上 下
147 / 174
XVII.真の愛と対面する【玉石混淆、正真正銘】

Fais ce que dois, advienne que pourra.

しおりを挟む

「……いいよ」

「は……?」

「私が、本当に愛しているのは、貴方よ」



 だから、触れてもいい。

この体も心も。

貴方と出会ったあの日から
全てが、貴方のものだから。



「……ダメだ」

「え……?」



 そう思って、彼に唇を近づけたのに。

拒絶の言葉を投げられて、私の動きが止まる。



「今すぐ皇宮を出ろ。
アイツもわざわざ探すような真似は、しないはずだ」



 二度とここへは来るな。

ふい、と顔を背けたキースはそう言って、月を見上げた。


彼は今、何を思うのだろう。

毎夜、月に何を馳せているのか。


それがもし。

私ならば。


 私は、


貴方を、照らす。



「な……」



 彼の首筋に、甘く吸い付くと
綺麗に紅の花が咲いた。


私がキスマークを残した首を手で覆った彼は、
もう驚き以外の感情は持ち合わせていないようだ。


目を見張り、私を見つめた。



「この印が消える前に、また会いに来る」



 強く微笑んで、彼に逆らう。


そして殊更に眉を上げ、もうひとつ呟いてやる。



「それか、貴方が来てもいいのよ? キース。
印がある限り、見間違うことは無いから」

「……いつに増して、変な女」



 彼は、泣きそうに笑って。

いつものように私を誹った。






【あとでどうなろうとも、なすべきことをなせ】
Fais ce que dois, advienne que pourra.

(この“プリンセス”は、私が救い出してみせる)
しおりを挟む

処理中です...