3 / 6
雪かきは大変
しおりを挟む
コーヒーメーカーが湯気を吐き出す音がする。若干の気だるさと布団に包まれた心地よい感触を楽しみながら、右手を探るように伸ばした。そこにあった筈の温もりは既に失われており、名残惜しさを感じながら目を開ける。
「おはよう」
起き上がりベッドから出ると、そう声をかける大神さんを一瞥すると返事もせずに洗面台へと向かう。新品のフェイスタオルと歯磨きセットが用意されていた。水の冷たさに少し怯んでしまうが、顔を洗うと眠気に包まれた甘皮が剥がれていくようにさっぱりとした気分になった。
「はい、コーヒーでよかったかな」
部屋に戻ると、テーブルの上に並んだマグカップからつぷつぷと音を立ててコーヒーが湯気を立てていた。息を吹きかけてから口に含むと舌の上に苦味が広がる。ちびちびとコーヒーを飲んでいると、やがてカフェインが血に乗って巡り始めたのか、徐々に思考回路が明瞭になってきた。昨日のように感情的にならないよう、出来るだけ冷静でいられるように思考を巡らせた後に、目の前でコーヒーを啜る大神さんに声をかけた。
「あの、昨日はすみませんでした」
大神さんの表情は読み取れない。
「でもやっぱり、おかしいですよこんなの。それに警察とか…」
神隠しがまかり通っていた時代とは違うんだ。家族がいて、戸籍があって、仕事もしている"人間"がいとも簡単に消えてしまうなんて事をこの社会は許してくれないだろう。捜索願が出されるのは時間の問題で、そうなれば搭乗記録や監視カメラの映像が調べられて、目撃者への聞き込みなんかも行われるだろう。
「それは…」
そう言ったきり黙ってしまった大神さんに業を煮やしてしまわぬ様に、言葉を選びながら続ける。
「僕が隙を見計らって逃げ出して、警察を呼んだらどうするつもりなんですか?」
人狼なんてものが存在するくらいだ、何か超自然的な、魔法や魔術といった類のものでどうにかしようというのだろうか。大神さんは口を開きかけるが、小さく唸ってまた黙ってしまう。その態度に少しずつまた怒りがこみ上げてくる。嫌味の一つでも言ってやりたくなった。
「それともやっぱり、僕のこと喰い殺すんですかねえ?」
「そんなことはしない」
僕の皮肉めいた口調に顔色を変えることもせず、間髪入れずに否定される。それでも、僕の疑問は何一つ解決されていない。
「じゃあ、だったら!」
チーン…
語気を荒げ始めた僕の声を遮るように、古びたトースターから間抜けな音がした。
「ごはん、食べよう?」
仏頂面でトーストを齧っていると、先ほどまでの怒りがバターのように溶けて流れていく。もちろん腹が減っていたというのはあるが、あのまま食事を拒否してまで碌に成立もしない話し合いをする事が不毛に思えてならなかった。トーストをコーヒーで流し込みながら、小さい頃にこうして家族で朝食を囲んだ事を思い出した。就職して一人暮らしを始めてから、もう何年もこうして誰かと朝食を食べる事なんて無かったな…
「ごちそうさまでした」
そう言って手を合わせてから、顔を上げて大神さんを見る。食事による一時休戦が終わったと踏んだのか、大神さんの眉毛がピクリと片方動いた。だが僕だってそこまで厚かましくは無い。いくらこんな理不尽な状況に置かれているからといって、一宿一飯の恩義を忘れたりはしないんだ。野良犬だって、餌をくれる人間に牙を剥いたりはしないだろう。こういう状況でこそ人間性が必要なのだ。
「雪かき、するから、教えて」
カタコトのような言葉に大神さんは面食らった表情をしている。
「あー、いや、食べた分くらいは…あと、それに、どうせ暇だし?」
「あ、別に逃げたりとかじゃなくて、その」
「うん、ありがとう」
大神さんは頬を緩める。洗い物済ましている間に着替えておいで、という大神さんの言葉を聞いて、まず洗い物をすることを申し出るべきだったと後悔した。窓の外を眺めるとちらちらと雪が降っていて、景色を真っ白に染め上げていた。これは厚着しないと寒そうだ。
手早く洗い物を終えた大神さんは、着膨れして雪だるまのようになった僕を見ると思わず苦笑いをした。
「はい、汗かくからタオルもね、あと長靴は僕のがサイズ合うかな…」
玄関で長靴を履き終えると、手袋とニット帽を渡される。なんだか登校前の小学生になったようだ。
「じゃあ、吉川くんはママさんダンプでお願いね」
「ママサン…?」
聞きなれない単語に首をかしげる。
「あぁ、これね」
大神さんが指差した先には、プラスチック製の大きなちりとりのような物があった。取って付きのソリというか、まあ雪かきには便利なんだろう。それにしても、ママさんダンプって変わった名前だな。今川焼きの事を僕の地元では御座候って呼んでいたけど、それと似た様なものだろうか。準備体操もしないと危ないからね、と促されて身体を伸ばしたり屈伸しながら考える。
「…さっむ!」
玄関を出てしばらくの間は、部屋の暖房と厚着した服のおかげで冬の北海道も大した事ないじゃないかと高を括っていたのだが、呼吸するごとに肺から熱が奪われて、耳は帽子をしていても千切れる様に痛い。
「じゃあ、まず玄関からだけど、こうして雪を…」
「…あっつ…」
石の様に重たい雪を運びながら、汗だくになっていた。ニュースか何かで、高齢化が進んだ東北の集落で雪かきする人が少なくなって、ボランティアを募集しているといった話を見たが、確かにこれは骨の折れる重労働だ。
ひとしきり僕に手順を教えた後、大神さんは屋根の雪を下ろしに向かった。危ないから近づいちゃダメだよと言われたので、屋根から離れた場所で排雪場所までママさんダンプを押しながら大神さんを見やる。手慣れた様子でメレンゲのケーキの様に雪を切っていくのを眺めていると、大神さんから無理しなくていいよと声がかかった。
「大丈夫です!」
何故かムキになった僕は、汗をかきながら雪を運び続けた。
「おつかれさま」
雪かきを終えて疲労でぐったりとしていると、大神さんがホットココアを差し出してきた。甘くて美味しい。汗が引いて冷えてしまった身体に温もりが染み込んでくる。それからソファーに腰掛けて、テレビを眺めているうちに瞼が重くなってきて泥のように眠ってしまった。
紙をめくる音に目を覚ます。
「あぁ、起こしてしまったね」
大神さんは僕の隣に腰掛けて何かの本を読んでいた。
「いえ、大丈夫です…」
あくびをして時計を見ると、もうお昼といった所だ。普段から運動をしない僕にとっては、たったあれだけでも大変な作業だった。これから慣れていかないとな、とふいに浮かんだそれを頭を振って追い出した。
昼食を終えた後、暇を持て余した僕はまたソファーに座りながら考えていた。先ほどと同じように大神さんは僕の隣で小説か何かを真剣な表情で読んでいる。人里離れた山奥に隠れるように住んでいるとはいえ、ずいぶん近代的な生活をしている。家電だってあるし、車も持っている。一体どうやって生活しているんだろうか。仕事は何をしているんだろう、今は冬休みなだけなのだろうか。家族はいるのか、どんな生い立ちなのか。色々と聞きたい事がある。まずはどれから聞くべきだろうか。
「ん?」
じっと顔を眺めていた僕に気がついた大神さんは、まるで犬のような表情で首をかしげる。
「何か、本読んでも良いですか?」
どうせ時間は沢山あるんだ。今聞かなくてもいいさ。快く了承を得て本棚を見ると、辞書に図鑑、小難しそうな専門書に続いて伝記小説や文芸本が綺麗に整理されて並んでいる。勤勉な人、もとい人狼なんだなと感心していると、自分の好きな作家の本を見つけたので手に取った。
「その本、好きなの?」
頷くと、大神さんは少し嬉しそうだった。二人して並んで黙ったままページをめくる。まあ、こんなのも悪くは無いかな。
そうして一日を終えて、寝る支度をしながら外を見ると、月が煌々と輝いていた。
「あ、月…」
綺麗に出てますね、と言おうとしたら、大神さんはしまったというような表情をした。
「う…うう…がう…」
苦しそうな声を出しながら、みるみる身体を変形させていく。ああ、月と人狼は切り離せないもんな。満月を見てオオカミに変身するなんて、古典ホラーでも使い尽くされた…どこか他人事のようにそれを眺めていた。あ、下着破れちゃったよ。
「っは…ごめ…ん、月っ…みるとっ…」
喘ぐように声を絞り出す。完全に人狼そのものに成り代わった大神さんを見ながら僕の心には、恐怖や怒りよりも、宿命と本能に囚われた哀れなそれへの同情に近いものがあった。
「おいで」
飼い犬を呼ぶように両手を広げて呼ぶ。大神さんは戸惑った様にその場で立ち尽くしている。
「ほら、だいじょうぶだから」
もう一度呼びかけると、葛藤しながらもじりじりと歩み寄って来てゆっくりと労わる様に僕をベッドへと押し倒した。
「ダメなんだ…ぐるっ、月が…我慢できなくて…」
もどかしそうに僕の服を慎重に脱がせながら、精一杯の弁明をしてみせる。僕はされるがままに抵抗もせずに全裸に剥かれてしまう。大神さんは遠慮気味にゆっくりと覆いかぶさって僕の首元へと鼻を寄せる。
すん…くんくん
「んっ…」
鼻息のくすぐったさと、掛け布団のように全身を覆う獣毛から伝わる温もりに声が漏れる。まるで犬の、人狼の野生的な匂いに徐々に僕も段々と溺れ始めて、背中に手を回してゆっくりと撫でた。
「ふーっ、はぁ…がる…ああ…」
耳元で大神さんが切なそうな声を出している。そのまま撫で続けていると、声には艶かしさが混じり始めてくる。
ぬちゅ…
大神さんの体毛から伝わる体温よりも、更に熱いものが腹に触れて粘り気のある音を立てる。
「ぐるるっ…はぁ…すんすん…」
にちゅっぬる…ぴちゃっ
大神さんの、人狼の熱いちんぽが腹に擦り付けられる。先走りで滑りの良くなったそこに突き立てるように、匂いを嗅いでは唸り声を上げてへこへこと腰を振る。腹の上を熱を持った堅いちんぽが往復し水音を立てながら腹を汚していく。その堅さで突き破られるんじゃないかと強く押し当てられるのだが、同時にもった柔らかさと先走りでにゅるりと腹の上を滑って胸のあたりまでちんぽが届きそうだ。
「ふーっ、ふーっ…」
にゅっ、にゅっ、ぬるんっ
先走りが泡だてられたのか、淫臭が漂い始める。獣臭とちんぽの匂いが混ざり合って、ふわふわとした毛の感触と火傷しそうなほど熱をもったちんぽの感触に、僕のちんぽもぱんぱんに勃起して悦びの先走りを撒き散らす。互いのちんぽが擦れ合って、二人分の先走りが音を立てる。
ぬちょっぬちょっちゅっちゅっ
「あぁ…ちんぽすごいぃ…」
腹はびちょびちょに濡れて、ちんぽ同士がキスしているかのような音が響く。
「ぐる…う、もう我慢が…」
大神さんは苦しそうに、腰を一層激しく振りながら匂いと腹の感触を貪り続ける。
「がうっ!ぐるるる…」
「いっ…!?」
鋭い痛みに悲鳴を上げた。鋭く突き刺すような痛みが肩口を襲う。大神さんは依然として腰を振り、荒い呼吸をしながらも僕に喰らいつく。熱く湿り気を帯びた吐息を感じる。
ぐぐぐ…みちっ…
顎に更に力が込められて、大きな犬歯が皮膚を破いていく。
「あっ、ああぁ!!」
叫んでもそれは止まらずに、千切れそうな痛みに意識が白みちんぽも萎え始める。唾液か、血か、痛みによる錯覚なのかわからない、どろりとした濡れた感触。荒い息と、獣の唸り声と、ちんぽが擦れる音。生理的反応からか涙が溢れる。ああそうか、人狼は月で理性を失ってしまうのか。そうして翌朝無残な死体を見て、どうしてこうなってしまったのかと後悔する、昔見た映画ではそんな筋書きだったな。
「ぐるる…ふーっ…うっ、ぐうっ」
薄れ始めた意識の中でゆっくりと視線を落とすと、大神さんは泣いていた。恐ろしい、人喰いの人狼の形相にはそれは似つかわしくなかった。
「うっ、ふうっ…ぐっ…う」
ああ、どうしてそんなに泣いているんだろう。いっそ僕の事なんか、喉笛を喰いちぎってしまえばいいのに。どうせ死んでしまうのなら、美味しく食べて欲しいな。防衛本能から脳がそうさせたのだろうか、多量に分泌された脳内麻薬で痛みとともに生への執着薄れ始めた。ゆっくりと大神さんの頭へと手を伸ばす。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ…」
子供に言い聞かせるようにして頭を撫でる。頭に触れた瞬間、大神さんは身体を固くしたが撫で続けていると徐々にほぐれていく。強張った筋肉が弛緩してゆき、ピンと張った耳も伏せられていく。肩にきつく食い込んだ犬歯も凶暴さを失っていった。
くうん
甘えるように鼻を鳴らして顔を擦り付ける。うっとりと目を細めてひとしきり楽しんだ後、大神さんは慌てて口を離して身体を起こした。
「あ、あ…すま、ない…私は…」
起き上がりベッドから離れようとした大神さんの腕を掴んで引き寄せる。バランスを崩して倒れ込んだ大神さんの頭を撫でて、また先ほどと同じ体勢へと誘導する。
「痛かっただろう…」
そう言って、血が滲んでいる肩の噛み跡をぺろぺろと舐める。舌が這う度に、痛みとくすぐったさが混じり合う。
「本当にすまな…んあっ」
手を伸ばして、謝罪を始めた大神さんのちんぽを掴む。
ぬちゅ、にちゃっ
ちんぽはまだ硬さを失っておらず、先走りに濡れてぬるついている。熱い脈動を手のひらに感じる。
「あっ、だ、ダメだっ」
静止の言葉もかまわずちんぽを手で擦り上げ、亀頭の先を僕の腹で撫で回すように押し付ける。
ちゅぴっ、ぬちょっぐちょ
「んおっ、ほっ、あふっ…」
僕の手の動きに連動するように腰が振られる。手の中で先走りを泡だてながらちんぽが往復する。大神さんは目を閉じ口を食いしばりながら快楽に耐える。
ぐっちょぐっちょにゅちゅっ
「おっ、あ、あっ」
ちんぽを強く握り、より激しく手を動かすとぴゅっと先走りが飛び出た。とめどなく供給される先走りでローションをまぶしたようになっている。空いている手で大神さんの腰を抱き寄せると、互いの腹でちんぽが挟まれる。柔らかな腹の毛は先走りで濡れそぼりぬるついて、一層ちんぽに刺激を与える。
「も、もう…」
腹の上でちんぽが大きく膨らんで、射精が近いことを知らせる。トドメとばかりに尿道口を爪先で軽くほじる。
にゅっにゅっ、ぐりゅっ
「はぁっ、んっ!」
びゅびゅっ、びゅーっ
ちんぽが跳ねて、互いの腹に精液を撒き散らしていく。吐精する間もちんぽを擦り上げる手は緩めない。
ぬちっびゅるっ…ぐちょっ、ぴゅっびゅぶっ、ちゅこっちゅこっ、ぴゅっ
「あっ、あっ、あぁ…」
ちんぽの匂いよりも何倍も濃い精液の匂いが、胸元から熱気に乗って上がってくる。僕の腹は精液で水たまりのようになっていることだろう。
「はあ…はぁ…」
ぴゅ、と最後に精液を吐き出した後、大神さんはぐったりと倒れ込んだ。しばらく呼吸を整えた後、身体を起こそうとした大神さんをぎゅっと抱きしめる。
「しゃ、シャワー…」
抱きしめる手の力を更に強くすると、大きくため息をついて僕を掴み、寝返りを打つように身体をひっくり返して僕が大神さんに覆いかぶさる形になった。
腹を濡らす大量の生暖かい精液の感触に、不思議と気持ち悪さはあまり感じなかった。大神さんの寝息を聞きながら、ゆっくりと上下する胸の動きに安心感を覚えた。明日の朝、毛にこびり付いて固まった精液を落とすの手伝ってあげよう。
「おはよう」
起き上がりベッドから出ると、そう声をかける大神さんを一瞥すると返事もせずに洗面台へと向かう。新品のフェイスタオルと歯磨きセットが用意されていた。水の冷たさに少し怯んでしまうが、顔を洗うと眠気に包まれた甘皮が剥がれていくようにさっぱりとした気分になった。
「はい、コーヒーでよかったかな」
部屋に戻ると、テーブルの上に並んだマグカップからつぷつぷと音を立ててコーヒーが湯気を立てていた。息を吹きかけてから口に含むと舌の上に苦味が広がる。ちびちびとコーヒーを飲んでいると、やがてカフェインが血に乗って巡り始めたのか、徐々に思考回路が明瞭になってきた。昨日のように感情的にならないよう、出来るだけ冷静でいられるように思考を巡らせた後に、目の前でコーヒーを啜る大神さんに声をかけた。
「あの、昨日はすみませんでした」
大神さんの表情は読み取れない。
「でもやっぱり、おかしいですよこんなの。それに警察とか…」
神隠しがまかり通っていた時代とは違うんだ。家族がいて、戸籍があって、仕事もしている"人間"がいとも簡単に消えてしまうなんて事をこの社会は許してくれないだろう。捜索願が出されるのは時間の問題で、そうなれば搭乗記録や監視カメラの映像が調べられて、目撃者への聞き込みなんかも行われるだろう。
「それは…」
そう言ったきり黙ってしまった大神さんに業を煮やしてしまわぬ様に、言葉を選びながら続ける。
「僕が隙を見計らって逃げ出して、警察を呼んだらどうするつもりなんですか?」
人狼なんてものが存在するくらいだ、何か超自然的な、魔法や魔術といった類のものでどうにかしようというのだろうか。大神さんは口を開きかけるが、小さく唸ってまた黙ってしまう。その態度に少しずつまた怒りがこみ上げてくる。嫌味の一つでも言ってやりたくなった。
「それともやっぱり、僕のこと喰い殺すんですかねえ?」
「そんなことはしない」
僕の皮肉めいた口調に顔色を変えることもせず、間髪入れずに否定される。それでも、僕の疑問は何一つ解決されていない。
「じゃあ、だったら!」
チーン…
語気を荒げ始めた僕の声を遮るように、古びたトースターから間抜けな音がした。
「ごはん、食べよう?」
仏頂面でトーストを齧っていると、先ほどまでの怒りがバターのように溶けて流れていく。もちろん腹が減っていたというのはあるが、あのまま食事を拒否してまで碌に成立もしない話し合いをする事が不毛に思えてならなかった。トーストをコーヒーで流し込みながら、小さい頃にこうして家族で朝食を囲んだ事を思い出した。就職して一人暮らしを始めてから、もう何年もこうして誰かと朝食を食べる事なんて無かったな…
「ごちそうさまでした」
そう言って手を合わせてから、顔を上げて大神さんを見る。食事による一時休戦が終わったと踏んだのか、大神さんの眉毛がピクリと片方動いた。だが僕だってそこまで厚かましくは無い。いくらこんな理不尽な状況に置かれているからといって、一宿一飯の恩義を忘れたりはしないんだ。野良犬だって、餌をくれる人間に牙を剥いたりはしないだろう。こういう状況でこそ人間性が必要なのだ。
「雪かき、するから、教えて」
カタコトのような言葉に大神さんは面食らった表情をしている。
「あー、いや、食べた分くらいは…あと、それに、どうせ暇だし?」
「あ、別に逃げたりとかじゃなくて、その」
「うん、ありがとう」
大神さんは頬を緩める。洗い物済ましている間に着替えておいで、という大神さんの言葉を聞いて、まず洗い物をすることを申し出るべきだったと後悔した。窓の外を眺めるとちらちらと雪が降っていて、景色を真っ白に染め上げていた。これは厚着しないと寒そうだ。
手早く洗い物を終えた大神さんは、着膨れして雪だるまのようになった僕を見ると思わず苦笑いをした。
「はい、汗かくからタオルもね、あと長靴は僕のがサイズ合うかな…」
玄関で長靴を履き終えると、手袋とニット帽を渡される。なんだか登校前の小学生になったようだ。
「じゃあ、吉川くんはママさんダンプでお願いね」
「ママサン…?」
聞きなれない単語に首をかしげる。
「あぁ、これね」
大神さんが指差した先には、プラスチック製の大きなちりとりのような物があった。取って付きのソリというか、まあ雪かきには便利なんだろう。それにしても、ママさんダンプって変わった名前だな。今川焼きの事を僕の地元では御座候って呼んでいたけど、それと似た様なものだろうか。準備体操もしないと危ないからね、と促されて身体を伸ばしたり屈伸しながら考える。
「…さっむ!」
玄関を出てしばらくの間は、部屋の暖房と厚着した服のおかげで冬の北海道も大した事ないじゃないかと高を括っていたのだが、呼吸するごとに肺から熱が奪われて、耳は帽子をしていても千切れる様に痛い。
「じゃあ、まず玄関からだけど、こうして雪を…」
「…あっつ…」
石の様に重たい雪を運びながら、汗だくになっていた。ニュースか何かで、高齢化が進んだ東北の集落で雪かきする人が少なくなって、ボランティアを募集しているといった話を見たが、確かにこれは骨の折れる重労働だ。
ひとしきり僕に手順を教えた後、大神さんは屋根の雪を下ろしに向かった。危ないから近づいちゃダメだよと言われたので、屋根から離れた場所で排雪場所までママさんダンプを押しながら大神さんを見やる。手慣れた様子でメレンゲのケーキの様に雪を切っていくのを眺めていると、大神さんから無理しなくていいよと声がかかった。
「大丈夫です!」
何故かムキになった僕は、汗をかきながら雪を運び続けた。
「おつかれさま」
雪かきを終えて疲労でぐったりとしていると、大神さんがホットココアを差し出してきた。甘くて美味しい。汗が引いて冷えてしまった身体に温もりが染み込んでくる。それからソファーに腰掛けて、テレビを眺めているうちに瞼が重くなってきて泥のように眠ってしまった。
紙をめくる音に目を覚ます。
「あぁ、起こしてしまったね」
大神さんは僕の隣に腰掛けて何かの本を読んでいた。
「いえ、大丈夫です…」
あくびをして時計を見ると、もうお昼といった所だ。普段から運動をしない僕にとっては、たったあれだけでも大変な作業だった。これから慣れていかないとな、とふいに浮かんだそれを頭を振って追い出した。
昼食を終えた後、暇を持て余した僕はまたソファーに座りながら考えていた。先ほどと同じように大神さんは僕の隣で小説か何かを真剣な表情で読んでいる。人里離れた山奥に隠れるように住んでいるとはいえ、ずいぶん近代的な生活をしている。家電だってあるし、車も持っている。一体どうやって生活しているんだろうか。仕事は何をしているんだろう、今は冬休みなだけなのだろうか。家族はいるのか、どんな生い立ちなのか。色々と聞きたい事がある。まずはどれから聞くべきだろうか。
「ん?」
じっと顔を眺めていた僕に気がついた大神さんは、まるで犬のような表情で首をかしげる。
「何か、本読んでも良いですか?」
どうせ時間は沢山あるんだ。今聞かなくてもいいさ。快く了承を得て本棚を見ると、辞書に図鑑、小難しそうな専門書に続いて伝記小説や文芸本が綺麗に整理されて並んでいる。勤勉な人、もとい人狼なんだなと感心していると、自分の好きな作家の本を見つけたので手に取った。
「その本、好きなの?」
頷くと、大神さんは少し嬉しそうだった。二人して並んで黙ったままページをめくる。まあ、こんなのも悪くは無いかな。
そうして一日を終えて、寝る支度をしながら外を見ると、月が煌々と輝いていた。
「あ、月…」
綺麗に出てますね、と言おうとしたら、大神さんはしまったというような表情をした。
「う…うう…がう…」
苦しそうな声を出しながら、みるみる身体を変形させていく。ああ、月と人狼は切り離せないもんな。満月を見てオオカミに変身するなんて、古典ホラーでも使い尽くされた…どこか他人事のようにそれを眺めていた。あ、下着破れちゃったよ。
「っは…ごめ…ん、月っ…みるとっ…」
喘ぐように声を絞り出す。完全に人狼そのものに成り代わった大神さんを見ながら僕の心には、恐怖や怒りよりも、宿命と本能に囚われた哀れなそれへの同情に近いものがあった。
「おいで」
飼い犬を呼ぶように両手を広げて呼ぶ。大神さんは戸惑った様にその場で立ち尽くしている。
「ほら、だいじょうぶだから」
もう一度呼びかけると、葛藤しながらもじりじりと歩み寄って来てゆっくりと労わる様に僕をベッドへと押し倒した。
「ダメなんだ…ぐるっ、月が…我慢できなくて…」
もどかしそうに僕の服を慎重に脱がせながら、精一杯の弁明をしてみせる。僕はされるがままに抵抗もせずに全裸に剥かれてしまう。大神さんは遠慮気味にゆっくりと覆いかぶさって僕の首元へと鼻を寄せる。
すん…くんくん
「んっ…」
鼻息のくすぐったさと、掛け布団のように全身を覆う獣毛から伝わる温もりに声が漏れる。まるで犬の、人狼の野生的な匂いに徐々に僕も段々と溺れ始めて、背中に手を回してゆっくりと撫でた。
「ふーっ、はぁ…がる…ああ…」
耳元で大神さんが切なそうな声を出している。そのまま撫で続けていると、声には艶かしさが混じり始めてくる。
ぬちゅ…
大神さんの体毛から伝わる体温よりも、更に熱いものが腹に触れて粘り気のある音を立てる。
「ぐるるっ…はぁ…すんすん…」
にちゅっぬる…ぴちゃっ
大神さんの、人狼の熱いちんぽが腹に擦り付けられる。先走りで滑りの良くなったそこに突き立てるように、匂いを嗅いでは唸り声を上げてへこへこと腰を振る。腹の上を熱を持った堅いちんぽが往復し水音を立てながら腹を汚していく。その堅さで突き破られるんじゃないかと強く押し当てられるのだが、同時にもった柔らかさと先走りでにゅるりと腹の上を滑って胸のあたりまでちんぽが届きそうだ。
「ふーっ、ふーっ…」
にゅっ、にゅっ、ぬるんっ
先走りが泡だてられたのか、淫臭が漂い始める。獣臭とちんぽの匂いが混ざり合って、ふわふわとした毛の感触と火傷しそうなほど熱をもったちんぽの感触に、僕のちんぽもぱんぱんに勃起して悦びの先走りを撒き散らす。互いのちんぽが擦れ合って、二人分の先走りが音を立てる。
ぬちょっぬちょっちゅっちゅっ
「あぁ…ちんぽすごいぃ…」
腹はびちょびちょに濡れて、ちんぽ同士がキスしているかのような音が響く。
「ぐる…う、もう我慢が…」
大神さんは苦しそうに、腰を一層激しく振りながら匂いと腹の感触を貪り続ける。
「がうっ!ぐるるる…」
「いっ…!?」
鋭い痛みに悲鳴を上げた。鋭く突き刺すような痛みが肩口を襲う。大神さんは依然として腰を振り、荒い呼吸をしながらも僕に喰らいつく。熱く湿り気を帯びた吐息を感じる。
ぐぐぐ…みちっ…
顎に更に力が込められて、大きな犬歯が皮膚を破いていく。
「あっ、ああぁ!!」
叫んでもそれは止まらずに、千切れそうな痛みに意識が白みちんぽも萎え始める。唾液か、血か、痛みによる錯覚なのかわからない、どろりとした濡れた感触。荒い息と、獣の唸り声と、ちんぽが擦れる音。生理的反応からか涙が溢れる。ああそうか、人狼は月で理性を失ってしまうのか。そうして翌朝無残な死体を見て、どうしてこうなってしまったのかと後悔する、昔見た映画ではそんな筋書きだったな。
「ぐるる…ふーっ…うっ、ぐうっ」
薄れ始めた意識の中でゆっくりと視線を落とすと、大神さんは泣いていた。恐ろしい、人喰いの人狼の形相にはそれは似つかわしくなかった。
「うっ、ふうっ…ぐっ…う」
ああ、どうしてそんなに泣いているんだろう。いっそ僕の事なんか、喉笛を喰いちぎってしまえばいいのに。どうせ死んでしまうのなら、美味しく食べて欲しいな。防衛本能から脳がそうさせたのだろうか、多量に分泌された脳内麻薬で痛みとともに生への執着薄れ始めた。ゆっくりと大神さんの頭へと手を伸ばす。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ…」
子供に言い聞かせるようにして頭を撫でる。頭に触れた瞬間、大神さんは身体を固くしたが撫で続けていると徐々にほぐれていく。強張った筋肉が弛緩してゆき、ピンと張った耳も伏せられていく。肩にきつく食い込んだ犬歯も凶暴さを失っていった。
くうん
甘えるように鼻を鳴らして顔を擦り付ける。うっとりと目を細めてひとしきり楽しんだ後、大神さんは慌てて口を離して身体を起こした。
「あ、あ…すま、ない…私は…」
起き上がりベッドから離れようとした大神さんの腕を掴んで引き寄せる。バランスを崩して倒れ込んだ大神さんの頭を撫でて、また先ほどと同じ体勢へと誘導する。
「痛かっただろう…」
そう言って、血が滲んでいる肩の噛み跡をぺろぺろと舐める。舌が這う度に、痛みとくすぐったさが混じり合う。
「本当にすまな…んあっ」
手を伸ばして、謝罪を始めた大神さんのちんぽを掴む。
ぬちゅ、にちゃっ
ちんぽはまだ硬さを失っておらず、先走りに濡れてぬるついている。熱い脈動を手のひらに感じる。
「あっ、だ、ダメだっ」
静止の言葉もかまわずちんぽを手で擦り上げ、亀頭の先を僕の腹で撫で回すように押し付ける。
ちゅぴっ、ぬちょっぐちょ
「んおっ、ほっ、あふっ…」
僕の手の動きに連動するように腰が振られる。手の中で先走りを泡だてながらちんぽが往復する。大神さんは目を閉じ口を食いしばりながら快楽に耐える。
ぐっちょぐっちょにゅちゅっ
「おっ、あ、あっ」
ちんぽを強く握り、より激しく手を動かすとぴゅっと先走りが飛び出た。とめどなく供給される先走りでローションをまぶしたようになっている。空いている手で大神さんの腰を抱き寄せると、互いの腹でちんぽが挟まれる。柔らかな腹の毛は先走りで濡れそぼりぬるついて、一層ちんぽに刺激を与える。
「も、もう…」
腹の上でちんぽが大きく膨らんで、射精が近いことを知らせる。トドメとばかりに尿道口を爪先で軽くほじる。
にゅっにゅっ、ぐりゅっ
「はぁっ、んっ!」
びゅびゅっ、びゅーっ
ちんぽが跳ねて、互いの腹に精液を撒き散らしていく。吐精する間もちんぽを擦り上げる手は緩めない。
ぬちっびゅるっ…ぐちょっ、ぴゅっびゅぶっ、ちゅこっちゅこっ、ぴゅっ
「あっ、あっ、あぁ…」
ちんぽの匂いよりも何倍も濃い精液の匂いが、胸元から熱気に乗って上がってくる。僕の腹は精液で水たまりのようになっていることだろう。
「はあ…はぁ…」
ぴゅ、と最後に精液を吐き出した後、大神さんはぐったりと倒れ込んだ。しばらく呼吸を整えた後、身体を起こそうとした大神さんをぎゅっと抱きしめる。
「しゃ、シャワー…」
抱きしめる手の力を更に強くすると、大きくため息をついて僕を掴み、寝返りを打つように身体をひっくり返して僕が大神さんに覆いかぶさる形になった。
腹を濡らす大量の生暖かい精液の感触に、不思議と気持ち悪さはあまり感じなかった。大神さんの寝息を聞きながら、ゆっくりと上下する胸の動きに安心感を覚えた。明日の朝、毛にこびり付いて固まった精液を落とすの手伝ってあげよう。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる