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第25話 釈放
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「……本物の幽霊さん……ですか?」
「はい。私も、この容疑者2名も、既に命を失った存在です」
「「んぐもがー!」」
夏の夜。
廃ビルの一室。
段ボールの上に敷かれたゴザに座って、ちゃぶ台を挟んでお茶をすすっている女性二人と、その横で、布団で簀巻きにされて転がされている男二人。
簀巻きにされているうちの片方が、この廃ビルの主(地縛霊)である俺で、もう片方が、生前は俺の職場の後輩だったが現在は飲んだくれの幽霊をやっている、管野 錬なわけだが、錬はともかく、俺の方は別に容疑者と言われるような行動をした覚えが無ければ、当然、簀巻きにされるような筋合いは無い。
そこで座ってお茶を飲んでいる女性の片方、ホラー番組の企画でこの廃ビルに訪れたグラビアアイドル、平井 るあ が、どうやら心霊スポットとして話題になりつつあるこの廃ビルで、丸々二日間、一人きりで過ごすという、番組スタッフの無茶な指示に振り回されていたのを、陰ながら助けようとしただけだ。
その際に、転びそうになった彼女を思わず抱きかかえるという状況には陥ってしまったが、別に狙ってやったわけじゃないし、今だって、正座している彼女のスカートの中が見えそうになっているが、それは縛られて転がされているせいであって、決して俺のせいじゃない。
くっ……あと少し……あと少しなんだが……。
……コホン。
そして、俺と後輩をこんな状態にしたのは、ちゃぶ台でお茶を飲んでいるもう片方の女性、苦掘 美鈴。
生前も今も現役の警察官らしいが、何故か彼女が着ている制服は現実には存在しないミニスカタイプの制服なので、どうあがいてもコスプレにしか見えない。
彼女は見た目的にも若いし、普通に似合っているので、こちらとしては全然いいのだが、現実ではミニではない正式なスカートタイプの制服を着た女性警察官も見かけなったこの時代に、本職の警察官が、漫画や映像作品でしか登場しないようなコスプレ衣装を着ているというのは、一体どんな理由があるのだろうか。
「うーん……そう言われても、あんまり実感が湧きませんねぇ……こうしてしっかり見えていますし、お喋りも出来ていますし……」
「まぁ、そうかもしれませんね……では、試しに私の手に触れてみてください」
そう言って、コスプレ警官の美鈴ちゃんは、グラビアアイドルの るあちゃんの前に自身の手を差し出す。
その光景を見て、るあちゃんは、半信半疑ではあるかもしれないが、ゴクリと唾をのみ、緊張した様子で、その手に触れようと手を伸ばすが……。
「え? ……あれ? 嘘……本当に触れない……はわわっ……今、背筋がゾクゾクってしましたっ!」
「まぁ、とりあえず、これで信じていただけましたかかね?」
「はい……あ、でも、こちらの方には触れられましたけど……こちらの方は生きている方ではないんですか?」
「触れられ、た……?」
ギロッ、と、美鈴ちゃんが、寝転がされている俺を睨む。
「もご!?」
いやいや! るあちゃんがここで言った「触れられた」っていうのは、「触れることが出来た」って意味で、「人が故意に触れてきた」って意味じゃないでしょ!?
確かに、どちらともとれる言い回しだし、実際に俺が故意に触れたから間違ってはいないんだけど! そんな、触れるって言っても、彼女が転びそうになったところを、ちょっと抱きかかえるような形で受け止めただけだから! 正当な理由からだから!
と、俺は美鈴ちゃんに必死に訴えかけるが、口をガムテープで縛られているのでどうあがいても「もごもご」としか言葉を発せない。
……まぁ、そうじゃなくても、彼女は人の話を聞かないという前例があるから、あまり意味があるとは思えないが。
「いえっ、違いますっ! この方は私が転びそうになったところを支えてくれただけで……」
「……」
ほら、触れられた彼女自身がこうして弁護してくれているにも関わらず、こっちに疑いの視線を向けたままだし。
というか、事情聴取だか何だか知らないが、状況を詳しく聞きたいからって、その場所として勝手に俺の部屋を選んだのは美鈴ちゃんなんだが……。
まぁ、別に俺がここ土地の権利書を持っているわけでも、この部屋の賃貸契約書を持っているわけでもない、ただ俺が地縛霊として行動できる範囲の中で勝手に住み着いただけの部屋だから、ここを使うことに関しては強く言えないが……事情を聞くために来たんだから、ちゃんと事情を聞いてくれよ。
「まぁ、いいでしょう……被害者が被害を訴えなければ、それは事件という扱いにはなりませんからね」
「ほっ……よかった」
美鈴ちゃんはまだ釈然としない様子だったが、るあちゃんの弁護により、俺は口に貼られていたガムテープを剝がされ、布団の拘束を解かれることとなった。
どうでもいいが、この間のお泊り会でネココが新たに追加していった布団がそのままこの部屋に置かれたままなんだが、元の場所に返さなくていいんだろうか……。
それにしても、まだ俺のことを睨んでいたり、容疑者とか被害者とか、逮捕したパターンの呼び方をしてくる美鈴ちゃんと違って、るあちゃんは本当に良い子だなぁ。
おじさん、この件が落ち着いた後も、ファンを続けるよ……テレビ無いけど。
……と、解放された喜びを感じながら、そんなことを考えていると。
「あれ……? さっきは触れられたのに……」
いつの間にか、るあちゃんがすぐ側まで近寄ってきていて、俺の身体を触ろうと、ペタペタと、いや、スカスカと、その手を俺の腕や胸に擦り抜けさせていた。
「ふんっ」
「わわっ……触れないと思ったら、急に触れるように……」
なので、半実体モードを発動して、彼女が触れるようにしてやる。
分かりやすくムキムキアピールをするようなポーズをしながら発動してみたものの、別に全く鍛えられていない軟弱な胸板をペタペタと触る彼女の手がくすぐったい。
「……コホン」
俺としては別にいつまでその時間が続いても構わなかったが、視線を上げると、美鈴ちゃんが手錠を片手に咳払いしていたので、このくらいにしておいた方がいいだろう。
何はともあれ、とりあえず状況の説明だな……このポルターガイスト能力とかも含めて。
地縛霊になったばかりのかつての俺もそうだったように、今まで知らなかった世界のことを知る彼女は驚くだろうが、いつかの静子ちゃんのように、何故か急に俺たち幽霊のことが見えるようになってしまって、ついでに声も聞こえるようになってしまったのだから仕方ない。
少し長くなるかもしれないが、まだ夜は始まったばかり……少々我慢して、俺たちのことを聞いてもらうとしよう……俺も睡眠時間を犠牲にしているのだから。
「はい。私も、この容疑者2名も、既に命を失った存在です」
「「んぐもがー!」」
夏の夜。
廃ビルの一室。
段ボールの上に敷かれたゴザに座って、ちゃぶ台を挟んでお茶をすすっている女性二人と、その横で、布団で簀巻きにされて転がされている男二人。
簀巻きにされているうちの片方が、この廃ビルの主(地縛霊)である俺で、もう片方が、生前は俺の職場の後輩だったが現在は飲んだくれの幽霊をやっている、管野 錬なわけだが、錬はともかく、俺の方は別に容疑者と言われるような行動をした覚えが無ければ、当然、簀巻きにされるような筋合いは無い。
そこで座ってお茶を飲んでいる女性の片方、ホラー番組の企画でこの廃ビルに訪れたグラビアアイドル、平井 るあ が、どうやら心霊スポットとして話題になりつつあるこの廃ビルで、丸々二日間、一人きりで過ごすという、番組スタッフの無茶な指示に振り回されていたのを、陰ながら助けようとしただけだ。
その際に、転びそうになった彼女を思わず抱きかかえるという状況には陥ってしまったが、別に狙ってやったわけじゃないし、今だって、正座している彼女のスカートの中が見えそうになっているが、それは縛られて転がされているせいであって、決して俺のせいじゃない。
くっ……あと少し……あと少しなんだが……。
……コホン。
そして、俺と後輩をこんな状態にしたのは、ちゃぶ台でお茶を飲んでいるもう片方の女性、苦掘 美鈴。
生前も今も現役の警察官らしいが、何故か彼女が着ている制服は現実には存在しないミニスカタイプの制服なので、どうあがいてもコスプレにしか見えない。
彼女は見た目的にも若いし、普通に似合っているので、こちらとしては全然いいのだが、現実ではミニではない正式なスカートタイプの制服を着た女性警察官も見かけなったこの時代に、本職の警察官が、漫画や映像作品でしか登場しないようなコスプレ衣装を着ているというのは、一体どんな理由があるのだろうか。
「うーん……そう言われても、あんまり実感が湧きませんねぇ……こうしてしっかり見えていますし、お喋りも出来ていますし……」
「まぁ、そうかもしれませんね……では、試しに私の手に触れてみてください」
そう言って、コスプレ警官の美鈴ちゃんは、グラビアアイドルの るあちゃんの前に自身の手を差し出す。
その光景を見て、るあちゃんは、半信半疑ではあるかもしれないが、ゴクリと唾をのみ、緊張した様子で、その手に触れようと手を伸ばすが……。
「え? ……あれ? 嘘……本当に触れない……はわわっ……今、背筋がゾクゾクってしましたっ!」
「まぁ、とりあえず、これで信じていただけましたかかね?」
「はい……あ、でも、こちらの方には触れられましたけど……こちらの方は生きている方ではないんですか?」
「触れられ、た……?」
ギロッ、と、美鈴ちゃんが、寝転がされている俺を睨む。
「もご!?」
いやいや! るあちゃんがここで言った「触れられた」っていうのは、「触れることが出来た」って意味で、「人が故意に触れてきた」って意味じゃないでしょ!?
確かに、どちらともとれる言い回しだし、実際に俺が故意に触れたから間違ってはいないんだけど! そんな、触れるって言っても、彼女が転びそうになったところを、ちょっと抱きかかえるような形で受け止めただけだから! 正当な理由からだから!
と、俺は美鈴ちゃんに必死に訴えかけるが、口をガムテープで縛られているのでどうあがいても「もごもご」としか言葉を発せない。
……まぁ、そうじゃなくても、彼女は人の話を聞かないという前例があるから、あまり意味があるとは思えないが。
「いえっ、違いますっ! この方は私が転びそうになったところを支えてくれただけで……」
「……」
ほら、触れられた彼女自身がこうして弁護してくれているにも関わらず、こっちに疑いの視線を向けたままだし。
というか、事情聴取だか何だか知らないが、状況を詳しく聞きたいからって、その場所として勝手に俺の部屋を選んだのは美鈴ちゃんなんだが……。
まぁ、別に俺がここ土地の権利書を持っているわけでも、この部屋の賃貸契約書を持っているわけでもない、ただ俺が地縛霊として行動できる範囲の中で勝手に住み着いただけの部屋だから、ここを使うことに関しては強く言えないが……事情を聞くために来たんだから、ちゃんと事情を聞いてくれよ。
「まぁ、いいでしょう……被害者が被害を訴えなければ、それは事件という扱いにはなりませんからね」
「ほっ……よかった」
美鈴ちゃんはまだ釈然としない様子だったが、るあちゃんの弁護により、俺は口に貼られていたガムテープを剝がされ、布団の拘束を解かれることとなった。
どうでもいいが、この間のお泊り会でネココが新たに追加していった布団がそのままこの部屋に置かれたままなんだが、元の場所に返さなくていいんだろうか……。
それにしても、まだ俺のことを睨んでいたり、容疑者とか被害者とか、逮捕したパターンの呼び方をしてくる美鈴ちゃんと違って、るあちゃんは本当に良い子だなぁ。
おじさん、この件が落ち着いた後も、ファンを続けるよ……テレビ無いけど。
……と、解放された喜びを感じながら、そんなことを考えていると。
「あれ……? さっきは触れられたのに……」
いつの間にか、るあちゃんがすぐ側まで近寄ってきていて、俺の身体を触ろうと、ペタペタと、いや、スカスカと、その手を俺の腕や胸に擦り抜けさせていた。
「ふんっ」
「わわっ……触れないと思ったら、急に触れるように……」
なので、半実体モードを発動して、彼女が触れるようにしてやる。
分かりやすくムキムキアピールをするようなポーズをしながら発動してみたものの、別に全く鍛えられていない軟弱な胸板をペタペタと触る彼女の手がくすぐったい。
「……コホン」
俺としては別にいつまでその時間が続いても構わなかったが、視線を上げると、美鈴ちゃんが手錠を片手に咳払いしていたので、このくらいにしておいた方がいいだろう。
何はともあれ、とりあえず状況の説明だな……このポルターガイスト能力とかも含めて。
地縛霊になったばかりのかつての俺もそうだったように、今まで知らなかった世界のことを知る彼女は驚くだろうが、いつかの静子ちゃんのように、何故か急に俺たち幽霊のことが見えるようになってしまって、ついでに声も聞こえるようになってしまったのだから仕方ない。
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