俺様な極道の御曹司とまったりイチャイチャ溺愛生活

那珂田かな

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危険な夏休み編

大切の意味【前編】


「若、おはようございます」
松倉がいつもの笑顔で彰吾を迎えた。対する彰吾は、いつも以上に眉間にしわを寄せている。
まだ午前中だというのに、外は蒸し暑く、苛立ちがさらに増した。これからもっと暑くなるだろう。
「安心しました。どこかに雲隠れすると思ってましたから」
「逃げたところで、お前はすぐに見つけるだろうが」
「当たり前です。護衛ですので」
車がゆっくりと動き出した。

ーここから数時間は忍耐だな。

今日は盆の法要が行われる。
長々と僧侶の話を聞くこと、律儀に集まってきた古参の幹部達に気を使を使うこと、なにより父親に会うのが一番の憂鬱だった。
「面倒だ」
彰吾の口から本音が漏れる。
「なんで簡単に済ませられないんだ、親父は。このくそ暑い時に参加させられる奴らも、本心じゃ迷惑がってるのが、わからないのか?」
「まあ、組長はしきたりや礼儀を特に気にする方ですから」
「時代錯誤もいいとこだ」
「まあ、いいじゃないですか。たった数時間、我慢すればいいことです。ご先祖様だって喜んでますよ」
「死んだ後に、取ってつけたように供養されたって、意味ねえんだ」
「若のお母様は、喜んでいらっしゃると思いますが...」
「黙れ」
彰吾は冷たく言った。

ー親父はお袋に罪悪感がある。だから毎年、罪滅ぼしをしてるつもりなのだろう。

母親に悪いことをした、と自覚はあるらしい。今思い出すだけでも、はらわたが煮えくり返る。
母を病弱だからという理由で、離れの一室に閉じ込め、挙句の果てに愛人を家に上げ、傍若無人に振舞わせた。組のためだ、と何度も言っていたのを覚えている。

ー絶対に許すものか。お袋だってきっとそう思っている。

今すぐにでも、車から降りたかった。彰吾は殺伐とした気持を抑えるため、携帯を見た。
柚子からの朝のメールは、まだ来ていなかった。
苛立ち、電話をかけようとしたが、その手が止まった。

ー確か、店が忙しくて大変だ、と言ってたな。

もしかしから、まだ寝ているのかもしれない。
彰吾は柚子の寝顔を思い出すと、苛立ちが少し和らいだ。
「生きてるうちに大切にしないとな」
「大切のしかたも、よく考えられたほうがいいですよ」
「何?」
「側に置くだけが、大切にするという訳ではありませんから。遠ざける事だって、時には必要だ」
「...アイツを手放せと言いたいのか」
彰吾はバックミラーに映る松倉を睨む。
「共に修羅の道を歩ませるのか、一時の安らぎとして側に置くのか。今から考えておかないといけませんよ」
「...わかってる」
これからの自分の将来は、決して安穏ではない。今のまま一緒にいたら、柚子に危害が及ぶ可能性もある。

ー手放したくはない。他の男にくれてやるつもりもない。

だが、自分の我儘に付き合わせてもいいのだろうか。
今まで、ずっと考えないようにしていた。
柚子には幸せな人生をおくる権利がある。その為に、自分は何をすべきだろう。
「俺は親父とは違う」
中途半端な愛情は、ただ不用意に傷つけるだけだ。

「用事が終わったら、すぐに柚子の家に向かう」

今すぐ答えを出すわけではない。だが、少しづつ、話し合う必要はあった。



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