エロゲーの悪役に転生しても筋トレしかしない様子

タバスコ

文字の大きさ
4 / 32

筋肉つきすぎたのでダンジョン行ってみた

しおりを挟む
 6歳になり外出ができるようになったセクシャルは、ダンジョンに訪れていた。

※ダンジョン……魔物が出てくる異次元空間。洞窟だったり海底だったり、様々なところにダンジョンの入り口が存在している。

 今回のダンジョン探索は、レベルアップをすることが目的のようだ。

 幼少期からハードなトレーニングを重ねたことが原因で、セクシャルの筋肉は肥大しすぎてしまったのだ。

 筋肉が肥大することはトレーニングの目的の一つであるので本来嬉しいことなのだが、セクシャルの場合はアナボリックステロイドを使ったのではないかと見間違われるほど肥大してしまっている。

※アナボリックステロイド……筋肉増強剤であり、様々な副作用がある。有名な副作用として、男性なのに女性のように胸が発達してしまうガイノなどが挙げられる。

 肥大しすぎた筋肉は体の柔軟性や関節の可動域に影響を及ぼし、今やセクシャルは自分の肩を自分で触れることすらままならない。

 そこで、魔物を倒すことで起こるレベルアップを利用し、筋肉のサイズを落とそうと考えているようだ。

 レベルアップに筋肉のサイズを落とす作用が確実にあるのかと問われれば、分からない。過去にそういった事例がないからだ。

 しかし、レベルアップの作用の一つに『肉体の最適化』というものがある。

 最適化というくらいなのだから、自身の肩にすら触れられないバグった肉体をどうにかしてくれるだろう。

 ダンジョン内を進むセクシャルの足取りは軽い。

◇◇◇

 さて、能天気にダンジョンを進んでいたセクシャルであるが、早速モンスターの気配を察知したようだ。

 セクシャルが立ち止まることにより雑音が消え、ぷよぷよという何者かが放つ音のみがダンジョンに響く。

 音の鳴る方を注視していると、プルプルとした青いボールのような物体がセクシャルの視界に入った。

 セクシャルも気がついたようだが、あれは最弱の魔物と名高いスライムである。

 しかし、最弱とはいえ魔物は魔物。危険なことには変わりがないのである。

 スライムの強さや特徴がはっきりとしない今、接近戦を挑むのは愚策だと考えたのだろうか。

 セクシャルはスライムと一定の距離をとりつつ、10kgのダンベルを投げつけることで攻撃を行った。実に、脳筋らしからぬ戦法である。

 運の悪いことに最初のダンベルはぴょんと飛んで避けられてしまったが、スライムの着地地点にもダンベルを投げつけることで、無事にスライムに命中。

 かなりの勢いを持ったダンベルに押しつぶされたスライムは弾け飛び、ドロップアイテムに姿を変えていった。

 やはり、雑魚である。この世界におけるスライムの攻撃手段は体当たりのみ。近寄らなければ攻撃を喰らう心配もなく、あっさりと倒せてしまうものだ。

 その後セクシャルは投げるダンベルの重さを軽くしていきながらスライムを討伐し、最終的には3キロのダンベルを多用するようになった。

 そして、20体ほど倒す頃には当たり前のようにスライムの行動パターンや一度の跳躍での移動距離などを把握し、効率的にスライムを討伐し始める。

 脳筋のくせに、こういう肉体労働系というか、肉体を使ったことに関しては頭が働くのはなんなんだろうか。様々な脳筋キャラ達のの謎である。

 順調にダンジョンを進んでいくと、ゴブリンやオークなど他のモンスターも出現するようになってきた。

 動きの素早いゴブリンには2キロなど軽めのダンベルを大量に投げつける物量作戦。防御力は高いが動きが遅いオークには15キロのダンベルなどを使った高火力作戦で無事討伐を成功させた。

「意外と呆気ないものだな……」

 複数体を同時に相手する場合には、数匹がダンベルの弾幕から逃れて接近してきてしまうこともあった。

 そのような場合にはまず落ち着いて距離を取り、20キロのバーベルシャフトを振り回すことで制圧。

 やはり、オリンピックシャフトに敵うものは無し。圧倒的な強さで傷一つ負うことなくモンスターたちを倒していき、ついに討伐数が99体へと到達。

 今回倒したモンスターは全てGランクなので、全員等しく経験値は1。そのため、あと1体倒せば無事レベルアップである。

 セクシャルもその事実を改めて思い返したのか、意気揚々とモンスターを探していく。そして、スライムを発見。

 そのままスライムに近寄っていくのかと思いきや、その場で大量のプロテインを作り出してビルダー飲みをキメていく。

「グチュグチュグチュグチュ……ゴクリ」

 気持ちよさそうな顔だ。中毒性もなければ特別な作用も何もないただのタンパク質なのに。

 そして、セクシャル合計1キロという確実に致死量のプロテインやその他サプリメントを摂取した後、ダンベルを投げてスライムを討伐した。

『おめでとう!レベルアップ!』

 レベルアップを告げる音がセクシャルの周囲に鳴り響く。そして、セクシャルの体から煙が立ち上がり肉体に変化が起こっていく。

「ぐぐ……うぉぉぉぉぉぉぉぉ! 胃の中のタンパク質、全部吸収しろぉぉぉぉぉぉ!」

 なるほど。先程の奇行はどうやら、レベルアップを利用した大量の栄養素摂ということだったようだ。果たして意味があったのかは今の段階では不明である。

 そして、レベルアップの痛みに耐え切ったセクシャルは、身長が170cmほどまで成長していた。

 ちなみにだが、身長が80センチほど成長したので服はビリビリに破れている。

 「なるほど。筋肉を縮めるのではなく、体を大きくしたのか……」

 見た目は細マッチョといったところに収まっており、男からも女からもウケそうな体型である。うらやま。

 しかし、この肉体をそのままにしておかないのが脳筋の性である。きっと、数年後には再び筋肉ダルマが誕生することだろう。

「おお! 筋力が落ちることも覚悟していたが、速筋繊維一本一本のパワーが上がってやがる! それに、総動員数も増えたなぁ! 遅筋はどうだ?……」

 ダンジョンの中だというのに呑気なもので、変化した肉体の状態確認に励むセクシャル。

 筋肉ダルマがスリムで引き締まった体型になったことにより、気持ち悪さがかなり減少。筋肉よりも整った顔立ちのほうが目立つようになり、シャフトを振り回しながらはしゃぐ姿が可愛らしく見える。全裸だが。

「あぁ~早くMAX測定してぇ~! ギルドなんかに物売ってる暇ねぇゾォ!」

 一応モンスターたちのドロップアイテムを集めていたセクシャルであるが、早く家に帰って力試しがしたくなってしまったようだ。

 ちょうどよくボロボロの格好をした幼い労働者がいたので、その子にドロップアイテムとウエイトゲイナープロテインを渡し、即帰宅したセクシャルであった。

 ……上裸のマッチョに変なモノを押し付けられて、トラウマになってないといいけど……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...