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第一章 少女たちの願い(後編)
ストーカーですにゃ!
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木々がサァッと揺れる午後の風。
その風に揺られて、夏音は川沿いの道を歩いている。
「……あの」
「……うん?」
「……あの……」
これは、どういう状況なのだろう。
「いい加減離れてくれないですかにゃ?」
「んぅ? おっけー!」
夏音の懇願を聞き、素直に離れる少女がいる。
夏音は先程まで、目の前の少女に抱きつかれていた。
執拗に付き纏われていたため、夏音が何を言っても聞いてくれないと思っていたのに。
「ねーねー、夏音ちゃ~ん。暇だなー」
「……だからなんだって言うんですにゃ……?」
「夏音ちゃんと一緒に遊びたいな~」
屈託の無い笑みで声を踊らせる。
だが、その目は笑っていない。
そのことに気付いているから、夏音はこの人が苦手だ。
「ねーえー、夏音ちゃーん」
いつの間にか夏音の頭に顎を乗せ、体重を寄せてくる少女に。
夏音の我慢は限界だった。
だが――
「あれ、夏音……ちゃん……? どう……した、の?」
天の助けが舞い降りた。
太陽の光を浴びてキラキラしている髪が、夏音の眼には一層輝いて見える。
「真菜おねーさん!」
夏音はその天の助け――もとい、真菜に駆け寄って、その人の背中へと隠れるように回った。
そして、先程まで夏音に付き纏っていた少女を指さして叫ぶ。
「この人夏音のストーカーですにゃ! どっか行けですにゃ!」
「……え、そう……なの?」
夏音の指摘に、真菜は眼前の少女を見やった。
それに続くように、改めて夏音も少女を見る。
昔ながらの艶やかな黒髪に、蒼輝のような蒼い瞳をしている。
真菜と同じような背の高さをしていて、その格好は――
「夏音ちゃんたら酷いなー。将来を誓い合った仲なのに~」
「そんな誓いはしてないですにゃ! ってか近づくなですにゃああ!」
音もなく、気配もなく夏音の後ろにやってきた少女は、さしずめ“忍者”のようだった。
申し訳程度の服を纏っていて、動きやすさを重視しているようだ。
そうやって考えている間にも、抱きつかれて、頬ずりされて。
夏音はもう疲弊し切っている。
と、そこにまた新たに人が来た。
「えっと……夏音ちゃん――でしたよね?」
「もしかして……緋依おねーさん――ですにゃ?」
夏音はこの人のことを、結衣から聞いたことがある。
戦闘時は天使の姿になるのだとか。
――それにしても……
「……綺麗、ですにゃ……」
少々癖のある檸檬色の髪に、空を丸ごと閉じ込めたような淡い水色の瞳が揺れる。
真菜が太陽のようなら、さしずめ緋依は月のようだ。
真菜は誰をも惹きつける魅力があるが、緋依は静かに光る魅力がある。
なので、気にしていないと気付けない。
だが気付くと、太陽より存在感を放つ月。
「ふんふん。どっちも良くて決められないですにゃ」
勝手に何かを納得し始めた夏音に、年上の少女たちはついていけないようだった。
「ふーん……夏音ちゃん、こんなにお仲間いたんだね……」
何やら先程と打って変わって暗い影を落とす少女を。だが、夏音は完全に無視する。
「……ところ、で……あなたの、名前……は?」
自分の世界に入り込んだ夏音を横目に、真菜が少女に訊く。
「あー……そうだね。名前言ってなかったね」
笑みを消して、いつの間にか夏音から離れていた少女が「てへへ」と悪戯っぽく舌を出す。
「僕は美波。観月美波だ」
黒髪の少女が名乗った途端、ザァッと一陣の風が吹いた。
それは、その少女の名前を聴くなという警告のようで。
――なんだか、胸騒ぎがした。
その風に揺られて、夏音は川沿いの道を歩いている。
「……あの」
「……うん?」
「……あの……」
これは、どういう状況なのだろう。
「いい加減離れてくれないですかにゃ?」
「んぅ? おっけー!」
夏音の懇願を聞き、素直に離れる少女がいる。
夏音は先程まで、目の前の少女に抱きつかれていた。
執拗に付き纏われていたため、夏音が何を言っても聞いてくれないと思っていたのに。
「ねーねー、夏音ちゃ~ん。暇だなー」
「……だからなんだって言うんですにゃ……?」
「夏音ちゃんと一緒に遊びたいな~」
屈託の無い笑みで声を踊らせる。
だが、その目は笑っていない。
そのことに気付いているから、夏音はこの人が苦手だ。
「ねーえー、夏音ちゃーん」
いつの間にか夏音の頭に顎を乗せ、体重を寄せてくる少女に。
夏音の我慢は限界だった。
だが――
「あれ、夏音……ちゃん……? どう……した、の?」
天の助けが舞い降りた。
太陽の光を浴びてキラキラしている髪が、夏音の眼には一層輝いて見える。
「真菜おねーさん!」
夏音はその天の助け――もとい、真菜に駆け寄って、その人の背中へと隠れるように回った。
そして、先程まで夏音に付き纏っていた少女を指さして叫ぶ。
「この人夏音のストーカーですにゃ! どっか行けですにゃ!」
「……え、そう……なの?」
夏音の指摘に、真菜は眼前の少女を見やった。
それに続くように、改めて夏音も少女を見る。
昔ながらの艶やかな黒髪に、蒼輝のような蒼い瞳をしている。
真菜と同じような背の高さをしていて、その格好は――
「夏音ちゃんたら酷いなー。将来を誓い合った仲なのに~」
「そんな誓いはしてないですにゃ! ってか近づくなですにゃああ!」
音もなく、気配もなく夏音の後ろにやってきた少女は、さしずめ“忍者”のようだった。
申し訳程度の服を纏っていて、動きやすさを重視しているようだ。
そうやって考えている間にも、抱きつかれて、頬ずりされて。
夏音はもう疲弊し切っている。
と、そこにまた新たに人が来た。
「えっと……夏音ちゃん――でしたよね?」
「もしかして……緋依おねーさん――ですにゃ?」
夏音はこの人のことを、結衣から聞いたことがある。
戦闘時は天使の姿になるのだとか。
――それにしても……
「……綺麗、ですにゃ……」
少々癖のある檸檬色の髪に、空を丸ごと閉じ込めたような淡い水色の瞳が揺れる。
真菜が太陽のようなら、さしずめ緋依は月のようだ。
真菜は誰をも惹きつける魅力があるが、緋依は静かに光る魅力がある。
なので、気にしていないと気付けない。
だが気付くと、太陽より存在感を放つ月。
「ふんふん。どっちも良くて決められないですにゃ」
勝手に何かを納得し始めた夏音に、年上の少女たちはついていけないようだった。
「ふーん……夏音ちゃん、こんなにお仲間いたんだね……」
何やら先程と打って変わって暗い影を落とす少女を。だが、夏音は完全に無視する。
「……ところ、で……あなたの、名前……は?」
自分の世界に入り込んだ夏音を横目に、真菜が少女に訊く。
「あー……そうだね。名前言ってなかったね」
笑みを消して、いつの間にか夏音から離れていた少女が「てへへ」と悪戯っぽく舌を出す。
「僕は美波。観月美波だ」
黒髪の少女が名乗った途端、ザァッと一陣の風が吹いた。
それは、その少女の名前を聴くなという警告のようで。
――なんだか、胸騒ぎがした。
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