百物語 ーヒャクモノガタリー ♦︎3分以内に読める怪談のショートショート集♦︎

いくいえむ

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第75夜 土手沿いの道

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その日は、息子の9歳の誕生日でした。
洋菓子屋でケーキを受け取って、急いで帰ろうとしていると、渋滞にかかってしまいました。
早く帰ると家族に約束していた私は、近道をするために普段通らない土手沿いの道を通って帰ることにしました。
その道はとても細い道で、すれ違いも困難なほどでした。
また、道の途中にある橋が自殺の名所だったこともあり、通る車も人もほとんどいない道でした。
家路を急いでいた私は、夕暮れのその道を少し飛ばし気味で走っていました。
すると、少し走ったところで、頭の上で両手を大きく振りながら走ってくる男に車を止められました。
「どうしました?」
私は窓を開け、その男に訊きました。
「今、この先には行かない方が良いですよ。さっき、私、この先の橋で幽霊を見て、逃げてきたんです」
男は息を切らしながら、真剣な顔をして言いました。
私は、変な人に捕まっちゃったなぁと思いながら、
「車なので大丈夫ですよ。それでは」
と言って、騒ぐ男を半ば無視して車を発進させました。
バックミラーで確認すると、男は道の中央に立ってこちらを見ていました。
男に何とも言えない不気味さを感じましたが、早く家に帰りたかったので、私は運転に集中しようとハンドルを握り直しました。

しばらく走っていると、例の橋が出てきました。
橋の手前に信号があり、赤だったので私はブレーキを踏みました。
本当に幽霊なんでいるのかと少し思いましたが、橋の方を見ないようにしていました。
しかし、橋の側の土手に動くものがあるのを視界の隅にとらえてしまったのです。
見たくないなと思いつつも気になるので、ゆっくり瞳だけを動かして、それが何なのかを確認しました。
それは、先ほど道で車を止めてきた男でした。
徒歩だった男がどうやって車のスピードに追いついたのかと驚いて、私は男の方を向いてしまいました。
男は土手の土を手づかみで食べていました。
そして、私が見ていることに気付いた男は、泥だらけの顔でこちらに満面の笑みを向けてきました。
私は赤信号を無視して、アクセル全開でその場から逃げました。

あの男が何者だったのかは分かりませんが、もう二度とあの道は通りたくありません。
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感想 3

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