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39)双子が繋いだ縁
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たこ焼き屋の娘と紫紺の王子の事情
「「正義の味方、弱者を助け悪と戦うヒーローズ参上!!」」
あっけにとられた3人を他所になぜか双子は手を叩きあっている。数秒の間を経て一番に覚醒したのはプリムだ。
「なんで、ここに・・・!」
「ふ、兄上をここに誘導したのは私達よ?当然、私達だってここに来れるわ」
「・・・そりゃそうだよね」
「アリエッタ、納得するのはそこじゃないよ?」
納得するアリエッタだが、きちんとケイトが突っ込んでくれているあたりできたカップルである。
気付けば、双子はプリムとケイトの間に立ちはだかっている。一体何をと構えるプリムに対して、ルーティがマーティに何かを渡した。それを訝しく思ったアリエッタだが、それが何かに気付いた二人は大声を上げた。
「それ・・・あの鏡じゃないか!」
「どうして、お前たちがそれを持っている?」
啞然としている2人をよそにマーティはへらっと笑ってアリエッタに微笑んだ。
「遅くなってごめんなさい、アリエッタ。ようやく貴方に恩返しができる」
「おん・・・返し?」
「そう、そして、私達の大好きな兄さまにもね」
「・・・ますますわからなくなってきたんだけれど?」
頭をかきながらも混乱している様子を隠さないケイトに対して、ルーティはちょっと後ろめたげに口を開いた。
「実はね・・・あたし達、兄さま達に内緒でとある人と知り合っていたの」
「は?それが鏡とどうつながるの?」
「皇太子殿下もそう思うよね?ところが実は関係あるんですよ。もっとも直接この鏡でというわけじゃないんですけどねー」
まぁ、長くなるからちょっと座って話を聞いてくださいと言う双子。プリムとケイトは顔を見合わせ、しぶしぶと同じ場所に座った。アリエッタも気になるとばかりにケイトの横にすわっている。
あれだ、青空教室っぽいなと思ったアリエッタだがそれを口にする勇気はなかった。
過去を振り返るようにルーティが顎に指を当てて話を再開させた。
「いつ頃だったかなー私達の部屋の鏡が突然ある場所を映す様になったのよね」
「それは僕らの世界にないような部屋だったんですよね。びっくりした僕らでしたが、好奇心から誰にも言わずに黙って観察しようという話になったんです」
「で、しばらくするとそこに出入りしている人がこちらに話しかけてくるようになったの!それにびっくりしたけれど、その人に話を聞いた時すごく納得したわ」
「それ以来相談相手になってもらっているんです。その人に。で、今回も相談したら、すっごいことを教えてもらったんですよ!」
「で、そのためにこの鏡が必要だっていうんで、父様の許可をもらって持ってきました!」
どやぁと胸をはる二人だが、結局はその人が一体何者かわからないことには何も言えない。額に手を当てながらケイトはため息をついた。
「・・・よくわからないけれど、君らの部屋の鏡が異世界に通じていることはわかった。で、その人っていったい何者なんだい?」
「「リーディン・マラディーヒ様」」
その名前を聞いた瞬間、プリムは愕然とした。しかし、アリエッタからすれば全く見知らぬ名前だ。ケイトの方を見ると、ケイトも目を見開いて驚いている。
「そんな、馬鹿な・・・!」
「え・・・噓だろう」
「ケイト、一体誰の事なの・・・なんか聞いた名前ではあるんだけど・・・」
「アリエッタ、さっき話したでしょ!アリア様の父君はリーディン様でこの国の初代皇帝の長兄にあたるって!」
「そう。つまり、僕の母方のおじいちゃん・・・噓だろう?」
「えーと、つまり異世界っていうのは日本ってことだよね」
「いやいや待て、さすがに都合の良い話はないだろう。その人物が本当にその人である証拠はあるのか?」
「ふふーん、残念ながらこれも皇帝陛下や父上に確認済みなんですよ。ほら、証明書です」
えっへんと胸をはったマーティはポケットから高級な紙を取り出してプリムの前に掲げた。ケイトも気になるのか、プリムの横で見ていた。
「・・・本当に書いてある・・・・間違いなく父上の字だ」
「うん、間違いないね・・・これは」
「そのリーディン様が問題を解決してくれるということだよね、でもどうして・・・?」
「アリエッタはさすがいいところをつきますね!」
「その答えは兄様にこの鏡を見てもらえばわかります」
そういいながら、マーティは鏡をケイトの前に差し出した。ケイトが鏡を見た瞬間に鏡がっ輝き、ケイトを映していたのがどんどん別の人物へと変化していく。やがて形づくられたその人物を目の当たりにしたケイトは目を見開いた。
「・・・おじいちゃん!?」
「久しぶりだな、ケイト」
ケイトの叫びに今度はプリムとアリエッタが驚くことになった。おじいちゃんのことはプリムもアリエッタもケイトから聞いて知っていた。ただ、母方の祖父にあたるということを聞いていなかった。だからこそ、リーディン様と同一人物であることに驚いたのである。
「え、ケイト様・・・本当にこの方がリーディン様なの?」
「うん・・・間違いないよ。・・・でも、なんだろうちょっと若々しく見えるというか」
「ほう。良く気付いたな。ただ、これでは少々会話が面倒だ。どちらにせよそちらに行くのだし、今からでもよかろう。ちょっと下がっていなさい」
直ぐそっちに行くからとさらりと言ったそのおじいちゃんはあっという間に目の前に現れた。
「そんな馬鹿な…俺でさえかなりの魔力を使ったのに・・・」
「はは、わしの場合はずっと魔力を使っておらず溜まっていただけのことだ。それはそうとまだこんなものが残っていたとはな」
「知っていらしたのですか!」
驚くプリムをよそにおじいちゃんはこれまたあっさりと口にした。
「知っているも何も・・・わしが考案したものだ」
「おじいちゃんが?」
「そうだ・・・おお、君だな。確かアリエッタさんというのだったな」
「あ、はい」
「なるほど。日本に帰りたいというのは本気のようだね」
悪いけれど、心を見せてもらったよと言うおじいちゃん。もはや驚くのも疲れてきたのでアリエッタは敢えて動揺を抑えた。
目の前にいるおじいちゃんはおじいちゃんというわりにはそんなに歳がいっているようにみえなかった。むしろ40代と言われても納得できるぐらいのレベルだ。すらりとしていて、着物を着て下駄を履いているのに頭にかぶっている帽子と杖が紳士さを強調している。
言葉につまりながらも、アリエッタはなんとか口を開いた。
「あの、私を日本に帰していただけませんか!?」
「うん、いいよ。丁度ついさっき、大地の女神へのお仕置きも終わったところだしね」
「・・・・はい?」
「おじいちゃん、どういうこと?」
「はは、ケイトは大地の女神に言われたんだろう?一度だけなら帰してやれるって」
「うん、魔力と引き換えにって」
「それが噓なんだよ。そもそも三大女神がそんなに弱いわけなかろう。このわしでさえこうやってここに来れるのだからね」
「・・・つまり、ケイトは騙されて魔力を取られた・・・っ・・・ぷっ・・・」
「「そうなんですよ~!!それ聞いた僕ら(私達)も笑いました!!」」
ちゃっかりと双子も会話に加わっている。その双子にとどめを刺されてうなだれているケイトと今までの苦労が水の泡となって啞然としているプリムをよそにおじいちゃんはアリエッタに話しかけた。
「まぁ、ただ帰すだけなら簡単だ。しかし、君が日本に帰るとケイトが悲しむからとこの子たちが言うのでな。その解決策として、わしが扉を作ろうとこちらに来たわけだ」
「・・・異世界と繋ぐ扉を作れるという意味ですか?」
「大地の女神をおど・・・いや、説得したおかげでわしが生きている間なら女神の空間を通じてお互い行き来することを許してもらえたのじゃ。時代のずれも大地の女神が時間を司っているからどうにでもなるだろう」
「っ・・・一度でも帰れるなら何でもいいです!」
「もちろん帰そう。ただ、わしから3つほどお願いがある」
「な、なんでしょうか!?」
双子はこうなることを解っていたのか、うんうんと話を聞いているだけ。しかし、そこで止める人物がいた。もちろん、皇族であるプリムである。皇族の一人としてケイトを皇帝に据えることを諦めるわけにはいかないということだろう。
「お待ちください、ケイト様には皇帝になってもらわないと!」
「うん、それは天の女神が認めないから諦めなさい」
「え・・・」
「天の女神は聖女の子孫には幸せになってほしいという願いがあるからね。そこにケイトの意思がないのであれば、初代聖女の二の舞にしないためにも全力で止めると言っていたよ」
「・・・まさか、三人の女神様全員と面識がおありで?」
「長年生きているといろいろと経験するものでな~ついでに言うと、さっき皇帝に対しても釘をさしておいたわい。いやぁ、馬鹿なやつらじゃ、こんなもの国を立ち上げるときにさっさと廃棄しておればよかったものを。こんなもの負の遺産どころかゴミじゃな」
さっき城でも鏡越しに会話したからのうとひょうひょうというおじいちゃん。そんな笑顔で攻撃してくるおじいちゃんとは裏腹に絶望的にまで落ち込むプリム。
「・・・・そんな、そんな・・・!!」
「なんだか・・・笑顔で攻撃ってこんな風に使うんだね。初めて見た・・・」
「・・・母上の怒り方と似ているかも」
・・・ケイトとしては複雑この上ない。そして、まだ会話についていけないところがあるけれど、確認は必要だからと口をはさんできた。
「おじいちゃん・・・とりあえず、アリエッタを帰す条件を教えて」
「あっ、そうだ。続きをお願いします!」
ケイトに促されて頷いたおじいちゃんは次のことを告げた。
一つ、この世界に自分の居場所を作ってもらいたい
一つ、扉を繋ぐ先につながっている高原の家を含めて日本においてある資産を全てケイトの名義にしたので代わりに管理してほしい
一つ、ケイトを扉の管理者にする予定だ。そのためケイトには時々日本に行ってもらうので世話を頼む
「おじいちゃん、それって俺も日本に行けるってこと・・・?」
「そのための扉じゃ。どんどん使うがよい」
「・・・なら、どうしてあの時に使わなかったの?」
「もちろん、ツレのばあさんがおったからだな。あとは別に日本にいても困らなかったからというのもある」
実際、双子とつながりがなければここに戻ることもなかったろうてと言うおじいちゃんにアリエッタはある人物を思い浮かべてぽつりとつぶやいた。
「・・・なんだか似てますね・・・」
「誰にじゃ?」
「アリア様に・・・そっくりです。なんというか雰囲気とか言い方とか」
「・・・扉を作るのはケイトのためだと言ったが、君にも感謝しているのだよ」
ふわりと目を細めたおじいちゃんにアリエッタは首を傾げた。どういう意味かと。
「・・・我が娘を救ってくれて感謝する。たとえ双子の願いであってもそればかりはわしにもどうしようもなかったからの」
お蔭で、妻の残した大事な形見を失わずにすんだと目を瞑るおじいちゃんに、アリエッタはケイトを見上げた。ケイトにもアリエッタの言いたいことが分かったのだろう、微笑んでいた。
「・・・いいおじいちゃんですね」
「でしょ~」
「「そーなの、優しいの~。日本の戦闘機とか、自衛隊のこととかいろいろ話してくれるの!」」
「・・・まさか、ミサイルを作れたのって」
「うん、おじいちゃんに手伝ってもらったの~☆」
なんという衝撃な事実・・・!!
長年の謎がやっと解けたとケイトは項垂れたが、きゃっきゃとおじいちゃんと絡んでいる双子を怒っていいものかどうか悩む。アリエッタはケイトをしばらく見つめた後、おじいちゃんに向かい合った。
「おじいちゃん、私で良ければよろしくお願いします」
「承った。早速と言いたいところだが、わしにも仕事ができた」
「・・・もしかしてこの負の遺産についてですか?」
「これはさすがに残すわけにはいかんからのー。弟も面倒なものをのこしてくれたものだ」
はーとため息をつきながらも双子に向かって案内を頼むおじいちゃん。ルーティが喜んでとおじいちゃんの手を握って歩き出した。マーティがそれに続こうとした時、ケイトとアリエッタに振り返った。
「・・・アリエッタ、遅くなったけれど・・・お母様を助けてくれてありがとう」
「マーティ様、もしかして恩返しって・・・」
「本当に、嬉しかったんですよ。それにこれで兄様の負担も減るねってほっとしましたから」
「ああ、あのザン様の状況じゃね・・・」
「それに、兄様を変えてくれたのもアリエッタですしね。寂しいけれど、姉上になってもらうってことで我慢します♪」
「・・・・・ん?」
首を傾げたアリエッタを他所にルーティはマーティを追いかけて階段へと向かっていく。どういう意味だと考えだしたアリエッタだが、話を逸らしたケイトによって階段にぐいぐいと引っ張られていく。
「ねぇ、どういうこと・・・?」
「まぁまぁ、その話はまた後で整理しよう。ひとまず城へ戻ろうか」
「うん・・・・うーん・・・あ、プリム様はっ?」
「ほっておけばいい。どうせ復活したら戻ってくるよ」
「「正義の味方、弱者を助け悪と戦うヒーローズ参上!!」」
あっけにとられた3人を他所になぜか双子は手を叩きあっている。数秒の間を経て一番に覚醒したのはプリムだ。
「なんで、ここに・・・!」
「ふ、兄上をここに誘導したのは私達よ?当然、私達だってここに来れるわ」
「・・・そりゃそうだよね」
「アリエッタ、納得するのはそこじゃないよ?」
納得するアリエッタだが、きちんとケイトが突っ込んでくれているあたりできたカップルである。
気付けば、双子はプリムとケイトの間に立ちはだかっている。一体何をと構えるプリムに対して、ルーティがマーティに何かを渡した。それを訝しく思ったアリエッタだが、それが何かに気付いた二人は大声を上げた。
「それ・・・あの鏡じゃないか!」
「どうして、お前たちがそれを持っている?」
啞然としている2人をよそにマーティはへらっと笑ってアリエッタに微笑んだ。
「遅くなってごめんなさい、アリエッタ。ようやく貴方に恩返しができる」
「おん・・・返し?」
「そう、そして、私達の大好きな兄さまにもね」
「・・・ますますわからなくなってきたんだけれど?」
頭をかきながらも混乱している様子を隠さないケイトに対して、ルーティはちょっと後ろめたげに口を開いた。
「実はね・・・あたし達、兄さま達に内緒でとある人と知り合っていたの」
「は?それが鏡とどうつながるの?」
「皇太子殿下もそう思うよね?ところが実は関係あるんですよ。もっとも直接この鏡でというわけじゃないんですけどねー」
まぁ、長くなるからちょっと座って話を聞いてくださいと言う双子。プリムとケイトは顔を見合わせ、しぶしぶと同じ場所に座った。アリエッタも気になるとばかりにケイトの横にすわっている。
あれだ、青空教室っぽいなと思ったアリエッタだがそれを口にする勇気はなかった。
過去を振り返るようにルーティが顎に指を当てて話を再開させた。
「いつ頃だったかなー私達の部屋の鏡が突然ある場所を映す様になったのよね」
「それは僕らの世界にないような部屋だったんですよね。びっくりした僕らでしたが、好奇心から誰にも言わずに黙って観察しようという話になったんです」
「で、しばらくするとそこに出入りしている人がこちらに話しかけてくるようになったの!それにびっくりしたけれど、その人に話を聞いた時すごく納得したわ」
「それ以来相談相手になってもらっているんです。その人に。で、今回も相談したら、すっごいことを教えてもらったんですよ!」
「で、そのためにこの鏡が必要だっていうんで、父様の許可をもらって持ってきました!」
どやぁと胸をはる二人だが、結局はその人が一体何者かわからないことには何も言えない。額に手を当てながらケイトはため息をついた。
「・・・よくわからないけれど、君らの部屋の鏡が異世界に通じていることはわかった。で、その人っていったい何者なんだい?」
「「リーディン・マラディーヒ様」」
その名前を聞いた瞬間、プリムは愕然とした。しかし、アリエッタからすれば全く見知らぬ名前だ。ケイトの方を見ると、ケイトも目を見開いて驚いている。
「そんな、馬鹿な・・・!」
「え・・・噓だろう」
「ケイト、一体誰の事なの・・・なんか聞いた名前ではあるんだけど・・・」
「アリエッタ、さっき話したでしょ!アリア様の父君はリーディン様でこの国の初代皇帝の長兄にあたるって!」
「そう。つまり、僕の母方のおじいちゃん・・・噓だろう?」
「えーと、つまり異世界っていうのは日本ってことだよね」
「いやいや待て、さすがに都合の良い話はないだろう。その人物が本当にその人である証拠はあるのか?」
「ふふーん、残念ながらこれも皇帝陛下や父上に確認済みなんですよ。ほら、証明書です」
えっへんと胸をはったマーティはポケットから高級な紙を取り出してプリムの前に掲げた。ケイトも気になるのか、プリムの横で見ていた。
「・・・本当に書いてある・・・・間違いなく父上の字だ」
「うん、間違いないね・・・これは」
「そのリーディン様が問題を解決してくれるということだよね、でもどうして・・・?」
「アリエッタはさすがいいところをつきますね!」
「その答えは兄様にこの鏡を見てもらえばわかります」
そういいながら、マーティは鏡をケイトの前に差し出した。ケイトが鏡を見た瞬間に鏡がっ輝き、ケイトを映していたのがどんどん別の人物へと変化していく。やがて形づくられたその人物を目の当たりにしたケイトは目を見開いた。
「・・・おじいちゃん!?」
「久しぶりだな、ケイト」
ケイトの叫びに今度はプリムとアリエッタが驚くことになった。おじいちゃんのことはプリムもアリエッタもケイトから聞いて知っていた。ただ、母方の祖父にあたるということを聞いていなかった。だからこそ、リーディン様と同一人物であることに驚いたのである。
「え、ケイト様・・・本当にこの方がリーディン様なの?」
「うん・・・間違いないよ。・・・でも、なんだろうちょっと若々しく見えるというか」
「ほう。良く気付いたな。ただ、これでは少々会話が面倒だ。どちらにせよそちらに行くのだし、今からでもよかろう。ちょっと下がっていなさい」
直ぐそっちに行くからとさらりと言ったそのおじいちゃんはあっという間に目の前に現れた。
「そんな馬鹿な…俺でさえかなりの魔力を使ったのに・・・」
「はは、わしの場合はずっと魔力を使っておらず溜まっていただけのことだ。それはそうとまだこんなものが残っていたとはな」
「知っていらしたのですか!」
驚くプリムをよそにおじいちゃんはこれまたあっさりと口にした。
「知っているも何も・・・わしが考案したものだ」
「おじいちゃんが?」
「そうだ・・・おお、君だな。確かアリエッタさんというのだったな」
「あ、はい」
「なるほど。日本に帰りたいというのは本気のようだね」
悪いけれど、心を見せてもらったよと言うおじいちゃん。もはや驚くのも疲れてきたのでアリエッタは敢えて動揺を抑えた。
目の前にいるおじいちゃんはおじいちゃんというわりにはそんなに歳がいっているようにみえなかった。むしろ40代と言われても納得できるぐらいのレベルだ。すらりとしていて、着物を着て下駄を履いているのに頭にかぶっている帽子と杖が紳士さを強調している。
言葉につまりながらも、アリエッタはなんとか口を開いた。
「あの、私を日本に帰していただけませんか!?」
「うん、いいよ。丁度ついさっき、大地の女神へのお仕置きも終わったところだしね」
「・・・・はい?」
「おじいちゃん、どういうこと?」
「はは、ケイトは大地の女神に言われたんだろう?一度だけなら帰してやれるって」
「うん、魔力と引き換えにって」
「それが噓なんだよ。そもそも三大女神がそんなに弱いわけなかろう。このわしでさえこうやってここに来れるのだからね」
「・・・つまり、ケイトは騙されて魔力を取られた・・・っ・・・ぷっ・・・」
「「そうなんですよ~!!それ聞いた僕ら(私達)も笑いました!!」」
ちゃっかりと双子も会話に加わっている。その双子にとどめを刺されてうなだれているケイトと今までの苦労が水の泡となって啞然としているプリムをよそにおじいちゃんはアリエッタに話しかけた。
「まぁ、ただ帰すだけなら簡単だ。しかし、君が日本に帰るとケイトが悲しむからとこの子たちが言うのでな。その解決策として、わしが扉を作ろうとこちらに来たわけだ」
「・・・異世界と繋ぐ扉を作れるという意味ですか?」
「大地の女神をおど・・・いや、説得したおかげでわしが生きている間なら女神の空間を通じてお互い行き来することを許してもらえたのじゃ。時代のずれも大地の女神が時間を司っているからどうにでもなるだろう」
「っ・・・一度でも帰れるなら何でもいいです!」
「もちろん帰そう。ただ、わしから3つほどお願いがある」
「な、なんでしょうか!?」
双子はこうなることを解っていたのか、うんうんと話を聞いているだけ。しかし、そこで止める人物がいた。もちろん、皇族であるプリムである。皇族の一人としてケイトを皇帝に据えることを諦めるわけにはいかないということだろう。
「お待ちください、ケイト様には皇帝になってもらわないと!」
「うん、それは天の女神が認めないから諦めなさい」
「え・・・」
「天の女神は聖女の子孫には幸せになってほしいという願いがあるからね。そこにケイトの意思がないのであれば、初代聖女の二の舞にしないためにも全力で止めると言っていたよ」
「・・・まさか、三人の女神様全員と面識がおありで?」
「長年生きているといろいろと経験するものでな~ついでに言うと、さっき皇帝に対しても釘をさしておいたわい。いやぁ、馬鹿なやつらじゃ、こんなもの国を立ち上げるときにさっさと廃棄しておればよかったものを。こんなもの負の遺産どころかゴミじゃな」
さっき城でも鏡越しに会話したからのうとひょうひょうというおじいちゃん。そんな笑顔で攻撃してくるおじいちゃんとは裏腹に絶望的にまで落ち込むプリム。
「・・・・そんな、そんな・・・!!」
「なんだか・・・笑顔で攻撃ってこんな風に使うんだね。初めて見た・・・」
「・・・母上の怒り方と似ているかも」
・・・ケイトとしては複雑この上ない。そして、まだ会話についていけないところがあるけれど、確認は必要だからと口をはさんできた。
「おじいちゃん・・・とりあえず、アリエッタを帰す条件を教えて」
「あっ、そうだ。続きをお願いします!」
ケイトに促されて頷いたおじいちゃんは次のことを告げた。
一つ、この世界に自分の居場所を作ってもらいたい
一つ、扉を繋ぐ先につながっている高原の家を含めて日本においてある資産を全てケイトの名義にしたので代わりに管理してほしい
一つ、ケイトを扉の管理者にする予定だ。そのためケイトには時々日本に行ってもらうので世話を頼む
「おじいちゃん、それって俺も日本に行けるってこと・・・?」
「そのための扉じゃ。どんどん使うがよい」
「・・・なら、どうしてあの時に使わなかったの?」
「もちろん、ツレのばあさんがおったからだな。あとは別に日本にいても困らなかったからというのもある」
実際、双子とつながりがなければここに戻ることもなかったろうてと言うおじいちゃんにアリエッタはある人物を思い浮かべてぽつりとつぶやいた。
「・・・なんだか似てますね・・・」
「誰にじゃ?」
「アリア様に・・・そっくりです。なんというか雰囲気とか言い方とか」
「・・・扉を作るのはケイトのためだと言ったが、君にも感謝しているのだよ」
ふわりと目を細めたおじいちゃんにアリエッタは首を傾げた。どういう意味かと。
「・・・我が娘を救ってくれて感謝する。たとえ双子の願いであってもそればかりはわしにもどうしようもなかったからの」
お蔭で、妻の残した大事な形見を失わずにすんだと目を瞑るおじいちゃんに、アリエッタはケイトを見上げた。ケイトにもアリエッタの言いたいことが分かったのだろう、微笑んでいた。
「・・・いいおじいちゃんですね」
「でしょ~」
「「そーなの、優しいの~。日本の戦闘機とか、自衛隊のこととかいろいろ話してくれるの!」」
「・・・まさか、ミサイルを作れたのって」
「うん、おじいちゃんに手伝ってもらったの~☆」
なんという衝撃な事実・・・!!
長年の謎がやっと解けたとケイトは項垂れたが、きゃっきゃとおじいちゃんと絡んでいる双子を怒っていいものかどうか悩む。アリエッタはケイトをしばらく見つめた後、おじいちゃんに向かい合った。
「おじいちゃん、私で良ければよろしくお願いします」
「承った。早速と言いたいところだが、わしにも仕事ができた」
「・・・もしかしてこの負の遺産についてですか?」
「これはさすがに残すわけにはいかんからのー。弟も面倒なものをのこしてくれたものだ」
はーとため息をつきながらも双子に向かって案内を頼むおじいちゃん。ルーティが喜んでとおじいちゃんの手を握って歩き出した。マーティがそれに続こうとした時、ケイトとアリエッタに振り返った。
「・・・アリエッタ、遅くなったけれど・・・お母様を助けてくれてありがとう」
「マーティ様、もしかして恩返しって・・・」
「本当に、嬉しかったんですよ。それにこれで兄様の負担も減るねってほっとしましたから」
「ああ、あのザン様の状況じゃね・・・」
「それに、兄様を変えてくれたのもアリエッタですしね。寂しいけれど、姉上になってもらうってことで我慢します♪」
「・・・・・ん?」
首を傾げたアリエッタを他所にルーティはマーティを追いかけて階段へと向かっていく。どういう意味だと考えだしたアリエッタだが、話を逸らしたケイトによって階段にぐいぐいと引っ張られていく。
「ねぇ、どういうこと・・・?」
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