俺様な極道の御曹司とまったりイチャイチャ溺愛生活

那珂田かな

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二人のなれそめ編

出会い

それは、昨年の9月のことだった。

まだ客は来ておらず、店内は柚子ーユズカーとママの瑞樹だけだった。

突然玄関のベルが鳴り、一人の男が現れた。
「いらっしゃいませー」
柚子は笑顔で客を出迎える。
玄関に立っていたのは大柄の男性だった。
まだ暑いというのに、ネイビーのスーツにストライプのシャツ、そしてネクタイをキッチリと締めている。
「この店に、高地柚子ってのがいるって聞いたんだが?」
突然、自分の本名を言われ、柚子は驚いた。
柚子は男の顔をまじまじと見るが、全く記憶にない。
背が高くがっちりとした体つき。少し浅黒い顔。何より威圧的な目が印象的だ。
その目に見つめられ、柚子は背すじが凍りついた。

「どうしたの、ユズカちゃん」
瑞樹が近寄り、柚子ーユズカーと男の顔を交互に見た。
「ご新規のお客様でしょうか。生憎、当店は会員制でして…」
瑞樹は男に向かって、やんわりと言った。
「高地隆成の娘の柚子ってのがここにいるって聞いたんだが。悪いことは言わない、出したほうが身のためだ」
男は胸元から名刺を出した。瑞樹は受け取り息を飲む。
「か、帰ってください。そ、そんな子はいません!」
瑞樹が震える声で言った。
いつも冷静なママがこんなに取り乱すなんて。
「嘘をつくとロクなことにならないぞ」
男は低い声で言う。
「わ、私です」
柚子はとっさに言った。
男は値踏みするように柚子を見ている。柚子も男を睨み返した。
本当は怖い。でもなぜか負けたくなかった。

「ガキだな」
男がぼそりと呟いた。
「ガキじゃありません!」
柚子は真っ赤になって言い返す。
もう大学生なのに、高校生や下手すれば中学生に間違われる。
子供っぽく見えるのが柚子の一番のコンプレックスだった。

「私に何のご用ですかっ」
柚子は強い口調で言った。
「今、仕事中なんです。お客様でないのなら、帰っていただけますか」
柚子の言葉に、男は少しだけ口の端を上げて言った。
「根性が据わってるのは、あの男譲りだな」
「あの男?」
「と、とりあえず立ち話もなんですから。ユズカちゃん、奥の席にご案内して」
瑞樹は戸惑いながらも、柚子に指示した。
柚子は反発したい気持ちを押さえながら、言われた通り案内する。
「お、お飲み物は」
「マッカラン、ロック」
男が低い声で言う。
瑞樹自身がウィスキーやグラス類を持ってきて、慣れた手つきで酒をつくりはじめた。
その間、店内は妙な緊張感に包まれた。
いけない、怖気づいちゃ。柚子は意を決して話し出した。
「そ、それで、私に何の御用でしょうか。ええっと…」
しまった、名前を聞いていない。
柚子が戸惑っていると、男はスーツの胸元から、また名刺を出す。
「槇村組若頭、槇村彰吾…」
やっぱり知らない名前。
それに、組?若頭?それってまさか。
「あの、もしかして…」
「もしかしなくても、ヤクザだ」
その男、槇村彰吾は柚子を一瞥した。
「そのヤクザの方が、私に何の用ですか?因縁をつけられるようなことは、なにもしていません」
「別に因縁をつけに来たわけじゃねえ。ただ借りを返しに来ただけだ」
「借り?」
「お前の学費や生活費を出してやる。だからこんな仕事は辞めろ」
突然の男の申し出に、柚子は混乱した。
「そ、そんな、見ず知らずの人にそんな…」
「俺は昔、あんたの父親、高地隆成に世話になった。その借りをあんたに返すだけだ」
柚子は更に混乱する。
「ちょ、ちょっと待って下さい。私の父親?どういうご関係なんですか?」
柚子は茫然とした。
母親から父親のことをほとんど聞かされていなかったからだ。
「高地隆成はウチの組員だ。そして今、ム所で服役中だ」
柚子は頭の中が真っ白になる。
「アンタの事、調べさせてもらった。今、学費稼ぐために、こんな仕事してるんだろ。俺が援助してやる。だからさっさと辞めて、大人しく勉強だけしてろ」
「お、お断りします」
柚子はとっさに言い返した。
頭の中はまだ真っ白だ。
でも心の中は、この男に対する反抗心がむくむくと湧き上がっていた。
「言うことを聞け」
槇村彰吾は静かに、だが、有無を言わせない口調でいった。
「私、自分一人で何とかできます!父は、今までずっと私と母をほっておいた人です!そんな人の知り合いなんて、信用できるわけありません!だから…」
柚子は男を睨みつける。男も刺すような視線で柚子を見ている。

「…だから、帰ってください!」

これが柚子と彰吾の出会いだった。

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