23 / 32
図書室の怪物 デカ・ヒデ
しおりを挟む結局、セクシャルがセクシャルだということを信じざるを得なくなったイイヒト公爵。
「レベルアップならば、身長が伸びることもあり得るな……」と強制的に自分を納得させた後、ダンベルとベンチを大量買いして去っていった。
いや、貴族の馬車ってあんなに物を入れられるスペースがあるんだね。すげえや。セクシャルは普段馬車になんて乗らないため、全く知らなかった。
イイヒト公爵は、本当に貴族らしい貴族である。セクシャルも少しは見習ったほうがいい。
イイヒト公爵が帰った後、周りの見物人もちょこちょことダンベルを購入していき、その日に用意していた分はすべて完売した。
セクシャル初の商売作戦は大成功である。
というか、そもそもなぜいきなりダンベルを売り始めたのかということを説明していなかったな。申し訳ない。
セクシャルの呟きを拾っただけなので詳しいことや確実なことはわからないが、どうやら魔境の開拓をするために金を集めているらしい。
魔境の開拓というと、ちょうどセクシャルの母であるジェンダーが領地を発展させるために行おうとしていたことだ。
ジェンダーを手助けするつもりなのかなんなのかは定かではないが、とりあえずは領地のためになることをやろうとしているようなので安心である。
とはいえ、せいぜい数千数万円の商品を売って領地の開拓をしようとは、かなり大変な計画だ。
商品が完売したと言っても、今日一日の稼ぎは60万円ほど。魔力の消費を減らすために使用した素材の材料費などを考えると、利益は50万円程度だと考えるのが妥当だろう。製造費用や人件費などがかかっていないだけまだマシだが、領地の開拓が目的ならば、この程度ではまだまだ足りない。
これからしばらくの間、同じ王都の商店街にて、ダンベルを売るついでにいろいろな使い方を披露するという約束をイイヒト公爵と交わしていたようなので、セクシャルの金稼ぎはまだまだ続くようだ。
店を畳んだセクシャルは、ダンベルの材料を購入してからハラスメント領へと転移ゲートを使って帰っていった。
..................................................................
プロテインやサプリを摂取した後、体を清めてから食事を取り、トレーニング後の栄養摂取を済ませたセクシャルは、珍しいことに屋敷の図書室へと向かった。
ハラスメント家の図書室といえば、オリンピア王国でも有名なほどめちゃくちゃ広くて大きい。
セクシャルのひいひいひいじいちゃんあたりに該当するアカデミック・ハラスメントという人物が、趣味でたくさん本を集めていたせいでこんなにも大きくなったらしい。
ちなみにだが、アカデミックはあまりの知識量の多さゆえに、王立学園の教授を務めていたこともあるらしい。それほどの人物の書斎なのだから、大抵の本は存在すると思うが……一体セクシャルは何を目的にここを訪れたのだろうか。
我々はその謎を解き明かすべくジャングルの奥地へと向かった……。(謝罪)
「お、セクシャルさま。お久しぶりなんだけれども」
「ああ、久しぶりだなヤマギシ。ちょうどいいところに来たな。本を探すのを手伝ってくれ」
セクシャルが図書室へと足を踏み入れると、それを察知したかのように何者かが忍び寄り、セクシャルに声をかけた。
セクシャルにヤマギシと呼ばれるこの人物は、この図書館の司書のうち1人である、デカ・ヒデである。
〇〇なんだけれども……が口癖の彼は、ものすごくガタイが良く知識も豊富なので、セクシャルは彼のことを気に入っていた。
そのガタイの良さは、レベルアップ前の筋肉ダルマ状態のセクシャルを彷彿とさせるほどで、なぜ司書をやっているのか疑問が湧くほどの人材である。とにかくすごい。
「任せてほしいんだけれども~」
「それじゃあ、従魔術系統の本を10冊ほどたのむ」
「了解なんだけれども~」
セクシャルの要望を快く引き受けてくれたヒデを見送りながらも、セクシャルは本を探し始めた。
ふむ、なるほど。従魔術系統の本ときたか。いよいよ本当に行動の理由が謎に包まれてきたが、いくつか予想はできなくもない。
まず1つ目は、強力な魔物を味方につけることでダンジョンなどを攻略し、巨万の富を手に入れ、それにより魔境の開拓を進めようとしているのではないかということ。
2つ目は、牛などをテイムする事で、プロテインを作ろうとしているのではないかという事。
1つ目に関しては、ダンジョン攻略ほどの大金を狙っているのだとすると、ちまちまとダンベルを売る理由が薄くなってしまうので微妙な気がする。
しかし、2つ目に関しても、わざわざ従魔術を学ばなくとも、牛の調教師を外部から連れてくればいいだけだろう。
んー……本当にわからん。
こちらの疑問など置き去りにしたままのセクシャルは、ヒデが集めてくれた10冊と、自分で見つけた2.3冊の本を腕の中に積み上げて、自室へと戻っていった。
普通に図書室で読んでけばいいのにわざわざ自室に戻るとは、相変わらず引きこもりの鏡のような男である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる