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XI.オセロのように色を変え続ける【翻雲覆雨、悪逆無道】
Rien ne sert de pleurer sur le lait renversé.
しおりを挟むもう、声なんて出ない。
オオトリの顔なんて、見られない。
私の瞳は、地しか映さなくなった。
でも、耳だけは潰さない限りどうしようもなくて。
彼の声が、嫌という程耳をすり抜けて頭に入り込む。
「恨んで恨んで、毎日が苦痛で仕方なかった。
皇宮を出された後も、何度もあの男を頭の中で殺した。
寝ても醒めても、浮かぶ顔で気が狂いそうだった。
だから、あの男を貴女の家で見た時。
この苦しみを吐き出すのは今しかないと、思った」
「……」
「……ただこうなってしまった以上、
流石に皇宮で殺す訳にも参りませんからね。
だから代わりに、彼の大事なものを傷つけてやろうと思ったんです」
死ぬより、苦しませてやろうと。
苦しそうな声で自分の思いを吐露したオオトリは
心の奥底から溢れるドス黒い殺意を吐ききったようだ。
私は、いつしか彼に言った。
“欲しいものがあれば、言っていいのよ”と。
その時彼は優しく微笑みながら
“私には、アリア様がいればそれでいいのです”
そう、返してくれた。
きっと、あの想いに嘘偽りはなかった。
あの言葉は、あの瞳は紛れも無く本物だった。
ただ。
彼が求めていたのは、欲しいものではなかった。
彼が本当に求めていたのは、“奪うこと”だった。
それに、今になって気づいても、もう遅い。
私に優美に歩みを寄せ、
しゃがみこんで私の目の前に現れたオオトリは
あの時と何ら変わらない優しい微笑みを浮かべて。
「アリア様をお慕い申している身としては、
あんな汚い男共に襲わせるなどとても心苦しかったですが
あの男を地獄へ落とす為なら手段は選ばない。
ですから、黒幕というのであれば、」
真の黒幕は、貴女の愛してやまないレオ様です――――
彼は、無慈悲に言い放った。
【ひっくり返した牛乳を嘆いても仕方が無い】
Rien ne sert de pleurer sur le lait renversé.
(一体、誰を、信じたらいいの)
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