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第48話 お留守番
しおりを挟む何やら静子ちゃんが恋のキューピットに目覚めた次の週、あれから、主に静子ちゃんとネココの二人が積極的に動いて、宇井さんとキーヤンのデートをセッティングするところまでこぎつけたらしい。
そんな強引なキューピットの一員として巻き込まれた、現役グラビアアイドルの平井 るあちゃんは、平日は普通に仕事があるので、二人と一緒には行動していなかったが、静子ちゃんとメッセージアプリで友達登録をして、そこで色々と意見を聞かれたときに応える相談役をしていたとのこと。
今日は、その押し付けキューピットに半ば強引にセッティングされた、デート当日。
作戦が始まってから決行が翌週になったのは、ターゲットである宇井さんも普通に平日は仕事をしているからで、ネココを通して今日の約束を取り付けたようだが、きっと子供に振り回される大人として仕方なく付き合った形だろう。
実際、今回のデート作戦は、本人たちには二人のためのデートイベントだとは伝えてはおらず、皆で一緒に遊びに行こうと言って誘ったらしいので、宇井さんやキーヤンはこのイベントを遊びに行く子供のおもりだと思っているんじゃないか?
だがまぁ……今回の俺には、そんなイベントは関係ない。
「本当にあの子たちに任せっきりでいいんすかねー」
「いいだろ、っていうか、今回は別に宇井さんやキーヤンから恋仲になりたいって言われてないからな、失敗前提で普通に楽しく遊んで帰って来ればいいさ」
イベント当日の昼、俺は自分の部屋で、錬と二人でのんびりと、お茶を飲み、スナック菓子を食べながら、漫画を読んだりして過ごしていた。
今日は錬がいるので、お茶もスナック菓子も霊体化仕様、俺も霊体化仕様、タンスの角に足の小指をぶつける心配もない。
ちなみに、最近こいつと一緒に暮らし始めた美鈴ちゃんも、仲の良い友人である宇井さんが心配だからと言って、他の面々と一緒に出掛けているため、正真正銘、廃ビルの敷地内には、俺と錬の二人しかいない状態だ。
「今頃あっちでは美味しいお昼ご飯でも食べているところっすかねー」
「原宿にある幽霊も利用できる店に、飲食店もあるのか?」
「本格的なレストランとかはまだ見つけてないっすけど、少なくとも、喫茶店みたいなのはあったっすよ」
「へー、そりゃまた、本当に幽霊に優しい街なんだな」
今日みんなが遊びに行っている先は、もちろん、前回と同様、若者の街、原宿だ。
幽霊や霊視能力のある人物が集団で遊びに行ける場所は限られているし、カップル成立の成功例がある場所として、そこ以外の選択肢は無かったのだろう。
「錬、お前も行って来たらよかったんじゃないか?」
「いや、俺っちはよく行ってるし、今日の主役は宇井さんとキーヤンっすから、別にいいっすよ。それに、最近ずっと美鈴ちゃんと一緒だったから、たまには先輩をかまってあげた方がいいかなと」
「余計なお世話だ」
まぁ、実際、こいつの言う通り、最近は何だか、殆ど毎日、誰かしらと会っていたし……今日ここで錬も出かけてしまって、この廃ビルに本当に一人きりで残されていたら、少し寂しく感じたのかもしれないな。
地縛霊になったばかりの頃は、一人で過ごす方が当たり前の日常だったって言うのに、おかしなものだな。
ネココと出会って、錬と再会して、静子ちゃんに付きまとわれ始めて……。
錬を追った美鈴ちゃんが現れて、美鈴ちゃんに報告された宇井さんがキーヤンの車に乗ってきて、るあちゃんが撮影に訪れて……。
元から大勢でワイワイ騒ぐタイプじゃなかったし、最初の頃は、一人寂しくても別に構わないと思っていたが、人ってのは、やっぱり誰かが側にいると、それはそれで安心する生き物なんだな。
あんまり多すぎても面倒に感じることもあるかもしれないが、極端に少なくなりすぎても、人のぬくもりが恋しくなるように出来ているんだろう。
ま、今日は騒がしいイベントからは少し離れて、溜まった漫画をのんびり消化する休日ってことで……そこに一人くらい、気の置けるやつが側にいるのも悪くないだろう。
「あ、先輩、次、俺っちその巻なんで、早く貸してください」
「いや、他の漫画を読んでればいいだろ? いま良いところなんだから邪魔するなよ」
「良いところだからっすよー、その展開が気になりすぎて、他の漫画を読んでる場合じゃないっす」
「はぁ……分かった分かった、読み終わるまで待ってろ」
「先輩読むの遅いっすよー、1巻読むのにどんだけ時間かかってるんすかー」
「……」
……やっぱり、たまには一人で過ごした方が良かったかもな。
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