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出会いの先は幼馴染
巴菜と良和(4)
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※この話は交差点シリーズとリンクしています。
とりあえずはと、巴菜と良和は適当な店へ入ることにした。
当然、さっきまで親友と会っていた店は避けて、反対方向の店へ誘導することは忘れない。テーブルに着いたとたん、良和はテーブルに乗り出す形で巴菜に笑顔を向けてきた。彼の珍しい笑顔に引き気味になったが、すぐにあっけにとられた。
「巴菜に会えてよかった。少し話がありまして。」
「私に・・・?」
「ええ、今度休みを取って、一緒に旅行に行きませんかという話を。」
「・・・・・・why?」
首を傾げた巴菜に対して、良和はパンフレットを取り出し、広げて見せてきた。
巴菜が覗き込んだそのページはとある有名な名所を取り上げた特集だった。
「・・・・良和さん、何故ここへ行きたいと?」
「えーと、気になっていたからですよ、ほら。ここなんか綺麗じゃないですか。」
「え、旅行なんて人混みが多いから行く気になりませんって言っていたような。」
以前、秋良さんが遊園地にと誘ってきた時に、嫌がってずっとグチグチ言っていた男が言うセリフじゃないと思った巴菜だが、当の張本人はふっとかっこつける様に口を開いた。
「あれはあれ、これはこれ。貴方と一緒に行くのならどんな場所であろうと行ってみせますとも。」
「そういうところはやっぱり秋良さんと双子よね、良和さん。」
「今の一言は胸にぐっさりと刺さりました。いや、それより、行きましょう?あなたの都合に合わせて仕事をセーブしますから。」
さぁ!と、勢いよく手帳を開いてやる気満々になっている良和に否とは言えない。
まぁ、一言で言うなら、諦めの境地といったところか。
巴菜は一度軽くため息をついた後、鞄から手帳を取り出した。
「じゃあ、旅行はこの日ということで。」
「決まりですね。」
なかなかにスケジュールが合わず、一ヶ月先になってしまったが、ある意味それはそれでよい気がする。
手帳に旅行の予定を書き入れていると、良和の方でも手帳に記録をしているようだった。
(・・・・うーん、こうしてみると時々押しが強くなるところって変わってないのよね。)
何故か解らないけれど、彼は昔から変な方向で押しが強かった。
昔、突然家に来て、「五円玉と赤い毛糸を買って、それで神社に行きませんか!」と言われてびっくりしたことがある。急かしてくる彼を必死に落ち着かせながら付き合って1キロも遠い神社にお参りに行ったのも今となってはいい思い出だ。
・・・・帰ってきた次の日には筋肉離れで泣いたけれどね。
「そういえば、あの神社も懐かしいわね。」
「いきなりどうか・・・・ああ、そういえば、ここの近くでしたね。昔歩いて行った神社。」
「そうそう。そういえば、あの時に、五円玉に赤い糸を結び付けてなかった?」
「・・・・よく覚えていますね。ええ、そうです。」
「なんでか私にも五円玉をくださいとかいっていたよね。」
「・・・・・・・はい、言いましたね。」
「あれは何か意味があったわけ?縁があるようにっていう意味かなと思ったんだけれど、あの時の私達小学生だよ。」
「ええっとですね、うん、巴菜は・・・・解らないままでいいと思います。」
目を泳がせたということは言いたくないのだろう、ふーんと目を細めてみると思いっきり顔を逸らされた。
(・・・・・こういうところも)
「ほんと、秋良さんと双子だなってこういう時に特に感じるわ。」
「お願いですから、心外なことは言わないでください。」
はぁとため息をついた良和は何を思ったのか、巴菜の手を引っ張ってお店を出ようとした。
「・・・どうしたんです?」
「時間があるので、送っていきますよ。」
「あ、結構です。」
「そこで逃げないでください。丁度よいからついでに実家の方にも顔をだしたらどうです。一駅向こうというだけで、結構近いでしょう?」
「うふふふ、あんな実家に帰るわけありませんわよ?」
「巴菜、僕と2人きりで猫の皮を被る必要はないでしょう?」
「・・・・それより、手を離してくれませんか。」
いつの間にか手繋ぎをしていることに困惑するが、彼の方は離す気がないのか、しっかり繋がれている。気のせいか汗ばんでいる気がしないでもない。
(うう・・・・平常心、平常心。)
巴菜は深呼吸しながら、彼から目をそらして前を見た。良和から優しい視線を向けられていることには気づいていたが、心が落ち着かない今は対応できる気がしない。
黙り込んだ巴菜に、少し困った顔で優しく言い聞かせるような声が上から降り注ぐ。
「とりあえず、渚さんが心配していましたから、顔ぐらいは出してあげたらどうでしょうか。」
「・・・はいはい、良和さんは本当にうちの兄が好きですね・・・わかりました。」
「巴菜は本当に家族に対してはツンデレさんですねー。そういうところも可愛いです。」
「あーはいはい。」
「本当に、そういうあしらい方を見るとやっぱり渚さんと兄弟なんだなって思いますよ。」
笑ってそう言った彼に、ちょっと意地悪で足を踏んだのはご愛敬だ。
「・・・あの兄と一緒にしないでください。そして、手を離してください。」
そう言いながらも、自分からはこの手を振り払えないことに彼は気づいているのだろうか。
巴菜は彼に見えないところで火照った頬を仰ぎ、わずかに微笑んだ。
(そういえば、二人で旅行って・・・・初めて、かも。)
心なしか足取りが軽いのは彼の手のお蔭か、それとも――
とりあえずはと、巴菜と良和は適当な店へ入ることにした。
当然、さっきまで親友と会っていた店は避けて、反対方向の店へ誘導することは忘れない。テーブルに着いたとたん、良和はテーブルに乗り出す形で巴菜に笑顔を向けてきた。彼の珍しい笑顔に引き気味になったが、すぐにあっけにとられた。
「巴菜に会えてよかった。少し話がありまして。」
「私に・・・?」
「ええ、今度休みを取って、一緒に旅行に行きませんかという話を。」
「・・・・・・why?」
首を傾げた巴菜に対して、良和はパンフレットを取り出し、広げて見せてきた。
巴菜が覗き込んだそのページはとある有名な名所を取り上げた特集だった。
「・・・・良和さん、何故ここへ行きたいと?」
「えーと、気になっていたからですよ、ほら。ここなんか綺麗じゃないですか。」
「え、旅行なんて人混みが多いから行く気になりませんって言っていたような。」
以前、秋良さんが遊園地にと誘ってきた時に、嫌がってずっとグチグチ言っていた男が言うセリフじゃないと思った巴菜だが、当の張本人はふっとかっこつける様に口を開いた。
「あれはあれ、これはこれ。貴方と一緒に行くのならどんな場所であろうと行ってみせますとも。」
「そういうところはやっぱり秋良さんと双子よね、良和さん。」
「今の一言は胸にぐっさりと刺さりました。いや、それより、行きましょう?あなたの都合に合わせて仕事をセーブしますから。」
さぁ!と、勢いよく手帳を開いてやる気満々になっている良和に否とは言えない。
まぁ、一言で言うなら、諦めの境地といったところか。
巴菜は一度軽くため息をついた後、鞄から手帳を取り出した。
「じゃあ、旅行はこの日ということで。」
「決まりですね。」
なかなかにスケジュールが合わず、一ヶ月先になってしまったが、ある意味それはそれでよい気がする。
手帳に旅行の予定を書き入れていると、良和の方でも手帳に記録をしているようだった。
(・・・・うーん、こうしてみると時々押しが強くなるところって変わってないのよね。)
何故か解らないけれど、彼は昔から変な方向で押しが強かった。
昔、突然家に来て、「五円玉と赤い毛糸を買って、それで神社に行きませんか!」と言われてびっくりしたことがある。急かしてくる彼を必死に落ち着かせながら付き合って1キロも遠い神社にお参りに行ったのも今となってはいい思い出だ。
・・・・帰ってきた次の日には筋肉離れで泣いたけれどね。
「そういえば、あの神社も懐かしいわね。」
「いきなりどうか・・・・ああ、そういえば、ここの近くでしたね。昔歩いて行った神社。」
「そうそう。そういえば、あの時に、五円玉に赤い糸を結び付けてなかった?」
「・・・・よく覚えていますね。ええ、そうです。」
「なんでか私にも五円玉をくださいとかいっていたよね。」
「・・・・・・・はい、言いましたね。」
「あれは何か意味があったわけ?縁があるようにっていう意味かなと思ったんだけれど、あの時の私達小学生だよ。」
「ええっとですね、うん、巴菜は・・・・解らないままでいいと思います。」
目を泳がせたということは言いたくないのだろう、ふーんと目を細めてみると思いっきり顔を逸らされた。
(・・・・・こういうところも)
「ほんと、秋良さんと双子だなってこういう時に特に感じるわ。」
「お願いですから、心外なことは言わないでください。」
はぁとため息をついた良和は何を思ったのか、巴菜の手を引っ張ってお店を出ようとした。
「・・・どうしたんです?」
「時間があるので、送っていきますよ。」
「あ、結構です。」
「そこで逃げないでください。丁度よいからついでに実家の方にも顔をだしたらどうです。一駅向こうというだけで、結構近いでしょう?」
「うふふふ、あんな実家に帰るわけありませんわよ?」
「巴菜、僕と2人きりで猫の皮を被る必要はないでしょう?」
「・・・・それより、手を離してくれませんか。」
いつの間にか手繋ぎをしていることに困惑するが、彼の方は離す気がないのか、しっかり繋がれている。気のせいか汗ばんでいる気がしないでもない。
(うう・・・・平常心、平常心。)
巴菜は深呼吸しながら、彼から目をそらして前を見た。良和から優しい視線を向けられていることには気づいていたが、心が落ち着かない今は対応できる気がしない。
黙り込んだ巴菜に、少し困った顔で優しく言い聞かせるような声が上から降り注ぐ。
「とりあえず、渚さんが心配していましたから、顔ぐらいは出してあげたらどうでしょうか。」
「・・・はいはい、良和さんは本当にうちの兄が好きですね・・・わかりました。」
「巴菜は本当に家族に対してはツンデレさんですねー。そういうところも可愛いです。」
「あーはいはい。」
「本当に、そういうあしらい方を見るとやっぱり渚さんと兄弟なんだなって思いますよ。」
笑ってそう言った彼に、ちょっと意地悪で足を踏んだのはご愛敬だ。
「・・・あの兄と一緒にしないでください。そして、手を離してください。」
そう言いながらも、自分からはこの手を振り払えないことに彼は気づいているのだろうか。
巴菜は彼に見えないところで火照った頬を仰ぎ、わずかに微笑んだ。
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