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番外編
約束の証 04
しおりを挟む「これ……」
王家の紋章の横にあったのは、アヴェーヌ家の紋章だ。ローズの家の紋章が入ってるということはアヴェーヌ伯爵家も公認ということなんだろう。ローズの懐かしいと思う気持ちがあふれてきて、そっと紋章を指でなぞる。
「ローズ様は貴族の出だが絵本では庶民の子にも勇気を与えてほしいという伯爵家の要望で、ただのローズとしているらしいな」
「そうなんだ……」
「この2つの紋章が入った品の売上の一部は、元キース王国の土地の復興や孤児に寄付することになってる。だからみんなこぞってこれを買うんだ」
父の説明で教科書に書いてあった事を思い出す。キース王国は王族の腐敗で領地が荒れ果て困窮していたから、この国の領地になっても立て直すのにかなりの時間とお金がかかったと書いてあった。
「元キース王国の領地もだいぶ改善されて作物の品質が上がったからな。50年くらい昔の事だが、ようやくあっちでもここと同じくらいの暮らしができるようになったらしい」
父の言葉に昔を思い出したようで、お義父さんも頷きながら語り始める。
「父さん達は王都に来る前キース王国に近い土地に住んでいたんだけど、まだ孤児もいっぱいいたし差別もあって大変だったよ。最近はそれも無くなって元キース王国の領地からも観光客が来てるから本当に良かったよ」
そういえばエドのお父さん達はもともと違う土地に住んでいたんだっけ。きっと教科書には書かれないようなひどい環境を見てきたんだろうな。
「それにしても俺が子供の頃は、ドラゴンの杖とか無かったな。絵本もちょっと違った気がする」
「そうだよね?」
私が子供の頃もなかったし絵本の内容も合っていた気がするんだけど。どうしてこうなったの? 不思議に思っているとお義父さんが絵本を手に取りパラパラとめくり始めた。
「たしか女の子がさらわれて王子が助けに行ったとか。あと女の子が敵の王子の魔力を吸ったはずだったけど、子供にはわかりにくいからかな?」
たしかに絵本で表現するとなると、魔力を吸ってる意味がわかりづらいもんね。それよりはババーンと攻撃して倒しましたの方がわかりやすい。
「当時その場にいて捕らえられた貴族の男の証言があったから、王家には詳細な報告書はあると思う。まあでも絵本やお土産は娯楽だからね。」
あ! さらわれた時ジーク王子を出迎えたあの貴族の男か! 生きて捕まっていたのね。誰がこの戦いの内容を知ったのだろう? とは思ったけど、そうかあの男の人がいたんだった。お義父さんが教えてくれた事になるほどね~と思っていると、父がタペストリーを両手に持ちながらニヤリと笑った。
「内容が変わったのはここ最近だな。外国からの観光客が多くなって、名物になる土産物が欲しくなったんだろう。でもそれで売上が上がって寄付金が多くなるなら良いんじゃないか?」
今まであの戦いに関する事は見ないようにしていたけど、たしかにお祭りが盛り上がるのは良いことだ。それに私達のお店も儲かるもんね! 私も思わず父にニヤリと笑い返す。
「……ふふ。それもそうね!」
そう言って3枚のタペストリーを手に取り壁に当ててみる。今日インテリアを白で統一したばかりだから、綺麗な薔薇と剣のタペストリーはシンプルな壁によく映えた。たしかにお祭り気分も盛り上がるし、なにより物は良いから綺麗だわ。こっちは外に飾ろうかなど考えていると、父が思い出したように「そうだ!」と言いこちらを振り向いた。
「おまえら、早く終わったなら出店を見てきたらどうだ? いつも全然見れないだろう? もう始まってるからたまには2人で出掛けてきなさい」
その提案を聞いて一番に反応したのはエドだった。手をポンと叩いて少し焦っているようだ。
「そうだ!忘れてた! 金物屋に頼んでいたのがあったんだ。サラ、散歩がてら取りに行くのつきあってくれる?」
「いいよ。金物屋なんて、なに頼んだの?」
「後で見せるよ」
なんだろう? 心なしかエドがウキウキしてるように見えるけど。新しい調理道具を買うだけではこんなに喜ばないだろうし。エドの謎の行動に首をかしげる。それでも2人で手をつないで店の扉を開けた頃には、私も久々のお出かけにワクワクしていたのだった。
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