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Ⅰ.そんな奴隷がどこにいる【容姿端麗、傲慢無礼】

Petit à petit l'oiseau fait son nid.

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「え、そんなに歳上なの」

「逆にいくつだと思ってたんだ」

「私と同じくらい」



 次の日も、部屋を訪れた彼に話せと命を下すと
「仰せのままに」なんて白々しさ満点な声を出した。


そんな彼は、私より七つも上だったようで。


いいところ二十歳くらいかな、なんて思っていたのに。



「お前みたいなガキと一緒にするな」

「……ガキで悪かったわね」

「まぁ、あの年増よりはマシだ」



 吐き捨てられた発言に笑みを取り繕う。

心を開いて欲しいとは思ったが、
人の母親を年増呼ばわりするまでとはよもや思うまい。


でも、なんだかそんな彼が面白くて少し笑ってしまう。


「変な女」
そう罵られるのはこれで二度目だ。



「だから、変な女ってどういう意味よ」

「普通、自分の母親が年増なんて言われたら怒るだろ」

「なんで? だって、事実じゃない」



 首を傾げて言えば、
彼はまた驚いて「そうだな」と楽しそうに笑った。



「……笑ってた方が、かっこいいよ」



 自然に零れた言葉が彼の耳に届いた時には
笑みを消した彼と目が合って。

綺麗な瞳に、吸い込まれる。


その瞳をもっと見たい。


 体が勝手に動いて、前のめって。

ベッドに腰をかける彼との距離が
少しずつ近づいて。


彼が少し体を傾けた刹那、互いの唇が触れ合った。






【少しずつ鳥は巣を作る】
Petit à petit l'oiseau fait son nid.

(もっと、知りたい。もっと、もっと)
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