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第11話 深夜の来訪者
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生前の職場で後輩だった錬から、美鈴ちゃんと呼ばれていたコスプレ警官と出会ってから数日後。
その日は酒を持った後輩も、漫画の新刊を持った猫も現れない、とても静かな夜だったので、久しぶりに日付が変わる前に寝れると思い、布団に身体を沈めて、心地よい眠りに……つこうとしていたのだが。
ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッという、身体の芯に重低音で響く一定のリズムに合わせてジャカジャカとかき鳴らされるエレキギターの旋律……。
音楽にそこまで興味はないとは言っても、流石に流行りの曲や歌手くらいは知っているという俺でもどこの国の何という曲なのかさっぱり分からない、おそらくどちらかと言えばマイナーな部類なのであろう曲が、窓の外からそれなりの音量で聞こえ始めてきた。
音の質や響き方からそう判断できるのかは分からないが、この感じは何となく、学生時代にボロアパートで一人暮らしをしていた頃に覚えがある……。
田舎の、道路の近くで、防音性が高くない家に住んでいると、よく耳にするあの音……。
「どこの誰だか知らねぇが、夜中に爆音流しながら車を運転してんじゃねぇー!!」
俺はネココに取り付けてもらった窓のカーテンをバッと開き、そのまま窓もガッと勢いよく開きながらそう外に向かって叫ぶと……。
「……え?」
目の前には、こちらへ真っすぐヘッドライトを向ける、一台のワンボックスが止まっていた。
……そう、そのエアロ&ローダウンにした田舎によくいるワンボックスは、「廃ビルの二階」にあるこの部屋の窓と水平に止まっていた。
「あー悪い悪い、今止めっから、カンベンな」
ヘッドライトが眩しくてまだその姿は見えないが、その車の運転手らしい男は、窓から手を振りながらそう言ってから、音楽を止め、そのまま車のエンジンも停止した……空中で。
「……」
エンジンが止まってもなお浮いているということは、ジェット噴射や半重力装置などで浮いているわけでは無いのだろう……。
きっとこの車はそんなSFで未来科学なもので飛んでいるのではなく、もっと非現実的なファンタジーで飛んでいる……そう、例えば、霊力とか。
ガチャ、バタンと、宙に浮いたそれから、ごく自然に、当たり前のように車から降りてきた人物も、もちろん地に足をつくことは無い。
運転席から出てきた、その、いかにもチャラそうな見た目の兄ちゃんは、後部座席の運転席とは反対側のドアからもう一人の人物が下りるのを確認すると、しっかりと車のカギを閉めたのを確認してから、俺の方に片手をあげて挨拶してきた。
「よう、初めまして、だな?」
「あ、ああ……いや、てか、アンタら何者だ?」
「はっはっは、まぁ、連絡も無しに突然来られたら、そりゃあそうなるわな」
いや、連絡なしの来訪は慣れてるから別にいいんだけど……いや、本当は全然良くないけど!
そんなことよりも! 車! 浮いてる! is、何!?
「まぁここで話すのもなんだし、とりあえず部屋に入ってもいいか?」
「え? ああ、悪い……どうぞ」
ん? なんか勢いとクセで謝っちゃったけど、俺、悪くないよね? むしろ騒音の被害者だよね?
「んじゃ、おじゃまー」
俺がそんな悪印象を持っているのも気にせず、チャラい男は軽い口調でそう言って、まるで友人の家に遊びに来たかのような顔で、壁をすり抜けて俺の部屋に入ってきた。
そして……。
「お邪魔いたします」
「あ、ああ……どうぞ」
その男の後ろに続く形で、丁寧に頭を下げてから部屋に入ってきた、後部座席に乗っていたもう一人の人物……。
スーツ姿で眼鏡を掛けた、地球がひっくり返っても騒音改造車になんか乗らなそうな印象を持つ、挨拶からしていかにも真面目そうなその女性は、いったいなぜこんな男の車に乗って、こんな場所に来たのだろうか。
どこをどう切り取っても疑問が尽きない突然の来客に混乱しながらも、とりあえず、そんな混乱を落ち着かせるためにも、客が来たときのルーチンワークとして、ガスコンロでヤカンを火にかけてお湯を沸かして、お茶を出す。
「粗茶ですが……」
「さんきゅー」
「ありがとうございます」
ずずず、と、いったん互いに一口お茶をすする、俺と、二人の来訪者。
一人は……言っちゃ悪いが、ちょっと都会ではやっていけなそうな、田舎のヤンキーという印象を受ける、自分より年下で、おそらく後輩の錬より年上であろう、チャラい見た目の男。
もう一人は、こちらも言い方が悪くなるが、何だかちゃぶ台でお茶をすすっているのが酷く似合わない、ビシッとしたスーツを着て正座で座っている、真面目そうな印象の女性。
俺の元にこんな二人が訪ねてくる内容なんて……というか、そもそも対象が俺じゃなかったとしても、誰だとしても、こんな、凸凹とかそういう次元じゃないくらいかみ合っていない二人が来訪する内容なんて想像もつかない。
時計を見る……もうすぐ夜の十一時。
どう考えても客が来るような時間帯じゃないのもそうだが……。
……今から何が起こるにしても、絶対に一時間ちょっとじゃ終わらない雰囲気だよなぁ。
俺は、何だか最近入れ慣れてきたお茶を飲みながら、今日も寝るのが遅くなりそうだと、心の中で嘆いた。
その日は酒を持った後輩も、漫画の新刊を持った猫も現れない、とても静かな夜だったので、久しぶりに日付が変わる前に寝れると思い、布団に身体を沈めて、心地よい眠りに……つこうとしていたのだが。
ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッという、身体の芯に重低音で響く一定のリズムに合わせてジャカジャカとかき鳴らされるエレキギターの旋律……。
音楽にそこまで興味はないとは言っても、流石に流行りの曲や歌手くらいは知っているという俺でもどこの国の何という曲なのかさっぱり分からない、おそらくどちらかと言えばマイナーな部類なのであろう曲が、窓の外からそれなりの音量で聞こえ始めてきた。
音の質や響き方からそう判断できるのかは分からないが、この感じは何となく、学生時代にボロアパートで一人暮らしをしていた頃に覚えがある……。
田舎の、道路の近くで、防音性が高くない家に住んでいると、よく耳にするあの音……。
「どこの誰だか知らねぇが、夜中に爆音流しながら車を運転してんじゃねぇー!!」
俺はネココに取り付けてもらった窓のカーテンをバッと開き、そのまま窓もガッと勢いよく開きながらそう外に向かって叫ぶと……。
「……え?」
目の前には、こちらへ真っすぐヘッドライトを向ける、一台のワンボックスが止まっていた。
……そう、そのエアロ&ローダウンにした田舎によくいるワンボックスは、「廃ビルの二階」にあるこの部屋の窓と水平に止まっていた。
「あー悪い悪い、今止めっから、カンベンな」
ヘッドライトが眩しくてまだその姿は見えないが、その車の運転手らしい男は、窓から手を振りながらそう言ってから、音楽を止め、そのまま車のエンジンも停止した……空中で。
「……」
エンジンが止まってもなお浮いているということは、ジェット噴射や半重力装置などで浮いているわけでは無いのだろう……。
きっとこの車はそんなSFで未来科学なもので飛んでいるのではなく、もっと非現実的なファンタジーで飛んでいる……そう、例えば、霊力とか。
ガチャ、バタンと、宙に浮いたそれから、ごく自然に、当たり前のように車から降りてきた人物も、もちろん地に足をつくことは無い。
運転席から出てきた、その、いかにもチャラそうな見た目の兄ちゃんは、後部座席の運転席とは反対側のドアからもう一人の人物が下りるのを確認すると、しっかりと車のカギを閉めたのを確認してから、俺の方に片手をあげて挨拶してきた。
「よう、初めまして、だな?」
「あ、ああ……いや、てか、アンタら何者だ?」
「はっはっは、まぁ、連絡も無しに突然来られたら、そりゃあそうなるわな」
いや、連絡なしの来訪は慣れてるから別にいいんだけど……いや、本当は全然良くないけど!
そんなことよりも! 車! 浮いてる! is、何!?
「まぁここで話すのもなんだし、とりあえず部屋に入ってもいいか?」
「え? ああ、悪い……どうぞ」
ん? なんか勢いとクセで謝っちゃったけど、俺、悪くないよね? むしろ騒音の被害者だよね?
「んじゃ、おじゃまー」
俺がそんな悪印象を持っているのも気にせず、チャラい男は軽い口調でそう言って、まるで友人の家に遊びに来たかのような顔で、壁をすり抜けて俺の部屋に入ってきた。
そして……。
「お邪魔いたします」
「あ、ああ……どうぞ」
その男の後ろに続く形で、丁寧に頭を下げてから部屋に入ってきた、後部座席に乗っていたもう一人の人物……。
スーツ姿で眼鏡を掛けた、地球がひっくり返っても騒音改造車になんか乗らなそうな印象を持つ、挨拶からしていかにも真面目そうなその女性は、いったいなぜこんな男の車に乗って、こんな場所に来たのだろうか。
どこをどう切り取っても疑問が尽きない突然の来客に混乱しながらも、とりあえず、そんな混乱を落ち着かせるためにも、客が来たときのルーチンワークとして、ガスコンロでヤカンを火にかけてお湯を沸かして、お茶を出す。
「粗茶ですが……」
「さんきゅー」
「ありがとうございます」
ずずず、と、いったん互いに一口お茶をすする、俺と、二人の来訪者。
一人は……言っちゃ悪いが、ちょっと都会ではやっていけなそうな、田舎のヤンキーという印象を受ける、自分より年下で、おそらく後輩の錬より年上であろう、チャラい見た目の男。
もう一人は、こちらも言い方が悪くなるが、何だかちゃぶ台でお茶をすすっているのが酷く似合わない、ビシッとしたスーツを着て正座で座っている、真面目そうな印象の女性。
俺の元にこんな二人が訪ねてくる内容なんて……というか、そもそも対象が俺じゃなかったとしても、誰だとしても、こんな、凸凹とかそういう次元じゃないくらいかみ合っていない二人が来訪する内容なんて想像もつかない。
時計を見る……もうすぐ夜の十一時。
どう考えても客が来るような時間帯じゃないのもそうだが……。
……今から何が起こるにしても、絶対に一時間ちょっとじゃ終わらない雰囲気だよなぁ。
俺は、何だか最近入れ慣れてきたお茶を飲みながら、今日も寝るのが遅くなりそうだと、心の中で嘆いた。
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