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アパートの売却先(2)
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「いいですよ。概要については明日朝までにメールの添付ファイルで送りますよ。その他の分量がある資料で急がないものは、コピーしたものを行内メールで明日発送するから明後日には受け取ってください」
彰司は小池さゆりからの依頼にそう応えた。
そして最後に、『宜しくお願いしますよ、期待していますから』と一言付け加えた。
浜本は彰司からの電話の翌日の夕方、小池さゆりをミーティングルームに呼んだ。
「東郷君からのメールとその添付の資料は見たかね?」
「はい目を通しました。これから、この物件に興味を示しそうな会社を選び出してみようと思っています」
「いや、もうそれはイイよ」
(えっ)小池は何事かと思った。
営業課長である浜本は、支店の取引先のことは、もう既に、殆どと言っていいくらい頭のなかに入れていた。よって、該当しそうな先を思い巡らし、前もって当たりを付けていたのである。
「藤田建設の社長に話を持っていってごらん。概要は先ほど話してある。藤田社長からは『ちょっと考えてみよう』と言ってもらっているので、明後日の訪問のアポイントを取って、社長のその後の意向を聞いて来るんだ。
他社にも当たってみたが、『業務用車両の駐車の場所がどこかにないか』と前に言っていた根本運送だが、土地がこの三百五十平米だと『足りない』という事だった」
「(そうだったんだ・・・)課長ありがとうございます」
そして浜本は付け加えた
「社長のご意向は、購入するのだったら会社としてではなく、社長個人としての対応になるだろうとの事だ。いいか、スケジュールを逆算して今期中に購入資金の融資実行まで持っていくように、必ずだ」
自分の席に戻りながら小池は心の中で思った。
(早っつ、課長の頭の中はもうこのレベルまで進んでいる・・・・頑張んなきゃ・・)
佳奈子は、サラダに乗っかっていたオリーブを一つ、ピックごと摘み上げ、クルックルッと回しながら、『ん?』という顔をして彰司に聞いた。
「そのぉ・・・田山敦子さん自身は、ご自分のアパートについて『売却はしないでくれ』『何とか賃借人を近々必ず付けるから!』って東郷さんには言ってこなかったのですか」
「田山さんは言っては来ていない。荒木真理子邸を訪問した翌々日、俺から田山さんには電話をした。明確に銀行としては売却に動き出すってことを」
「ええっ・・・どうして」
佳奈子は少し驚いた顔で彰司を見た。
「あの荒木真理子さんのご主人が電話してきたのを受けて、その方針と決めたんだよ」
「え、ひょっとして東郷さん・・・荒木さんのご主人にギャンギャン言われて、『てめぇー』って感じで頭に血が上っちゃったとか・・」
「そうじゃないよ」続けて
「とにかく、こっちとしても、間近に迫った銀行の次の決算には、あの融資が不良債権として決算表上に計上されるのは避けなければならなかったからな」
そう言いつつ彰司は小皿に一つ残っていたソーセージを、フォークで取るや、ソースをほんの少しつけて口に運んだ・・・。
彰司は小池さゆりからの依頼にそう応えた。
そして最後に、『宜しくお願いしますよ、期待していますから』と一言付け加えた。
浜本は彰司からの電話の翌日の夕方、小池さゆりをミーティングルームに呼んだ。
「東郷君からのメールとその添付の資料は見たかね?」
「はい目を通しました。これから、この物件に興味を示しそうな会社を選び出してみようと思っています」
「いや、もうそれはイイよ」
(えっ)小池は何事かと思った。
営業課長である浜本は、支店の取引先のことは、もう既に、殆どと言っていいくらい頭のなかに入れていた。よって、該当しそうな先を思い巡らし、前もって当たりを付けていたのである。
「藤田建設の社長に話を持っていってごらん。概要は先ほど話してある。藤田社長からは『ちょっと考えてみよう』と言ってもらっているので、明後日の訪問のアポイントを取って、社長のその後の意向を聞いて来るんだ。
他社にも当たってみたが、『業務用車両の駐車の場所がどこかにないか』と前に言っていた根本運送だが、土地がこの三百五十平米だと『足りない』という事だった」
「(そうだったんだ・・・)課長ありがとうございます」
そして浜本は付け加えた
「社長のご意向は、購入するのだったら会社としてではなく、社長個人としての対応になるだろうとの事だ。いいか、スケジュールを逆算して今期中に購入資金の融資実行まで持っていくように、必ずだ」
自分の席に戻りながら小池は心の中で思った。
(早っつ、課長の頭の中はもうこのレベルまで進んでいる・・・・頑張んなきゃ・・)
佳奈子は、サラダに乗っかっていたオリーブを一つ、ピックごと摘み上げ、クルックルッと回しながら、『ん?』という顔をして彰司に聞いた。
「そのぉ・・・田山敦子さん自身は、ご自分のアパートについて『売却はしないでくれ』『何とか賃借人を近々必ず付けるから!』って東郷さんには言ってこなかったのですか」
「田山さんは言っては来ていない。荒木真理子邸を訪問した翌々日、俺から田山さんには電話をした。明確に銀行としては売却に動き出すってことを」
「ええっ・・・どうして」
佳奈子は少し驚いた顔で彰司を見た。
「あの荒木真理子さんのご主人が電話してきたのを受けて、その方針と決めたんだよ」
「え、ひょっとして東郷さん・・・荒木さんのご主人にギャンギャン言われて、『てめぇー』って感じで頭に血が上っちゃったとか・・」
「そうじゃないよ」続けて
「とにかく、こっちとしても、間近に迫った銀行の次の決算には、あの融資が不良債権として決算表上に計上されるのは避けなければならなかったからな」
そう言いつつ彰司は小皿に一つ残っていたソーセージを、フォークで取るや、ソースをほんの少しつけて口に運んだ・・・。
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