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キャンバス
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レイ、ある事を思い出したんだ。中国人女のモデルの事さ。背中に鹿のタトゥーを入れた女だよ。一度そいつのインスタライブを見に行った事がある。視聴者がコメントして、時折、女が質問に答えたりしてたんだ。流れるコメント欄の中から女は、健康でいる為に必要なことはって質問に答えた。それは動くことだって言ったんだよ。どういうことだかわかる?運動しろってことじゃないよ、新しい場所に行けってことだ。同じ景色を見ていても何も生まれないんだ。レイ、おれはずっと誰かにここから出してくれって言ってたんだ。この淀んだ空気が漂う沼みたいな自分の部屋から手を引かれて違うものを見に行きたかっただけだったんだ。お前が話してくれた白いキャンバスの話だよ。おれはもう1人でここから出られないよ。レイがあれだけおれに気付けをくれても沼にはまった足を引っこ抜く力がもうないんだ。セローに乗っかって鳥取砂丘を爆走したいって言ったら、ダメに決まってるって言って笑いあったろ。でも全然なんだ、新鮮な空気を吸いに行くのを身体が拒否してるみたいでさ。怖いよ。新しい場所が怖いんだ。見るべきことに目を向けるのが本当に嫌なんだ。けどね、怖がってる本当の理由は1人であることが自分にバレるのが怖いんだ。1人で砂丘のてっぺんにいるなんて物語の人物ならそいつはその晩、星を見ながら仰向けのまま死ぬだろうからな。今頃中国人女のモデルはまた新しいことをしてるはずだよ、世界が広がって見たものをまたインスタにあげるだろうなあ。いいなあ。おれも鳥取砂丘を見てみたいよ。でも1人じゃきっと行けないよ。レイ、おれを連れ出して欲しいんだ。砂丘を見に行こうよ。250ccじゃキツいかな。ゆっくりでもいいだろ?店の張り紙はおれが書いてやるよ。白いキャンバスに描くものを一緒に見に行きたいんだ。
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