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第一章 少女たちの願い(後編)

過去を語り出す

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「はー……こういうふうに笑ったの久しぶりかもデス」

 少女の目には涙が浮かんでいる。
 笑いすぎて出てきたのか、それとも嬉し泣きなのか。
 判別は出来なかったが、結衣にはどうでもよかった。

 このまま心を開いてくれれば、戦わずに済むから。

「じゃあさ、これからはこんなふうに笑い合おうよ! ……この前のことは、チャラにしてあげるからさ」

 結衣は少し陰を含ませながらそう言った。

 夏音は無事だったし、結衣も怪我をしていない。
 できるだけ、結衣は無益な戦いは避けたいと思っている。

 それに、少女が友人になってくれれば、も――

「チョット、ついてきてほしいんデスガ……」

 少女はおもむろに立ち上がり、結衣の腕を引っ張った。

 ☆ ☆ ☆

「……えーっと……」

 少女に引っ張られ、結衣は店の外に来ていた。
 だが、少女は俯くばかりで、一言も発していない。
 結衣は沈黙に耐えられなくなり、何か言おうと試みる。

「何か話したいことでもあるの?」

 結衣はおそるおそる、静かに尋ねた。
 だが、少女は依然俯くばかり。
 結衣が打つ手をなくした、その時。

「……ホントに、チャラにしてくれるンデスカ?」

 少女は、思いもよらない言葉を放った。
 顔を上げ、不安そうに瞳を揺らす。
 そんな少女に、結衣は不安を蹴散らすように明るく笑った。

「うん、もちろん! 嘘はつかないよ!」

 結衣がそう言うと、少女は安堵の表情を浮かべる。
 そして――

「ミーの名前は、紺條こんじょうカスミ。二年間アメリカにいまシタ」

 少女は自分の過去を、語り始めた。
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