛りの食事を4人分載せ、せっせと運んでいる。空席に勢いよく置かれた食事が、私たちのものらしい。

「またゆっくり話しましょ! さあさ、温かいうちにお食べなさいよ!」

 厨房に戻りがてら、アテリアは威勢よく声を掛けて去る。相変わらず、元気な人だ。あの忙しい厨房をひとりで何とかしていると思うと、その勤勉さにますます感心する。
 私とエルートは、壁際のテーブルに、対面して座った。それぞれ置かれた料理は、今日も肉がどーんと載った豪快なもの。エルートは肉ばかりだと文句を言っていたが、厨房の惨状を見た私は、文句を言う気になれなかった。これだけの人数の食事を、アテリアはひとりで作っている。ソースが美味しくて、肉もよく煮えている。十分以上。満足すべきだ。

「……それで、さっきの話だが」

 肉を切り分け、飲むように食べながら、エルートが合間に話を切り出す。ずいぶん食べ進むのが早い。私は置いて行かれないように必死で肉を食べながら、目と耳だけ彼の方に向けた。

「今朝、王宮騎士団の朝礼で、俺の恋人である通称『カプンの魔女』が魔獣討伐に協力するため、宿舎に泊まると発表された。一般人でなくゆくゆくは騎士籍に入る者だから、丁重に扱えと」
「げほっ」

 涼しい顔で放たれた衝撃的な言葉の数々に、私は思わず喉に肉を詰まらせた。咳き込み、胸をどんどん叩き、水を飲み干す。ようやく人心地付くと、エルートはさらに言った。

「昼食時には、俺の同僚が、他の騎士たちに同様の話をしているのを耳にした。そして、今の反応だ。俺たちの関係は、そういうものとして、騎士団中に広まったと考えて良い」
「えぇ……エルートさんは、訂正なさらなかったんですか?」
「しないさ。団長がわざわざ、そう発表したんだ。何か理由があるのだろう。俺も考えてみたが、確かに君が独身の女性としてここにいるのは、良くないことのように思える」

 そう言われてみれば、確かにそんな気はする。独身の一般女が騎士団の宿舎にいるというだけで、外聞に関わるだろう。嫌な顔をする人もいるだろう。ただ。

「あなたと恋仲にある人間としてここにいるのも、良くないことだと思うのですが」

 さっきの反応を見るだけで、そうだと言える。ガムリの勘違いによって、私だけでなく、エルートまで変な目で見られている。それに、第一、恋仲だなんて嘘じゃないか。嘘がばれたら、彼は信頼を失ってしまう。私だって、申し訳なくていたたまれない。

「君にとっては、良いんじゃないか? 騎士といっても、色々な奴がいる。一般人と見て粗雑に扱おうとする輩は、王宮騎士である俺の名があれば引くだろう」
「ですが……」
「案ずるな、俺は構わない。君を巻き込んだのは俺だ。せめて君が困った立場に置かれないよう、全力で守ると誓うよ」

 私は以前、エルート達と共に魔獣討伐に向かった時のことを思い出す。レガット達仲間が町に挨拶に行って、エルートと二人きりになった時、彼は私に考える猶予をくれた。あの日、「やはり魔獣は見つけられない」と言いさえすれば、騎士団を再度訪れることはなかった。彼らの求めに応じ、魔獣を見つけ出して、巻き込まれることを決めたのは私だ。なのにエルートは、責任を感じてくれているらしい。
 優しい人なのだ。
 私みたいな一般人と恋仲扱いされるなんて、不本意なことこの上ないだろうに。エルートの表情からは、嫌そうな気配など漂っていない。
 いろいろと考えて、食べる手が止まる。エルートは、「もう無理なら貰うぞ」と言って皿の上の肉を取っていった。
 騎士仕様の大盛りは食べられないから、彼が代わりに食べてくれるのはありがたい。ただし、隣のテーブルにいる騎士が、私の食事を取って食べるエルートを見て「おお」みたいな顔をしたのを、目撃しなければの話だ。もちろん、知らない騎士だ。
 ああ、これはもう、誤解は完全に広まっている。いずれにせよ、今更否定はできなさそうだ。私は確信し、がくんと頭を下げた。

「あれ? 魔女さんじゃん、早かったね」

 頭に軽い感触があったかと思うと、くだけた口調で話しかけられた。

「……レガットさん」
「正解。よく覚えてたねえ」

 頭に載ったままの手で、髪をぐしゃっと乱される。触られてる。何で? 意味がわからないままに彼を見ていると、エルートが「おい」と不機嫌そうな声を出した。

「手。気安く触るな」
「おっと。悪いね、僕はこれが素だからさ。そうそう、驚いたよ、あの葉っぱ。手の傷が、すっかり治った」

 私の頭から手を外したレガットは、手のひらをこちらに見せてくる。つるんとした綺麗な肌が、そこにはあった。
 前回の討伐で手のひらに傷を負ったレガットに、私は薬草で応急処置をした。母に教わった薬草の効果があったとわかり、嬉しい気持ちになる。

「あれ、何て薬草なの? 知ってたら、応急処置に役に立つよね」
「名前は知らないんです。私は、母にその効果しか教わっていなくて」
「お母様も、君と同じ力があるんだっけ。きっと、君に似て可愛らし」
「レガット」

 レガットの言葉に重ねるようにして、再度、エルートが咎める声を出す。レガットはやっと言葉を止め、おどけた顔を作って肩をすくめると、私にウィンクして去っていった。私がやると道化にしかならない表情も、顔の整った人がやると様になるのだから憎い。

「あいつは、団長からの発表の後、『恋仲にある相手を袋に入れて運ぶなんてありえねえ』と言っていた。信じていないよ」
「ああ、だから……?」

 だからあの態度なのか、と言いかけて、それもおかしいなと首を傾げた。エルートと私が恋仲でないとして、彼がやたらと頭を触ってきた意味がわからない。「これが素」という言葉が本当なら、ずいぶん女たらしな素だ。あんな態度を取っていたら、女性に好かれすぎて収拾がつかなくなりそうなものだが。

「何にせよ。俺の名前は、自分を守るために使ってくれればいい」

 エルートは、空になった皿を持ち、そのまま立ち上がる。私は、後に続いた。
 少し遅く食堂に入ったからか、気付けば周りにいた騎士たちは既にどこかに移動していた。食器棚に皿を戻しながら、エルートが溜息をつく。

「この時間の温泉は、嫌いなんだよなあ……」
「え、どうしてですか?」

 あんなに綺麗で、素晴らしい空間なのに。私が聞くと、エルートは顔をしかめる。

「あの狭い空間に、何人も殺到するからさ。ああ、君はアテリアと二人だから、わからないのか。……ちょっと散歩しよう、時間稼ぎに」

 お腹がいっぱいで、少し歩きたい気分だった。エルートに誘われるまま、部屋ではなく、玄関の方向に曲がる。
 薄暗い廊下を抜け、外に出る。宿舎から漏れるほのかな明かりはあっても、それ以上に外は暗かった。特に、建物を囲う森は、真っ暗だ。不気味な獣の鳴き声が、遠くから聞こえる。

「夜風はまだ心地良いな」
「そうですね。もう暫くすると、夜も暑くなりますから」

 緑盛る季節の半ばに差し掛かると、日差しは厳しくなり、夜になっても空気が冷えない。しかしまだ、夜風は生温く、心地良く頬を撫でて行った。
 エルートの金の髪は、星明かりに照らされて薄らと白く光っている。

「君の髪は夜空のようだな。深い藍色は、今の空によく似ている」
「……ありがとうございます」

 エルートは、歌うように言葉を紡いだ。何だろう、この妙に幻想的な雰囲気は。普通の散歩のつもりだったのに、夜風があんまり心地良くて、私は落ち着かない気分になる。対するエルートは、鼻歌なんか歌って、楽しげだ。

「すまなかったら、レガットに絡まれて。俺がもう少し、強めに牽制しておくべきだった」
「いえ。お二人は、関係が良くないのですか?」

 あのレガットの挑発的な物言いといい、エルートの口ぶりといい。良くないとしか思えない関係を問うと、エルートは「まあね」と曖昧な肯定をした。

「あいつは俺が気に食わないんだよ。俺も、あいつの打算的な態度は気に食わない。ただ、ニーナが心配するようなことじゃない。……この辺を一周しようか。ゆっくり歩いていれば、良い暇潰しになる」

 歩いているとひんやりとした風が吹き、森の木々がそよそよと揺れる音がする。森に囲まれたこの辺りはとても静かで、自分たちの足音だけが聞こえる。
 見上げた空には星がきらめいていて、とても良い時間だった。満腹だったお腹もだんだんとこなれ、代わりに少し眠くなってくる。
 欠伸を噛み殺していると、隣でエルートが盛大に欠伸をした。その欠伸を聞いて、彼に白い花を渡したことを思い出す。
 今日は私も、あの白い花を壁に飾って眠るつもりだ。彼と同じ香りを嗅ぎながら寝るというのは、何だか少し、心がくすぐったいような気分がする。

「おやすみ、ニーナ」
「おやすみなさい」

 一人暮らしでは誰とも交わさない挨拶を交わし、散歩を終えた私たちは、それぞれの部屋に帰った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。 ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。 想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。 イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。 8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。 ※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。

【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜

二位関りをん
恋愛
ナターシャは皇太子の妃だったが、数々の悪逆な行為が皇帝と皇太子にバレて火あぶりの刑となった。 処刑後、農民の娘に転生した彼女は山の中をさまよっていると、狼男のリークと出会う。 口数は少ないが親切なリークとのほのぼのスローライフを満喫するナターシャだったが、ナターシャへかつての皇太子で今は皇帝に即位したキムの魔の手が迫り来る… ※表紙はaiartで生成したものを使用しています。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

婚約破棄? 国外追放?…ええ、全部知ってました。地球の記憶で。でも、元婚約者(あなた)との恋の結末だけは、私の知らない物語でした。

aozora
恋愛
クライフォルト公爵家の令嬢エリアーナは、なぜか「地球」と呼ばれる星の記憶を持っていた。そこでは「婚約破棄モノ」の物語が流行しており、自らの婚約者である第一王子アリステアに大勢の前で婚約破棄を告げられた時も、エリアーナは「ああ、これか」と奇妙な冷静さで受け止めていた。しかし、彼女に下された罰は予想を遥かに超え、この世界での記憶、そして心の支えであった「地球」の恋人の思い出までも根こそぎ奪う「忘却の罰」だった……

大魔法使いは、人生をやり直す~婚約破棄されなかった未来は最悪だったので、今度は婚約破棄を受け入れて生きてみます~

キョウキョウ
恋愛
 歴史に名を残す偉業を数多く成し遂げた、大魔法使いのナディーン王妃。  彼女の活躍のおかげで、アレクグル王国は他国より抜きん出て発展することが出来たと言っても過言ではない。  そんなナディーンは、結婚したリカード王に愛してもらうために魔法の新技術を研究して、アレクグル王国を発展させてきた。役に立って、彼に褒めてほしかった。けれど、リカード王がナディーンを愛することは無かった。  王子だったリカードに言い寄ってくる女達を退け、王になったリカードの愛人になろうと近寄ってくる女達を追い払って、彼に愛してもらおうと必死に頑張ってきた。しかし、ナディーンの努力が実ることはなかったのだ。  彼は、私を愛してくれない。ナディーンは、その事実に気づくまでに随分と時間を無駄にしてしまった。  年老いて死期を悟ったナディーンは、準備に取り掛かった。時間戻しの究極魔法で、一か八か人生をやり直すために。  今度はリカードという男に人生を無駄に捧げない、自由な生き方で生涯を楽しむために。  逆行して、彼と結婚する前の時代に戻ってきたナディーン。前と違ってリカードの恋路を何も邪魔しなかった彼女は、とあるパーティーで婚約破棄を告げられる。  それから紆余曲折あって、他国へ嫁ぐことになったナディーン。  自分が積極的に関わらなくなったことによって変わっていく彼と、アレクグル王国の変化を遠くで眺めて楽しみながら、魔法の研究に夢中になる。良い人と出会って、愛してもらいながら幸せな人生をやり直す。そんな物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

【完結】第一王子と侍従令嬢の将来の夢

かずえ
恋愛
第一王子は、常に毒を盛られ、すっかり生きることに疲れていた。子爵令嬢は目が悪く、日常生活にも支障が出るほどであったが、育児放棄され、とにかく日々を送ることに必死だった。 12歳で出会った二人は、大人になることを目標に、協力しあう契約を交わす。

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

処理中です...