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番外編
番外編)平和(?)な日常の一コマ(後編)
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質問の返事はすぐには返ってこなかった。最初に舌を入れられてキスされたからだ。それもやけに長かった気がする。
「んっんん!」
「アリア、城に帰ったらお仕置きだ」
「ええっ、どうしてよ?」
「俺だってお前とのデートを楽しみにしていたんだぞ。それをラティスと行くとかありえないだろう」
「うっ」
シャラから報告を聞いた時の俺の心境を考えろと言われて押し黙ったが、すぐに現状を思い出して慌てた。その様子にザンはやれやれとため息を付いた。
「って、そうだわ、ポシェットが!」
「心配ない。それよりもお前はもう少し自分の立場を考えるんだな」
「それとこれとは別……」
「いいや、同じことだ」
(ザンかしつこいほど言ってくる口癖の意味がよくわからない。出歩くなっていう意味なんだろうか。)
「…でも城で待っているだけなんてできないし、私の性には合わないよ」
「そういう意味ではないんだがな」
「じゃあ、どういう意味で言っているのよ」
「アリア、戻ってきたようだぞ」
「え?」
ふてくされながらも宥めるように頬を撫でてくるザンの手に甘えていると、ザンの隣に影が指すのが見えた。音がするのと同時にその場に降り立ったのはいつの間にかいなくなっていたラティスで、手元にはポシェットが収まっていた。
「ラティス、いつの間に取りに行っていたの」
「それはもちろん、ザン様がアリア様にキスしている間ッスね」
「……大丈夫だったの?」
「もちろん、この通り怪我一つありません。それにスリの方もすでに捕縛して部下に任せてきました」
「だから心配などいらなかっただろう。お前はもう少し妃の立場として臣下に任せることも覚えたほうがいい」
ザンが続けて言葉を選ぶように口にしたことはアリアの胸にも刺さった。
「なんでもかんでも自分でやろうとするのは平民ならでの性かもしれんが、今やお前は聖女であり、俺の妻であり、この国の王族の一員だ。身の安全を守るためにも部下達に頼むほうが良い」
「でも……」
「それに、アリアもよく言っているだろう。自分や周りに頼れと。同じことをそっくりお前にも返すぞ」
「……あぅ」
「当然のことだが、お前にとってラティスは単なる部下ではなかろう?」
「それはもちろんそうよ」
「ならば任せておけ。それともラティスがこの程度のこともできないと思ってのことか?」
「ううん、それはちっとも思わないし、彼なら強いって解っているよ」
「だったら、信じ仕事を頼め。それがラティスの誇りと信頼に繋がるのだから」
ようやくザンが言いたいことが伝わったアリアはラティスを見上げて頭を下げた。
「ごめんなさい。あなたの仕事を疑ったわけじゃないの。ただ、取り返そうって思っただけ」
「解っております。ただ、この程度はアリア様の護衛としての仕事としては容易いこと。今後同じようなことがあった時は遠慮なく命じてください」
「……ありがとう。よろしくお願いします」
「お任せください、我が聖女様」
珍しく恭しい礼をとったラティスの姿に彼の意思を見たアリアは改めて感謝を告げた。その様子を見ていたザンはこれでまた一つ彼女の成長に繋がると良いと思っていた。そこで空気を変えるようにラティスがさっきと打って変わって陽気な声を出した。
「ポシェットの中にあった予約券も無事です。この後はザン様と改めてデートされてはどうッスかね」
「……ザン?」
「もちろん、行きましょう。サーカスの感想は後でラティスにじっくりねっとり聞くとして」
「ひぃい、それはご容赦ください、すんまんせん、ザン様!」
「ここからは俺にエスコートさせてくれないか、我が最愛の妻よ」
「…はい、お願いします」
はにかんだアリアの笑顔にザンも目を細める。そんなバカップルの様子に当てられたラティスは密かに影へと消えていった。そこから2人がデートを楽しんだことはいうまでもない。そしてその夜にアリアがお仕置きと称して激しく愛されたこともいうまでもなかろう。
余談
次の日、仕事をしていたザンの耳に目を留めたラティスはなるほどと頷いた。
「なるほど。アリア様がわざわざ予約までした理由はそれでしたか」
「ああ。魔道具だったからだな」
ザンの耳に新たに加わったピアスを見たラティスはそれがアリアからのプレゼントだとすぐに思い当たった。ザンもラティスの意図に気づいてすぐに答えているあたりもはやツーカーである。
「相変わらずアリア様はザン様のことをよく解っていらっしゃる」
「俺の妃になってから何年経つと思っている。それに…アリアからのものであれば何だって嬉しいに決まっているだろう」
「うう、羨ましいッス。俺もいつかは……!」
「彼女が成人するまでまだ先なんだろう、それまでぜいぜい頑張るんだな」
主に貴族たちの根回しとか父親の許可とかその他もろもろをな。
「……なんで知っているのかは敢えて聞きませんけれど、それはアリア様もご存知で…?」
「どうだろうな」
「ザン様ぁああああああああ! どうかアリア様には内密にしてくれっっスぅううう!」
聖女であるアリアがそばにいることでザンの魔力は年々強くなっている。それもあってそろそろ魔道具を増やしたいと考えていたザンにとってはありがたいプレゼントだった。しかもそれがアリアのデザインしたピアスであれば尚更である。
もちろんこの日ずっとザンが機嫌よく仕事をすることができていたのは言うまでもなかろう。(後、ラティスの懇願はしばらくうやむやにされたとかされなかったとか)
「んっんん!」
「アリア、城に帰ったらお仕置きだ」
「ええっ、どうしてよ?」
「俺だってお前とのデートを楽しみにしていたんだぞ。それをラティスと行くとかありえないだろう」
「うっ」
シャラから報告を聞いた時の俺の心境を考えろと言われて押し黙ったが、すぐに現状を思い出して慌てた。その様子にザンはやれやれとため息を付いた。
「って、そうだわ、ポシェットが!」
「心配ない。それよりもお前はもう少し自分の立場を考えるんだな」
「それとこれとは別……」
「いいや、同じことだ」
(ザンかしつこいほど言ってくる口癖の意味がよくわからない。出歩くなっていう意味なんだろうか。)
「…でも城で待っているだけなんてできないし、私の性には合わないよ」
「そういう意味ではないんだがな」
「じゃあ、どういう意味で言っているのよ」
「アリア、戻ってきたようだぞ」
「え?」
ふてくされながらも宥めるように頬を撫でてくるザンの手に甘えていると、ザンの隣に影が指すのが見えた。音がするのと同時にその場に降り立ったのはいつの間にかいなくなっていたラティスで、手元にはポシェットが収まっていた。
「ラティス、いつの間に取りに行っていたの」
「それはもちろん、ザン様がアリア様にキスしている間ッスね」
「……大丈夫だったの?」
「もちろん、この通り怪我一つありません。それにスリの方もすでに捕縛して部下に任せてきました」
「だから心配などいらなかっただろう。お前はもう少し妃の立場として臣下に任せることも覚えたほうがいい」
ザンが続けて言葉を選ぶように口にしたことはアリアの胸にも刺さった。
「なんでもかんでも自分でやろうとするのは平民ならでの性かもしれんが、今やお前は聖女であり、俺の妻であり、この国の王族の一員だ。身の安全を守るためにも部下達に頼むほうが良い」
「でも……」
「それに、アリアもよく言っているだろう。自分や周りに頼れと。同じことをそっくりお前にも返すぞ」
「……あぅ」
「当然のことだが、お前にとってラティスは単なる部下ではなかろう?」
「それはもちろんそうよ」
「ならば任せておけ。それともラティスがこの程度のこともできないと思ってのことか?」
「ううん、それはちっとも思わないし、彼なら強いって解っているよ」
「だったら、信じ仕事を頼め。それがラティスの誇りと信頼に繋がるのだから」
ようやくザンが言いたいことが伝わったアリアはラティスを見上げて頭を下げた。
「ごめんなさい。あなたの仕事を疑ったわけじゃないの。ただ、取り返そうって思っただけ」
「解っております。ただ、この程度はアリア様の護衛としての仕事としては容易いこと。今後同じようなことがあった時は遠慮なく命じてください」
「……ありがとう。よろしくお願いします」
「お任せください、我が聖女様」
珍しく恭しい礼をとったラティスの姿に彼の意思を見たアリアは改めて感謝を告げた。その様子を見ていたザンはこれでまた一つ彼女の成長に繋がると良いと思っていた。そこで空気を変えるようにラティスがさっきと打って変わって陽気な声を出した。
「ポシェットの中にあった予約券も無事です。この後はザン様と改めてデートされてはどうッスかね」
「……ザン?」
「もちろん、行きましょう。サーカスの感想は後でラティスにじっくりねっとり聞くとして」
「ひぃい、それはご容赦ください、すんまんせん、ザン様!」
「ここからは俺にエスコートさせてくれないか、我が最愛の妻よ」
「…はい、お願いします」
はにかんだアリアの笑顔にザンも目を細める。そんなバカップルの様子に当てられたラティスは密かに影へと消えていった。そこから2人がデートを楽しんだことはいうまでもない。そしてその夜にアリアがお仕置きと称して激しく愛されたこともいうまでもなかろう。
余談
次の日、仕事をしていたザンの耳に目を留めたラティスはなるほどと頷いた。
「なるほど。アリア様がわざわざ予約までした理由はそれでしたか」
「ああ。魔道具だったからだな」
ザンの耳に新たに加わったピアスを見たラティスはそれがアリアからのプレゼントだとすぐに思い当たった。ザンもラティスの意図に気づいてすぐに答えているあたりもはやツーカーである。
「相変わらずアリア様はザン様のことをよく解っていらっしゃる」
「俺の妃になってから何年経つと思っている。それに…アリアからのものであれば何だって嬉しいに決まっているだろう」
「うう、羨ましいッス。俺もいつかは……!」
「彼女が成人するまでまだ先なんだろう、それまでぜいぜい頑張るんだな」
主に貴族たちの根回しとか父親の許可とかその他もろもろをな。
「……なんで知っているのかは敢えて聞きませんけれど、それはアリア様もご存知で…?」
「どうだろうな」
「ザン様ぁああああああああ! どうかアリア様には内密にしてくれっっスぅううう!」
聖女であるアリアがそばにいることでザンの魔力は年々強くなっている。それもあってそろそろ魔道具を増やしたいと考えていたザンにとってはありがたいプレゼントだった。しかもそれがアリアのデザインしたピアスであれば尚更である。
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