上 下
119 / 262
第一章 少女たちの願い(後編)

ついに来たっ!

しおりを挟む
 ついに、来た!
 この胸の高鳴りが抑えられない。

 行きの電車の中でも、いつもと景色が違って見えた。
 キラキラ輝く光が、そこらじゅうに零れ落ちているように感じる。

「……ついに! ついにっ! 来たっ!」

 結衣は興奮を抑えきれず、叫び出してしまいそうになる。
 だが、一人の少女が叫んだところで、なんら問題はないだろう。

 何せ、結衣の周囲も賑やかなのだから。
 そう。結衣たちが今いるのは――

「遊園地だー!!」

 夢いっぱいの、遊園地だ。
 ジェットコースターからは楽しそうな叫び声が聞こえ、売店からは微笑ましい笑い声が聞こえる。

「さぁ、みんな! 楽しむわよ~!」
「「「おー!」」」

 ここで、温泉旅行に行った時のような掛け声がかかる。
 結衣は少し不安になる。
 遊園地に来たメンツはたくさんいるのに、引率が何故か結衣のお母さんしかいないのだ。

「結衣様ぁ、なんだか突然浮かない顔になりましたねぇ? どうしたんです?」

 リュックの中から、少しだけ姿を見せるガーネット。
 リュックは当然、結衣の背中にある。
 それなのに、どうして結衣の顔の変化がわかるのだろう。

 結衣はその事を疑問に思うが、とりあえず触れないでおいた。
 解答がある程度予測できるから。

「……だってさ、保護者が一人って……とてつもなく不安だよ……」
「あー、なるほどぉ。確かにそうですねぇ~……」

 結衣は改めて周囲を見回す。
 どこを見ても、人で溢れかえっている。
 この中で迷子になってしまったら、一巻の終わりである。

「結衣……」

 そんなことを考えていると、不意に肩を叩かれた。

「あ、真菜ちゃん。どうしたの?」
「それは……こっちのセリフ、だよ……みんな……もう、あっちに……いる……」
「……え? あ! ほんとだ!? ごめん! 行こう、真菜ちゃん!」
「……うん!」

 初っ端からこんなドタバタしてて大丈夫なのだろうか。
 結衣は自分のことが心配になる。

 だけど、まずは楽しまなきゃ!
 そう思い、足を踏みしめながら進んだ。
しおりを挟む

処理中です...