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プロローグ
うちに住めばいいよ
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私、佐原蓬。22歳。
今、あてもなく荷物をまとめたスーツケースを片手に、京都の街を歩いています。
というのも、会社が倒産したからだ!
小さい頃、両親が亡くなり、優しい親戚のおばさんがお世話をしてくれていた。大学を卒業して、おばさんにこれ以上迷惑をかけない為に、寮がある会社を選んで入社した、それなのに…。1年で会社が倒産、寮を追い出された。
おばさんに連絡して、そのことを告げるべきかすごく迷って、でもやっぱり心配させたくなくて、数少ない資金を元に、午後8時の街を歩く。
京都の繁華街、夜の河原町は、客引きと高校生と、仕事終わりのサラリーマンで溢れている。夜8時だというのに街は明るく、賑わっていた。
河原町を通り抜け、等間隔で並ぶカップルを見下ろしつつ、三条大橋を渡り、そのまま鴨川の流れるまま、沿って歩いた。
水の流れる音が切ない。何だか、寂しい。
仕事も失って、1人でどうやって生きていこう。いっそ、橋の下暮らしも悪くないかもしれへん……。
そんなこと思いながら、ぼうっと歩いていると、いつの間にか知らない道へと出ていた。長く京都に住んでいるが、こんな道知らない。
車も通れない、狭い道。人がいない、静かな空間。そして何より、さっきの街が嘘のように暗い。木々がうっすらと揺れたかと思えば、水の流れる音が微かに聞こえる。暗すぎる為、スマホの明かりをつけ、足元を照らしながら歩く。
水の流れる音は次第に大きくなり、前を見ると赤い橋がかかっていた。錆び付いた赤い橋の下には川が流れている。鴨川…ではない、筈だ。
おかしいと思う気持ちと、好奇心と、怖い気持ちがグチャグチャになったまま、その橋を渡る。案外揺れはしない、ちゃんとした橋だ。
「…………家…?」
鯉の泳ぐ池、それに灯篭、そして雑木がはえた庭があり、その横には縁側が設けてある。瓦屋根であり、壁はどうやら土みたい。純和風な立派な家、というより御屋敷がそこにはあった。
表札がたっていない。もしかして、住んでいる人が居ないのだろうか?でも鯉が泳いでるし、そんなことない筈やし。どきどきしながら、私はその戸を叩いた。
「あのー、……。誰か、いませんか?」
返事がない。その代わりに、ドタバタと走る音、キャハハ、と子供の笑い声が聞こえる。
私は昔見たトラウマ級のホラー映画を思い出す。暗い森の中、血まみれの女に襲われ、逃げた屋敷の戸を叩くと、居るはずもない子供の声がする……。
背筋がぞっとした。
「あ…し、失礼しました……もう来ませんので」
急に怖くなり、帰ろうと背を向けた時だった。
ガラガラ、と扉の開く音がして、カラン、と靴の、それも下駄のような足音がして、思わず振り向く。
「どちら様?」
そこには白髪で、毛先だけ黄色に染まった、赤い袴を着た男の人が立っていた。切れ長な目が特徴の、端正な顔立ちの人。
頭に獣の耳が生えている気がしたのは、気の所為か?
「…………あれっ、おかしいなあ、耳が消えへん…」
何度目を擦ってもそこにあるのは耳が生えた男の人だ。
手に持っているのは、……お菜箸?何故?
頭がハテナマークだらけの私を見て、男の人は口を開いた。眩しい笑顔を向け、私に告げる。
「とりあえず、入りません?荷物重いし、秋の夜は寒いでしょ」
「…………え?」
「まあまあ、いいからいいから」
半ば強引にスーツケースを奪い、家の中へと入る男の人につられて、私も内心有難く思いつつ中に入った。
中は襖で区切られた、内装も和風の家で、どこからか出汁のいい匂いがする。料理中だったのだろうか。歩くスピードが早い男の人を追いかけ、奥の方の部屋、客間へと着いた。
畳の匂いがする、4畳ぐらいの部屋。
「あの、コスプレですか、それ」
私が1番聞きたかった、耳の生えた頭を指さし尋ねると、男の人はまたまた眩しい笑顔で返す。
「違いますよ。触ります?」
「えっ、いいん?本物なん…?」
見た限り、限りなく猫のそれに似ているが、コスプレであんなリアルなの有り得ない。大体、格好がコスプレみたいなものだし。触るのは気が引けるので遠慮しておこう。
「君、名前は?」
「あ、佐原蓬です…。貴方は?」
「僕は朴。この家で暮らしてる、妖怪」
「………………はい?」
耳を疑った。本気で言ったのだとしたら、相当痛い。
ホオノキさんは急須に入れたお茶を湯のみに注ぎながら、2度目の自己紹介をする。
「雷獣って知ってる?雷を操るあやかし、妖怪」
「は?」
「証拠見せようか」
ホオノキさんはそう言うと、徐に立ち上がり、近くにあった電気ストーブに手をかざした。パチッ、と電気の筋みたいなものが見えて、電気ストーブがオレンジ色の光を灯らせる。
手をかざしただけで、電気ストーブがついた…?
私は立ち上がってコンセントの先を探る。線を握って引っ張ると、コンセントの先はすぐに現れた。刺さっていた訳ではなさそう。
じゃあ、何で?
「お茶のおかわりは?」
「あ、頂きます…」
「えーと、湯沸かし器は…1450wやったっけ」
「……は?」
ホオノキさんは湯沸かし器を触れて、しばらくじっと待つ。カチン、とボタンの上がる音がして、茶葉を入れた湯のみにお湯を注いだ。当然の如く、コンセントは刺さっていない。
また、触ってただけでお湯が沸いた…。
「これで分かってくれたかな?」
「よ、妖怪って本当にいたん…?」
「妖怪なんかいっぱいいるよ。京都なんて、沢山」
「いや、でも初めて見たんですけど。っていうか、ここ何なんですか」
見たところ、妖怪が住むようなボロボロな家には見えないし、何より電化製品があるし。
妖怪の世界も現代化してるのか?
「入っていいよ、柏!」
ホオノキさんが叫ぶと、ドタバタと走る音がし、襖が勢いよく開かれる。
現れたのは、7、8歳ぐらいの黒髪の男の子で、目がくりくりっとしており、黒い着物を着ていた。白い肌がぷにぷにしてて可愛らしい。
「僕、柏!よく来たね、お姉ちゃん!人間?」
「……この子も妖怪なんですか?」
黒い着物を着ているのは今時珍しいけど、京都には着物着た人なんてまあまあいるし、耳もはえてないし、私と同じ人間の子供にしか見えない。
けれど、何処か雰囲気が違う。神々しいというか、なんというか。
「この子は柏。この家の家主かな。座敷童子」
「…ざ、座敷童子って、あの?富をもたらすっていう…?」
「よく知ってるねえ、僕のこと!」
にこにこっとした笑顔で私の横に座った座敷童子、カシワくんはホオノキさんにお茶を要求する。
座敷童子って確か、家に富をもたらす妖怪やった筈。昔見たアニメに出てきてた。
そんな幸運の妖怪が、今、私の隣にいる。今までの私の不運は、この子に会うことで消えるんやわ、きっと!
「この子、自分の生まれた領分をしっかり果たしなさいって山神様に言われて、お気に入りの家探して、ここに住んだはいいけど。この家、廃墟らしくて。人がいない分、幸運の気が全部家に吸われて、遂にこの家は迷家になってしまった訳」
「迷家?」
「迷家っていうのはね、その家に訪れた人に富をもたらす家のことだよ」
何が何だか分からない。
ここは文明の機械に頼る。
スマホを出して、『迷家』と調べた。出てきたサイトの1番上をクリックし、じっくりと読む。
「って、これ、遠野…。岩手の話なんじゃないんですか?ここ、京都やけど」
サイトにはこう書かれていた。
『遠野にあると言われる、幻の家。訪れた人に富をもたらすという』
遠野って言うのは、岩手県のことで、たくさんの妖怪が生まれた場所やったと思う。昔見たアニメで覚えていた。
「そうそう、僕達遠野から来たから。山神様に言われて、この子お気に入りの家探すのに京都まで歩いてさ」
「この家、いいでしょ!迷家になっちゃったから、探しても見つからないんだよ!」
「探しても見つからへん?どういうこと?」
「迷家は、探しても見つからない幻の家なんだよ。だから、蓬ちゃん幸運だったね」
ホオノキさんの口から幸運の言葉が聞けた瞬間、心の奥底にしまってた不安が顔を出した。暖かいお茶を飲んだからか、涙腺がおかしくなってたみたい。
頬を伝い、涙を流す私を見て、カシワくんはぎょっとしてハンカチを渡してくれた。ホオノキさんも驚いた様子で、でも真面目な顔で、私の隣に座った。
「う、うぅ…、私……」
「そ、相当辛いことがあったんだね、蓬ちゃん!」
「…あ、い、いいこと、あるよ!僕の意思で操れないけど、運気上がるよ!だって僕、座敷童子だし!」
「ホオノキさーん、カシワくーん、ありがとう…」
私は涙を何回もふきながら、今までのいきさつを話した。会社が倒産したこと、寮を追い出されていくあてがないこと、優しくされて泣いちゃったこと。
それを最後まで聞いてくれたホオノキさんが、隣で優しく何回も頷いてくれた。
そして、最後に言った。
「じゃあ、うちに住めばいいよ。ね、柏?」
「それがいいよ。部屋余ってるし、人間が来てくれて嬉しいし!」
「……へ?」
「2階でいいかな」
「じゃあ、僕の隣の部屋がいい!お手玉して遊ぼ!」
「あの、いいんですか…?」
「もちろんいいよ!とりあえず今日は休みな。もう夜だし、眠たいでしょ」
「えー、お手玉はー?」
「柏、もう寝ないとなまはげ来るよ」
「ぎゃーっ!寝よ、よもぎの姉ちゃん!」
こうして、私は人生の運を全て使ったみたいに、座敷童子と雷獣が住む、幸運の迷家で暮らすことになった。
そしてそれは、やっぱり私の人生を大きく変えることになる。
今、あてもなく荷物をまとめたスーツケースを片手に、京都の街を歩いています。
というのも、会社が倒産したからだ!
小さい頃、両親が亡くなり、優しい親戚のおばさんがお世話をしてくれていた。大学を卒業して、おばさんにこれ以上迷惑をかけない為に、寮がある会社を選んで入社した、それなのに…。1年で会社が倒産、寮を追い出された。
おばさんに連絡して、そのことを告げるべきかすごく迷って、でもやっぱり心配させたくなくて、数少ない資金を元に、午後8時の街を歩く。
京都の繁華街、夜の河原町は、客引きと高校生と、仕事終わりのサラリーマンで溢れている。夜8時だというのに街は明るく、賑わっていた。
河原町を通り抜け、等間隔で並ぶカップルを見下ろしつつ、三条大橋を渡り、そのまま鴨川の流れるまま、沿って歩いた。
水の流れる音が切ない。何だか、寂しい。
仕事も失って、1人でどうやって生きていこう。いっそ、橋の下暮らしも悪くないかもしれへん……。
そんなこと思いながら、ぼうっと歩いていると、いつの間にか知らない道へと出ていた。長く京都に住んでいるが、こんな道知らない。
車も通れない、狭い道。人がいない、静かな空間。そして何より、さっきの街が嘘のように暗い。木々がうっすらと揺れたかと思えば、水の流れる音が微かに聞こえる。暗すぎる為、スマホの明かりをつけ、足元を照らしながら歩く。
水の流れる音は次第に大きくなり、前を見ると赤い橋がかかっていた。錆び付いた赤い橋の下には川が流れている。鴨川…ではない、筈だ。
おかしいと思う気持ちと、好奇心と、怖い気持ちがグチャグチャになったまま、その橋を渡る。案外揺れはしない、ちゃんとした橋だ。
「…………家…?」
鯉の泳ぐ池、それに灯篭、そして雑木がはえた庭があり、その横には縁側が設けてある。瓦屋根であり、壁はどうやら土みたい。純和風な立派な家、というより御屋敷がそこにはあった。
表札がたっていない。もしかして、住んでいる人が居ないのだろうか?でも鯉が泳いでるし、そんなことない筈やし。どきどきしながら、私はその戸を叩いた。
「あのー、……。誰か、いませんか?」
返事がない。その代わりに、ドタバタと走る音、キャハハ、と子供の笑い声が聞こえる。
私は昔見たトラウマ級のホラー映画を思い出す。暗い森の中、血まみれの女に襲われ、逃げた屋敷の戸を叩くと、居るはずもない子供の声がする……。
背筋がぞっとした。
「あ…し、失礼しました……もう来ませんので」
急に怖くなり、帰ろうと背を向けた時だった。
ガラガラ、と扉の開く音がして、カラン、と靴の、それも下駄のような足音がして、思わず振り向く。
「どちら様?」
そこには白髪で、毛先だけ黄色に染まった、赤い袴を着た男の人が立っていた。切れ長な目が特徴の、端正な顔立ちの人。
頭に獣の耳が生えている気がしたのは、気の所為か?
「…………あれっ、おかしいなあ、耳が消えへん…」
何度目を擦ってもそこにあるのは耳が生えた男の人だ。
手に持っているのは、……お菜箸?何故?
頭がハテナマークだらけの私を見て、男の人は口を開いた。眩しい笑顔を向け、私に告げる。
「とりあえず、入りません?荷物重いし、秋の夜は寒いでしょ」
「…………え?」
「まあまあ、いいからいいから」
半ば強引にスーツケースを奪い、家の中へと入る男の人につられて、私も内心有難く思いつつ中に入った。
中は襖で区切られた、内装も和風の家で、どこからか出汁のいい匂いがする。料理中だったのだろうか。歩くスピードが早い男の人を追いかけ、奥の方の部屋、客間へと着いた。
畳の匂いがする、4畳ぐらいの部屋。
「あの、コスプレですか、それ」
私が1番聞きたかった、耳の生えた頭を指さし尋ねると、男の人はまたまた眩しい笑顔で返す。
「違いますよ。触ります?」
「えっ、いいん?本物なん…?」
見た限り、限りなく猫のそれに似ているが、コスプレであんなリアルなの有り得ない。大体、格好がコスプレみたいなものだし。触るのは気が引けるので遠慮しておこう。
「君、名前は?」
「あ、佐原蓬です…。貴方は?」
「僕は朴。この家で暮らしてる、妖怪」
「………………はい?」
耳を疑った。本気で言ったのだとしたら、相当痛い。
ホオノキさんは急須に入れたお茶を湯のみに注ぎながら、2度目の自己紹介をする。
「雷獣って知ってる?雷を操るあやかし、妖怪」
「は?」
「証拠見せようか」
ホオノキさんはそう言うと、徐に立ち上がり、近くにあった電気ストーブに手をかざした。パチッ、と電気の筋みたいなものが見えて、電気ストーブがオレンジ色の光を灯らせる。
手をかざしただけで、電気ストーブがついた…?
私は立ち上がってコンセントの先を探る。線を握って引っ張ると、コンセントの先はすぐに現れた。刺さっていた訳ではなさそう。
じゃあ、何で?
「お茶のおかわりは?」
「あ、頂きます…」
「えーと、湯沸かし器は…1450wやったっけ」
「……は?」
ホオノキさんは湯沸かし器を触れて、しばらくじっと待つ。カチン、とボタンの上がる音がして、茶葉を入れた湯のみにお湯を注いだ。当然の如く、コンセントは刺さっていない。
また、触ってただけでお湯が沸いた…。
「これで分かってくれたかな?」
「よ、妖怪って本当にいたん…?」
「妖怪なんかいっぱいいるよ。京都なんて、沢山」
「いや、でも初めて見たんですけど。っていうか、ここ何なんですか」
見たところ、妖怪が住むようなボロボロな家には見えないし、何より電化製品があるし。
妖怪の世界も現代化してるのか?
「入っていいよ、柏!」
ホオノキさんが叫ぶと、ドタバタと走る音がし、襖が勢いよく開かれる。
現れたのは、7、8歳ぐらいの黒髪の男の子で、目がくりくりっとしており、黒い着物を着ていた。白い肌がぷにぷにしてて可愛らしい。
「僕、柏!よく来たね、お姉ちゃん!人間?」
「……この子も妖怪なんですか?」
黒い着物を着ているのは今時珍しいけど、京都には着物着た人なんてまあまあいるし、耳もはえてないし、私と同じ人間の子供にしか見えない。
けれど、何処か雰囲気が違う。神々しいというか、なんというか。
「この子は柏。この家の家主かな。座敷童子」
「…ざ、座敷童子って、あの?富をもたらすっていう…?」
「よく知ってるねえ、僕のこと!」
にこにこっとした笑顔で私の横に座った座敷童子、カシワくんはホオノキさんにお茶を要求する。
座敷童子って確か、家に富をもたらす妖怪やった筈。昔見たアニメに出てきてた。
そんな幸運の妖怪が、今、私の隣にいる。今までの私の不運は、この子に会うことで消えるんやわ、きっと!
「この子、自分の生まれた領分をしっかり果たしなさいって山神様に言われて、お気に入りの家探して、ここに住んだはいいけど。この家、廃墟らしくて。人がいない分、幸運の気が全部家に吸われて、遂にこの家は迷家になってしまった訳」
「迷家?」
「迷家っていうのはね、その家に訪れた人に富をもたらす家のことだよ」
何が何だか分からない。
ここは文明の機械に頼る。
スマホを出して、『迷家』と調べた。出てきたサイトの1番上をクリックし、じっくりと読む。
「って、これ、遠野…。岩手の話なんじゃないんですか?ここ、京都やけど」
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遠野って言うのは、岩手県のことで、たくさんの妖怪が生まれた場所やったと思う。昔見たアニメで覚えていた。
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「この家、いいでしょ!迷家になっちゃったから、探しても見つからないんだよ!」
「探しても見つからへん?どういうこと?」
「迷家は、探しても見つからない幻の家なんだよ。だから、蓬ちゃん幸運だったね」
ホオノキさんの口から幸運の言葉が聞けた瞬間、心の奥底にしまってた不安が顔を出した。暖かいお茶を飲んだからか、涙腺がおかしくなってたみたい。
頬を伝い、涙を流す私を見て、カシワくんはぎょっとしてハンカチを渡してくれた。ホオノキさんも驚いた様子で、でも真面目な顔で、私の隣に座った。
「う、うぅ…、私……」
「そ、相当辛いことがあったんだね、蓬ちゃん!」
「…あ、い、いいこと、あるよ!僕の意思で操れないけど、運気上がるよ!だって僕、座敷童子だし!」
「ホオノキさーん、カシワくーん、ありがとう…」
私は涙を何回もふきながら、今までのいきさつを話した。会社が倒産したこと、寮を追い出されていくあてがないこと、優しくされて泣いちゃったこと。
それを最後まで聞いてくれたホオノキさんが、隣で優しく何回も頷いてくれた。
そして、最後に言った。
「じゃあ、うちに住めばいいよ。ね、柏?」
「それがいいよ。部屋余ってるし、人間が来てくれて嬉しいし!」
「……へ?」
「2階でいいかな」
「じゃあ、僕の隣の部屋がいい!お手玉して遊ぼ!」
「あの、いいんですか…?」
「もちろんいいよ!とりあえず今日は休みな。もう夜だし、眠たいでしょ」
「えー、お手玉はー?」
「柏、もう寝ないとなまはげ来るよ」
「ぎゃーっ!寝よ、よもぎの姉ちゃん!」
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