【R18】階段で転げ落ちたシンデレラ

巴月のん

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6)流された末での協定

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「ん~~!」

佳音はむっくりと頭だけもたげて起きた。いやに窮屈だと思ったら、ただでさえシングルで狭いというのに、彼が隣で寝ていた。そら、狭いわ。しかも、私壁側だから逃げられないようにしていたんだなというのがよくわかる。だって、足だって絡められているし、よく見たら彼の腕は私の頭の方に横わたっていて、腕枕されていたというのがすぐに解った。

「えっとぉ・・・昨日はどうなったんだっけ?」

昨夜のことを思い返してみても何度も喘がされてキスされてそのまま眠気に負けて意識を失ってそこで終わっている。実際、自分は裸だし、キスマークも多々ついている。ブランケットをはおっているだけましというものだ。とりあえず、シャワーを浴びようと身体を動かそうとすると、足首の方から嫌な金属音が聞こえた。

「え、まさか本当につけたの?!」

以前彼が言っていたことを思い出して慌てて、足首の方を見てみれば、そこには確かに付けられてはいた。いたのだが・・・不可解なことにベッドとはつながっていない。

「アンクレット?」

キラキラ輝いているのはいったいなんだろう?
銀とか金とかじゃなさそうだけれど・・・ちっちゃいけれどシンデレラの靴のチャームもあるし、小さいなんだろ、イミテーションダイヤも一粒ついてた。小粒だけれど綺麗・・・。

「ってこれ、どうやってとるのよ!」

よくよく見ると留め具が見えない事に気付き、慌てて必死に探すが、解らない。困惑していると、後ろに影ができていることに気付いた。あれ?と思って振り返ろうとするが、それより先に彼が足首に触れて、後ろの方を指さしてきた。

「うるさいな。留め具はここだ。もっとも、お前ひとりでは外せないが」
「え、じゃ、コレ貴方がつけたの?」
「お前と俺以外に誰もいないからそうなるだろうな。シャワーするぞ」
「あ、うん、いってらっしゃい」
「お前も一緒に決まっているだろう?」

絶対零度の微笑みと冷たい声で言われて、はい・・・と頷く以外に何ができようか。彼が風呂の方へ向かったのを確認した佳音はブランケットを羽織ったまま、クローゼットを漁った。下着と適当な着替えを見つけたのでそのまま脱衣所に入ったが彼はもうすでに浴槽の方に入ったらしい。

「あれ、アンクレットってとらなくても大丈夫?」
「あー、そのままで大丈夫だ。防水加工はしてある」
「ああ、そう」

一応、タオルで前を隠して入る。風呂にはこだわっていたから足を延ばして入ることができるが、そこには右京が先客で入っている。無駄に整った顔立ちで、濡れた頭をかきあげているところが似合いすぎてちょっとイラっとくる。
佳音はお湯を出して、先に頭を洗うことにした。彼に見られているのは解っていたが、もう今更だと開き直るしかない。というか、ここは私の家だ。何故、彼に遠慮する必要があるのかと思うと、もうどうでもよかった。シャンプーを終わらせて次はリンスで頭を洗おうとしたその時、彼の足首に目がいった。

「先輩、そのアンクレットって」
「これが、どうかしたか」
「なんか、私のと似てるんですけど、気のせいですか?」
「気のせいだろう」

さらりと言っているが絶対違う!! 泡まみれになっている手を洗ってから、彼の足首にあるアンクレットに触れる。おいと文句ともとれる声が聞こえるが無視して近づく。

「やっぱりそっくりじゃない!イミテーションダイヤもついてるし、ガラス靴もついてるし、違うのは色だけじゃん!」
「あーうん、わかった。わかったからその体勢はやめろ」
「え?」
「言っておくがお前が悪いからな?」

文句を言っていると、浴槽にもたれていたはずの彼の腕が伸びて、腕を引っ張った。
え?と思う間もなく、佳音は右京に口を塞がれ、気付けば彼の手は腰にまわっている。舌を絡められ、息苦しくなった頃、僅かに口が離れた。

「あのさ、胸が足にあたっていて、俺の視界にはお尻が見えてて、これで我慢するなっていうほうが無理じゃね?」

耳元でそう囁くその声は完全に欲情を伴った雄そのもの。口をパクパクさせていた佳音を他所に彼の唇は耳タブを舐めて、そこから下の方へと下がっていく。項まで舐めていたのに、なぜか途中で吸い付いてきたり、甘嚙みしてきたり。それでも佳音が動けなかったのは彼の手が卑猥にも胸を揉んでいたからだ。その間にもリンスでベタベタになっている髪の毛から泡が垂れてくる。

「まっ、待って、頭、頭!!」
「じゃ、お湯を出してやるよ」

片手で器用にもシャワーに切り替えて佳音の頭を洗う。当然佳音や右京にもお湯がかかるが、それすらどうでもいいとばかりに彼の卑猥な動きは止まらない。彼が濯いだ髪は彼の手によって顏にかからないようにと、背中側に回されている。そして、その手はお尻の方にと伸びていた。ちゅぱと音を立ててキスしてくるのは絶対にわざとだと思いながらも、佳音は蒸気の熱と彼から与えられる快感で肌をピンク色に染めていた。

「んっん・・・やぁ・・・!」
「このままだと中途半端な姿勢だな。佳音、どっちがいい?」
「はぁっ・・・え、な、なにが?」
「立ってするか、浴槽の中でヤるか」
「どっちしか選択肢がないの? え、まっ、や、あ……!!」

途中で言葉にならなかったのは彼の指が茂みの方へと分け入ってきたからだ。耳元で早く選べと囁かれ、佳音は彼の胸にもたれながら迷った。迷っている間にも彼の細長い指は佳音の奥の入り口をなぞったりつついたりしている。羞恥心と戦いながらも、彼を見上げながら小さく呟いた。

「立つよ。浴槽のお湯を汚したくない」
「ん、了解」

佳音の返事と同時に、右京が心得たとばかりに佳音を立たせて浴槽から出てくる。幸いというか、彼の裸を全部見なくて済んだのは良かったと思う。ほっとしていると、右京が後ろから抱きしめてくる。背中越しにぴったりとくっついた肌を通してかお互いの呼吸や心臓の音が聞こえるような気がした。それと同時に佳音はお尻の方にくっついている固いモノの感触も感じて気が気じゃなかった。

「な、生々しい!」
「佳音、壁に両腕をついて・・・もう濡れてるだろうから入れるよ」

耳の近くで囁かれた佳音は急かされて慌てて手をついた。すると、右京が待ちきれないとばかりに片足を持ち上げ、茂みの奥にある膣へと熱をあてがった。一気に入り込んできた熱さに耐え切れなかった佳音は堪えるように唇を閉じたが、身体の方は素直だ。ビクンビクンと中が蠢いているのが佳音にもわかった。奥の方から湧き上がってくる圧迫感と戦いながらも、押し寄せてくる快感に耐えようと身体を必死に立たせていた。しかし、右京はこの程度で終わらせるつもりはないらしく、佳音に覆いかぶさるようにして胸を揉む。
ずっと降り注いでいるシャワーで肌が濡れているが、右京には気にした様子もない。それどころか、楽し気に腰を動かしている。

「佳音、我慢せずに、声を、出して」
「や・・・むっり・・・ひゃあ、あ・・っ・・・・・・!!」

右京は本当に悔しいぐらい手慣れている。佳音のいいところをあちこちついてくる。奥の方に一気に入ってきたかと思うと、前の方から手を伸ばして汁で濡れているひだをねっとりと押し付けるように這わせては動かしている。腰を支えないのはおっぱいの乳首を攻めているから。腰がフリーになっている分、佳音はどうしても自分でバランスを考えて動かないといけないのだが、動くたびに彼の熱があたってまとわりついてきて快楽に飲まれてしまう。必死に我慢していると、彼に顎を持ち上げられ、舌を絡ませられる。いつのまにか、バッグから、向かい合う体勢で交じりあい、絡み合っていた。
我慢していた佳音がようやく聞こえるほど嬌声をだしたのは、最後の最後右京の熱を奥で受け止めたその瞬間だった。


事を終えた後、右京は佳音がのぼせないようにと脱衣室に行かせ、かいがいしくタオルで拭き、パジャマに着替えさせた。右京も服を着るかと思ったら、なぜか熱をおさめたいからと再び風呂へと入っていった。
よくわからん・・・と想いながら佳音はソファーに横たわった。風呂での運動(性交なんて絶対認めるものか)を思い出し、自分はいったい何をしているんだろうと頭を抱えた。

「ほんとに、恋愛なんて嫌なのに」
「ふーん。とりあえず、髪乾かせよ」

ようやく出てきた右京はGパンだけ履いて、上半身は身に着けていなかった。タオルで髪を拭きながら、もう片手にはドライヤーを持っている。
佳音の隣に腰かけ、ドライヤーを動かしたかと思うと佳音の髪を乾かし始めた。

「で、恋愛が嫌になった理由はもしかして、あの下手な元カレ?」
「ああ、うん、そうなるかな」
「ふーん。あ、ちょっと前髪するから向かい合って」
「はーい」

もうここまで来たらどうにもなーれだ。向かい合う形で目を閉じる。垂れてくる水が嫌だからであって、キスを求めているわけじゃない。それなのに、何故この男は楽し気にキスしてくるのか。

「乾かす気あります?」
「あるから乾かしてる。・・・・ほら、乾いてきた」
「もう十分ですよ、ありがとうございます」
「でさ、そんなつまらん男で恋愛を終わらせるつもりなら、俺で終わらせた方がよほどよくない?」
「えーと、まさか、私と付き合おうっていうつもりです?そんなわけないですよね?」

彼女作るつもりないって言っていた貴方が?というのを言外に込めて言うが、彼は佳音の皮肉をまるっとスルーしてドライヤーを片付けている。

「俺も初彼女がひでぇ女だからさ、女に対して冷めた目でみていたけれど、佳音と肌を重ねてみてさ、悪くないなって思ったわけよ。で、どうせなら、楽しくやりたいじゃん」
「期限は?」
「んー、特に決めなくてもいいんじゃないかな。これからどうなるかわからないしさ」
「あっ、そういう意味だったんだ。そうか、長続きするつもりはないっていうことですか!」

右京の言葉に何かを思いついたのか、佳音はぱっと顔を綻ばせていた。突然の心変わりに驚いた右京は訝し気に佳音を眺めた。

「嫌な予感がするけれど、言ってみ?」
「こうしましょう。先輩が私に飽きるまでこの関係は続けます。その代わり、飽きたら一生私に関わらないでください」
「お前、待て……佳音!」
「あーすっきりした。そうだよね。今まで彼女を作ったことがない先輩なんだから」
「待て、何か誤解していないか!」

そうだよ、なんですっかり忘れていたのか。この人が本気で付き合ってとか言うわけない。身体の関係を求めているだけもっと早く思い当たればよかった。

良かった。これで蓋をしておける。そう、絶対恋愛なんかしない。
好きになんて、ならない。なっちゃいけないんだから。


「あーすっきりした!先輩、少し休んだら外に行きましょう!もう昼前だし、ランチにGO!」
「とりあえず、これだけは言わせてくれ」
「うん?」
「いい加減、先輩って呼ぶのやめろ」

いろんな意味でイラっとくるんだよと言う右京の言葉の意味はさっぱり分からなかった佳音だが、とりあえず先輩の中でのなんかのルールになっているのだろうと気にせず頷いた。

「んー。解りました。とりあえず気を付けます」
「後、敬語もなしでいい」
「はーい」
「まぁいい。今はそれで。その代わり少しずついろいろと叩き込んでやるし」

いってくることが物騒なくせに、何故頭を優しく撫でてくるのか。そういや、この人自分が持てるって自覚あるんだっけ。うわぁ、こういうのをあれだ、質が悪いっていうんだっけ?


「んーと、先輩はもうマスク付けたまま生きていけばいいと思います」


佳音としてはこれが精いっぱいの皮肉だったが、右京には笑われて終わりだった。

いろいろと解せぬ。




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