毎日死にたかった僕の日常

中学いじめ編

行動に移すとき。

　私はその場では冷静に対応し、席に着いた。机の上に広げられた答案用紙をファイルにしまい、机の中に戻す。次の授業は国語だった。担当教師は優しい教員で体調不良を訴えるとすぐ保健室に行くことを許可してくれる先生であった。そのことを私は知っていたためある妙案を思いつく。それは、体調不良を訴え、保健室に行くふりをして学校から脱出する。というものだ。そして当日は体力テストの実施日、先生たちは出払っていて逃げ出すには都合のいいタイミングであったのだ。

ーーーキーンコーンカーンコーンーーー

　授業開始のチャイムが鳴る。五分後クラスが静かになったタイミングで私は先生のもとへ寄る。
「すいません。低気圧のせいか頭痛がしてしんどいので保健室言ってきてもいいですか？」
私は賭けに出た。
「え、大丈夫かい？いってきないってきな。」
優しい先生で助かった。心底感謝をし教室を後にした。
　こうなったらあとは帰るだけだ。私はジャージ姿のまま昇降口にいき、登校靴と上履きを持ち帰る。私の通っていた中学校は入り口が二つある。いつも使っている通路では教室に残っている人に見つかってしまうと考え、教員用通路を通り脱出することを考えた。渡り廊下を通ると隣の体育館では体力テストを現在進行形で行っている声が聞こえる。私は高鳴る動悸を抑えながら必死に走り抜けた。それはもう無我夢中であった。見つかりたくない。連れ戻されたくない。その一心で走った。
　そうしてやっとの思いで私は敷地を抜けることができた。私の心は何とも言えない達成感で満ちていた。あの地獄から抜けられた。やっと自由になれた。やっと助かる。そんな感情で私は涙した。そこからの道のりは早いものであった。いつも通る道、いつも通るトンネル、いつもの交差点。何ら変わりない通学路だった。
　ついに私は自宅へとたどり着いた。私が自宅に帰ることを選んだ理由はこの日なら普段単身赴任の父も帰ってくる日であり、さらに母も仕事が休みであるからだ。家の鍵を開け私は開口一番叫んだ。
「助けて！　いじめられた！」
　私が帰ってくるとは思っていなかったのだろう。父が二階から、母がリビングからものすごい速度でかけてきた。
「どうしたの、何があった。」
　父がぼろぼろの私を見てそう声をかけると、私は安心感からか涙が止まらなくなった。やっといえた。やっとだ。家族に助けを求めた私はその場で数分間泣き続けた。
「学校でこんなことされて…」
　私は今まで受けた暴力のこと、デブや豚など罵られたこと、そして隠したテストの答案用紙をすべて机の上に出されてさらされたこと、すべてを話した。
「なんだって？」
　私がそう伝えると父は鬼の形相で学校に電話をかけた。それは今までに見たこともない表情であった。しばらくすると父から呼び出された。
「学校行くぞ。話付ける。」
　私は戸惑いを持ちながらもその頼れる父の背中を信じて学校へ行くことを決めた。