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スピンオフ
現代版ザンアリ『副社長と彼女の恋愛事情』(10)
しおりを挟む*第二王子と妃の夫婦事情【スピンオフ】現代版ザンアリ『副社長と彼女の恋愛事情』(10)
※ザンがアリアと同じ世界の人間だったら?という話です
今回は流しの回☆
有亜は意を決して部屋をでることにした。今日はザン・・・副社長のお母様の誕生日パーティーであり、私と副社長の婚約発表の場に行かなければならない。そのための契約なのだから、気分がどうであれ、遂行する義務がある。
深呼吸した後、そっとリビングの扉を開けるとザンと目が合った。久々に見るが、相変わらずそつのない姿だ。寝起きで多少寝癖がついてはいるが、それで顔が不細工になるわけでもなし。
ため息をついた有亜だが、ザンは有亜の登場に慌てて近寄った。彼にとっては一週間ぶりにもなる彼女との対面だ。有亜としては複雑な心境だが、ザンが嬉しそうな様子を見るに、あまり気にしてなさそうだと判断した。(そりゃ、ザンとしては久々に会った有亜に・・・以下略)
「有亜、体調は大丈夫か?少しやせたのでは・・・」
「ううん、それ目の錯覚だから。それより、朝ごはん食べるからどいて」
「それなら、修がさっき持ってきたサンドイッチがあるから食べたらどうだ」
ザンが指さした先には二人分のお皿の上にのっかったサンドイッチ。しかも、見るからにお店からテイクアウトしたようで、コンビニとは違う高級さが・・・。隣にあるケースはヨーグルトだろうか。
「とりあえず、いただきます」
「いや、そこまで急いで食わなくても・・・・」
「準備に時間がかかるとのことでしたから、さっさとしなければ」
ぐっと拳を握り締めて、コートを羽織る。慌てて後を追ってくるザンを他所に有亜はさっさと駐車場に向かった。仕事であれば、副社長専用の車に乗るのだが、今回はプライベートのため、自分の車を使おうと可愛い黄色のコンパクトカーの方へ向かった。有亜も一応車の運転はできるので、運転席に乗り込もうとしたが、ザンがいち早く乗り込んだ。仕方がなく、助手席に乗るが、落ち着かない。
「・・・いつも運転席だから落ち着かないわ」
「そういうな。俺が助手席だったらそれはそれで違和感がある」
ザンの言うことももっともだと思った有亜はもう何も言うまいと、席にもたれた。そうこうする内に、ドレスを準備してくれている店へ着いた。
勝手知ったる顔でさっさと入っていくザンについていく形で店内に入る。相変わらずの豪華さに気おくれするが、前回知り合った店長が手を振ってくれていたので幾分か楽だった。
「いらっしゃいませ。有亜さん、お久しぶりね」
「久しぶりです。今日はよろしくお願いします」
「ええ、任せて頂戴。エステマッサージから髪の毛に至るまで徹底的に磨きますわ!」
「・・・・・・お、お手柔らかにお願いします」
気合が入っているとばかりに拳を握り締める店長に、拍手と頷きで返している店員さん。彼女たちの結束はかなり硬いな・・・と現実逃避した有亜だが、すぐに現実に引き戻された。
「さぁさぁ、始めますわよ!そうそう、プリムローズ様は約束の時間になったらお戻りくださいね」
「ああ、色々と用事を済ませたらまた来よう。有亜、少し車を借りるぞ」
「ダメって言っても持っていくんでしょう・・・気を付けていってらっしゃい」
「あ、ああ。行ってくる」
ザンを見送った有亜は店員2人に腕をがっちりつかまれた状態で店の奥へと引きずられていった。気付けば、あれよあれよという間にバスロープを着せられ、エステサロンでマッサージ。これでもかというぐらい揉みに揉まれ、肌つるつるつやつやになった有亜を待っていたのは、美容師やネイリストによるデコレーション組だった。
「髪の毛のセットアップもいい出来だわ」
「・・・よし、化粧も完璧!プリムローム様もびっくりするのではないかしら」
「いや、平凡は多少のことでは変わりませんから・・・」
「パーツの一つ一つはとても綺麗よ。全体のバランスもびっくりするぐらい良いしね。平凡なんてぐちぐち言わず、今日ぐらいは楽しみなさいな!」
すっかり打ち解けた店長の明るい声にため息しかでない。有亜は下手に返事するよりはと頷いて立った。
気付けば、窓の外はもう夕暮れだった。もうじき空が紺青色に染まりはじめる頃だろうか。
時間もそろそろなので、もう来ているであろうザンが待っている所へ向かうことにした。
華やかなドレスを纏い、いつもより少し高めのハイヒールを履いているせいか足取りがゆっくりになる。
「プリムローズ様、お待たせいたしました」
「ああ。有亜、大丈夫か・・・?」
「・・・全然大丈夫じゃないです。疲れました」
「まだ本番はこれからだ。少し座って休むがいい」
「はーい・・・あ、でも、まだアクサセリーがあるかも」
有亜の言う通り、まだ胸元や耳に飾りはついていない。だが、ザンは「問題ない」と言いながら紙袋を取り出した。首を傾げている有亜の前に差し出されたのは、眩しく輝くアメジストの宝石がついたピアスとネックレスだった。
「・・・これは一体どうされたのです?」
「宝石店に母へのプレゼントを買う時に、これらを見つけてな。君に似合うと思って買ったんだ」
「断定なんですね・・・」
「俺の婚約者にふさわしいものをといろいろ探してきた中では一番の出来だ。つけるからおいで」
・・・この時、誰が思っただろうか。ザンが有亜のアクサセリーを付ける際に耳を舐めたり肩にキスしたりするほど浮かれていたなど。そして、彼の浮かれ具合にこれっぽちも気付いていない有亜が嫌がらせだと誤解して不機嫌になるだなんて。
「有亜、機嫌を直してくれ」
「だって、あんまりです。背中にまで、き、キスマークだなんて・・・おかげでドレスの着なおしですよ!」
「確かにそれは俺が悪かった。だが、嫌がらせだと決めつけられるのは納得いかない」
「それ以外に理由なんてないじゃないですか」
「いやいや、絶対ある、あるから考えて・・・・」
「もういいですってば。それよりもう玄関です」
2人とも険悪な状態ながらもパーティーに向かわなければいけないことにお互い口に出さないものの、憂鬱な気分でいた。当然ながら、両親に挨拶しなければならないことも解っていた。アレクサンダーは真っ先に挨拶を済ませるため、母のところへ向かった。
有亜は緊張していた。もちろん、ザンからは事前にあらゆる情報を聞いていた。
『お母様がアメリカ人だったんですね。日本人離れした外見にも納得です。あ、英会話が必要になりますね。どこの地域の方でしょうか?』
『ああ、母は若い頃に日本の大学に留学した経験があってね。かなり長かったから、日本語も普通に話せるよ』
『もしかして、お父様とはその時をきっかけに?』
『鋭いね。その通りだよ』
大学でたまたま隣の席になって、意気投合したことがきっかけだそうだよと肩をすくめたザンの説明に納得がいった。親が恋愛結婚をしなさいというのはそういう自分達の経験からきているのだろうと。同じように有亜の両親も恋愛結婚ではあるが、有亜はあまり憧れなかった。というのも・・・
『そういえば、君のご両親は?』
『あ、うちも一応・・・恋愛結婚です』
『なぜ、そこで間をおいたんだね』
『父が(母に)一目ぼれしてストーカーもどきになってそれで嫌いになったと叫んだら、慌てて改善してくれたと。そういう感じで、まぁ、すんでのところでギリギリセーフだったから結婚してあげたと母が言っていました』
『・・・そ、それは何とも言えないな』
『そんな父だから、私が結婚しようと何をしようと興味をもっていないと思いますね。母はそれなりの心配はしてくれますけれど、副社長なら大丈夫でしょう』
『それは喜ぶべきことなのか・・・複雑だな』
そんな会話をした二日後に籠城した身としてはなんとも言い難い。しかも、ザンが言っていたパーティーは身内でということだったが、そういうレベルじゃなかった。一応親戚が集まっているからか、会話は気安い雰囲気で交わされているが、盛装しているだけで身分の高さが伝わってくる。でも、ちらっとだけれど、上司の姿も見えたことでちょっとだけほっとした。隣にザンがいなかったら絶対帰っているレベルだと有亜は何度目になるかわからないため息をついた。
「いた。こっちだ」
「あ、はい・・・」
「やっと来たのね・・・あら、もしかして、そちらが噂の人ね?」
「はじめまして、高原有亜と申します」
「キャロルよ。ザン、あなたにしてはいい子を見つけてきたじゃない」
アメリカ人らしく両手を広げて歓迎してくるキャロルだが、緊張している有亜はお辞儀しか返せなかったが、キャロルからすれば、わたわたしている様子も好印象だった。
「へぇ。気取らない感じが好みだわ」
「貴方の好みで選んだわけじゃないんですよ、母さん」
「あら、ごめんなさいね~」
「そういえば、父さんは?」
「あちらで話しているわ。ねぇ、有亜さんのご両親は婚約についてはなんと?」
「あ、まだ紹介していないので、早めに会わせてほしいと言われています」
「それはそうよね。高原グループのお嬢様ですもの」
「・・・・・そうだったのか?」
「確かに高原グループは父の兄弟が経営していますが、縁を切っているので無関係ですね」
「一体どういうことかしら?」
「簡単に説明すると、当時でいうと父の父・・・私にとっては祖父にあたる人が結婚を反対したんで、駆け落ちしたんです」
あらあらっ!と両手を口に当ててロマンスだわと喜んでるキャロルに、あっけにとられているザン。うん、2人の反応は当然のものだと有亜は遠い実家にいる母を思った。あの夫婦はいつも決まって母がらみのことだと夫婦喧嘩になるということを伝えるとどういうことだと質問が来たので幼稚園の発表会のことで喧嘩した時のエピソードを説明した。
『・・・あなた、有亜の発表会なのに、私の横顔しか映っていないじゃないの!』
『いや、それは君の感動する姿がとても神々しかったんだ。これを記録しないなんて僕には考えられない』
『何のための撮影なのよ!もうっ!!あなた、ばつとして一週間別室で寝ますからね』
『いやだ!』
『即答してもダメですっ!』
『そんな。君の毎日寝る姿を記録するのが僕の楽しみなのに奪わないでくれ』
『・・・だから、いい加減になさい』
「・・・・って具合です。そんな人なんで、母が関わること以外はもう完全放任主義ですね。昔は母がお姫様で、父は王子様なんだなって憧れていた時もありましたけれど、もう今は全然・・・」
「・・・お会いしてみたくなったわ。だって、私も夫が好きだけれと、たまに鬱陶しいと思う時があるのよ。いつも一人で悩んでいたけれど、あなたのお母様ならこの気持ちを解ってくれそうだわ」
「ありがとうございます。そういうことであれば、母も喜ぶと思います」
「本当?絶対に機会を作って頂戴ね。ああ、嬉しいわ・・・ザン、あなたは本当に幸運よ」
「だから、母さんのために決めたわけじゃないんだ。彼女は俺が選んだただ一人の人だよ」
「ええ、解っているわ。こんな愚息だけれど、どうかよろしくね」
「あ、はい・・・ありがとうございます」
なぜか好印象だったらしく、抱きつかれた。ザンは眉間に皺を寄せているが、かわいらしいお母様だと思う。無下にできないので、しばらく好きにさせていると、司会が呼びかける声が聞こえた。
始まるから行かなきゃと、抱きしめていた腕を外したキャロルはバタバタと前の方へ向かっていった。ようやく二人になったとばかりに顔を見合わせていたら、ザンがグラスを取り出して有亜の手に握らせた。何故と顔を見上げると、ザンの困った表情が目に映った。
「・・・本当に嫌がらせじゃないんだ。それはまた今度説明するから、ひとまず休戦しよう?」
「は、い。嫌な言い方をしてごめん、なさい」
「いや、俺の方こそすまない。・・・本当に君が綺麗だから・・・・」
「・・・え、ごめんなさい、何を・・・・」
ザンが何かを言っていたが、司会者の挨拶と周りの拍手によってかき消されてしまった。慌ててザンに聞き直すが、苦笑いをするだけで続きは言ってくれなかった。
「・・・なんでもないよ。それより、そろそろ婚約発表が始まるから壇上の近くへ」
「あ、はい・・・」
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